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ハルはエデンと協力する。

エデンの洞窟に閻魔大王を突っ込ませるという作戦を立ててから

その夜、拠点のテントにて。

焚き火の爆ぜる音だけが響く中、僕は横たわりながら暗い天井を見つめていた。


……本当によかったのかな、これで。なんか、人間としての大切な部分が失われているような気がする


「よし、それじゃあ寝るぞー」


「……うん」


黒ポンはそう言うと、テント内の明かりを消しすぐに寝た。一切の悩みのなさそうな寝顔をみながら正反対に僕はいまだに激しい葛藤をしていた。

やっぱりよくない。でも、黒ポンの言っている理屈も理解はできる。

けれど、あんな風に全てを諦めた状態の天使エデンが、襲撃を受けたからといってわざわざ自分の身を守るだろうか? もしかしたら、何も抵抗せず、ただ静かに死を受け入れる可能性だって十分にある。それは、どうしても見過ごせなかった。


(……ここからエデンのいる洞窟までは、歩いて一時間か)


悩み抜いた結果、僕は結局、眠っているデュポンを置いて、一人で夜の静寂へと踏み出すことに決めた。


■■■


「……それで。何の用だ?昼間のやつか。」


洞窟の奥から声が聞こえてきた。昼間どうよう相変わらず神々しく思わずすごんでしまいそうだが、ここに来た目的を思い出しぐっとこらえた。


「ここに明日、僕の仲間が、例の過去から来た悪魔を連れてきます。だから、エデンさんは早く逃げてください」


僕の言葉を聞いたエデンは、深い溜息を吐き、蔑むような視線を向けてきた。


「……君は、阿呆なのか。その様子だと君の仲間はかなり苦労してここに連れてくるのだろう。その苦労を水の泡にしてどうする」


「う……。だって、連れてきたところで、あなたが自己防衛のために閻魔大王を元の時代に戻すとは思えないんだもん」


図星を突かれたのか、エデンは鼻で笑った。


「ま、そうだな。私は特に能力をつかうつもりはない。」


「ほらああ! よかった、言っておいて。エデンさんが死んだらどうしようもないから…」


「バカ者、何をやっても私は協力しないとずっといっているだろう」


あくまで冷淡な態度を崩さないエデンに、僕は食い下がる。


「うぅ……。じゃあ、協力はいいから早く逃げましょうよ」

するとエデンは僕の発言に不思議そうな顔をしていた。


「? 断るぞ」


「えっ!!」


予想外の即答に、僕は呆然とした。エデンは至極当然といった風に言葉を続ける。


「私は今、この現状を受け入れるつもりだ。いつか死ぬのだから、わざわざそれを拒む必要もないだろう」


「いやいや、それじゃあ僕がわざわざ言いに来た意味がないじゃん!」


「そうなるな。わかったらさっさとここを離れ……って、おい。何をしている」


僕はなりふり構わず、エデンの白い腕を両手で思いっきり引っ張った。必死で体中の力を振り絞りひっぱるがピクリとも動かない。


「ここから、逃げましょうよ!」


「だから、断ると言っているだろう」


今度は腕に魔力をこめ全力で引っ張るしかし依然と動く気配はない。


「ふぐぐ……僕は諦めませんよ! 絶対に、絶対に連れて行くんです!」


「全く、君は本当にあほだな。行かないと言ったら行かん」


「じゃあ、僕もここであなたを引っ張り続けますよ! 嫌なら本気で抵抗してみてくださいよ! ふぐぐぐ……っ!」


「この……」

一瞬、エデンの腕に力が入り殺気が出たような気ががしたが、すぐにふっとその重みが消えた。


「……抵抗しないんですか?」

エデンの力なら振りほどくなんて簡単なはずだ。


「嫌なんだよ。私よりも圧倒的に弱い者に、力を行使するのは……。全く、仕様のない奴だ」

エデンは大きくため息をはき僕を見つめスッとその場に立ち上がった。


■■■


後日。かつてエデンがいた洞窟は、突如として飛来した「彼女」の圧倒的な暴力によって破壊し尽くされ、轟音と共に崩れ落ちていた。


「ぜえ……はあ……。もう二度とやらねえぞ、こんなこと……」


拠点のテントの前。服をボロボロに引き裂かれ、肩で激しく息をしながら、ヴァルが地面にへたり込んでいた。


「おつかれー。ちゃんと洞窟に連れ込んだ?」


黒ポンが呑気に尋ねると、ヴァルは震える右手を上げ、無言でぐっと親指を立てた。


「ああ、ちゃんと洞窟内に誘導させたぞ。……そういえば、ハルは?」


「実は、朝起きたらいなかったんだよねー」


「え!? ちゃんと見とけよこの馬鹿! おい、すぐに探すぞ。いなくなったのはいつだ!」


ヴァルが血相を変えて立ち上がろうとした、その時だった。


「ここにいるよ」


上空から降ってきた声に顔を上げると、そこには白銀の翼を広げた影があった。僕はエデンの腕に掴まれた状態で、ぶら下がるようにしてゆっくりと地上へと降下していきそっと地面に着いた。


「おぉ、よかった無事だったか……ってエデン!? なんで一緒にいるんだよ!!」

黒ポンは見るなりかなり驚いていた。


「えへへ…それには理由が」


「 ……さてはお前だな、ハル!!」


「あはは、ちゃんと後で説明するから。……っていだだだ! ほっぺた引っ張らないでよ黒ポン――!」


騒がしいやりとりが行われてるなか、その喧騒の横で、エデンの目線は一人膝をついて息を整えるヴァルをじっと見つめている…ような気がした。

その後詰め寄る黒ポンに説明させ何とか納得させた。


「…なるほど。納得はできないけど納得はしたよ」


「いやどっちだよ」


びっと、黒ポンが不作法にエデンを指差した。


「結局、そいつを助けたのはいいが、協力はしないんじゃないのか? 」


「昨日会った時と、随分と態度が違うようだな。前はもっとびくびくしてなかったか?」


いつのまにか51話まで行きました。ここまで見てくれている人がいるかはわからないですがこれからもよろしくお願いします。

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