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ハルはどんびく

二度説明するのは面倒くさい、というヴァルの提案で、僕たちはデュポンが起きるのを待ってから一通りの説明を受けることになった。


当のデュポンは、あの惨劇の間ずっと「黒ポン」に入れ替わっていたため、そもそも何が起こったのか、自分たちが一度バラバラにされたことすら分かっていないようだった。


「てことで黒ポンでーす。それで、一体何事?」


欠伸をしながら起き上がった黒ポンが、暢気に首を傾げる。


「今からヴァルが説明するって」


「デュポンも起きたか。で、何か聞きたいことは?」


ヴァルの問いかけに、僕は真っ先に気になっていたことを口にした。


「……なんで、僕たちの体が治ってるの?」


「あぁ、そうだそうだ!! 私たちの体、ついさっきブチブチにされていたはずだぞーーっ!」


黒ポンも記憶はないなりに、自分の服が血塗れでボロボロなことには気づいているようだ。


「そうだな。まず、俺の治癒魔法は、もともとあるマニュアル通りに使ってるわけじゃない」


「マニュアル?」


「……簡単に言うと、魔法ってのはあらかじめ使い道が決まってるけど、ヴァルの場合は自己流ってことじゃないか?」


黒ポンは、デュポンが魔法を使っているのを内側から見ているためか、ある程度の知識があるらしい。


「自己流……まぁ、言ってしまえばそうだな。通常、治癒魔法ってのは傷口を塞ぐ程度の治療しかできない。けど俺の場合は、足りない体のパーツを一から『作って』再生している」


「?」


「つまり、君たちが壊されたであろう内臓や骨、欠損した部位を、俺が創造魔法で一から作り出したってことだ。俺自身の体が治ってるのも、同じ理屈だよ」


「「???」」


僕と黒ポンは顔を見合わせた。

言っている意味は言葉としては理解できる。けれど、それが魔法としてどれほど常軌を逸していることなのか、僕たちの理解の範疇を完全に超えていた。


「まぁ見てみろよ」


■■■


「マジじゃねぇか…」

黒ポンは間近でヴァルが心臓を作り出しているのを見ていた。


「できたよ」

ヴァルの手にはドクンドクンと動く心臓が握られていた。

僕たちはその光景を唖然と見ていた。


「え、今までなんで言わなかったの?」


「いや、こんな治癒魔法があったら多少の怪我でも大丈夫って絶対気が緩むだろ。とくに黒ポンなんて。」


「そんなこと……あるかも。」

あのキチ〇イは自分の怪我なんてどうでもなしに無茶な特攻をすることが多い。もしこの治癒魔法を知ればますます歯止めが利かなくなってしまうのは間違いない。


「大丈夫だって~心配しなくていいよ~」

お茶らけてるのが一瞬で分かるほどふざけた黒ポンが返事をする。


「はぁ…こいつは全く」」


「いたたたたたいごめんってヴァル!!」

いつの間にか黒ポンが後ろに立ち頭をぐりぐりとしていた。

ばたっと黒ポンはその場に倒れてしまった。


「とりあえずさっさとデュポンに戻るといいのだが…」

ヴァルはその場で呆れかえっていた。


……そういえば話さないといけないことが

おきた時にあったことがあまりに驚くことがありすぎて話すこと自体をすっかり忘れていた。


「あ、ヴァルに聞きたいことがあったんだ。」


「ん、なに?」

アンバーとの会話を思い出していく。


「あいつのこと知ってたの?」


「……あの悪魔の事?知らないよ。」


「別に僕に気を使わなくても大丈夫だよ。わかってるから。」

ヴァルの言い方に若干のためらいがあったのを感じた。


「気づいてたのか。あぁ…彼女は間違いなく君の知っている閻魔大王だ。それもあの頃のだ。何故いるのかはわからない。」


「……このままだと、どうなるの?」


「言いづらいが終わりだな。これからは少しでも逃げ命を長持ちさせていくことだけを考えていかなければならないな」


「……天使エデンを探してみるのは」

その名前を聞いた瞬間、ヴァルは驚いた顔で僕の顔をみた。

「なぜその名前を知っている!?」


「えええと…エリーゼさんから」


「そうか…なら分かるが。まぁいい、だが天使エデンか。たしかにあれなら閻魔大王を倒すことはできなくても追い出すことは可能かもしれない。」


「追い出す?」


「…え、お前わかっていったわけじゃないのかよ。」


「天使エデンには、死後の世界で起こった異常……つまり『バグ』を直す力が備わっている。それなら、本来ここにいるはずのない閻魔大王を倒すことは無理でも、元の場所に戻すことは可能かもしれない」


本来いる場所。それは恐らく、彼女が元いた「時代」のことだろう。


「そのエデンはどこに?」


「……場所は知ってる。だが、協力してくれるかは怪しいな。あいつはすでに半分虚無みたいなもんだからな。というか、まだ生きているのかすら怪しい」


「えぇ! そんな!」


「ま、会ってみないと分からん。どのみち、何とかしないと終わりだからな」


状況は未だ最悪だ。けれど、ヴァルの表情にはどこか前向きな色が混ざっていた。

しばらくすると、倒れていた黒ポンが目を覚ました。意識が戻った頃には、人格はデュポンへと切り替わっていた。


いざ出発しようとした、その時だ。周囲からドタドタと騒がしい足音が聞こえてきた。

音のする方を見ると、十人から二十人ほどの悪魔が、殺気立った様子でこちらに近づいてくる。

僕たちが囲まれたその中心から、ひょいっとギネーベが現れた。


「確か、新入りとギロチンの悪魔。……そしてもう一人は、知らないな」


「え!? なんでここに……」


「強い悪魔が現れたという情報を聞いてね。それより、よく無事だったな。ここは通ったはずだろう?その悪魔通ったところの近くにいた悪魔はほぼやられていた。確認した中でもすでに30人が死んでる。」


強い悪魔……おそらく閻魔大王のことだろう。まだギネーベは直接姿を見ていないから気づいていないのか。どのみち気づくのは時間問題。

もちろん、僕たちもズタズタに負けた。けれどヴァルの魔法によって傷は完治しているため、端から見れば無傷に見えてしまうだろう。


「これは……」

僕が言いかけたところで、ヴァルが強引に僕の口を塞いできた。


「……何とか命からがら逃げてきましたよ。もちろん、無事なんかじゃありません」


ヴァルはそう言うと、羽織っていた服を勢いよく開いた。

そこには、ボロボロに焼き焦げ、骨や内臓が剥き出しになった凄惨な傷跡が刻まれていた。


「なるほど……確かにかなりの深手だ。これなら納得だね」


ギネーベはその傷を見て納得し、去っていった。

僕は全く納得がいっていない。そして、さっき目覚めたばかりのデュポンは、何が起こっているのか一ミリも理解できずに呆然としていた。


ギネーベたちの姿が見えなくなり、声が届かない距離まで離れたところで、僕はヴァルを問い詰めた。


「おおおおい、なんだよそれ!!」

「ん? あ、これ?」


ヴァルが再び服を開いて傷口を見せる。

「咄嗟に体に穴を開けた」

「いや、なんでそんなことするんだよ!」


「仕方ないだろ。あの時のギネーベはかなり怪しんでた。こうでもしないと、説明がつかなかったからな」


すると、見る見るうちにヴァルの傷口が塞がっていく。

一分もしないうちに、その体は完全に元通りになった。


「バケモンかよ……」

「あの……そろそろ何が起こってるのか、説明してもらいたいんだけど」


デュポンが、少し不機嫌そうな顔で僕とヴァルを交互に見た。

「「あ」」


僕たちはそこから、デュポンに事の始まりをゆっくりと説明していった。

ずっと黒ポンの状態だった彼は、やはり実感が湧かないようで「そうなんだ?」とどこか他人事のように聞いていた。


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