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ハルとギロチン

結論から言うと、強襲作戦は失敗に終わった。

小部隊だと思って突撃したが、実際はただの囮だったようだ。僕たちは呆気なく蹂躙され、返り討ちにあった。


獲得ポイントは、わずか4点。ノルマには到底及ばない。


「あぁぁぁぁ、くそくそくそ!! なんで上手くいかないんだ!!」


僕の部隊のリーダーは、完全に余裕を失って焦燥しきっていた。


「リーダー……次がまだありますから」


「黙れ黙れ黙れ! くそッ!!」


落ち着かせようとした取り巻きを投げ飛ばし、リーダーは血走った目でこちらを睨みつける。


「新入りも大して役に立たねえし……!」


「…僕は今回の戦闘では囮役でした。あの状況で倒せと言うほうが無理があるんじゃ——」


「じゃあ、俺が悪いってのか! リーダーの俺に逆らうのか!?」

僕のもとにずかずかと近づいてくる。

初めてこの部隊に顔を合わせた時は、もう少し余裕があるように見えたのに。


思い出すのは、配属初日のことだ。


配属する部隊の部屋に向かい扉開けると4人の悪魔がいた。

…とりあえずは自己紹介からするか


「ハルといいます。よろしくお願いしま——」

ドンッ!

自己紹介の途中でリーダーが投げたコップが、僕の頭のすぐ右をかすめた。


「最初に心に刻んでおけ。俺が上でお前が下だ。囮、盾……すべて俺たちの指示に従ってもらう」

「…」


「返事ははいだろ。おいお前らやれ」

他の悪魔たちが立ち上がりぽきぽきと拳を鳴らしながら近づいてくる。


初対面での理不尽な洗礼。

けれど、僕はビビるよりも先に、懐かしさを感じていた。

生前——戦争反対を掲げるレジスタンスの部隊にいた頃、新入りへの「教育」として同じような経験をしたことがあったからだ。


観察した限り、取り巻きたちは僕より強くない。厄介なのはリーダー格の男だけだ。だが、ここで抵抗してもメリットはない。


……ここは、大人しくボコられておこう。隙を見つつエンマたちに連絡する手段を見つければいい。


オクスタシアさんに叩き込まれた魔力防御のおかげで、僕はほとんど無傷だった。痛がっているフリをしてその場をなんとかやり過ごす。

リーダーはあの時はかなり冷静な顔をしていたのに今では全く真逆の表情をしていた。

…あの時も結構気を貼ってたのかな

そう思うと少し可笑しくなり、つい口元が緩んでしまった。


それが、リーダーの逆鱗に触れた。


「……何がおかしいッ!」


襟元を掴み上げられ、拳が振り上げられる。こいつ、魔力の重さが他の連中とは違う。絶対に無傷では済まない。

顔面に魔力を集中させ、衝撃に備えたその瞬間。


——ガシッ!


振り下ろされるはずの拳が、空中で止まった。何者かが、リーダーの腕を掴んでいた。


「誰だ!」


リーダーが手を離し、背後を振り返る。

そこにいたのは、深くフードを被った見知らぬ悪魔と、その影に隠れるように立つ気弱そうな悪魔がいた。


「やめないか。そこにいるのが、噂に聞いた新人だろ?ひどいじゃないかそんなことをして。」


「他の部隊への干渉はルール違反だ。お前には関係ない!」


「そうか、まぁそうだな。……なら、『決闘』を申し込むよ」


「はぁ、決闘だと!?」

決闘…この要塞で唯一許されている他部隊との抗争方法。部隊同士で賭けるものを提示し互いに合意があれば、それをかけて戦うことができる。

…でもいきなりなんでそんなことを


「残念だがこっちに今そんなことをやっている余裕はないんでな。第一にいったい俺の部隊からなにが欲しいっていうんだ?」


「そこの君を、俺の部隊に迎え入れようと思ってね」


フードの悪魔は、事も無げに僕を指差した。


「え、僕……!?」


「そう、君だ。安心しなよ、今よりは悪い目には合わないと思うから」


「おい、勝手に話を進めるな! そもそも、お前の部隊は何を懸けるんだ?」


フードの悪魔はよく見えなかったがニヤリと笑ったような気がした。


「あぁ、そうだな。僕の部隊の全60ポイントを譲ってやろう」


「はぁ!? ヴァル、何言ってんの!?」


背後にいた悪魔が裏返った声で叫んだ。

それはそうだ。新入りの僕一人と、全ポイントが釣り合っているはずがない。負ければ即、死に直結する罰が下るのだ。


「大丈夫大丈夫!きっとなんとかなるから。それにいいの?このままだとあの子がひどい目に合うかもだけど」


「あーうるさいうるさい!!あぁもう!!どうしてこんな無責任なこと…」


「はいじゃあ決定!それでリーダーさんは受けるのかい?」


「……もちろん決闘は了承だ! 今すぐにでも始めようじゃないか!」


リーダーの目は血走っていた。棚ぼたのチャンスに、もはや理性など吹き飛んでいる。


「よし、決まりだ! やろう!」


「ちょっとヴァル、黙ってよ! ねえ!!」


揉め続ける二人を他所に、話はトントン拍子に進んでいった。


■■■


要塞の地下、殺風景な決闘場。

僕の元いた部隊のメンバーは全員、既にステージで殺気を放っている。


「俺の名前はヴァルだ。部隊メンバーは俺と、そこの気弱そうなデュポンだけだよ」


「……」


「あれ、どうした? 何か気になることでもあるかい?」


「いや……あの、ヴァルさん? なんで、ここにいるんですか?」


決闘が始まろうとしているのに、言い出しっぺのヴァルは観客席で悠々と構えていた。

ステージに立っているのは、今にも泣き出しそうな顔をしたデュポンただ一人。対する相手は、僕のいた部隊四人。


「大丈夫だよ。彼はちゃんと強いから」


「ええっ!?」


多勢に無勢。どう考えても無理がある。


「おいヴァル!! 絶対許さないからな!!」


観客席に向かってデュポンの怒鳴り声が響く。それに対してヴァルはわらいながら手を振る。

……本当に大丈夫なのかな。


「そう不安そうな顔をするな。最悪、私も参加する。」


『決闘開始まで、残り十秒——』


場内に無機質なアナウンスが響き渡る。

相手の部隊は、すでに獲物を狩る獣のような笑みを浮かべていた。


『——三、二、一。……開始!!』


その合図とともに、四人の悪魔が一斉に地を蹴った。デュポンを周囲から挟むような形で近づいてくる。


「うわあああああ!!」

デュポンはそれをどうこうするわけでもなく。ただそこにうずくまっていた。


「もらった!!」

その隙をつこうと各々が武器を取り出し一斉にとびかかる。


次の瞬間、襲い掛かった悪魔のうちの一人の腕が飛んだ。


「は?え、なんで!」

血しぶきが跳ねる。

それを見たメンバーは全員動きを止めた。

それとともに笑い声が聞こえてくる。とても、普通に生きていたら間違いなく聞けないだろう笑い声が。


「ぎろぎろぎろおおおおおお!!!」


さっきまでうずくまっていたデュポンからそんな笑い声が聞こえてくる。


「お前ら全員皆殺しぃいい!ぎろぎろぎろ!」


「ひぃいい誰だお前は」

さっきまでのおびえた表情は完全に消え去り、そこには狂気な笑みを浮かべるデュポンがいた。


「ギロチンカッタァァァアア」

デュポンがそう叫んだ瞬間、敵の周囲にギロチン出現する。ギロチンが即座に落ち刃の先にいた敵の腕、足、など体を切り刻んだ。


「ギロチン♪ギロチン♪ギロチン♪」

動けなくなったところにリズムよく歌いながらデュポンがスキップしながら近づく。


「や、やめてくれ」

敵もすっかりおびえきり、必死に懇願していた。

そんなことを聞くはずもなくデュポンの右手にはギロチンの刃が握られていた。


「ギロチーーーーーーン」

容赦なく刃を振り下ろす。

そこで舞台にゴングが鳴り響いた。


「「そこまで!!戦意喪失を確認したため決闘を終了する。」」


そのアナウンスが鳴りピタリとデュポンの手は止まった。

僕はその狂気的、光景に唖然と見ることしかできなかった。


なんかキチ○イが出てきましたね。個人的に結構お気に入りのキャラです。これからどう活躍してくれるのか楽しみ。

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