甘い月明かり
甘い月明かりの中、
ひとつ、孤独に浮かぶ島。
その中で咲いた、一輪の花。
むせ返るような夏。
「……ねえ、ユラちゃん」
「ん〜?」
「お祭り、行くよね? どこ行くの?」
「……まだ考えてないけど……?」
「え〜? じゃあさ、近くの川で祭りやるらしいし、一緒に行か……ない?」
「って言ったんだってば〜〜! ジュン、ちゃんと聞いてよ!!」
「それ何回目だよ。もう付き合っちゃえよ〜」
「どうやって告白すんの……怖すぎるんだけど……」
「暑いからくっつくなって、うわぁ……」
冗談っぽく言いながらも、どこか不安が混じっていた。
そんな俺の心を見透かしたように、ジュンが言った。
「マイゴ、ここまでちゃんとやってきただろ。ユラだって分かってるって」
「……うん!」
よく晴れた日。
太陽が力尽きたみたいに、地平線の向こうへ沈んでいく頃。
俺たちは祭りの中で、りんご飴を食べていた。
ユラの浴衣が、どこか清楚で、俺を惑わせる。
恥ずかしそうに顔を伏せて、りんご飴ばかりかじっていた。
「ユラちゃん……」
「まもなく灯籠流し体験が始まりまーす!
ご参加の方は、渡し舟にご乗船くださーい!」
祭りのあいだ、どこかぎこちない空気が流れていた。
「……行く?」
「う、うん……!」
高鳴る胸のまま、俺たちは小さな舟に乗った。
どれくらい進んだだろう。
初めてこの学校に来たときに見た――あの“孤独な島”にたどり着いた。
月明かりが島を照らし、
二人の間にあったぎこちなさを、少しだけほどいてくれた。
「願い事、書こっか」
「うん……いいよ」
灯籠に、それぞれの願いを書き込む。
叶いますようにと願いながら、一文字ずつ。
――どうか、告白がうまくいきますように。
長い時間のあと、灯籠に火が灯る。
二人でそっと支えながら――
「それでは、手を離してください!」
灯籠を放した。
高く、もっと高く、空へと昇っていく。
周りを見渡すと、幻想的な光景が広がっていた。
その景色を背に、俺は――今度こそ想いを伝えようと思った。
手にした灯籠の紐が、わずかに震えていた。
「なあ、ユラ。今回は……俺から行きたいんだ。
あの日、君が声をかけてくれなかったら、俺はここにいなかった。
君に出会ってから、退屈だった世界が、全部変わった。
ユラ……好きだ。
俺と、付き合ってくれ。」
その瞬間、灯籠の光の中に混ざるように、花火がひとつ弾けた。
夜は、いっそう甘く染まっていく。
ユラは勢いよく俺に抱きついて、言った。
「うん……私も、好き」
それは――
月明かりの下で咲いた、甘い夜だった。




