第45話「露見」
誰かと思えば、あの時の山賊の親分の声だ。
オレンジマーカー弾が直撃したアイツで間違いない。
『いいか! テメェは言われた通りにしてればいいんだよ──ほら、今ギルドにある分だけでも、』
うん。
このダミ声を聞きまちがえるはずもない。
そして、内容からして武器の紛失にようやく気付いたってとこか。
『だから、馬鹿をいうな! ギルドの物をそう簡単に動かせるわけがねーだろ! だいたい、全部なくなるほうがどうかしてるんだ。大方自分で売っぱらったな?!』
『馬鹿野郎!! 自分の商売道具まで売る奴がいるか!……ほら、言っただろ! なんか変な奴に急に襲われたって。きっとアイツが盗んでいったんだ!』
『変な奴ぅ? 緑の大亀に乗った二人組だったか?……アホか、そんな与太話につきあえるか!』
『て、てめえぇえ!』
おーおー。もめてるももめてる。
どうやら緑の大亀とは藤堂たちにことだろう。そして、カミラたちが予想した通り、敵さんは武器の補充に訪れていたというわけだ。
これでギルドマスターが賊と繋がっているのは間違いないとわかった。
『そもそも、二人で盗める量じゃないだろう。いい加減なことを抜かすとテメェの本国に全て報告するからな』
『ぐぬぅぅ』
──本国?
「なるほどな……」
やはりというかなんというか。
奴等、山賊というよりも、どっかの国の特殊部隊か──どーりで攻城兵器や武器の扱いに慣れていやがるわけだ。
「でなきゃ攻城兵器なんて代物用意できるわけないわな」
もともと置いてあっただけにしては数も多いし、状態も良かった。
おそらく分解して運び込んだのだろう。……まぁ目的はわからないけど、色々考えられる。
敵地の奥に物資集積所を設けて、すわッその時となれば後背から攻撃──。
あるいは、宣戦布告前に奇襲──いくらでも考えられる。
──しかし、残念だったな。
お前らの御自慢の攻城兵器も剣も槍も、ぜ~~~~んぶMPに変換して、Cレーションになったあと、ミールちゃんのウ〇コになっちまったよ、けけけ。
ごんっ!
「いだ!」
な、なにすんだよ?!
「変なこと考えてたー」
か、考えてねーよ。
「それよりも裏はとれた。やっぱりカミラの言う通り、あのギルドマスター、山賊と裏で通じてやがった」
しかも、武器の横流しもしてやがったか。
ゴブリンの剣とかも需要があるってカミラたちは言っていたが、こういうところに流れてたんだな。本来は粗鉄にすると聞いたんだが、なるほどなー。
「よし。あとはあの親分が逃げるところを捕まえればミッションコンプリートだ」
「えー。あのギルマスはー?」
んー。
「……奴は無理だ。しばらく泳がそう」
仮にギルドマスターをこの場で捕まえても知らぬ存ぜぬでしらを切られれば終わりだ。
だが、山賊はそうもいくまい。連中は捕まえれば即縛り首ってのが常識らしいしな。
「だから、山賊の親分だけでいい。その身柄を抑えた後はカミラに任せよう」
「わかったー」
よそ者で新人の藤堂が追及するよりも効果はあるだろう。
さて、そうなったら先話回りして──っと。
『わかったらさっさと仕事にかかれ! どうしても武器が必要というなら、明日、モンスター素材の余りをくれてやる』
『ぐ……。わ、わかった』
……お、そろそろ話も終わりかな。
どうやら、立場上ギルドマスターのほうが上らしい。
そのまますごすごと帰っていきそうな様子がマイクからも聞き取れたが、そこに──。
『んげっ!』
『うわっ、急にどうした、この馬鹿!』
『ち、ちげぇよ、なんか地面に──』
ッ!
『地面~……? なんだこのひも』
や、やべ!
どうやら山賊が躓き転んでしまったらしいが、その原因が浅く埋設した例のマイク用のコードだったのだ。
それに気づいたギルドマスターであったが、すぐに興味をうしなったらしい。
『ただのヒモじゃねーか。ドジな奴だぜ』
『なんでこんなとこにヒモがあんだよ!!』
『しるか! いいから、とっとと失せろ! お前がいると俺の立場が危うく──』
『待ちな』
そこに別の声が脇から入る。
『ん? どうした、ゴードン』
……ゴードン?
誰だ??
どうやら山賊との取引に同席していたものがいたらしい。
それまで全然気配を感じなかったことから、Bランクパーティ『鉄の顎』の盗賊職なのかもしれない。
『──妙な匂いがする』
『妙な匂い?……別にせんが』
『いや、する。……土を掘り返した匂いだ』
ギクッ!
『土ぃ……。コイツの匂いじゃねーのか』
くんくんと山賊の匂いを嗅いでいるらしい気配。
『テメェ!』
『くくく。たしかに臭ぇが──そういうことじゃねぇ』
ざくざくざく。
なぜか、マイクから響く足音が近い。
近い。近づいてく────ずるっ。
キュィイイイイーーーーーーーーーーーーン!
「うわっ」
「あぅぅ、みみいたいー」
突如雑音が入り、マイクから大音声が響く。
『なんだこの機械は?』
うっ!
これはさすがにバレたか?!
どうやら、地面に埋設したコードを手繰りマイクが発見されてしまったようだ。
マイクから男の声が明瞭に響くことから、それは明白だ。さすがにこれがマイクだとはわからないだろうが──。
『ヒモがついているな──む。これはまさか。……おい! 全員呼べ! 今すぐだ』
……チッ。
勘のいいやつだ! 気づきやがったな。
『なんだどうした?』
一方で要領を得ないのはギルドマスターばかり。
『わからん! わからんが、これは今日ここに設置されたもんだ。もしかしたら魔道具の類かも』
『はぁ? 魔道具?! なんの──』
『知らんから全員呼べと言ってる!』
『わ、わかった』
ほどなくして去っていくギルドマスターの足音とともに、すぐに取って返す足音が複数。
──ザザザッザザッ!!
『ゴードン、どうした?!』
『こんな夜更けになにごとよ、もぉぉ』
『ふわぁぁあ』
「ちっ。まずったな」
マイク越しにも集まる人の気配がありありとわかる。
さて、どうしたものか……。
この世界の技術基準でいえばマイクなんてわからないだろうし、放っておいても何とかなりそうだけど、いや、しかし……。
『何だか知らんが、妙な魔道具をみつけた。ヒモがついているぞ』
ゴードンは疑り深い性格らしい。
ギルドマスターと違って徹底的に調べる気のようだ。
それを茶化す、アホのマスターがいう。
『がははは、ただのゴミだろうさ。気になるなら引っ張ってみな──間抜けが先を握ってるかもよ』
そういったが最後──。
──ビンッ!!
「うぉ!」
ガタンッ! と音を立てて受信機が引き寄せられる。
な、なんてこった!
「まずい……!」
…………こ、これは!
向こうから引っ張られている?!
「ミ、ミール! 器材をおさえてろ!」
慌てて再びレシーバに耳を当てる藤堂であったが、
『ははっ! どうやら当たりだ。このひもがどこかに繋がってやがる!』
『なんだなんだ』
『ゴードンが何か見つけたらしい』
『ヒモを手繰れってよ!』
うげげ!
「ま、マズイ!!」
まずいまずいまずい!!
「トードー?」
「バレた!」
「むぅ?」
いや、バレたんだって!!
くっそー、苦労して埋設したのに、一瞬じゃねーか!
どうやら例のBランクパーティには、かなり手練れがいたらしい。
そいつに土の匂いからすぐにマイクの位置が看破されてしまったのだ。
そして、それだけでなく、マイクの設置元まで──。
「荷物はいいからいそいでここを────」
バッカーーーーーーーン!!




