第46話「見敵必殺」
「うきゃー!」
適当に荷物を集めていたミールが扉を吹っ飛ばす衝撃によって転がされる。
「はっはー! いたなネズミめぇ」『はっはー! いたなネズミめぇ』
さっきマイクから聞こえていた声。
ゴードンとかいうやつだ。昼間にも見た顔で、間違いなくBランクパーティ『鉄の顎』のメンバーだ。
「おっ? なんだこれで」『おっ? なんだこれ』
声が二重に聞こえる。
それもそのはず、ゴードンの手には土に汚れたマイクが握られていたからだ。コードを手繰ってここまで来たらしい──器用な奴!
「へぇ、面白い魔道具だな。離れた位置の声をひろえるのか」『へぇ、面白い魔道具だな。離れた位置の声をひろえるのか』
さらには一瞬で、どういったアイテムかを理解し、それを眼前で叩き折った。
バキィ!
ぱらぱらぱら。
「くだらねぇ、真似しやがってよぉ。それに知ってる顔だ」
ちぃ……!
「おまえ──例の新人だな」
「くっ」
やっぱり知ってやがったか、
知らぬ存ぜぬは通用しそうにない。
「ミール! 撤収だ!」
「え? うん!」
──ジャキンッ!
居場所がばれたが最後!
藤堂は覚悟をきめて銃を引き抜く!!
それもこの暗闇で超効果的な銃────M2シグナルピルトル!
「はっ、そんなチンケな武器でなにを──」
「こうするんだよ!」
──目をつぶれ、ミーーーーーール!!
ポンッ!!
叫ぶや否や、引き金を引く藤堂。
同時に、ナイフを構えて押しかかってきたゴードンとやらの鼻先に信号弾がさく裂!!
パーーーーーーーン!!
「ぐぁぁぁああ!」
「うわっ! あっつー!」
弾けた弾頭は白──!
戦場を明るく照らし出すM20ホワイトパラシュートフレア弾だ!!
本来上空に向けて発射するそいつが、水平発射されると、たちまちバチバチとマグネシウム由来の超光源を生み出した!
その至近距離で跳ねたマグネシウムの火花が服について肌を焼く。
「あじ! あじじじ!」
くっそー!
この服一張羅なのに──!
しかし、それを無視して、めをつぶったまま、一気に外へ駆け出した。
「捕まってろ!」
転がっていたミールを回収!
「うん!」
そして、小脇に抱えたまま空き家を出ると事前に見定めていた方向に一気にかける!。
「いける! いま、奴らは目がくらんでいるはずだ」
ん!
「な、なんだこれ──あじぃ!!」
「ぎゃぁぁああ! 目が目がー!!」
「ちくしょう! どこいきやがったー!」
よーしよしよし!!
どうやら、奴等の仲間もまともに照明弾を見つめてしまったらしい。
これでこっちが有利──。
「ははっ、目ん玉焼け潰れんなよ!」
「な、なろぉぉお! 光魔法だとぉぉお──あじな真似をぉ!」
そこに飛び込んできたのは、唯一戦闘に参加していなかった元Aランク──!
ギルドマスターだ!
「ちぃ!」
ドカーン! と素手で凄まじい一撃を空き家に叩き込むと一瞬で倒壊させる。
何ちゅうパワーだよ!
「かっ! やっぱりてめぇか、新人んんん」
なーにがやっぱりだ。
全然気づいてなかったくせに!!
さらには、
「あーーーーーーーーーーー! てめぇぇはぁぁあ!」
「ちっ。余計なのもいやがる」
そう。
山賊の親分までここに来やがったのだ。
こいつらは照明弾をみていないので、目がくらんでいない。
まずいな……!
「あん? 知り合いか?」
「なわけあるか!! コイツだ! コイツが装備を全部だめにしやがったんだ!」
「な、なにぃ……! じゃあ、例の緑の大亀っていうのはまさか──」
ちっ。
そうだよ。シャーマンのことだよ!!
ようやく合点がいったらしいギルドマスターは顔を歪めるも、一転して破顔する。
「な~るほど! エルフのガキを連れているからもしやと思っていたが──……こっちの上前を撥ねるコソ泥かと思いきや、俺様の商売の邪魔をした仇だったわけか!」
「ははっ。察しがいいねぇー」
たらりと冷や汗を流す藤堂。
強がっては見せたものの状況は最悪だ。
時間の経過とともに、周囲には野次馬がわらわらと集まるし、
そのうちに、視力を取り戻したBランクパーティも復帰し始めた。
くそっ!
ざわざわ
ざわざわざわ
「何事かしら?」
「どろぼうか?」
「わからないわ」
やべー。
人が集まる前に逃げるのが理想だったが、これじゃ無茶なこともできない。
それに、なんだかんだでこっちはよそ者──相手はギルドマスターとその愉快な一味だ。どっちの分が悪いかは明白だ。
「落ち着いてください! ただのコソ泥です! すぐに解決します!」
そう宣言するギルドマスター。
畜生、誰がコソ泥だ!
確かに空き家には侵入したけどさー。
「どうか落ち着いて! もう解決します。衛兵を呼ぶまでもありません!」
「ちっ。人身売買に横領やろうにいわれたくねー!」
何が衛兵を呼ぶまでもない、だ。
呼ばれちゃ困るのはお前だろうが!!
なにせ生き証人の山賊がそこにいやがるからな────はぁ。
「しゃーねぇ」
「ん?」
この状況下で諦めきった藤堂は、素直に両手を上げる。
それを不思議そうにみるミール。
「そうだ! それでいい──降参すれば命だけは……あん? 何だその手は」
「決まってんだろ」
両手を上げて、降参。
同時ミールを下したかに見えた藤堂であったが、その手は降参のそれではなかった。
というか、降参などするわけがない。
降参とは────戦力を失い、闘いが成立しないときのみにするものだ!
そして、藤堂が戦力を失ったかだと???
「はっ! ただ遠慮していただけだよ!!」
──いでよ、シャーマン!!
「むっ! 魔力の気配────下がれ、マスター!」
「チッ!」
素早く動いたのはBランクパーティのメンバーだ。
マスターを背後に庇うと、魔法使い数名が全面にでて、ゴードンと呼ばれたあの手練れが全体の指揮を執る。
カっ!!
その魔力の気配は、一瞬にして権限!!
稲光のような光を帯びたかと思うと、そこから圧倒的な存在感がそこに現れる。
そう!!
そこに現出せしは────!!
「あ、あれは!」
「ひ、昼間に町の外でみた────……」
M4シャーマンである!!




