表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街の本屋の泥棒猫  作者: 蒼碧
Episode:泥棒猫

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/141

Episode:泥棒猫22

原案:クズハ  見守り:蒼風 雨静  文;碧 銀魚

 翌日。

 クロはこの前のパレード時にリアと待ち合わせていた、通りの一角にいた。

 恰好はいつもの黒装束ではなく、町娘スタイルだ。

「お待たせ~」

 しばらく待っていると、リアがやってきた。

 こちらもいつもとは違い、その辺の町娘のような私服姿だ。

 だが、その手には、大きな包みを二つほど持っている。

「何だ?その荷物。」

 クロが尋ねると、リアはその包みを少しだけ解いた。

 見えたのは、剣の一部だ。

「城から拝借してきた。これを見せて、武器の受け子のふりして潜入するわよ。」

「マジかよ。」

 クロはまた、露骨に嫌そうな顔をした。

「あんたでも忍び込むのが難しかったんでしょ?だったら、偽装して正面切るしかないでしょ。」

「そりゃ、そうだけどさぁ……」

「そうとわかれば、さっさと案内しなさい。」

「……嫌な予感しかしねぇ。」

 クロはぼやきながら道案内を始めた。

 その光景は、普通の町娘友達二人組にしか見えなかった。


 西の貧民街に入ると、リアが周りをキョロキョロと見渡し始めた。

「どうした?」

 クロが声を潜めて尋ねた。

「あたしも貧民街にはあんまり来たことがないの。」

「じゃあ、あんまり見回すな。ただ通るだけなら大丈夫だが、勘に障ることをすると、厄介ごとになる。」

「……わかったわ。」

 こういう時、リアは聞き分けがいい。

 下手なことをしないから、リーンよりよっぽど扱いやすい。

 そうこうしているうちに、貧民街の最奥まで来た。

「あれだ。」

 クロが視線で示した。

 そこには、大きいがボロボロの屋敷がある。

「壊れかけの屋敷にしか見えないわね。」

「外側はな。多分、それも含めて偽装だろう。」

「あえて、外観は手入れしてないってことね。」

 リアの理解は早い。

「で、どういう手筈で行くんだ?」

 クロが尋ねると、リアは正面の入口を指さした。

「さっきも言ったでしょ?武器を届けにきた受け子のふりをして、中に入って、銃を確認するの。それさえ確認できれば、すぐに押さえられるよう、憲兵達には待機してもらってるから。」

「そんなに大義名分が大事かねぇ。」

 政治に疎いクロには、よくわからない決まりだ。

「あっ、それと訊きたいことがあるんだけど。あんた、火を起こすのは得意?」

 リアはそう言って、火打石を出してきた。

「火?まぁ、起こすのは慣れてるけど。」

 貧民街で暮らすクロにとっては、当たり前の技術だ。

「じゃあ、これ渡しておくわ。あたし、そんなに素早く起こせないのよ。」

「はぁ……」

 何かよくわからなかったが、火打石を渡された。

「じゃあ、いくわよ。」

 リアが先陣を切って、屋敷に向かって歩き始める。

 クロが渋々その後をついていく。

 屋敷の門を抜けて、リアが入口をノックすると、わずかに入口が開いた。

「これを持ってくるように言われたんだけど、ここであってる?」

 リアは全く臆することなく、そう言った。

 ついでに、包みをわずかに解いて、中の剣を見せる。

「……今日、入荷があるとは聞いていないが。」

 中から男の声が聞こえてきた。

「じゃあ、確認してよ。っていうか、ここだと目立つんだけど。」

 リアがそう言うと、男は一瞬逡巡したようだが、入口のドアを開け放った。

「ありがと。」

 リアはニッコリ笑うと、中へ入っていく。その後ろに、げんなりした顔のクロが続く。

 入口のエントランスには、この前クロが見た時と同じく、大小様々な箱が並んでいる。

「ここで待っていろ。」

 男がそう言って、奥へ入っていった。

 エントランスには、他に二人見張りが立っているが、リアとクロからは結構離れた位置にいる。

「今ね。」

 リアが短く言った。

「何が?」

 クロが尋ねる間もなく、リアは突然眼前にあった細長い箱に手をかけた。

 そして、その蓋を強引に開ける。

「やっぱり。」

 そこには、この前暗殺計画に使われたものと同じ、銃が入っていた。

「リア!何やってんだよ、おまえ!」

 クロが慌てて駆け寄った時には、既に見張りに気付かれていた。

「おい、おまえ!何やってんだ!」

 見張りが二人ともこちらへ駆け寄ってくる。

 だが、リアは構わずさらに箱を物色し続けている。

「銃があるってことは……多分これ!」

 リアは箱の中でも密閉性が高いものを強引に引っ繰り返した。すると、中から黒い粉が出てきた。

「クロ公!さっきの火打石で、これに火を点けて!」

「はっ!?」

「早く!」

 リアは別の箱から、緩衝材に使われていたおが屑を取り出し、黒い粉の上にぶちまけた。

 クロはわけがわからなかったが、こうなったら言われた通りにするしかない。

 素早く火打石を取り出すと、一発でおが屑に火を点けた。

「離れて!」

「何なんだよ、もう!」

 リアに促され、クロは壁の端まで逃げた。

 その時だった。

 ドォン!

 爆音と共に、辺りが白煙に包まれた。

「うわっ!」

 クロは咄嗟に目を瞑ったが、そこをリアに引っ張られ、一気に入口まで引きずり出された。

「おいこら!どうなってんだよ!」

 クロが喚くと、

「あれは銃の発砲用の火薬。銃の取引してるなら、一緒にあると思ったのよ。だから、煙幕代わりに使わせてもらったわ。」

 リアが冷静に返してきた。

「そうじゃなくて!調べるだけじゃなかったのかよ!」

「そんなこと言ってる場合じゃないわよ。」

 見れば、既に入口の周りには数人の男達が集まってきていた。皆、手には剣や棍棒などの武器を持っている。

「マジかよ……」

「こうなったら、覚悟を決めて!」

「全部おまえのせいだろうが!」

 クロはいつも常備している短刀を取り出した。

 だが、リアを守りながら、この人数を相手できるかは、微妙なところだ。

「リア、とりあえず、手近の奴を何人か斬り倒すから、その隙に走って逃げろ。」

「何言ってんの。あたしもちゃんと戦うわよ。」

「はっ?」

 次の瞬間だった。

 リアは持ってきていた剣を包みから取り出すと、直近の男二人の足を薙ぎ払い、見事に倒してしまった。

「えっ……?」

 クロは思わず、呆然とリアを見つめてしまった。

「なに驚いてんのよ。これでも一応、王族の端くれなんだから、剣術の心得くらいはあるわよ。」

 確かに、リアは戦えないとは一言も言っていない。

 クロが勝手に思い込んでいただけだ。

「ったく、妙に無茶すると思ったぜ。」

 クロは一言ぼやくと、すぐに左手の男の足に短剣を突き立てた。

「ぎゃ!」

 男はそのまま倒れ込み、その場でのたうち回る。

 クロは目配せで左手の敵を掃討することをリアに伝えた。

 リアは一瞬で理解したらしく、小さく頷くと、すぐに右手の敵を薙ぎ払う。

 向かってきた見張りは十人ほどいたが、全員が爆発音を聞いて、バラバラにやってきた為、戦闘力に勝るクロとリアに各個撃破され、あっという間に全員が地面を舐める羽目になった。

「何してやがる!纏まって囲め!」

 不意に頭上から男の怒鳴り声が聞こえてきた。

 見れば、この前クロの侵入に気付いたあの男が、二階のバルコニーから指示を飛ばしていた。

「やっぱり、あいつが親玉か。」

 クロはぼやきながら、リアのほうへ駆け寄る。

「リア、どうする?流石に束になって囲まれたら、きついぞ。」

「大丈夫。そろそろ来るはずだから。」

 リアはニヤリと笑った。

 その時だった。

「全員、突撃―!」

 突然、けたたましい号令がかかったかと思うと、路地裏から何人もの憲兵が飛び出し、門から雪崩れ込んできた。

「よし!じゃあ、逃げるわよ!」

 リアがクロの手を引っ張り、憲兵と入れ違いに外へ飛び出した。

 憲兵はリアとクロには目もくれず、屋敷に突入し、その周りで倒れている男達を取り押さえていく。

 斯くして、屋敷は一気に制圧され、リアとクロは逃げ遂せたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ