Episode:泥棒猫23
原案:クズハ 見守り:蒼風 雨静 文;碧 銀魚
屋敷から逃走したリアとクロは、そのまま貧民街を抜け、中央の大通りまでやってきた。
クロが背後を確認したが、追ってのような者は来ていない。
リアもそれを確認して、ようやく立ち止まった。
「とりあえず、あそこで休憩!」
リアが指さしたのは、以前リーンと一緒に来たカフェだった。
「金はねぇぞ。」
「それくらい、あたしが出すわよ。」
そのまま、二人はカフェに入り、席に着いた。
「おいこら、リア。」
席に着くなり、クロがドスを利かせた声を出した。
「なに?」
「なに、じゃねぇ。おまえ、最初から騒ぎ起こして、憲兵に踏み込ませるつもりだっただろ?」
「ん~?何のこと?」
リアが素っ惚けている。
「惚けんな。銃に使う火薬が置いてあることを読んで、あたしに火打石を渡したんだろ。」
クロはリアのほうへ、火打石を放り投げた。
「だってぇ、あれが一番手っ取り早かったんだもん。最初から騒ぎを起こすって言ったら、絶対に来てくれなかったでしょ?」
「当たり前だ!」
クロは怒鳴った。
「こんな面倒事、あたしもさっさと終わらせたかったのよ。第一、あたしが後処理を担当することになったのは、あんたが憲兵達に、あたしに指示を請えとか言ったからなんだからね。」
「だからって、こんな危ねぇことに巻き込むんじゃねぇ!」
「あんたなら、多少の荒事は大丈夫だったでしょ?」
「大丈夫だったけど!」
クロはそこで溜息をついた。
「とりあえず、これで武器の出所は押さえたし、うまくすれば暗殺計画を企てた輩まで辿り着けるでしょ。これであたしも御役御免だわ。」
「そうかい。じゃあ、これであたしも巻き込まれることはないわけだな。」
リアはニッコリと笑った。
「また、何かあったらお願い。」
「ふざけんな!」
「いいじゃん。あんたほど便利な人材、他にいないのよ。」
「嫌だ!絶対嫌だ!」
こんな死ぬような目に、日常茶飯事で巻き込まれていたら、文字通り身がもたない。
「それより、褒美の手配、忘れんなよ。」
クロが念押しすると、リアはニコニコ顔のまま頷いた。
「わかってるわよ。」
「ったく。」
その後、しばらくカフェで歓談した後、クロはリアと別れた。
次は二日後にガゼボでお茶会だ。
そこで、今回の顛末を聞く算段となった。
「くっそー、リアの野郎。」
クロはぶつくさ言いながら、塒へ向かって歩いていた。
その時だった。
「あれぇ、奇遇ですねぇ。」
急に後ろから声をかけられ、クロは思わず跳び退いた。
そこにいたのは、吟遊詩人のルミだった。
「お、おまえか。驚かすんじゃねぇ。」
普段、クロが後ろを取られることなど、まずないのだが、このルミはどうにも気配がない。
「ごめんなさいぃ。ところでぇ、こんなところで何をしてたんですかぁ?」
どうも、また話のネタを探しているらしい。
「別に。ちょっと荒事に巻き込まれて、その帰りだ。」
「ああ、西の貧民街の屋敷で騒ぎが起こってましたねぇ。それですかぁ?」
クロは眉を顰めた。
こういうところは、妙に鋭い。
「さぁな。」
一応、政治絡みのことなので、しらばっくれておいた。
「そうですかぁ。あそこに関わってしまいましたかぁ。」
ルミが妙に引っかかる言い方をしてきた。
「何だ?あそこに関わると、何かあるのか?」
「いえ。」
ルミは短くそう言っただけだった。
「まぁ、また面白そうなことがあったらぁ、教えて下さいぃ。」
「あ?ああ。」
それだけ言って、ルミは足音もなく歩き去っていった。
「何なんだ、あいつ?」
クロは多少気にかかったが、そのまま帰路に就いた。




