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街の本屋の泥棒猫  作者: 蒼碧
Episode:泥棒猫

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72/146

Episode:泥棒猫23

原案:クズハ  見守り:蒼風 雨静  文;碧 銀魚

 屋敷から逃走したリアとクロは、そのまま貧民街を抜け、中央の大通りまでやってきた。

 クロが背後を確認したが、追ってのような者は来ていない。

 リアもそれを確認して、ようやく立ち止まった。

「とりあえず、あそこで休憩!」

 リアが指さしたのは、以前リーンと一緒に来たカフェだった。

「金はねぇぞ。」

「それくらい、あたしが出すわよ。」

 そのまま、二人はカフェに入り、席に着いた。

「おいこら、リア。」

 席に着くなり、クロがドスを利かせた声を出した。

「なに?」

「なに、じゃねぇ。おまえ、最初から騒ぎ起こして、憲兵に踏み込ませるつもりだっただろ?」

「ん~?何のこと?」

 リアが素っ惚けている。

「惚けんな。銃に使う火薬が置いてあることを読んで、あたしに火打石を渡したんだろ。」

 クロはリアのほうへ、火打石を放り投げた。

「だってぇ、あれが一番手っ取り早かったんだもん。最初から騒ぎを起こすって言ったら、絶対に来てくれなかったでしょ?」

「当たり前だ!」

 クロは怒鳴った。

「こんな面倒事、あたしもさっさと終わらせたかったのよ。第一、あたしが後処理を担当することになったのは、あんたが憲兵達に、あたしに指示を請えとか言ったからなんだからね。」

「だからって、こんな危ねぇことに巻き込むんじゃねぇ!」

「あんたなら、多少の荒事は大丈夫だったでしょ?」

「大丈夫だったけど!」

 クロはそこで溜息をついた。

「とりあえず、これで武器の出所は押さえたし、うまくすれば暗殺計画を企てた輩まで辿り着けるでしょ。これであたしも御役御免だわ。」

「そうかい。じゃあ、これであたしも巻き込まれることはないわけだな。」

 リアはニッコリと笑った。

「また、何かあったらお願い。」

「ふざけんな!」

「いいじゃん。あんたほど便利な人材、他にいないのよ。」

「嫌だ!絶対嫌だ!」

 こんな死ぬような目に、日常茶飯事で巻き込まれていたら、文字通り身がもたない。

「それより、褒美の手配、忘れんなよ。」

 クロが念押しすると、リアはニコニコ顔のまま頷いた。

「わかってるわよ。」

「ったく。」


 その後、しばらくカフェで歓談した後、クロはリアと別れた。

 次は二日後にガゼボでお茶会だ。

 そこで、今回の顛末を聞く算段となった。

「くっそー、リアの野郎。」

 クロはぶつくさ言いながら、塒へ向かって歩いていた。

 その時だった。

「あれぇ、奇遇ですねぇ。」

 急に後ろから声をかけられ、クロは思わず跳び退いた。

 そこにいたのは、吟遊詩人のルミだった。

「お、おまえか。驚かすんじゃねぇ。」

 普段、クロが後ろを取られることなど、まずないのだが、このルミはどうにも気配がない。

「ごめんなさいぃ。ところでぇ、こんなところで何をしてたんですかぁ?」

 どうも、また話のネタを探しているらしい。

「別に。ちょっと荒事に巻き込まれて、その帰りだ。」

「ああ、西の貧民街の屋敷で騒ぎが起こってましたねぇ。それですかぁ?」

 クロは眉を顰めた。

 こういうところは、妙に鋭い。

「さぁな。」

 一応、政治絡みのことなので、しらばっくれておいた。

「そうですかぁ。あそこに関わってしまいましたかぁ。」

 ルミが妙に引っかかる言い方をしてきた。

「何だ?あそこに関わると、何かあるのか?」

「いえ。」

 ルミは短くそう言っただけだった。

「まぁ、また面白そうなことがあったらぁ、教えて下さいぃ。」

「あ?ああ。」

 それだけ言って、ルミは足音もなく歩き去っていった。

「何なんだ、あいつ?」

 クロは多少気にかかったが、そのまま帰路に就いた。

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