Episode:泥棒猫21
原案:クズハ 見守り:蒼風 雨静 文;碧 銀魚
西の貧民街の屋敷潜入の翌日、クロは状況の報告の為、ガゼボにやってきた。
今日はビアとリアがやってきている。
「リーンがお茶会レアキャラになりつつあるな。」
クロがお茶を啜りながらつぶやいた。
「まぁ、今しばらくは仕方ないわ。」
リアがクロを宥めた。
「私達では役不足かもしれませんが、ご容赦下さい。」
「いや、一国の姫様に役不足とか言ったら、あたし首が飛ぶんだけど。」
クロにとっては冗談にならない。
「まぁ、そんなに畏まる必要もありませんよ。この前のお話の件もありますし、気軽に接して頂いて構いません。」
「ああ、侍女になるって話?」
「えっ!?ちょっと何その話!」
途端にリアが食いついてきた。
「貧民街を解消出来たら、クロちゃんに侍女になってもらうことになったのです。大体、一年後を目途に考えています。」
「そういうこと。」
クロは素っ気なく言ったが、リアはクロとビアの顔を交互に見続けている。
「いや、だって、あんたは、その……」
その様子を見て、ビアが少しだけ意地の悪い笑みを浮かべた。
「クロちゃん、もし私の侍女をするのを飽きたら、リーン様のお妾になってもいいですよ。」
「なっ!?」
「ビア様!?」
流石に二人して度肝を抜かれた。
「私が后になったとしても、男子に恵まれるかはわかりません。ですが、私とて、誰でもリーン様の妾に……というのは、流石に嫌なのです。でも、クロちゃんなら、許せるかと思うので。」
「いや、ビア様!血筋ってものがあるでしょう!?」
リアがそう言うと、ビアはスッと目を閉じた。
「その血筋にこだわり過ぎて、ヴェサルは滅ぼうとしているのです。」
思わずリアは黙ってしまった。
血筋を守る為に近親婚を繰り返した結果、ヴェサルは健康な子供が産まれなくなり、ビア自身も二人の兄を始め、親戚の多くを子供のうちに亡くしている。
その悲劇性をよく理解した彼女の言葉は重かった。
「まぁ……気が向いたら、そうするわ。」
クロはビアに合わせてニヤリと笑って言った。
その様は、宛ら悪巧みをしている悪党のようであった。
「あ~、凄い恐いこと聞いちゃった。やだやだやだ……」
リアは大袈裟に天を仰いで見せた。
「で、いい加減本題の話をしていいか?」
クロが呆れた調子で言った。
すると、リアが居住まいを正した。
「そうだったわ。で、どうだった?」
「とりあえず、西の貧民街にある大きな屋敷で、武器の売買を秘密裏にしてるのは間違いない。外側は廃墟にしか見えないようになってるが、中はしっかり手入れしてあった。で、武器が入った木箱が、びっしり置いてあったよ。」
クロの説明を聞いて、リアが考え込み始めた。
「その中に、銃はあった?」
「そこまでは確認できなかった。剣と盾はいくつか見えたけどな。」
「それを確認してきてよ!」
リアが大袈裟に溜息をついて見せた。
「無茶言うな!中はガチガチに警備されてて、逃げるだけで精一杯だったんだよ。」
「あんたが、逃げるのが精一杯なレベル?」
「そう。あれは普通じゃねぇよ。」
常日頃から修羅場に慣れているクロを以てして、そう言わせるということは、相当に物騒だということである。
それを察して、リアは溜息をついた。
「でも、せめて銃を確認できないと、憲兵に調べさせることができない。名目上空き家とはいえ、差し押さえる大義名分は必要よ。ましてや、貧民街の中となると……」
「まぁ、城の人間への目は厳しい場所だよな。」
クロは事も無げに言った。
「……やはり、貧民街はこのままにしておくわけにはいきませんね。」
不意に、ビアが話に入ってきた。
「そうだな。あたし達はあたし達なりに、自治管理はしてるけど、限界はある。そこを突いて、こういうことをする輩は、一定数いるんだよ。」
「そうですね。とりあえず、今回のことは早急に片付けましょう。但し、クロちゃんはこれ以上危ないことはしないで下さい。」
ビアはジロリとリアのほうを見た。
「わかりましたね、リアさん?クロちゃんを危ない目に遭わせてはいけませんよ。」
どうやら、今回のことがリアの依頼だということは、話してあるらしい。
「わ、わかりました。」
リアは叱られた子供ように、シュンとしてしまった。
その後、夕刻までお茶会は続いた。
その別れ際である。
「ちょっと、クロ公。」
ビアが席を外した隙に、リアがクロを捕まえた。
「なんだよ。」
「西の貧民街の屋敷の件だけど、明日時間ある?」
「はぁ?ビアに関わるなって言われただろ?」
クロが反論すると、リアはその場で頭を下げた。
「どうしても、証拠の銃を押さえなきゃならないの!そうじゃないと、憲兵を動かせないらしいのよ。ちょっと強引だけど、今回はあたしも同行するから、お願い!」
「えー?あたしまでビアに叱られるじゃねぇか。」
「あんた以外に、頼れないのよ!証拠さえ掴めば、あとは憲兵が処理してくれると思うから!」
「ったくよぉ。」
クロは不承不承頷いた。




