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67. 第3章その31 水もしたたる

 将は、その日家に帰ると。

「疲れた。」

 と一言だけ言い残し、部屋で寝てしまった。

 次の日の朝、朝ごはんを食べながら色々聞かれたが、生返事をしてそのまま湖に出かけて行った。


「ふふっ、ちゃんと来たわね。

 えらいわぁ。」

 サブリナは将を見つけて嬉しそうだ。

「ご褒美に、約束通りこれをあげる。」

 何やら怪しげな薬瓶を将に渡した。

「それは、エルフに伝わる変装のための秘薬よ。

 ショウ君用に調整済みだから試してみなさい。」


「えっ、ちょっと怖い。」

「怖くないわよ。」

 と、サブリナが怖い顔で睨みつけるので、泣く泣く飲み干す。

「あ、意外とスッとして美味しいかも。」

 確かに、爽やかなのど越しで、頭の毛根までスッとする感じがした。


「帽子を取って、自分の姿をこの手鏡で見てごらんなさいな。

 乙女の必需品を貸してあげるわ。」

 そう言って、サブリナは手鏡を将に手渡す。

 将は、鏡をのぞくと将の髪の色はサブリナと同じ、限りなく銀に近いプラチナブロンドの色合いに変化し、眼の色も若干薄い色に変化していた。

「うーん、瞳の色も変化させるつもりだったのだけど、まあ十分ね。

 この変化は1年近くは持つはずよ。

 また必要になったらいつでもお姉さんに言ってね。」

 将は、これで暑苦しい帽子を、年中被らなくて済むと思うと確かにありがたかった。

「ありがとうございます。」

「素直で良いわぁ、チューしちゃおうかしら。」

「いえ、いいです。」

「そうなのぉ、遠慮しなくてもいいのに。

 じゃあ、しょうがないから訓練が上手くいったらご褒美にしてあげるわね。

 今日は、その腰についている物での訓練よ。

 腰についている物っていっても"エッチなもの"の方じゃないわよ。」

(誰も誤解しませんから。)

 将は、心の底から“うざい”と思いながらも剣を抜いて準備をする。


「そうそう、そっちの剣の訓練を今日はしちゃおうかなーって思ってます。

 剣を持っているという事は、ガジール師に剣の型も習ったのよね。

 ちょっと私に打ち込んできてみて。」

 サブリナは杖をかまえて、打ち込みを待つ。

 将は、習っていた型を遠慮なくサブリナに打ち込んだ。

「うん、まあまあかな。

 でもまだまだ腕だけで剣を扱っている感じね。

 もっと、こう腰を使わないと。」

 そう言って、将の腰にベタベタ触ってくる。


「すいません、どうすればいいか良くわからないのですが。」

「わからない?」

「はい。」

 すると、サブリナはスッと将に近づき抱きついた。

「チョッ、なんですか。」

 と将が言うか、言わないかの刹那、湖に投げ飛ばされた。


“ドバッシャーーーン”


 豪快な水しぶきとともに、湖に一度沈んでから、立ち上がる。

「なにするんですかー、いきなり。」

 将は激しく抗議すると。

「わからない子は、体で覚えて貰わないとね。

 そこで、さっきと同じ動きをしてみなさい。」

「えっ。」

「何度も言わせるなボケェ、さっきと同じ打ち込みしてみろって言ってんだよ。」

 サブリナからの激が飛ぶ。

 将は、体の半分ほどが水に浸かった状態で打ち込みをする。

 足元は滑るし、水の抵抗があって上手く剣を振る事ができなかった。


「どう、上手く剣を扱えないでしょ。

 あなた、剣を振る時に腕力に気を取られ過ぎなのよ。

 下半身が大事なのよ。」

 そう言いながら、サブリナは剣とは関係なさそうな前後に腰を動かしている。


「まずは、そこで陸地と同じぐらいスムーズに剣が振れるまで練習よ。」


 冷たい水の中で、朝から昼まで型を振り続けると。

「はーい、いいわよぉ。

 ちょっと休憩しなさーい。」

 サブリナは、たき火を作ってくれており、そこで冷えた体を暖めた。

「ほんとうは、体をくっつけて暖めあった方が良いと思うんだけど、まだお昼だしね。」

(いや、別に夜でもお断りです。)

 体をガタガタ震わせながら、サブリナの戯言を聞き流す。


「ミスリルの剣を持っているって事は、魔力を付与して使ってきたんでしょうね。

 そうすれば、弱い魔物だったら剣術として未熟でも大抵なんとか倒せるでしょうけど、強力な魔物が相手だと通用しないわ。

 ちゃんと剣術のレベルを上げて、その上のプラスアルファとして魔力を使わなきゃね。」

 と、まともなアドバイスもしてくれた。


「まずは基礎固めよ。」

 サブリナは、やっと暖まった将の体に抱きつくと、再度湖に放り投げるのだった。


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