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66. 第3章その30 決定しました

「それで、あなたのお名前は?」

 サブリナ(以降、自称だがサブリナで統一)が将にたずねる。

 将は呆然としていて答えない。

「ひとが名乗ったのに答えんのか、ぼけがぁ。」

 声が一オクターブ下がり、ドスの聞いた脅しが入った。


「あ、ショウ・クガと申します。

 ショウと呼んでください。」

 将は簡単に屈してフルネームで答える。

「そうよぉ、すなおに答えればお姉さんも怒らないのにぃ。

 ショウ君か、良い名前ね。

 ところで、さっきの魔法はどうやって覚えたの?」

「えーと、図書館の本を読んで…。」

「まさか…、あの本を読めたの?」

「は、はい。」


 サブリナは、チラッと将を見て指に視線が止まる。

「ん…、ショウ君その指輪見せて。」

 将は、おずおずと指を差し出した。

「これは、カズィールガマナサン師の紋章。

 あなたこれをどこで手に入れたの?」


「カジール先生は私の師匠で、彼の住み家から旅立つときに貰いました。」


 サブリナは、何か小声でブツブツ言っていたが、しばらくすると。

「うん、わかったわ。

 あなたは、私の弟弟子って事になるわね。

 これからは、“お姉様”と呼びなさい。」

「えっ…。」

「“お・ね・え・さ・ま”」

「はい、お姉様」

「よろしい。

 じゃあ、早速さっきのヘッポコ魔法を矯正するわよ。

 あなた、なぜさっき樹に触れるまで、魔法が発動しなかったかわかる?」


 なぜか、なし崩し的に指導が始まった。


「いえ、わかりません。」

「ごら、なめとんのか、考えてから答えんかぁ。」

 また、兄貴声に変化。

「ひっ、ご、ごめんなさい。

 えーと…、イメージが十分でなかったからでしょうか?」

「そうねぇ、それもあるかも。

 でも、お姉さんが見たところ、どうもイメージと呪文がマッチしてないみたい。

 つまり、あなたがイメージしてやろうとしている事のトリガーとして“ウルティメイトフリーズ”がふさわしい言葉でなかった様な感じを受けたわ。」

 確かに、将は“凍らす”というより分子運動を停止させるイメージを持っていて、頭に浮かんだ単語は“絶対零度”だった。

 もちろん、量子力学的に分子運動が0にならない事は承知していたが。


「だから、あなたの想いを言霊にするのよ。

 お姉さん良い事言ってるー、ウフ。」

 言動はともかく、確かに納得できた。


 将は、イメージを固めて3mほど離れた樹木をターゲットに魔法を放つ。

「アブソリュートゼロ」

 “キーン”という音とともに幹の一部が完璧に凍りつく。

 先ほどと同じように近づいて、その部分を叩くとあっさり砕け散った。


「うまい、うまい。

 そうよ、やればできるじゃないのぉ。

 本当はイメージがきちんとできれば、呪文なんていらないのよぉ。

 魔法発現のトリガーとして言葉を使うけど、言葉が魔法を生むのじゃなくて、イメージを具現化するサポートとして言葉があるの。

 だから、呪文にとらわれすぎちゃうのはダメよ。」

 そのアドバイスは、素直に役にたつと思った。

「ありがとうございます。」

「お姉様は?」

「ありがとうございます、お姉様。」

「よろしい、褒めてあげるわぁ。」

 ものすごい膂力で頭を帽子の上から撫でようとすると、そのひょうしに帽子が外れてしまった。

 風に、将の黒髪がなびく。


「あ、あなた、その髪の色。」

 将は、またその状況に固まってしまった。

「いえ、あの、これは。」

「セクシー!!」

「えっ…。」

「とってもセクシーよぉ、黒髪、萌えるわぁ。

 ちょっと撫でさせて。

 あー、しかもとってもシルキー。」


「えーと、それだけですか?」

「ん? なにかあるの?」

「いえ、特によろしければ良いのですが。」

「あぁ、髪色と属性依存に関して気にしてるのねぇ。

 どうでもいいじゃない、私だって闇属性以外全部使えるわよ。」

「へーえ、えっ?」

「まあ、でも確かに珍しいから、街中では気にした方が良いかもね。

 明日またここに来なさいな、良いものあげるわ。」

「えーと、明日も来ないとだめでしょうか?」


「だめに決まってるだろうが、お約束だ、お約束。

 これからお前に毛が生えるぐらいまでは鍛えてやろうって言ってんだよ。」

 はい、脅しはいりましたー。

「ありがとうございます、よろこんで、お姉様。」

「素直でよろしい☆!!」


 将への特訓の幕が上がった。


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