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文化交友部に生息する俺の生態系が乱れてます  作者: まさな
第一章 自己紹介は面倒臭い
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第十四話 設立記念の打ち上げ

 正式な部として認められ、その日は奈緒の提案で俺達文化部の面々はハンバーガーショップにやってきた。

 俺も千条もあまりこんな店には来ないので、注文の仕方がよく分からなかったが、奈緒が全部引き受けてくれた。 テーブル席で、千条、俺、黛、奈緒のちょうど四人で向かい合って食べる。

 俺の隣は、嬉しいことに黛だ。


「できれば森島さんもこの場にいて欲しかったわね」


 俺の向かいに座った千条が言う。


「また五人で来れば良いよー」


 奈緒がハンバーガーを頬張りながら言う。


「そうね」


「美味しいー、やっぱりダブルが一番だねっ!」


「宇佐見さん、口にソースが付いてしまっているわ」


「ああ、うん、ごめーん」


「やっぱりナイフとフォークが欲しいわね。どうにもこれは食べにくいもの」


 千条が言う。俺はそれほど気にならないが、上品な女子はソースが口に付くのは嫌だろう。


「そうだね。ボクもちょっと食べにくいかな。あむ」


 小さな口で頬張る黛を見ていると、こいつの口でアレをアレしてもらったら凄く楽しそうだとつい妄想してしまう。


「どうかしたの、如月君。黛君をじっと見つめて」


「ああ、いや、何でも無い」


 千条はすまし顔で割と他人をよく観察している。


「そう。ならいいけど。文化部の活動はボランティア活動を除いて、基本、教室にしましょう」


「えー、あたし、ここがいいー」


「ダメよ。ここは他の生徒も多いみたいだし、いつも私たちがここにいて、部費で食べていたら、快く思わない生徒が出てくるはずだから」


「ああ、そっか、それもそうだねぇ」


「それと、部外の行動については、一般生徒としての節度を守る程度で良いけれど、誰かを強引に誘ってどこかに連れて行くのは無しで、お願い」


「エー」


 奈緒が不満そうな声を上げるが、たぶん、俺が黛を独占しておかしな事をしないかという懸念への対応だろうな。

 なので言っておく。


「普通に誘えば良いだろ。友達として誘って、同意の上でこの店に来るのは有りだよな?」


「ええ、無理矢理でないなら、私が反対することでも無いもの」


「ああ、なんだ、良かったぁ」


「それから…如月君」


「なんだ?」


「部長としてのお願いなのだけれど、私と連絡先を交換して」


「あ、ああ、いいよ。もちろん」


 千条に言われてちょっとドキッとしてしまったが、コイツ、美人には違いないんだよなぁ。


「ただし、絶対に、部とは関係ないことでは連絡しないで。一日一回以上の連絡を取ろうとするのも禁止でお願い。変な期待もやめて。それからストー――」


「分かった分かった、そこまで細かく指定しなくても、千条の懸念はよーく分かってるから安心しろ。お前の嫌がることはしない」


 最後、ストーカー行為の禁止も言い渡そうとしていたと思うが、どんだけ俺の信用が無いのかと。


「そう」


「えっ、一日一回以上のメールって、千条さん、ダメだった?」


「あなたは別に良いわ、宇佐見さん」


「そ。ならいいんだけど、なんで如月君だけ」


「男子だからよ」


「あー。あ、それとさあ、私も千条さんじゃなくて、綾ちゃんて呼んで良いかな?」


「ダメよ。私とあなたはそれほど親しくは無いのだし」


「うわ…断られるとは思ってなかったから、ショック~」


「まあ、部活初日だからな、焦らなくて良いだろう、奈緒」


 俺や黛は奈緒を普通に下の名前で呼んでいるし。女子を下の名前で呼ぶのは恥ずかしいのだが、宇佐見も語呂が悪くてちょっと呼びにくいんだよな。


「うん、それもそうだね。あ、私のことは奈緒って呼んでいいからね、千条さん!」


「ええ、でもしばらくは宇佐見さんにさせてもらうわ」


「ぐぐ」


 鉄壁の千条ガードに高コミュ力の奈緒もあえなく撃沈か。


「他の人の呼び方については私がとやかく言うつもりもないけど」


「じゃ、如月君は、下の名前は?」


 奈緒が聞いてくる。


「恭一だが…」


「じゃ、キョンキョンでいいかな?」


「絶対、ダメだ」


 そんな軽そうな愛称で呼ばれたら恥ずかしくて外に出られなくなりそうだ。


「えー、恭一はキョンキョンだよう」


「後生だからやめてくれ。せめて恭一で」


「分かった。じゃ、恭一ね。わ。なんだか男子を呼び捨てって、変なわくわく感があるね」


「んん? お前、他の男子を下の名前で呼んだことがないのか?」


「んー、そんなこと無いけど、でも小学校の時以来かな…」


「じゃ、やっぱり如月で頼む」


「えー、ダメ、一回許可したもん」


「如月君、どうしても嫌なら、私が部長権限を使って上の名前で呼ばせるけれど」


「いや、そこに部長権限は使わなくて良いよ。まあ、なるべく部活の時だけにしてくれよ、奈緒」


「えー、そう言う器用なこと、私、無理だし」


「ならいいや。こっちが下の名前で呼んでるのに、上でと指定するのもあれだからな」


「それは別に良いんだけど、恭一の方が言いやすいし、こっちで決定!」


 決定したらしい。


「あの、如月君、ボクも、恭一って呼んだら、ダメ…かな…?」


 黛の遠慮がちな上目遣い。この攻撃に、誰が拒否できようか。


「いいぞ、100%許す」


「ちょっと、なんで、まゆまゆだったら一発オーケーなん? おかしいよー」


「おかしくは無い。男子同士、男の友情の証だからな。俺も優希(ゆうき)と呼ぶが、いいよな」


「う、うん、いいよ…」


 やべー、後で二人きりになったら、呼びまくろうっと。


「ああ、如月君、二人だけの時は、上の名前で黛君を呼ぶようにして頂戴」


 おのれ千条。俺の恋路を邪魔しやがって!


「くっ、覚えてたらな」


「ええ」


「あはは、まあ、良い雰囲気になりそうだったし、仕方ないかもねえ。あ、恭一、私とも連絡先、交換して」


「ああ、それは構わないが…」


 部長を窺うが、千条は止めなかった。


「やった。よーし、これで男子の番号とメルアド、ゲットー。初めてー」


「なに?」


 ちょっと失敗した気分だ。


「あ、あの、一応、ボクも男子だから…」


「あ、そうだったね、ごめーん」


 優希はすでに交換済みの様子。


 みんなが食べ終えたところで千条が席を立ち、現地解散ということにした。



「恭一君は、家はどっち?」


 黛、いや優希が聞いてくる。


「俺は向こう」


「あ、じゃあ、ボクと一緒だね!」


「あたしはあっちなんだけどぉ。商店街の方」


「私はこっちだから。それじゃ」


「あっ、むー」


 奈緒がつまらなそうな顔をしていたが、女子二人は別々の方向。

 そこは諦めろ、奈緒。


 男二人で商店街を並んで歩く。春の穏やかな日差しの中、時折、桜の花びらが舞っている。

 しばらく俺達は無言だったが、別に気まずいわけでも無かった。


「恭一の家ってこの近くなの?」


「ああ、近いぞ」


「そうなんだ。ボクの家もそうだよ」


「へえ、意外と近所だったんだな」


「そうだね。でも、小学校と中学校は別だよね。如月なんて名前、見たこと無かったし」


「そうか、なら、別だったんだろうな」


「文化部の活動、ちょっと楽しみだな。甘いお菓子とか、ボク、大好きなんだ、えへ」


「じゃあ、部長に頼んでおくか」


「うん、あ、でも、みんなが好きなお菓子じゃないと。甘い物、苦手な人とかいるのかな…」


「奈緒は甘い物好きみたいだし、千条も食い物目当てじゃないから、別に大丈夫だろう」


「後は森島さんだね。今度、出てきたときに聞いておかなくちゃ」


「ああ。俺の家はここだ」


「あ、ホントに近いんだね」


「ああ」


「今度、遊びに来ても良いかな?」


「お、おう、いつでもいいぞ」


「ホント!? やったぁ。あ、さすがに今は…」


「いや、構わんが」


「あ、じゃあ、ちょっとだけ、お邪魔するね」


「ああ」


「ボク、あんまりお友達の家に遊びに行く事って無かったから」


「ふうん。ま、俺もそうかな。ま、上がってくれ」


「お邪魔します…」


「冷蔵庫にトマトジュースと牛乳があるんだが、しまったな。何かジュース、買ってくるかな…」


 普段、友達なんて家に呼ばないので、俺の好みの飲み物しか置いてなかった。


「あ、いいよ、牛乳で」


「悪いな。ちょうど、ココアの粉も切らしててな。また今度買ってこよう」


「いいってば、そんな気を遣わなくても」


「ちなみに、優希はトマトジュース、苦手なのか?」


「ううん、そんなことは無いけど、ほら、ボク、もうちょっと身長が欲しいから。だから牛乳なの」


「ああ、そうか」


「もう成長が止まりつつあるんだけどね」


「そうか。まあ、伸びると良いな」


「うん!」


 俺としてはこのままの方がいい気もするが、優希が背が高くなりたいのなら、牛乳をたっぷり飲ませてやろう。


「優希は、先に部屋に行っててくれ。俺の部屋、二階の一番手前だから」


「あ、うん、分かった」


 マグカップに牛乳を入れて盆で上に持っていく。


「恭一君って、部屋、綺麗にしてるねー」


「お前も綺麗にしてるんじゃないのか」


「うん、まあ、掃除は割と好きかな」


「ほれ、牛乳」


「ありがとう」


 手渡ししようとしたのだが、優希が俺の手に触れて、ちょっとびっくりしたらしく慌てて持ち直そうとして失敗し、こぼしてしまった。


「ああっ、ご、ごめん」


「なにやってるんだ、そのまま握って持てば良いのに」


「う、うん、あの、た、タオルか何か、あわわ」


「慌てなくて良いぞ。今、出すからちょっと待て。あとお前が最優先だ」


 タオルを二枚出して、優希の体と床を拭く。白い液体を顔に垂らしている優希はもはや危険物だった。

 俺の欲望をコイツの顔にぶちまけたいという危ない欲求を抑え込んで、紳士に徹する。


「ほんと、ごめん、ボク、いつもドジで、グスッ」


「馬鹿、こんなことくらいで気にするなよ。こっちは全然、気にしてないし、また遊びに来い。なんなら、また牛乳をぶちまけてくれてもいいから」


「ええ? さすがにボクもそれは何度もしないと思うよ。ふふっ」


「おう。じゃ、服を脱げ」


 制服は濡れていないが、カッターシャツが濡れているし。


「え、えっと、それって、お詫びに、体で払え…的な?」


「アホ! ちげーよ! 服に牛乳付けたままだと臭くなるだろ。今、洗濯機で洗ってやるから脱げって事だ」


「い、いいよ、家に帰ってからで」


「ダメダメ、制服にも付いちゃうだろ。牛乳臭くなったら、良くないだろが」


「うーん…」


「ちゃんと、着替えは用意してやるぞ」


「分かった。じゃあ、恭一を信じてるから」


「お、おう」


「ごめん、これも変な言い方だね…」


「いや、お前の場合、ガードは高めにしておけ」


「うん」


「あと、ついでに、シャワーも浴びとけ」


「う、うん…」


 男同士だと、頭の中で念仏のように繰り返して煩悩を消す。


「じゃ、使い方は大丈夫だろ」


「うん、たぶん。あ、洗濯機もボクが回すから」


「ええ? いいよ、やってやるって」


「ダメ。だって、脱がないと行けないし…」


「お、おう。いや、でもな…」


「お願い」


「わ、分かった」


 おかしい、なぜ女子を連れ込んだみたいな緊張になっているのか。


「ふう、さっぱりした。ありがとう」


 Tシャツとジャージ姿で優希が出てきたが、女子が着ているようにしか見えない。


「サイズがワンサイズ、大きいからかな…」


「そうだね。恭一の体って見た目よりも大きいんだね…」


「お、おう。まあ、座れ」


「あ、う、うん」


 座ったが、やはり気まずい。


「やっぱり、ボク、もう帰るね」


「乾いてからで良いだろ。門限があるのか?」


「ううん、無いよ」


「なら、ゆっくりしていけ」


「うん、ありがとう」


 しかし、対戦ゲームでも買っておけば良かった。

 あるのはRPGとシミュレーションばかり。


「あ、ボク、これとこれは持ってるよ」


「おお、そうか。これは面白いよな」


 男子の共通の話題が見つかってほっとする。格闘ゲーム、買っておくか。

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