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文化交友部に生息する俺の生態系が乱れてます  作者: まさな
第一章 自己紹介は面倒臭い
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第十三話 決戦の投票

2017/9/21 色々と修正。すみません。

 さて、ここから俺はどう動くべきか。

 バスケ部の部室に盗聴器でも仕掛けて決定的な証拠でも掴むか?

 無理だな。何の関係も無い俺が女子バスケ部の部室に近づけるはずもないし、うっかり着替え中に忍び込んだら、うえ、犯罪になるじゃないか。


 誰かバスケ部の気の弱そうな女子を問い詰める?

 これも同じ脅しをやってるようで気が進まない。というか、俺に女子を問い詰めるとか、呼び出すのも無理。


 やれること、ねえなあ。


 せいぜい、掲示板に女子バスケ部の悪口を書き込むくらいか。

 ま、これはやってもいいだろう。


 打ち込んでいると、また奈緒と黛が覗き込んでくる。


「うわっ、ひどっ、ちょっと、如月君、それ酷すぎ」


「別に良いだろ。どうせ匿名だ」


「そ、そう言う問題じゃ無い気が…」


 二人が引き気味だが、これくらいの仕返しはやっておく。あと、これでバスケ部への牽制になれば、森島への攻撃は止まるかもしれない。


「退学決定だね! と」


「本当に退学になるの?」


「さあな。だが、そうなるかもとビビらせればこっちの勝ちだ」


「なるほど…」


 翌日も森島は学校を休んだ。

 風間が休憩時間中に千条を睨んでいたが、話しかけてくることは無かった。

 掲示板について問い詰めれば、またこの前みたいになると恐れたのだろう。


 そして、運命の臨時生徒会総会。今日も森島は欠席だ。


「それでは、設立申請者の動機演説を行ってもらいます。千条さん、前へどうぞ」


「頑張って、あやっち」


「私の名前はあやっちではなく、千条綾よ。でも任せておいて」


 奈緒の応援に生真面目に応えてから壇上に立つ千条。

 全員の注目が集まる。

 俺がそこに立っているわけでもないのに、ハラハラする。


「私は文化部の設立を通して、広く人間社会の営みを見つめ直すと共に、学生生活をより豊かにして、今後の人生設計の指針となるよう、部員達と活動していくつもりです。


 そもそも文化とは、高次な人間の意識の表れで有り、文化の再帰性とは、文化がただ『見られる』ものでは無くて『見る』ものとして見返してくる、と言う認識に他ならない。と三島由紀夫も述べています。


 そもそも文化とは何でしょうか?

 私はそれは価値観の集合体だと認識しています。

 

 相対的価値観についてアリストテレスは徳の習得を技術の習得になぞらえました。従って――」


 いや、何を言っているのか途中から難解すぎてさっぱり分からん。こりゃ演説の効果による新規部員の獲得効果は期待できないな。

 あえて千条はそうしている可能性もあるが、チャラい人は完全にお断りのようだ。


「ご静聴、ありがとうございました」


 そりゃ、シーンとなるわ。


「おい! お前ら、拍手だ、拍手!」


 俺は部員達に拍手を促し、それでなんとか生徒達もまばらな拍手をしてくれた。


「では次に、2Aの風間さんより文化部設立に反対する議案が提出されていますので、生徒会より、今回のいきさつを説明します」


 文化部設立とそれに反対する経緯とルールが簡単に説明された。

 とにかく、ここで反対票が過半数以下なら、俺達の勝ちで、文化部は晴れて設立だ。

 風間は学校での飲み食いだけのために部費を使うのはおかしいという論理で反対するようだ。


「では、投票に――」


 ここで俺は柏木の方を見た。ノートを持っている柏木も俺達に頷いて立ち上がろうとする。ここであの落書きされたノートを公開して、反対票を一気に押さえ込む作戦だ。

 だが、その前に、風間が壇上に駆け上がってきた。


「待って下さい!」


「風間さん、議案提出者の演説は認められていません。席に戻って下さい」


「いいえ、演説じゃ無いんで。聞いて下さい」


 風間がマイクを持って言う。

 生徒会の面々が困惑した表情でお互いを見て、それから何人かが彼女を退席させようと近づく。


「放して。すぐ終わるから」

 

「何あれ?」

「必死すぎじゃん」


「私は2Aの風間茜です。今回の反対議案を提出した者です。でも、文化部の設立には最低五人が必要で、それを――」


 なるほど、風間の奴、投票に入る前に、強引に五人ルールを突いて、設立を潰そうという魂胆か。

 甘いぜ。


「残念だったわね、風間さん。私たちの部員はすでに八人、用意してあるわ。要件はすでにクリアしているということよ。森島さんの欠席に関係なくね」


 千条が素早く大きな声で反論を加えるが、タイミング的に焦りすぎだ。風間のダメージを考えるなら、もっと彼女に喋らせてからの方が良かった。千条もそれくらいは想像が付くはずだが、美味しい反論だから、我慢できなかったか。

 

 だが、これで風間達の企みは完全に崩壊だ。


「へへ」

「だな!」

「ふっ」


 俺達の隣に立っている男子生徒三人が誇らしげに胸を張って笑う。

 E組の柏木が連れてきてくれた二人と、俺や黛で頼み込んで名義貸ししてもらったうちのクラスの一人だ。

 この三人とは交換条件で俺が中間テストの山を教えるということで、取引は成立済みだ。


「そうじゃなくて! 私が言いたいのは、それを逆手にとって、脅して一人を退部に追い込もうとした人がバスケ部の中にいたと言うことなの!」


 これは?

 柏木が俺の方を見て、何かやったのかと言いたげな視線を送ってくるが、風間に対しては俺は何もしてない。掲示板で悪口は書きまくったけど、それだけだ。彼女がそれでくじけたりするような気弱な人物とはとても思えないが…こうして自分から暴露したか。


「私はそれを知って、なんて言うか、凄くショックでした。そんな卑怯なやり方で反対するのは違うと思うし。私自身、正直に言えば、千条さんへの反感もあって、文化部の反対をとりまとめたいきさつもあるんです。だから! この反対の決議は取り下げます。みんなに投票してもらうような価値もないです。千条さんの演説、凄く真面目だったし」


 そうしてしゅんとしてうつむく風間。

 脅しが発覚したのを察知して、正直に謝る作戦で自分のダメージを軽減しようとしてきたのか?

 ただ、これでは目立ちすぎて、生徒の印象としてはむしろ風間が犯人だったということになりかねない。

 知らぬ存ぜぬを言い張り、顔を出さない方が賢いだろう。


「オホン、生徒会長の中島です。経緯はよく分かりました。生徒会としてはそのような卑劣な妨害行為に対して、断固抗議すると共に、後ほど当該生徒には厳重注意を与えるつもりですので、釈明のためにも自主的に出頭してもらうことを希望します」


 釈明付きで、厳重注意だけか。生ぬるいな。部活の停止くらいやっても良さそうなものだが。

 ま、そちらは学校側がやるかな。


「ただし、反対議案の採決はこのまま続行して執り行います」


 生徒会長のその言葉に、どよめきが起きた。


「そんな!」


 風間も信じられないという顔で声を上げたが、これは小芝居なんかじゃなさそうだな。となると、風間は脅しには荷担していなかったと言うことか。 


「どうしてですか! 生徒会長!」


「落ち着いて下さい、風間さん。理由は、この採決で最も重要なのは、文化部の活動内容が我々生徒にとって納得できるかどうかと言う点で有り、議案提出者の資質よりも重視されるべきという僕の判断です。生徒会執行部でこの決定に異議のある者はいるか?」


「「「いません!」」」


 即返事があったが、この会長は生徒会のメンバーからは絶大な支持を受けているらしい。


「異議無しと認める。では、投票用紙を配ってくれ」


 生徒会のメンバーが生徒達に票を手渡していく。


「反対はバツ印、文化部の設立に賛成なら白票でお願いしまーす」


「ごめん…」


 風間が千条のところに行って、謝っていた。


「それは何についての謝罪かしら。あなたはバスケ部の部長でもないのだし、脅しに加わっていなかったのなら、謝る必要は無いわ」


「でも、このまま文化部が反対で潰れちゃったら…」


 風間にとっては、後味が悪いか。


「ああ、そんな心配なの。私は確実に勝てると思っているけれど」


「ううん、でも、千条さん、私がここで今言うのもなんだけど、あなた、女子の評判、凄く悪いよ?」


「知ってるわ」


「運動部は私があちこちの部長にも頼み込んで盛り上がっちゃったし…」


「そう。でも運動部の部長が動いた程度で私の崇高な理念が邪魔されるわけでも無いわ」


「ええ?」


 うわ、お前今、なんか負けフラグを立てた気がするぞ、千条。

 不安になってきた…。


「集計、急げ!」

「回収、お願いしまーす」


 生徒達が雑談してざわついている中、生徒会のメンバーがきびきびと走り回っている。これはこれで楽しいのかもしれないが、俺は絶対やりたくないな。


「終わりました! 会長」


「よし。全員、注目して下さい。静粛にお願いします。静粛に! 集計結果を発表します。


 文化部の設立に反対の票数、224票、賛成の票数、581票。


 よって、生徒会は文化部の設立を認めます。以上、解散!」


「やったー!」


 拍手の中、奈緒が飛び上がって喜び、スカートが際どいところまでめくれ上がった。

 本人は全然気づいていないようで、今度はハイタッチを俺達にやってくる。


「な、奈緒ちゃん、あんまり跳ぶのは」


 黛が注意するが分かってない感じ。 


「ええ? 良いじゃん良いじゃん。授業中じゃないし、終わったからもう放課後だよ!」


「いいから、跳ぶな、奈緒」


 俺は力ずくで彼女の両肩を押さえる。


「ええ? なんでぇー?」


 黛に説明しろと俺は目で合図するが、合図の押し付け合いになってしまった。


「ダメよ、宇佐見さん、スカートがめくれているわ」


 千条も注意しにこちらにやってきた。


「あっ! うわー、見えてた? 見えてた?」


「いや」


「良かったぁ。でも、これで文化部の活動がちゃんとできるね! なんか嬉しいぃ!」


 別にそこまで喜ぶような事じゃ無いと思うが、俺も素直に勝って嬉しい。


「私たちの負けね」


 風間もなぜかこちらにやってくると、どこか晴れやかな顔をして微笑んだ。

 お前らバスケ部のやったことは許さないし、次は無いぞ、と言いたくなるが、向こうが根に持たないなら、その方が良いか。


 俺達は勝利したのだ。

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