2.「ぼくの名まえは、オオモリマナブです。二年生です」
学校からかえると、ランドセルをおいていちもくさんに、公えんのすべり台の前にむかった。チャメはまち合わせの時間より早くついていた。
「時けいもないのにどうして時間がわかるの?」ときいた。
「ほら、アレだよ」とチャメはジャングルジムそばに立っている、木でできた小さな時けいにツメをむけた。
「公えんにきていて、気づかなかったのかい?」
とチャメがふしぎそうに聞いた。
「うん、気づかなかった。いつも、トンネルの中でないてばかりいたから」
「あれはねぇ、時けいとうって言うんだ。オレ、あの時けいとう作りを、手つだったんだぜ!」
チャメはじまん気に立ち上がって言った。時けいとうは、お父さんより少し高いぐらいで、時けいのハリはちょうど三時をさしていた。
「さぁ、行こう」
チャメはシマシマのしっぽをぴーんと立てて、フリフリとゆらしながらぼくの前を歩いた。しっぽが立つのは、ごきげんの時らしい。
リフォームしてほしいと言っているおばあちゃんの家は、公えんから歩いて五分ほどのばしょにあった。チャメはふわりとジャンプして、チャイムをならした。
「こんにちは、ミホコおばあちゃん。チャメです」
大きなドアがガラガラと開いた。つえをついたおばあちゃんがゆっくりと出てきた。
「あらあら、チャメちゃん。来てくれたのね」
「うん、リフォームしてほしいって言ってたでしょ」
チャメは門をくぐって、しばふでおおわれた広いにわに入っていった。ぼくがいるのをわすれてるの? と思ったら、クルリとふりかえって
「マナブも入ってきなよ」とむにむにのにくきゅうの手で、ぼくを手まねきした。
広いにわには、あちこちに花だんがあって、きれいな花がいっぱいさいていた。このお家の前は毎日の通学で歩いている。なんならさっき学校から帰ってきた時も、公えんに行く時も通った。広いお家だなぁとはおもっていたけど、しばふがあって、たくさん花がさいているだなんて、しらなかった。
「あら、かわいいおぼっちゃん。」
ぼくと同じような色のジーンズをはいたおばあちゃんが、そっと手をだしてきた。ゆっくりと見上げていくと、ピンク色のシャツをきたやさしそうな顔のおばあちゃんだった。ぎゅっと、ぼくの手をにぎって、
「わたしの名まえは、オガワミホコ、っていうのよ。よろしくね」
チャメがウィンクしてぼくに、あいずしている。きっとマナブもあいさつしろよ、ってことだろう。ふしぎと、おばあちゃんにはきんちょうしなかった。
「ぼくの名まえは、オオモリマナブです。二年生です」
ちゃんと言えた。手にすこしあせをかいたけど、ミホコおばあちゃんは、うんうん、となんどもうなずいてくれた。なんだか、うれしかった。
「ミホコおばあちゃん、それでリフォームの話なんだけど、そこのエンガワでいいのかな?」
チャメはそう言うと、まどの前につき出た木のろうかにすわった。ギィイイと音がした。
「そうなの、ちょっと古くなってきてボロボロになってきたのよ。おねがいできるかしら」
ミホコおばあちゃんといっしょに、ゆっくりとエンガワにむかって歩いた。雨にぬれたり、太ようの強い光で木のろうかがいたんでいるようだった。
チャメはしっぽで体をささえながら、すくっと立ち上がった。りっぱなヒゲをツメではじきながら
「おまかせください! あしたからリフォームこうじをします」
と、じしんまんまんにへんじをした。つづけて、チャメはぼくの方に、近づいて
「マナブは、オレのじょ手として、手つだってもらいます」
ミホコおばあちゃんは、つえをおいて、えんがわにすわった。
「じゃぁ、こうじのほうしゅうは、どうしましょ?」
「前にミホコおばあちゃんが言っていた、この家にすまわせてくれるってのでどうですか」
「あら、それがほうしゅうだなんて、わたしの方がうれしいわ」
ミホコおばあちゃんはニッコニコのえ顔になった。
「それと、マナブもたまにこのお家にあそびにきてもいいかな?」
チャメはえんりょしながら聞いた。もし、「ダメ」って言われたらどうしよう。ふあんそうな顔になってしまった。
「もちろんよ、マナブくんもあそびにいらっして。お家の人にちゃんと言ってから来るのよ」
ミホコおばあちゃんのやさしい声に、ホッとした。なんだかチャメもうれしそうだった。
みんなでエンガワにすわったら、さっきより大きなギィイイイイと音がした。ミホコおばあちゃんは、クッキーとつめたいお茶とおしぼりを、どうぞと出してくれた。チャメは手をふいて、そのあとぎょうぎよく手をあわせ「いただきます」と言って、クッキーをポイッと口にほうりこんだ。
むしゃむしゃ、ぼりぼり、むしゃむしゃむしゃ、ぼりぼりぼり
チャメはクッキーをもう一つほおばった。なんだかとってもおいしそう。ぼくも手をふいて、ミホコおばあちゃんに「いただきます」と言って、クッキーをひとかじりした。サクサクしていて、とってもあまいクッキーだった。
「じゃぁ、あした、学校がおわったら、ミホコおばあちゃんの家にしゅう合ね。オレは朝から、先にはじめておくよ」と言って、チャメはさいごのクッキーをパクリと食べた。よっぽどおいしかったのだろう、ニッコニコの表じょうだった。ミホコおばあちゃんも「ひさしぶりのおきゃくさまで、とてもうれしいわ」とニッコニコだった。
なんだか、ぼくもニッコニコの顔になってたみたいで、家にかえるとお母さんが
「あら、マナブ、おかえり。とってもニコニコえがおね。いいことあったのかな?」とムギュッとしてくれた。ひさしぶりのお母さんのムギュッは、うれしくって、あったかかった。あしたから、いそがしくなりそうだ。




