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ドラぷり放浪記   作者: えだまめ
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8/22

8話 魔法少女とは

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

朝食を食べ終わった三人はお茶を飲みながら談笑していた。お茶は昨晩飲んだものと同じお茶だ。


「ふぅ~、満足だわぁ。」


本当に満足したのだろう。おなかをさすりながら余韻に浸っていた。


「本当に美味しかったね。ごちそうさま、マール。」


「はい、お粗末さまです。と言っても私はパンケーキを焼いただけですけどね。」


「でもこのジャムとパンケーキも美味しかったわ。ありがとう、マール。」


「うふふ、どういたしまして。」


嬉しそうにマールは微笑んだ。


「そういえば、えっと…エレンちゃんって呼んでもいいかな?」


「…何よ。気安く人の名前呼ばないでよね。」


ケイトに声をかけられた途端、エレンの態度が変わる。


「あはは、だいぶ嫌われてるなぁ。」


「もうエレンさん。」


「ふん。好きに呼べば。」


そう言ってエレンはそっぽを向く。その姿にマールは呆れる。


「それじゃあエレンちゃんと呼ばせてもらうよ。それでエレンちゃんはなんでこの街に来たんだい。」


「あ、それ私も気になります。」


マールも気になっていたらしい。確かに少女が一人で旅をしているのだ。何かしらの理由があるのだろうと思っても当然である。


「…別に理由なんてないわ。ただ適当に旅をしているだけよ。目的なんてない。この街に来たのも単なる偶然よ。」


しかし、エレンから出てきた答えはシンプルだった。いや、逆にシンプル過ぎて困る回答だった。


「そうなんですか?」


「そうよ。強いて言うならいろんな街を見て回るのが目的かしら。世界には私の知らない事だらけ。だからいろいろ見て回ろうって思ってるの。」


と言ってもまだ旅をはじめて一日しか経っていないのだが。


「はぁ、そうなんですか。」


二人はある意味予想外の回答にリアクションに困っていた。


「何よ、その反応わ。私が嘘でもついてるとでも思ってるわけ?」


二人の反応が気に食わなかったらしい。エレンは不満そうな顔をする。


「いや、別にそう言うわけじゃないんだ。ただそうなるとエレンちゃんみたいな女の子が一人でいるのに不思議に思ったんだよ。」


「何でよ。別に普通じゃない。」


「普通じゃないですよ。街の外はとても危ないんですよ。エレンちゃんみたいな女の子が一人でいるのは危険すぎます。」


「見たところエレンちゃんは魔法使いのようだけど、パーティーはいないんだろう?いくらこの辺りの魔物が弱いからと言って、魔法使いが一人で街の外を歩くことはあまりないんだよ。」


魔法使いが一人で旅をする者はほとんどないない。ほとんどが冒険者や傭兵を雇いパーティーを組むのが一般的である。確かに魔法は強力なのだが、詠唱するための時間や集中力が必要となり、それらを妨害されると発動できなくなる。そのために、妨害されないように守護する存在が必要なのだ。また魔法によっては効果範囲が広いものもあり、味方にも影響を与える場合もある。そのため接近戦や場所によって向かない場合もあるのだ。そして何より魔力が有限であることだ。魔法は魔力をもとに生成され、ほとんどの生物にが魔力を保有している。しかしある程度魔力がなくなると魔法を扱えなくなるのだ。一応休息をとれば徐々に魔力も回復することができる。また魔力を回復する薬や食べ物もあるようだが、希少価値が高く数が少ないのだ。そんなものほとんどの者が持っているわけもなく、魔力が尽きた魔法使いは戦力にならなくなるのだ。と言うわけで、魔法使いが一人で行動する事はリスクが大きすぎるのだ。もっとも魔法がなくても戦えれば問題ないのだが、それでもやはりパーティーを組んだ方が安全である。そう言った意味でエレンのことを不思議がるのは当たり前だった。


しかし、その問いに対して何でもないようにエレン答えた。


「別に不思議じゃないわよ。だって私は魔法使いじゃなくって、魔法少女だもの。」


「え?」


「まほう、しょうじょ?」


(『…は?』)


「そうよ。だから私はひとりなの。」


ちょっと誇らしげに答えるエレン。しかしその答えは爺やですら理解しかねる回答だった。当然聞いていた二人にも言っている意味がわからず、きょとんとした顔を浮かべている。


「えっと、その魔法少女って言うのはなんだい?魔法使いとは違うのかな?」


皆の疑問を代弁するようにケイトが聞く。


「はぁ?あなた何言ってるの?全然違うわよ。そんなのと一緒にしないでもらえないかしら。」


「そうなんですか?」


「そうよ。魔法少女はね、可愛くて、格好良くって、とっても強いの。いろんな魔法を使って、悪いやつらをやっつけちゃうんだから。」


そう言って突然立ち上がり、腰に添えた杖を手に持ち、ケイトに突きつけるように構えた。どうやら決めポーズらしい。しかし、エレンによる魔法少女の説明は説明になっていなかった。


「でもそれって魔法使いとかわらないんじゃないですか?」


マールの疑問は当然と言えた。


「だから違うって言ってるでしょ。魔法少女の使う魔法はそんじょそこら地味な魔法とはちがうの。すっごい派手ですっごく強いのよ。それに悪い奴を倒すだけじゃなくて、いろんな願いをかなえてくれるのよ。」


「そ、そうなんですか。それはすごいですね。」


エレンの勢いに押されるマール。しかし言っていることは先ほどと変わらず漠然とした内容なのだが。


「へぇ、そんなにすごいのか。その魔法少女と言うのは。」

エレンの話を聞いて、感心したように頷くケイト。


「そうよ。とってもすごいんだから。」


その反応にエレンは嬉しそうに胸を張った。


「じゃあエレンちゃんはそのすごい魔法を使えるんだね。ちょっと見てみたいなぁ。」


「…え?」


しかしケイトの言葉を聞いたとたん、エレンの表情が固まった。


「あ、私も見てみたいです。」


「え!?」


ケイトに便乗するようにマールも喜々としてそう言いだす。だがその反応はエレンにとっては嬉しいものではなかった。何故なら彼女は魔法少女ではないのだから。


「えっと…。」


しかし、散々豪語した上で今更その言葉を撤回するわけにもいかないと、引かないエレンの性格がそうさせた。


(どうしたものかしら。)


エレンはこの状況を切り抜けるために思考を巡らせる。エレンは別に魔法を使えない訳ではない。現に人の姿に化けるための魔法を使っているし、他にもいくつか魔法を扱うことが出来るのだ。もちろんそれで誤魔化そうと思えば誤魔化すことが出来る。人間の魔力と魔物の魔力の質は異なるために、同じような魔法であっても威力や範囲が異なるため、人間が扱う魔法とは異なる魔法として見せることは出来る。しかし、エレンのプライドがそれを許さなかった。所詮偽物は偽物。そんなことをしてはしまっては自ら魔法少女の存在を貶めてしまうことになる。やるのなら魔法少女が使う特別な魔法やらねばならない。何か出来ないかと悩むエレン。


(『…やれやれ、仕方ありませんね。』)


爺やにはエレンの考えていることは大体見当づいていた。見た目は杖だが伊達に今まで教育係を務めてきたわけじゃないと自負している。お姫様が墓穴を掘ったこととはいえ、主のピンチには変わりない。いつものことだと呆れながらも、助け船を出すことにする。


(『姫様、よろしいでしょうか。』)


(「何よ。今考えてるんだから邪魔しないでよね。」)


(『それは残念です。私に一つ良い案が浮かんだもので、お聞きいただければと思ったのですが。やむを得ないですなぁ。』)


挑発するようにわざとらしく告げる爺や。もちろんわざとである。


(「…喧嘩売っているのかしら。」)


(『いえいえ、そんなことは滅相もありません。』)


(「白々しいわよ、爺や。」)


もちろんエレンも爺やがわざとやっていることはわかっている。まさに茶番である。


(「で、考えって言うのは何よ?」)


(『簡単なことですぞ。出来ないとおっしゃればよろしいのです。』)


しかし、爺やの回答は至ってシンプルであった。


(「…本気で喧嘩売っているのかしら。」)


その答えを避けるために必死に考えているのだ。もっと真面目に考えてほしいと呆れるエレン。


(『勘違いしないでください、姫様。あくまでも今この場ですることは出来ないとおっしゃればよろしいのです。』)


(『…どういうことよ。』)


(『先程姫様は強力な魔法であるとおっしゃっておりましたので、ここで魔法を使ってしまうと危険であるとそうお伝えすれば良いかと。』)


実際にここで自分たちが魔法を使うことは危険であるのだ。その理由は二つあった。一つは魔力の制御が不安定であること。別に制御が出来ない訳ではないのだが、細かい部分の制御が上手く出来ないのだ。そもそも今までそのようなことをする必要性がなかった。そのため加減が出来ず大爆発を起す危険があるため、この理由はあながち間違ってはいなかった。もう一つの理由は、目立ちすぎてしまうこと。これは爺やが一番懸念していることであった。今は宿屋の中ではあるものの街中であることには変わりない。ただでさえ魔法を使えば目立つというのに、特殊な魔法など使えば余計に目立ってしまう。それだけはなんとしても避けたかった。


(「うーん…。」)


爺やの意見を聞いて考え込むエレン。エレンの性格上あまり納得できる方法ではなかった。


(『姫様、こだわることはいいことです。ですがそれがすべてに通じるわけではありませんぞ。』)


しかし、それでもエレンは爺やの意見を飲み込めないでいた。どこまで頑固なのやら。


「あの、エレンさん?」


そこへ急に黙り込んでしまったエレンの様子を心配したマールが声をかけてきた。


「あはは、もしかして無茶なお願いをしてしまったかな?そんなにすごい魔法ならあまり人には見せられないのだろうし。興味はあるけれど仕方が無いかな。」


何かを察したのだろうケイトが断りを入れた。思わぬところから出た助け船に爺やはホッとするが、どうやらそれは間違いだったようだ。


「いいわ。見せてあげる。」


『「「えっ。」」』


「だから見せてあげるって言ってるっでしょ。」


そういうや否やエレンは杖を構えて魔力を練り始めた。


(『いやいや、ダメですぞ姫様!!危険すぎます!!』)


しかしエレンは爺やの声を無視し、魔法を発動させた。


「行くわよ!!光魔法アルティメット、ドリーミングシャイーンッ!!」


その瞬間世界は光に包まれた。


お転婆お姫様ですから何しないわけがないですよね…。


次回12日(木)更新予定です。


お読みいただきありがとうございます!


皆さんは今年の抱負とか決まりましたでしょうか?

私は去年よりましな一年にしたいですね…。


と言う訳で今年も頑張りたいと思いますので、何とぞよろしくお願い致します。

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