19話 取り調べと言う名の反省会
今週も2回投稿頑張ります‼
「ー、なるほどね。つまりエレンちゃんはコルトくんを助けるためにブブンタたちと争いあったと。」
「そうよ。コイツがアイツらにボコボコにやられてたから、私が助けてあげたのよ。」
現在エレンとコルトは冒険者ギルドの応接室に来ており、ケイトに先程の喧嘩について説明していた。あれから少しして憲兵が現場に駆けつけて来たのだ。事態の惨状に流石の憲兵たちも無視することが出来なくなったようだ。暴れているエレンを止めようとするが憲兵だけでは止められる者がおらず、ギルドにも応援の要請を受けてケイトが現場に入ってようやく事態を治めることが出来たのだった。本来ならエレンたちの取り調べは憲兵の仕事であるのだが、今のエレンを引き渡すのは大変危険な状況だったため、ケイトが身柄を預かる代わりに取り調べを引き受けることになり、現在ギルドの応接室を利用して取り調べを行っているところだった。
「…確かに助かりはしましたけど、あれはちょっとやり過ぎなのではないでしょうか…。」
エレンに助けてもらったコルトだったが、あまりにも酷い惨劇を目の当たりにして困惑の表情を浮かべる。
「…そうだね。あれはちょっとじゃ済まないくらい酷かったね。もう少し僕らが止めるの遅かったらおそらく死んでたんじゃないかな。」
現場の状況を思い返してケイトも頷く。それ程までに現場は酷く、血の臭いが色濃く漂っていた。
「クサ男たちがやろうとしてたこと考えたら当然の報いだわ。寧ろまだやり足りないくらいよ。」
それに対し惨劇の元凶であるエレンは反省の色を示すどころか、まだやり残しがあるかのように不服そうな表情を浮かべていた。先程までところどころ血で染まっていたはずのエレンだったが、いつの間にか綺麗に拭い取られており、血の臭いもせずシミのひとつも見当たらなかった。先程の惨劇の中心にいたとはとても思えない。不気味に思いながらも怖くて誰もその事を聞くことが出来なかった。
「クサ男って…。流石にアレ以上やってしまうとブブンタさんたち本当に死んでしまいますよ。」
被害者であるコルトだが流石に殺すということに抵抗があるのようだ。
「別にいいじゃないあんな奴ら。生きてても碌なことにもならないわ。アンタとしても苛めにあうこともなくなる訳だからその方がいいじゃない。何であんな奴らの心配してるのよ?もしかしてアンタ、そういう趣味なわけ?」
「そんな趣味ありませんよ!?苛められるのはもちろん嫌に決まってます‼ですが、あそこまでする必要はないかと思いますよ。」
「助けられた分際で甘いこと言うんじゃないわよ。ああいう奴らはどんなに痛い目にあっても同じことを繰り返すって相場が決まってるのよ。現にクサ男たちはクラウスから注意受けてもアンタを苛めていたじゃない。」
「いや、まぁそうなんですけど…。」
「だからああいう奴らは始末しといた方がいいの。わかった?」
「…。」
エレンの言うことに言い返さないがコルトは不服そうに口をへの字に曲げる。どうやら納得していない様子だった。
「はいはい、エレンちゃんもコルトくんもそこまで。とりあえずエレンちゃんはこれ以上暴れられても困るから今日は僕が監視させてもらうよ。」
そこでケイトが割って入るようにことを告げる。そのことにエレンが反発する。
「はぁ?冗談じゃないわよ!?何でアンタに監視されなきゃならないのよ!?」
「これはクラウスさんからの命令なんだ。昼間に注意したことをエレンちゃんが守らないからいけないんだよ。」
「何言ってるのよ、ちゃんと守ったじゃない。クサ男たちには一切魔力は使ってないわよ。」
「それを知らされて余計一人にしてはいけないことが良く分かったよ。と言うか、本当にエレンちゃん一人でブブンタたちをあんな風にしたのかい?しかも魔力を使わずにかい?」
「さっきから何度もそう言ってるじゃない。私が嘘をついて何になるのよ。コイツも目の前でボコボコにしてるの見てたわよ。」
「両手でを潰した上にお腹に大きな青あざをつくって血だまりに寝てる彼を見てると、とてもエレンちゃんのような女の子がやったとは普通思えないからね。しかも魔法も使わずにやったなんて殆んどの人が信じないと思うよ。」
ブブンタのことを知っている人間ならなおのことそう思うだろう。ケイトが現場に着いた時には既にブブンタはボロボロの状態だった。血まみれのブブンタの前に返り血に染まるエレンを見るまではケイトもその事を信じられなかった。
「ふん、外見なんてただの飾りでしかないわ。甘く見ているとクサ男たちみたいになるのよ。私に喧嘩を売ろうなんて百年早いわ。」
ブブンタたちに舐められたことを根に持ったのだろう。エレンの過剰な暴行はそこにあったのかもしれない。
「程々にしてあげないとダメだよ。エレンちゃんが人を殺したなんてマールが知ったらきっと悲しむよ。必要以上の殺生は控えるように気を付けなきゃダメだよ。」
「マールのことをアンタに言われる筋合いはないわ。大体何でアンタの取り調べ受けなきゃならないのよ?」
ある意味一番不快に思っていることだと言わんばかりにエレンはケイトに質問する。しかし、その問いに対する答えは既に用意されていた。
「別に僕じゃなくても良かったんだけどね。君の知り合いで動けるのは後はメイになっちゃうけどそれでもいいなら代わってあげるよ?」
「何でここのギルドにはマトモな奴がいないのよ!?」
最悪な事実を突き付けられてエレンは驚嘆する。
「そもそも君が問題を起こさなければこんなことにもならなかったんだよ。ま、暫くは辛抱して仲良くやろうよエレンちゃん。そうじゃないとメイと交代しなくちゃいけないからね。」
「…本当にアンタって嫌な奴よね。」
「誉め言葉として受け取っておくよ。」
「はぁ…。」
ケイトに相変わらずの調子で返されてエレンは肩を落とす。
「…それで結局ブブンタさんたちはどうなったのですかケイトさん?」
エレンたちの会話を黙って聞いていたコルトがケイトに質問する。未だにブブンタたちに対する恐怖は拭えておらず、気になっていたようだ。
「彼らの身柄はこちらで引き取ることになったよ。いろいろと話を聞き出さないといけないからね。とりあえず命に別状はないようだから今は怪我の治療を行って、それから独房にいれる予定だよ。」
「そうなんですか。」
ケイトの話を聞いてコルトは少しホッとしたようだ。そのコルトの様子を見てケイトは気まずい思いで告げる。
「本当はもっと早く動かないといけなかったんだけどね。彼等は裏で結構動いてたみたいだから、それを利用していろいろ探っていたんだ。特に人身売買についてはこちらもあまり情報を持っていなかったからね。必ず何か動きがあるだろうと思って彼を泳がせていたんだよ。その結果、君が酷い目に会わせることになると知っていても、僕たちはそうすることを選んだんだ。とても許されたことじゃないが、君には本当に済まなかったと思っているよ。」
ケイトの謝罪の言葉に驚いたコルトはすぐにそれを否定する。
「いいえ、そんなことありませんよ。ギルドの人たちにはお世話になってますし、何度も助けていただいてもらってますから謝る必要なんてありませんよ。本来なら忌み子であるボクを助けなくても言いはずですのに。」
「そんなことを言ってはいけないよ。君だってこの街で暮らす住人の一人なんだ。自分を卑下してはいけないよ。それは君に関わった人たちにも失礼な行為だ。」
「…すみません。」
自分の軽率な態度を注意されコルトは黙ってしまい、ケイトもうまい言葉が見つからず頬を掻きながら黙ってしまう。ちぐはぐとした空気にお互い踏み留まってしまい、気まずい雰囲気となってしまう。
「ちょっといいかしら?」
「何だいエレンちゃん?」
そこで空気を読んでか読まないでかエレンが話を切り出す。
「さっきも聴いたんだけど忌み子って何なのよ?そいつが混ざり者って言うことと何か関係があるのかしら?」
「っ!?」
しかしその質問の内容に二人は驚く。
「エレンちゃんはコルトくんのこと気付いていたのかい?」
「何となくよ。コイツに魔法をかけた時に普通の人間に比べて魔力の質が少し違ってたからもしかしたらと思っただけよ。」
自分の予想が当たったことが嬉しかったのか誇らしげにエレンは告げる。
「なるほどね。そういえば回復魔法も使えるだね。本当にエレンちゃんには驚かされるよ。」
素直に感心したように驚くケイトに心を良くしたのかエレンは饒舌になる。
「ふん、舐めてもらったら困るわよ。もっともそいつに掛けた魔法は回復魔法よりも強化魔法に近いかしら。魔力を送りながらクサ男に殴られた痛みを鈍らせてやったのよ。回復魔法なんて使ってたら魔力の消耗が激しいしもっと時間がかかるわ。」
「そんな方法があるのか。でもそれはそれで簡単に出来ることじゃないと思うけど?」
感心しながらもエレンに何かを問いただすように視線を送る。それに気付いたのエレンはかばつが悪そうに視線をそらす。
「うるさいわね。今度からちゃんと気を付けるわよ。それよりコイツが混ざり者だからって忌み子扱いされるのが分からないんだけど、どういうことなのよ?」
話をそらすように話題を戻すが、以外にも二人が今度はキョトンとしたような表情を浮かべる。
「その質問に対してこちらが驚きたいところだね。その言い方からするとエレンちゃんの出身地では、コルトくんのような人たちに対する差別とかはなかったのかい?」
「差別も何も私が混ざり者との関わりがなかったし、そういった話も聞いたことがなかったわね。そもそも私からしたら混ざり者だから何なのって思っちゃうわ。」
エレンの答えにケイトは納得いったのか目を伏せながら呟く。
「…何と言うかエレンちゃんらしい理由だね。皆がみんなそうだったら良かったんだけど、残念ながらそういう風にはならなかった。自分と違う存在を簡単に受け入れられる程人間は強くなかったんだ。何をされるかわからないからね。だからみんな自分が有利な状況じゃなければ相手に触れようとしないんだ。」
「…。」
「その結果コルトくんのような人たちは差別を受けて居場所をなくしてしまっているんだ。抵抗してもことを悪化させてしまうだけだからね。とても複雑だと思うよよ。」
ケイトの言葉を耳にしながらコルトは俯く。彼にもいろいろと思うところがあるのだろう。それだけ彼らに対する世間の風当たりが強いことを示していた。
「ふん、くだらないわね。そんなこと気にしないで好きなようにすればいいじゃない。」
しかしケイトの話しに対してエレンは蔑むように言い放つ。
「簡単に言わないで下さい‼ボクがどれだけ辛い思いをしてきたか知らない癖に‼」
侮辱するようなエレンの発言に我慢出来ず、コルトが噛みつくように反論する。しかしエレンは引かずに言葉を続ける。
「それはアンタが弱いからいけないのよ。強くなれば良いだけの話じゃない。弱いことを理由にして自分から目を背けるんじゃないわよ混ざり者。」
「くっ‼」
「エレンちゃんそれは言い過ぎだよ。彼に謝るんだ。」
流石のケイトも黙っては入られず止めにはいるが、それでもエレンはコルトに続けて話す。
「アンタは黙ってなさいケイト。コルトとか言ったわね?大体アンタは自分が情けないと思わないわけ?クサ男たちに何度もやられて悔しいと思わないわけ?強くなろうと思わないわけ?何もしてない癖に1発、2発殴られたからって諦めてるんじゃないわよ。」
「…。」
「あそこにいた奴らもそうだけど、アンタもヘドが出るくらい情けないわ。本当にそれでも男なわけ?可愛い顔してるから男捨てて女にでもなった方がいいんじゃないかしら?」
「ボクの気持ちも知らないでふざけたこと言わないでください‼」
「ふざけているのはアンタの方じゃないの?恩人の前でもそのフードを取らないような奴に言われたくないわ。」
「っ!?」
「自分のことを認めていないのはアンタの方じゃない。そんな奴誰が認めるものかしら。アンタがそのフードを取らない限りアンタは強くなれないわ。」
「…。」
「ふん、黙って睨めば強くなれるのかしら?だとしたら混ざり者って便利な力を持っているのね。」
「エレンちゃん、いい加減にするんだ。」
「ふん。」
「コルトくんもエレンちゃんの言っていること気にしちゃダメだからね。」
「…。」
もはやお互いに引く様子がない。ここで話しを切るしかないと判断したケイトは頭を掻く。
「やれやれ。とにかく明日は二人とも僕が迎えに行くからよろしく頼むよ。」
「頼むって何をよ?」
その言葉に反応したのはエレンの方だった。いまいちケイトが言っていることの意図が掴めていないようだ。
「クエストに決まってるじゃないか。明日からこの三人ともう一人含めた四人で行くんだよ。」
ケイトの爆弾発言に虚を突かれたように驚くエレン。
「ちょっと待ちなさい!?その話聞いてないわよ‼」
「あはは、ごめんごめん。本当はあの時話そうとしたけど、メイが邪魔しちゃったからあまり話出来なかったんだ。」
「…アンタ絶対わざと話してなかったでしょ。」
白々しく答えるケイトにエレンは疑惑の眼差しを向ける
「そんなことはないよ。ちゃんとコルトくんたちには話しはしているよ。」
「余計たち悪いわよ‼」
「そう言うことだからよろしくね。二人とも。」
「ちょっとどこ行くのよ!?待ちなさい‼私はまだ納得してないわよ‼」
応接室を出ていくケイトを追いかけるようにエレンも出ていく。
「…はぁ。」
二人を見送りながらもこれからのことにいろいろと不安を感じて、思わずため息を漏らすコルトであった。
次回は25(土)に投稿予定です。
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