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ドラぷり放浪記   作者: えだまめ
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17/22

17話 ルナに代わってお仕置きよ!

※今回は少し暴力的な表現が含まれております。ご了承の上お読みください。


「しかしこれ本当に美味しいわねコレ。病みつきになりそうだわ。モグモグ。」


 エレンは街の中を歩きながら先程買ったシュティックというパンを上機嫌で食べていた。エレンはシュティックを甚(いた)く気に入ったらしく、食べる手をやめようとしない。紙袋にははじめ五本入っていたのだがその内二本は食べ終わり、今三本目の残りを口に放り込む。


(『姫様、歩きながら食事をするなど行儀が悪いですぞ。』)


「ふるふぁいふぁへぇ。ふぇふふぃ、ひぃぃへほ。」


(『食べながら話しをしてはなりませんぞ。はしたない。ちゃんと口の中のものを飲み込んでからおしゃべり下さい。そもそも何故さっきから念話を使わないですか?』)


(「ふぁっふぇふふぅふぃふぁふぇっふぁほぅわ、っいいじゃない。」)


(『念話の時は普通に言葉に出来るはずですぞ!?』)


(「冗談よ。ちょっとからかっただけじゃない。そんなことでムキになるなんてかるしうむぶそくなんじゃない。」)


(『まったく、こっちの身にもなって欲しいものですぞ。それよりそのかるしうむと言うのはなんなのですか?』)


(「さあ?ただ怒りやすい人はかるしうむって言うのが足りないらしいわよ。何となく骨とか囓じっとけばいいんじゃないかしら。」)


(『…私に犬にでもなれとおっしゃるのですか。』)


(「そんなこと私に聞かないでよね。」)


(『…。』)


 よくわからないところへ会話が投げ飛ばされ、呆れてドルマックは溜め息を吐く。ある意味通常運転ではあるのだがそれを認めたら負けな気がしてならない。そしてエレンは何事もなかったかのように四本目を食べはじめる。もう何も言葉に出来ない。


「返してください‼」


 突然街中に悲鳴が響き渡る。


「はふぃふぁふぃふぁ?」


 相変わらずシュティックを加えたまま、悲鳴が聞こえた方を見ると街道に人だかりが輪を作って出来ていた。通行出来ない程ではないが、それなりの広さを陣取っていたそれにエレンは興味を惹かれる。


「まだ夕飯には時間があるわね。爺や、ちょっと見ていきましょう。」


口に含んでいたパンを飲み込み呟くエレン。陽はまだ外壁に隠れてはおらず、まだ宿に戻らなくても時間には余裕があることを確認する。シュティックを食べながらも夕飯の心配をする当たり、エレンのお腹にはまだ余裕があるようだ。小柄の割りには以外と大喰らいである。


(『…正直嫌な予感しかしませぬが、くれぐれもお気を付けてください。』)


最早止めても無駄だと判断したドルマックは、せめてもの努めとし周りを最大限に警戒する。そんなドルマックの心労を余所にエレンは人だかりに向かって歩く。


「…ここからじゃ何が起きてるかわからないわね。ちょっとそこをどきなさい。」


思いの外人が集まっているようで、小柄のエレンでは外側から中の様子を見ることが出来なかった。そのせいか余計に中の様子が気になり、エレンは強引にも人だかりに割って入るように中へと進んだ。エレンの

横柄な態度に怪訝そうな表情を浮かべる者もいたがエレンは気にせず前へと進み、視界の取れる最前列へとやってきた。


「それは僕のお金です‼返してください‼。」


人だかりの中心には一人と三人が相対して向き合っていた。一人の方は小柄な身を隠すように青色のフード付のマントが頭から全身を覆われていた。エレンはその人物後に立っていためそれ以上のことがわからなかった。


「あぁ?何を言ってやがる?これは俺たちがそこで拾ったんだから、この金はオレたちのもんだ。そうだよなぁ?」


「そうそう。」


「コレはおれたちのなんだな。」


 それに対する男三人組は柄の悪さが一目でわかるような見た目をしていた。特に真ん中の男は岩のように大きな体をしており、大きく出たお腹の割に身体は鍛えられており、そこから伸びる腕と脚は丸太の如く太い。腕先にある拳はエレンの頭程の大きさを持っており、それに殴られては只では済まないことが容易に想像できる。膨れた体の上には丸々とした顔が乗っており、豚鼻を膨らませて歪な笑いを浮かべていた。その様にエレンは魔物のトロルを思い浮かべる。それ程人間としては歪で醜い姿に見えた。一応頭に生える申し訳程度の髪と肌の色がそれを人と認識させるが、とてもじゃないが好きにはなれない。エレンは男に対し嫌悪感を抱く。残りの二人は男の取り巻きのようで、男の両脇に立ち、トロル男の言葉に賛同するように頷く。


「またブブンタの奴らやってんのかよ。」


「あぁ、またコルトを狙って金を巻き上げてるらしい。」


「相変わらずだな。」


 エレンの近くで傍観している男たちが今の状況を話していた。トロル男、ブブンタと呼ばれる男の大きな手には彼には似合わないような小さな袋をつまみ上げていた。どうやらその袋には青色の人物、コルトと呼ばれる者のお金が入っているようだ。どうやらコルトからブブンタたちがお金を取って出来た騒動のようだ。


「しかしコルトの奴も懲りねぇよな。狙われるって分かってるのにいつも抵抗してよ。どうせ取られんだから素直に金渡しちまえばいいじゃねぇか。」


「アイツの意地じゃないか?」


「意地を張っても勝てねぇなら意味ねぇじゃねぇか。馬鹿なのかアイツ?オレだったら真っ先に諦めて金渡してるね。」


「私もそうするだろうな。どうせ誰も助けてやらないだろうし。」


「どうして助けてあげないのよ?」


「おう!?ビックリした。」


「何だ、この嬢ちゃん?迷子か?」


(『ちょっと姫様!?』)


 男たちの会話に突然エレンが加わり、男たちは驚く。しかし、エレンはお構いなしに質問を続ける。


「何で誰もアイツを助けてあげないのよ?アイツ一人で困ってるじゃない?」


「嬢ちゃんはこの街は初めてか。なら知らないだろうが、あれはこの街では当たり前なんだよ。誰もコルトを助けてやれないのさ。」


「何でよ?そんなのおかしいじゃない。そんなにあのキモいトロルが強いっていうの?」


「トロルって、まぁ気持ちは分からなくもないが。確かにブブンタたちが強いって言うのもあるが、別にそれだけがコルトを助けられないって理由じゃない。」


「じゃあ他に何があるのよ。」


「アイツは忌み子なんだよ。だから誰も関わりたくねぇんだ。憲兵の奴らも関わりたくねぇのか巡回してても見て見ぬふりをして通りすぎていきやがる。まぁたまに散歩してるギルマスが助けに入ったりしてるがあの人も忙しい身だ、毎回助けに来れる訳じゃねぇよ。」


「だからと言って私たちが止めに入ったとしても返り討ちにされる。しかも場合によっては私たちにまで巻き上げの対象にされかねない。だからみんなそれを恐れて手を出さないのさ。幸い憲兵も無視して歩いてるのだ。私たちが止めたなかったからといって責める者など誰もいないよ。」


「何よそれ!?狂ってるわ‼アンタたち頭おかしいんじゃないの!?」


(『姫様、落ち着いてください。』)


 ドルマックがエレンを宥めようとするがもはや耳に入らない。男たちのあまりの態度にエレンは怒りを覚える。現在目の前で行われている光景を当たり前の日常として見過ごしている彼らの考えは、エレンにとって異常なものとしか思えてならなかった。


「そうは言うが世の中弱肉強食だぜ?何もおかしなことじゃないだろう。強者が弱者に力を奮うのは当たり前だし、オレたち弱者は自分の身を守るのに必死なんだ。他人を庇ってやれる余裕なんてねぇよ‼それにさっきも言ったがアイツは忌み子だ。関わりたくなんてねぇよ‼」


 エレンの怒声に男たちも少し頭にきたのか強い語気で反論する。しかし彼の言葉はエレンにとっては言い訳にしか聞こえてこず、それを強気で言ってくる男の態度に腹が立つ。


「何情けないこと強気で言ってるのよ‼アンタが言ってるのはただの言い訳じゃない!?そんなのも分からないなんてホント馬鹿なんじゃないの!?」


「コイツ‼人が手を出さねぇからって調子に乗ってんじゃねぇよガキがっ!!だったらテメェが助けに行けばいいだろが!?」


「おいやめないか!?お嬢さんもコイツをこれ以上煽るのは止めるんだ!!」


 エレンの態度にとうとう我慢出来なかった男が掴み掛かろうとするが、それを別の者が羽交い締めして止めにはいる。


「人にばっか説教こいて何様のつもりだ!!テメェこそ口ばっかじゃねぇか‼出来もしねぇのに人のことばかり馬鹿にすんじゃねぇ‼」


 羽交い締めされながらもなお怒りの収まらない男はエレンに対し怒声をあげて睨み付ける。その怒りをエレンは真っ向から受けた。引く気などなかった。だから言った。言ってやった。


「わかったわ。」


 エレンが放った言葉を周りは一瞬理解できなかった。騒いでいた男も面食らったかのように目を見開きながら黙り、それにつられるように周りの男たちも静かになる。


「…テメェ、今なんてった?」


 最初に口を動かしたのは、先程まで騒いでいた男だった。その声はまるで信じられないものを目の当たりにしたかのように震えていた。何故なら彼女が口にしたその言葉は男にとってあり得てはならない言葉だったからだ。


「だからわかったって言ってるでしょ。私が助けに行ってくるわ。」


*****


「それは僕のお金です‼返してください‼」


 コルトは目の前にいるブブンタたち三人を睨みつける。


「あぁ?何を言ってやがる?これは俺様たちがそこで拾ったんだから、この金は俺様たちのもんだ。そうだよなぁ?」


「そうでやんす。そうでやんす。」


「コレはおれたちのなんだな。」


 ブブンタたちはわざとらしく惚けてみせる。明らかにコルトを挑発している。


「ふざけないで返してください‼」


「うるせぇなぁ。そんなに返して欲しければ取ればいいだろ?ほーら、お前が欲しいお金はここだぞ。ゲェーヘッヘッ。」


「くっ‼」


 コルトを小馬鹿にするようにブブンタはコ奪った小袋を持った腕を上げる。只でさえ体が大きいブブンタが腕を上げたことで更に大きく感じる。いや、実際に大きいのだ。ブブンタが持ち上げている小袋はコルトの二倍近い高さがある。それ故にブブンタから受ける圧力をより大きく感じてしまうのだ。動きたくても体を動かすことが出来なかった。ブブンタたちもそれを分かっているのだろう。三人はゲスな笑みを浮かべながらコルトを挑発する。


「ほーら、大事なお金なんだろ?取りに来なくてもいいのか?来ないのなら俺様がもらってやるがな。ゲーヘッヘッ。」


「あらあらコルトちゃん?可愛い可愛いお顔が怖ーい顔してるでやんすよ。頭にびびってオシッコ我慢してるでやんすか?でっひゃひゃひゃ。」


「オシッコのがまん、よくない。でへっでへっ。」


「…。」


 ブブンタたちにいろいろ言われるもコルトは何も言い返せない。彼らに怒りを感じない訳じゃない。だがそれでも彼らのことが恐ろしくて体を動かせないのだ。コルトは普段大人しく臆病な性格だと自分では思っている。実際に今も怖くて本当はここから逃げ出したいと思っている。今までやられてきた傷の痛みはまだ残っている。そのことを体は思い出し動かすことを拒絶する。情けない。自分の情けなさに自分に対しても怒りが込み上がってくる。それでも拒絶の方が強く体を動かないことが出来ない。悔しくてコルトは歯噛みする。


しかし次のブブンタの言葉でコルトの呪縛が解ける。


「あ?やっぱりあれか?親父が臆病者だとそのガキも臆病者になるのか?自分可愛さに家族すら捨ててあの世に逃げるような親父に育てられたんだもんな。それも仕方ねぇか。悪い悪い。」


「お前が父さんを馬鹿にするな‼」


 父親のことを馬鹿にされ、コルトが怒りが頂点に達する。コルトは怒りに身を任せてブブンタに向かって一直線に飛び出す。


「ゲーヘッヘッ。相変わらず親父に似て馬鹿だよなぁコルトちゃんよぉ。ホントおめぇは怖いもの知らずの臆病者だ。」


 ブブンタは尚も嬉しそうにゲスな笑みを浮かべている。特に何か構える様子もない。お金を持った腕を上げたままそこに立っているだけだ。両脇にいる二人も特に動く様子もない。コルトは構えた拳を無防備なブブンタのお腹に打ち込む。


「ーっ。」


 しかしブブンタに変化は見られない。相変わらずゲスな笑みを浮かべたままだ。むしろ拳を打ったコルトが苦悶の表情を浮かべる。


「でもよぉ。おめぇもおめぇの親父ももう少し自分の弱さを知ってた方が良かったなぁ。そしたら俺様に殴られることもなかったのになっ‼」


「がっ!?」


 コルトの背中に大槌で打たれたような大きな激痛と衝撃が走り、そのままブブンタの大きな腹に叩きつけられる。しかもブブンタの腹は固く、壁に叩きつけられたような痛みが全身を襲う。頭が揺すぶられ、意識が明滅する。怒りで周りが見えなくなっていたコルトは何をされたのかわからなかった。激痛に耐えられず立っていることすら出来なくなったコルトはそのまま地面に崩れ落ちる。


「おっと悪い悪い。腕を下ろした時につい手が元が滑って当てちまった。ゲーヘッヘッ。」


 コルトが立っていた位置にはブブンタの拳が下ろされていた。どうやら持ち上げていた腕をそのままコルトの背中目掛けて降り下ろしてきたらしい。背中に走った衝撃の原因の正体はこれだった。


「俺様は確かに太ってはいるがよぉ、デブって訳じゃねぇ。この腹も腕や脚と一緒に鍛えてるんだ。お陰で鎧みてぇに固くなっちまったがよ。ゲーヘッヘッ。」


「出やした‼お頭の判子下ろし‼お腹の上に相手を押し付ける様はまさに判子を叩く鬼のようでやんす。」


「あくまとのけいやく、いのちがない。」


「いつも思うがぁ、お前ら俺様を馬鹿にしてるのかぁ?」


「何を言ってるでやんすか。褒め言葉に決まってるじゃないでやんすか。鬼のように極悪非道で無慈悲なお頭にはぴったりでやんすよ。でっひゃひゃ。」


「おかしら、おに、かっこいい。でへっでへっ。」


「相変わらずだなぁおめぇらぁ。それに俺様は慈悲深けぇんだぜぇ?なんせ可愛い可愛いコルトちゃんには手加減してやったんだからよぉ。優しくしてあげねぇと、親父みたいにあの世へ逃げられちまうからなぁ。ゲーヘッヘッ。」


「さすがお頭でやんす。でっひゃひゃ」


「おかしら、やさしい。でへっでへっ。」


「くっ、そぉ…。」


 足元に倒れるコルトを見下ろしながら三人は楽しそうにゲスな笑みを浮かべる。全身が痛みで悲鳴をあげるが込み上がる怒りを抑えられない。コルトはうつ伏せになった体をゆっくりと起こそうとする。


「おうおう頑張るねぇコルトちゃんよぉ。でもおめぇはもうおねむの時間だぁ。ゆっくりといい夢見るんだなっ‼」


「ゴッ‼」


 ブブンタは立ち上がろうとするコルトを自前の太い足で蹴り飛ばす。腹部に刺さった蹴りの衝撃は凄まじく、内蔵が押し潰す不快感を感じながら地面を削るような勢いで滑り転がされる。


「ガハッ!?オェッ!?オゥェッ‼ウェッ‼…、ハァ、ハァ…うっ!?ヴォェッ‼」


 自分の内蔵が激痛に悲鳴を上げ、暴れまわるように内側から吐き気が込み上げる。まるで自分の体じゃないように制御が出来ない。小柄なコルトにとってブブンタの蹴りはまさに巨大な鈍器で殴られるに等しい。あまりの激痛に意識が飛びそうになるが、その度に内蔵がそれを拒絶するかのように吐き気を催す。胃の中身はもう出しつくし、嗚咽しか出てこないがそれでも吐き気は止まらない。その姿を眺めながらブブンタたちがコルトに歩み寄ってくる。その表情は喜悦に満ちた笑みを浮かべており、もはやその姿は狂人でしかない。


「まだ寝付けねぇのかぁ?コルトちゃんは悪い子だなぁ。仕方がねぇから俺様が手伝ってやるよぉ。ゲーヘッヘッ。」


 横たわりながら嗚咽をあげるコルト。込み上げてくる吐き気と激痛により意識は朦朧としており、最早立ち上がる気力は残っていない。彼らが近づくのをただ見ていることしか出来なかった。周りが何やら騒がしい気がするがもうどうだっていい。もう自分は立ち上がれない。痛くて苦しくて辛い。もう戦いたくない。ここから逃げ出したい。もう終わりにしよう。目を瞑ればすべてが終わる。そういつものように。


「待ちなさい。」


 しかし終わりが訪れる前に一つの声が訪れた。


「アンタたちの悪事はここまでよ。正義の魔法少女ルナムーンに代わって私がお仕置きしてあげるわ‼」


声の主らしい白黒の少女がコルトの前に立つ。

○ーンプリズムパワー・メイクアップ!


次回投稿は18日(土)に投稿予定です。


お読みいただきありがとうございます!

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