12話 ギルドカード 前編
投稿日一日ずれてた-( ̄□ ̄;)!!
28日を日曜日と勘違いしておりましたた。
とりあえずこのまま投稿致します。
今週2回目の追加投稿です。
「クラウスさん、エレンちゃん、お待たせしました。」
クラウスから一通り説明が終わり少しすると応接室に再びケイトが訪れた。どうやら手続きの準備が整ったようだ。ちなみに結界はすでに解いてあり、ドルマックもまた元の杖の姿に戻り、エレンの手元に収まっている。
「エレンちゃんどうしたの?」
エレンはクラウスの向かい側のソファーに座って項垂れていた。
「…何でもないわよ。」
そう言いながらもため息をつくエレン。どうみても何かがあったとしか思えなかった。
「ケイト、彼女にも色々とあるようだ。詮索しないであげなさい。」
「?わかりました。」
良く分からないが触れない方がいいとケイトは判断した。
「…どの口からそんな科白が出るのかしら。」
原因の一端でもあるクラウスに対しジト目で訴えるように睨みつけるエレン。結局父親の言いつけどおりにパーティーを組むことにしたのだ。面倒くさいと思いながらもパーティーを組むことに関して実はそこまで不服に思ってはいなかった。父親が自分のことを心配してくれてのことだから仕方がない。しかし父親の元を離れたはずなのに結局掌の上で踊らされていた事に不満を感じていた。もっとも最初から父親の指示通りにクレッツィオを目指して動いていたのだ。今更過ぎるのだが、それでもエレンとしては納得いかなかったようだ。さらにはクラウスも監視役に加わってより監視の目が強化された事に気付かされ頭を抱えるのだった。
(『姫様、いい加減に機嫌をお直しください。クラウス殿のおかげで滞りなくギルドに登録出来るのですから良かったではないですか。』)
(「うるさい!!爺やは黙ってて!!」)
(『ですがこのままですと話が進みませぬぞ?クラウス殿たちも姫様の事をお待ちしております。』)
(「…。」)
ケイトが部屋を訪れてもクラウスは話を始めない。エレンに気遣って待っていてくれているのだ。説明を終えてからクラウスはずっとこの調子である。一方でクラウスの横に座りなおしたケイトは自分の分の紅茶を用意していた。こちらは気を使っているようには見えないが、先程クラウスに言われて黙っているのだろう。どちらにしても話しかけてくることはなさそうだ。二人の様子にさらに不服そうな表情を浮かべるエレン。
二人が自分に気を使っていることなど疾うに気付いていた。ただその気遣いがエレンには気に入らなかった。何度も受けてきたその気遣い、視線、待ち時間。毎日のようにお城の中で受けてきたそれらは、まるで周りの者が自分のことを見下ろしているかのような錯覚に陥らされる。平等に扱われない。待ってもらっているはずなのに距離を放されているような感覚。まさに腫れもののような扱いだ。それが嫌で反抗するように駄々をこねては周りを困らせ、ドルマックに叱られる。〝もう子供ではないのですから、周りを困らせてはいけませんぞ〟と口癖のように言われる。〝子供扱いしているのはどっちよ、相手が勝手に困っているだけこっちが悪い訳じゃないわ〟と叫んでも相手にされない。それに腹を立てては同じことを堂々巡りのようにくり返してきた。それが城を出てからも同じようになってしまっていることにイライラしてならなかった。
(「…なんでみんなして私を子供扱いするのよ。」)
(『姫様。』)
(「あぁもう!!うるさいうるさいうるさい!!」)
「いい加減話進めるわよ!!別に礼も謝罪も言うつもりないから!!」
頭を振りかぶり怒りをぶつけるように怒鳴りつける。突然のことにケイトが紅茶を飲んでいた手を止めてキョトンとしていた。
「かまいませんよ。では手続きの方を進めましょう。」
しかしクラウスは何でもないことの様に受け止める。その態度にまたも苛立ちが込み上げてくるが歯噛みしてなんとか堪える。これ以上怒鳴り散らせば本当に話が進まなくなってしまう。
「それではケイト、君にお願いしてもいいか?」
「わかりましたクラウスさん。それじゃあエレンちゃん。ここからはぼくが手続きを進めながら説明させてもらうね。」
「ふん。別にかまわないわよ。」
「ありがとう。まずはこれの説明からだね。」
そう言って一枚の薄い長方形の金属板をテーブルの上に置いた。銀色の金属板には自分の愛称である〝エレン〟と書かれた文字と円形状の模様を描くように数々の文字が刻まれおり、模様の中央に紫色に輝く半球体の宝石が埋め込まれていた。テーブルの上に置かれた金属板を見たエレンは訝しむ様に眉をハの字にして見つめる。
「…魔法陣?それに真ん中のは魔石かしら?」
「そうだよ。この魔法陣と魔石にはギルド内での個人情報を記し、記憶させておく事が出来る魔法陣が刻まれているんだ。これがあることで他の街に行った時に一々説明しなくても、ギルド内での自分のランクや役職、受注クエストなどの情報を提供することが出来るんだ。要は身分証みたいなものだね。そのカードがないと今度はクエストとか受けることが出来なくなるから注意してね。」
「ふーん。なるほどね。」
エレンはテーブルの上に置かれた身分証となるカードを手に取ってみた。物の大きさはエレンの掌に収まる程度で貨幣よりも厚みがなく、重さもそこまで変わらない気がした。
「あと裏面にはギルドのマークが入ってて、外部への身分証としても使えるから、依頼主に会う時には提示してあげてほしい。またギルドが援助しているお店や宿なんかだと融通きかせてくれるお店もあるから利用してみるといいよ。君が昨晩泊ったパージュもその一つだね。」
「ふーん。」
もはや生返事しか返さないエレン。カードを裏返すと魔法陣とは別の模様が刻まれていた。同じように円状の模様ではあるが描くものは幾重にも伸びる線の数々。さまざまな幾何学模様が散らばる中、真ん中には表面と同じように半球体の魔石が顔を覗かせていた。どうやら球体の魔石をカードに嵌め込んでいるようだ。魔石から四方に伸びる線の先端には矢先を付いており、×字を描くように置かれておりいる。それを境目にして対局するように左に太陽、右に三日月が描かれている。そして魔石を中心に波紋が広がるように何重にも円を描きながらすべてを包み込んでいく。それはまるで方角を定めず全てを指し示す羅針盤のようであり、また全ての時を同時に刻む時計を現しているようだった。どうやらこれがギルドのエンブレムのようだ。そこに込められた意味をエレンは理解することは出来なかったし、興味がなかったのであまり気にもしなかった。
「じゃあこれ貰っていいのね。ありがとう」
「あ、ちょっ、ちょっと待って。」
エレンがカードをそのまま懐に収めようとしたので、ケイトが慌てて引き留める。
「何よ。私の名前が書いてあるんだから私が貰っていいんでしょ?まぁ名前間違ってるんだけど。」
「いや、確かにそれはエレンちゃんにあげるんだけど、まだ仕上がって…え?名前が間違ってる?でもエレンで間違いないよね?」
「エレンは愛称で本名はエレネシアよ。」
「えっ、ちょっと待って!?それは聞いてなかったんだけど。」
「それはそうよ。私は言ってないし、聞かれもしなかったんだから。」
「いや、確かにそうかもしれないけど…、困ったなぁ。」
頭を掻きながら本当に困ったように眉をハの字に寄せるケイト。そんなケイトの姿を見てざまぁみろと内心勝ち誇ったような気になり、エレンのイライラした気持ちが少し発散される。
「でもそうなるともう一度刻み直してこないといけないな。エレンちゃん、ごめんだけれど修正してくるよ。」
「別に今じゃなくてもいいでしょ?」
「いや、名前に関してははじめの内に直さないと後から修正できない様になっているんだ。」
「何でよ?」
「一応保険としてギルドでそういう風に決めているんだ。もし仮に誰かがクエスト中に問題を起こした時に、主犯となる人間が、捕まる前に名前を変更されて逃げられる可能性があるからね。そんなことをされたりしたらギルド全体の信用問題に繋がりかねないからたまったもんじゃないよ。だからそうならない為にも初歩的対策として名前だけは変更できない様にしているんだ。まぁもしそんなことが起きたらは被害を最小に押さえるため、トカゲの尻尾切りみたいな形で予防線を張ることも可能ではあるんだけどね。」
「…。」
「ケイト。あまり余計なことを話して相手の不安を煽るのは良くないな。君の悪い癖だ。」
「あはは、すみません。つい、いつもの癖で。」
「…。」
もはやケイトに対して疑いの眼差ししか向けられない気持ちである。どうもエレンはこの少年のようなイメージの強い彼女を好きになれないでいた。別に少年っぽさがあるからという訳ではないのだが、この軽い調子の話し方が自分の肌に合わない。そんな感じだ。彼の話を聞きながらも、またも胸の内にもやもやが募り始め様としていた。
しかし、ここで叫んでも話が進まない。我慢、我慢。と自分に言い聞かせて堪える。そんな自分はやはり大人であり天才なのだと、心の中で胡坐をかきながら鼻を伸ばして優越感に浸ってマイナスからプラスに持ち越す、ある意味最強のポジティブシンキングを発動する程の高みに登っていた。まさに今この瞬間、エレンの心は究極の境地に立っていたに違いない。強いて弱点があるとしたら、その感情を隠しきれずに表情に出ていることを本人が気付いていないことだろうか。
(『…はぁ。』)
先程まで百面相のようにコロコロと表情を変えるお姫様。今は落ち着いた様で、なぜか誇らしげな顔を浮かべていた。これを落ち着いていると言って良いかは定かではないが。とりあえずその様子を傍らで見ていたドルマックの心労は、もはや溜息以外で現せる言葉も出なかった。どうせ碌な事を考えていないことが良く分かる。いつものことだ。しかし、ここで空気を読まず(いやこの場合はある意味読んでいるのか)、説教をしてしまっては逆効果であるということは目に見えており、またもや話が進まなくなる。いや、それどころか最悪暴れてしまう可能性だって出てくる。そうなっては本末転倒ここまでの苦労(おもに心労)が無駄となってしまう。ここはおとなしく見守ることが正解だろう。決して面倒臭いとか逃げの姿勢である訳ではない。もちろん、後でちゃんと教育係としてお叱りさせていただきます。決して〝怒る〟訳ではなく〝叱る〟のです。そもそも最近の若者は〝怒る〟と〝叱る〟の意味を分かっていないものが多い。怒ると言うのは自分の欲求が満たされないことに不満を感じ、直情的に興奮することを〝怒る〟と言うのだ。それに対し〝叱る〟というのは、相手が悪い事をした時に指摘してあげることを〝叱る〟と言う。もちろん時には厳しく話すことが多くなるが、あくまでも相手に対する思いやりがあっての行動であることを忘れてはならない。もちろん、ただ相手の悪いところを一方的に指摘するだけ良い訳ではない。それではただ〝傲慢〟となって相手を見下しているにすぎない。さらにそこで直情的に行動してしまえば結局〝怒り〟となってしまうのだ。〝叱った〟のであれば相手が答えを出すまで責任を持つという覚悟が必要だ。そこまでの覚悟を持って接する者は少ない。私は覚悟している。私は最後まで全うする決意だ。それが偽善であり傲慢であり愚弄であり怠惰であり依存でありと滑稽であると罵られるかもしれない。それでも私はかまわない。それでも私は旦那様のために。エルザリーザ様のために。そして姫様、エネエシア様のために。あの日誓った時のことは今でも忘れまい。そうあの時―。
「それでなんだけど…、エレンちゃん大丈夫かい?」
「ふん。言われるまでもないわ。いいから早く続きを話しなさい。」
回想に浸りそうになるドルマックを現実に呼び起こしたのはケイトとエレンの二人の声だった。危うく現実とう―、いやあの時の決意の再度確認する大事なことだと、ドルマックは自分に言い聞かせる。
(「何ぼーっとしてるのよ。ちゃんとしっかりしてよね。」)
(『姫様にだけは言われたくありませんぞ!?』)
ドルマックが叫ぶも聞く耳持たず、エレンは無視してケイトの方へ顔を向ける。エレンの意を汲んだケイトは話を再開する。
次回更新は2/2(木)の予定です。
余裕が出来たらたまに追加投稿したいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございます!




