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ド外道奴隷商くんと鬼畜クソ女ちゃん  作者: スヤニカ
四章 悪魔祓い

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四章 山の海神様は嫉妬深い エピソード07 悪夢

 これは悪夢だ。

 夜だった。月明かりが周囲を黄色く染める頃合い。 

 皆が寝静まった時間。


「…………キヒヒ」


「キヒヒ…………」


 村へと続く分かれ道で、ドアが鳴るような笑い声が()()響いていた。 

 一つは悪魔の笑い声。

 もう一つは俺も知らない何者かの引き笑い。そいつは、月明かりの中に居ても存在が不明瞭で視認できなかった。


「…………真似しないでよ。」


「ぇ~…………久しぶりに会った第一声がそれぇ☆?ぐすんグスン哀しいなぁ…………チラチラっ?!」


「…………変わったね」


「ふふ?なぁにが~?」


「かつては、あんなに美しく気高かったのに。」


「いやん、照れちゃうなァ~♡」


「その慈愛には畏敬すら抱いていたのに、今じゃあ男の尻を追っかける醜い淫売なんて…………」


「ただの男じゃないよぉ?」


「落胤でしょ、分かってる。でも粘着してるのは同じ事じゃないかな」


「そういう君はじぇ~んぜん変わんないよねぇ。まだ人間のために身を削ってんのぉ?ゲェ~だよぉ、信じらんなァ~い萎えるぅ~。殺しちゃえば?自由になれるよん?」


「そんなの許さないから。たとえ貴女でも人間さんに手を出すなら、絶対に。」


「うっわ本気にしないでよぉジョウーくじゃんかぁ。もう、真面目ちゃんだなぁ。ほんとにくるってんのぉ?疑問なんだけどぉ?頭にハテナ浮かんじゃう☆」


「狂ってるよ。でも、貴女程じゃあない。」


「え~そうかなぁ?」


「そう。妾には、人間さんがいるから」


「ハッ、人間さん…………ねぇ…………力を垂れ流してるからそんなに弱体化してるんでしょう…………?」


「妾は元々、人間さんの糧になるよう造られたんだもの。彼らが望み通りに生きられるなら、いくらでもこの身をそぎ落とし捧ぐ。みんなが笑って暮らせるなら、それが妾の幸せ」


「それがこの大自然の理由~~??うっわ、うわぁ…………ドン引き☆自己犠牲とかキんモ!鳥肌立ったんだけどぉ責任取ってくれるぅ?」


「でも、昔の貴女から学んだことだよ。」


「人が変わる様に、神様も変わるよん。知らないのぉ?おっくれてるぅ~~あ、分かった!こぉんな辺鄙な場所に引きこもってるからそんな根暗になっちゃったんだよぉ!やーい陰キャ!キヒヒ」


「彼方様のせい?」


「……………………ん?なにがぁ?」


「彼方様がお隠れになったから。だから、そんな風に擦れちゃったの?」


「君は元々、周りが幸せならそれでいい。そういう変わり者だったから、大事なナニカを無くす苦しみを分からないのよん。」


「やっぱり、彼方様のせいなんだね」


「辞めろ、御君は悪くない。これは、私の弱さが招いた事ぉ。そーだなぁ…………君も、人間を全て殺されれば分かるかもよん。あの~なんだっけ、ほら森のヒッキー君みたいにさ☆」


「アマイモンのことを言っているんですか。」


「そそ。わかってんじゃん」


「彼はもう居ないですよ」


「あんれ~?そうなのぉ???」


「白々しい…………貴女が忘れる筈ないでしょ。彼方様直々の判決だったんだから」


「それが忘れちゃったんだぜぇ~。じゃっはぁね~バイビー」


「ま、待って、どこ行くの」


「ド外道君のお尻に向かってぇ出発ぅ進行~!!ドンドンパフパフ~」


「待ってってばっ」


「キヒヒ、もうなんだよなんだよぉ~な・ぁ。にぃ??」


「ぁ…………その、もう妾の名を呼んではくれないのですか?」


「うえっ?!へへ??急に何々ぃ?」


「昔は、他者を呼ぶ際はいつも、名を口にしていたじゃないですか。それが、どんなに矮小な存在でも、その人を見ている事に繋がるから…………と。優しい眼差しで誰に対しても平等に、そう言っていたじゃありませんか」


「えーめんど。呼んでほしいのぉ?」


「…………いえ、もういいです。代わりに問います。なぜ、妾の真似をしているの?」


「嫉妬に狂ったからん☆」


「嘘。」


「嘘じゃないよん、ほんとだよぉ」


「ううん、嘘。狂ったふりでしょ。気を引きたいだけ、そうなんでしょ。でも、そんな事をしても彼方様は戻ってこないよ。だってもう――――」


 その瞬間、空気が変わった。


「――――無駄な詮索はしない事ね。」


 その声音は、地面が割れたかのような寸断的一撃だった。


「私は狂ったの。彼方様を取り戻すまで、私は嫉妬に狂い続ける。」


「何に?私は人間さんが妾以外を頼る事にこの上なく哀しい気持ちになる。でも、貴女は何に嫉妬しているの ?嫉妬する理由なんて見当たらないけど…………」


「あの落胤に。魔力から――――彼方様から寵愛を受け続けるネフェリムに」


「…………あれは、彼のせいじゃない。持って生まれた呪いだよ。祝福なんかじゃない。そんなふうに思うのは可哀そうだよ。この世界の住人でも無いのに。そんな事分かってるでしょ」


「知った事か。」


「でもっ、」


「理屈なく、他者の内面を蔑ろにも表面だけをなぞり上げ、妬ましいとねめつける。嫉妬ってそう言うものでしょ。」


「でも、じゃあ、それこそ殺せばいいのに。そうしないのは何で」


「さぁね」


「やっぱり、まだ昔の貴女もいるんでしょ。だったらそう言って。妾も力になるよ。」


「は、ハハハ。君こそ、私の真似を辞めたら?」


「え。何が。」


「他者の気持ちを分かった気持ちで高説を垂れる。それで寄り添ってるつもり?見下しも大概にしなさいよ。人間風情の餌の分際で。」


「そんなつもり…………は」


「なぁ~んてね。キヒヒ、長話しちゃった。じゃ、今度こそバイバーイ♡」


 悪魔がその場を去った後も、不明瞭なナニカはおそらくそこに居たのだろう。


「…………姉様」


 その言葉だけが暗闇に溶けていった。

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