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ド外道奴隷商くんと鬼畜クソ女ちゃん  作者: スヤニカ
四章 悪魔祓い

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四章 山の海神様は嫉妬深い エピソード06 巫女との対面

 着物姿の男に着いて移動していた最中は、夢現のような光景だった。それというのも境内の中は濃い霧が足元を覆い隠しているせいで、雲の上を歩いているような錯覚に陥ったのだ。

 ただ、足裏はしっかりと砂利を踏みしめ地に足を着けている。頭上には太陽も顔を覗かせているため、不安に駆られる想像をすることは無かった。


「こちらです。」


 そう言って着物姿の男は境内の奥に建てられた社へ俺とマルファを案内した。

 社は一見すると黒色を基調としており、境内の雰囲気に沿う様な厳かな三階建ての木造建築だった。屋根は最上階から下層にかけて突き出しており、杉の木を彷彿とさせる。その全体像は大木を切って素材にしたであろう太い柱や基礎を三角錐を模した建築様式として整えており、土台はがっしりとしていた。

 夢現としていた俺の意識を現実へ戻すだけの存在感があるそれは、集落へ足を運んでから最も立派な建造物だった。 

 

「巫女さんはいつもこちらに?」


「いえ、いつもは生家に居ります。こちらか山にある社に足を運ぶときは、決まってお告げがあった時ですね」


 「お告げ」か。言われずともわかる。実在が定かではない神様のことだろう。俺としては未だ半信半疑。というか、村ぐるみのでっち上げの線を睨んでいるくらいだ。

 だって神様だぞ神様。言ってしまえば超常の長だ。

 鬼畜クソ女に憑かれている俺が言うのもなんだが、神様なんてものは心の中だけにあるまやかしですよ。そうでければ、俺に罰が当たらずのうのうと生きていけるわけが無い。


「何とも胡散臭い…………」


 俺が一人ごちた時、マルファからまたも注意を受けたが、着物姿の男は気にした素振りもみせず、社の両開きの扉を開け、サッと内部へと入って行った。

 となれば、俺達も後を追うほかあるまい。すると、どうやら内部は土足厳禁であるらしく、着物姿の男に倣い、俺達も靴を脱いで廊下を歩いた。

 外見からは想像出来なかったが、一階の内部は思いのほか広かった。閉じた引き戸が廊下に沿ってずらりと並んでいたのだ。

 床は木板の影響で一足ごとに鳴く。そのせいで、俺はいつも以上に足はこびを慎重にせざるを得なかった。

 天井には見たことのない模様や、説明を受けなければ理解できなそうな古い絵が物語のように描かれている箇所もあった。

 まぁ、設定作りとしてはそれなりに凝っているのではないですかね。俺としては退屈ですが、マルファからするとお宝の山に見えていたようだ。


「アルマちゃん。ここすごいわよ」


 「何がですか」と俺はため息交じりに聞いた。するとマルファは「例えばあれ」と、とある箇所を指さした。それは、大きな池、もしくは湖から大きな蛇が顔を出している絵だった。


「あの絵、おそらくはシーサー様じゃないかしらね。既存の魔獣にあんなの居なかったと思うもの」


 と言われましても。俺は魔獣に詳しくありませんから何とも言えません。


「はぁ…………気のせいでは?」


「そんな訳ないわよ。よく見て?あの大蛇の傍に小さな点があるでしょ。」


「言われてみれば確かに黒点がありますが、ゴミか汚れでは?」


「アレ船よ。しかも、帆があるから大型のね」


 「は?」ちょっと待ってください。もしそうであるならば、縮尺がおかしい事になる。だって、あの黒点が大型船だとしても、大蛇の目ん玉よりも小さいのだぞ…………?


「だから…………ざっと見積もっても、あの大蛇は数千メートル以上はあるんじゃないかしらね」


「スケールがおかしいですよ。そんな怪物いる訳ないでしょうに」


「まぁねぇ。アタシもそんな生物の存在聞いた事無いし。あんなのが二体も居たら世界は窮屈で仕方なくなっちゃうわ」


「ほら見なさい。きっと盛っているのですよ。」


「でも、神様ならあり得ない?」


「神様と言う言葉はなんでもありという意味ではないでしょうに…………」


 と、そこで会話は一旦終わった。

 着物姿の男が俺達を呼び止めたからだ。見やれば引き戸の一か所を開けており、そこから階段が現れたのだ。


「お二人とも、ここからは階段を登るのですが、少し急ですので手すりを使用してください」


 着物姿の男が言う様に、階段は確かに急だった。これはもはや梯子だろうと思う程傾斜が凄まじかったのだ。

 というか、やっぱり登るのではないか。こんなことなら先に言ってほしかった。俺であれば外から飛んで行けたのに…………。

 いやそもそもの話だ。わざわざ上階に行かずとも一階で待っていてくれればいいのでは?そう思ったのだが、着物姿の男は俺の心を読んだかのように口を開いた。


「外から来た方々には理解できないでしょうが、巫女様は天に近い方へというのがしきたりでして。滅多なことが無ければ、基本的には最上階に居るんです。」


「それはまた…………難儀な事ではないですか…………」


「はは…………これについては巫女様含め、ぼくたちも参っていますよ。」


 それからは無言となった。皆足を滑らせ落ちぬよう意識を手すりと足裏に集中させていたからだ。

 そして、登る事数分。二階部分を過ぎようやく最上階たる三階部分の廊下へと足を進めた。


「もうすぐです。あちらの部屋に居りますので」


 着物姿の男が手を掲げた方向にはまた引き戸がある。というか、最上階にはその一部屋しか見当たらなかった。

 いよいよという事か。


「では、参りましょう」


 着物姿の男が率先し引き戸を開けると、彼は俺へ中へ入れと促した。

 その瞬間、俺の目に飛び込んできたのは、腰を折って三つ指を突いている着物姿の巫女さんだった。


「お待ちしておりました」


 俺とマルファが部屋に足を踏み入れた途端、その声が顔を上げ出迎えたのだ。

 

「…………いろいろ聞きたいことはありますが。まず、座ってもいいでしょうかね」


 「はい」と笑みを貰い。俺とマルファは彼女と向かい合う様にその場に座った。続いて、着物姿の男も戸を閉じ、巫女さんの背後へ控えるように座る。

 これで話の席が出来上がった訳だ。 

 

「…………なぜ、俺の事をワダツミ様?は、知っていたのですかね」


「その前に、自己紹介をば。」


「まぁ、いいでしょう。もちろんそちらから教えてくれるのでしょうね?」


「はい。私は、シーサー・ペントと申します。」


 あの少女の名前と同じか。まぁ、マルファからありふれていると聞いているし、別段驚きはないが、


「では、そちらの男性は?」


 問われると着物姿の男は「申し遅れました」と口を開いた。


「ぼくは巫女様の補佐をしております。同じくシーサー・マイルスです。分かりずらいと思うので、マイルスと呼んでください」


 こちらもシーサーか。まぁいいさ。俺としては興味もないからな。

 ただ、俺の素っ気なさを剣吞への第一歩と危惧したのか、マルファが明るい声音――――とはいえ低く渋い事に変わりないのだが――――で名前を言った。


「マルファ様。この集落の調査に来ている方ですね」


「ええ、そうだけど…………巫女様は知っていたんですか、アタシのこと?」


「はい。ただ、その服装と足を運んだ真意を測りかねていたので、接触を控えさせてもらっておりました。申し訳ございません。」


「い、いいのよぉ。無理も無いわぁ…………」


 彼らの交流が一歩前進したところで、「さて、それでは」と巫女さんの顔が俺を向いた。

 しかしだ、


「俺の事は知っているでしょうから省きますよ。」


「はい。『落胤』――――アルマ・サン様ですね」


「…………その言葉はどこで?」


「ワダツミ様から」


「ウィズ・キャネルからではなく?」


「はい?どなたですか?」


「赤毛の女です。違うのですか?」


「は、はい。存知あげませんが…………?」


 巫女さんは動揺を隠せていない。その他の者も落胤という単語に聞き覚えは無いようにみえる。ならば今回、ウィズ・キャネルは無関係とみてよさそうだ。


「では、ワダツミ様とやらは何者ですか」


「我々が祀っている神様です。」


 要領を得ない。俺はその正体を聞いているんだが…………、


「…………ここに居るのなら会わせてもらいたいものですが」


「いいえ、居りません。必要な時にだけ声をかけて下さります。」


 らちが明かない。話が全く進まない。その場で足踏みしているような感じだ。


「普段はどこに?」


「ワダツミ様はこの地域そのもの。我々を見守ってくれています。」


 何を聞いてもはぐらかされるし、のらりくらりと躱される。

 一応マルファにも視線で助けを乞うてみたが、彼は曖昧に笑うのみ。どうやら事を荒立てぬよう気を使っている節が見られる。

 という事は、正体を解き明かす機会はまた今度ですかね…………。


「ハァ…………分かりました。じゃあ本題に戻りましょう。なぜ俺を呼んだのですか」


「今日、私がお米をといでいる時、お告げを聞きました」


 夢枕に立ったわけでは無いのか。というのもさることながら、そのあまりにも生活臭がする言葉に俺は一瞬肩の力が抜けてしまう。

 いや、それはまぁ巫女さんと言えど人間ですし、栄養摂取くらいするでしょうけど、これまで周囲を漂っていたミステリアスな雰囲気のせいで、虚を突かれた気分だったのです。


「…………あの、どうしましたか?」


 「あ、いえ。」と少し咳払いをして、「続きをどうぞ」と促した。


「ワダツミ様は『落胤(貴方様)』が助けになってくれるだろうと。手始めに先のお客人の相手をお願いした次第です」


「…………俺は慈善家ではないのですが。そもそも、なぜ俺に白羽の矢が立ったのですか?」


「はい。そう言われましても、それはワダツミ様のみが知る事で…………」


「質問もせず、妄信的に鵜呑みにしたのですか」


「質問しても答えてはくれないのです。ワダツミ様はただお言葉を授けてくれるのみ。」


「…………胡散臭いとは思わないので?」


 毎度のことながら、マルファが俺に対し叱りつけるように小言を呟いたが、巫女さんは俺に同意したのだ。

 

「…………そのむかし、初めてワダツミ様の声を聞いた時は、私も不審には思っていました。だって、急に声が聞こえるんですよ?それはもうびっくりしましたよ。けど…………」


 そこで巫女さんは苦笑した。要は『素』を出したのだ。


「…………時が経つにつれ、ワダツミ様の言い分は基本的に合っていると気づきました。」


 その巫女さんの様子から察するに、巫女という立場とそれを排した普段の自身とで、ハッキリ分けているのではないだろうか。例えば、プライベートと仕事を分ける様な感じだ。

 そしてもしそうならば、今後彼女と交友を深めれば、彼女自身がワダツミ様をどう思っているか聞き出せるかもしれない。

 俺がそんな風に展望を考えていた時、巫女さんは再度口を開き、俺の意識を表層に引き戻した。

 

「実際今回もワダツミ様の言う通り、貴方様は助けて下さいましたし…………」


「いえ、今回は俺ではなく、こちらのマルファさんの手柄ですよ」


 巫女さんは背後に控えるマイルスへと顔を向け「そうなの?」と聞いた。

 もちろん彼の答えは「はい」だ。


「では、お礼をしなければなりませんね。マルファ様の調査に微力ならがお答えしましょう。」


「あら、いいの?」


「はい。」


「じゃ、じゃあ単刀直入に。どうしてここの人たちは、山の神様として、海の神様を祀っているの?」


 返答には一瞬だけ間があった。巫女さんは口を開けた後、即座に閉じたのだ。

 もっとも、その逡巡の真意をくみ取る事が俺にはできなかった。ただ、しいて言えば俺にはその仕草がまるで誰かに口止めされたかのように見えた。

 そして、巫女さんは簡素にこう言った。


「かつて、このヴァニラ列島全土は海に沈んでいたからです」

 

 それは、歴史を覆す提唱だった。


「海って…………それ本当ですか?」


 マルファの疑問はもっともだ。俺もヴァニラ列島全土が元は海に沈んでいたなんて話は聞いた事が無い。仮にそうだとしても、一体何百年、いや何千年前の話をしているのだろうか。

 

「アタシの…………いえ、アタシ達の常識だと、このヴァニラ列島の成り立ちは地層の隆起です。近年行った最新の地層の年代測定によると、最も古い年代で十万年以上前ですよ?しかも、測定不能な地層もまだまだ見つかっている。つまり、十万以上前には既にヴァニラ列島の原形は出来上がっているはずなんですけど…………?」


「それよりもっと前の話です。原初の頃。この世界の始まりは濃度の高い海でした。」


「…………え、と。つまり今以上に塩っ辛かったってこと?」


「いえ、『魔力濃度の濃い』という意味です。生物も空気も大地も、ありとあらゆる存在が、母なる海――――高濃度の魔力から生まれたと聞いております。」


「じゃ、じゃあもしかしてヴァニラ列島だけじゃなくて、この世界全てが海に沈んでいたってこと!?」


「おそらくは。」


 マルファの追及に対し、巫女さんは真摯に応え続けた。だから、マルファは今が畳みかけるチャンスとばかりに、己が内に溢れ出した疑問を口にしていったのだ。


「で、でも、地層の隆起による陸地の形成。それはここだけの話じゃないわ。ヴァニラ列島はもちろん、フェルメニア大陸とジーランド大陸。この三大陸はこの世界が出来た時から、そこに在ったと結論がついているのですけど…………?」


「はい。もちろんこれは私どもの信じる事。よそから来た方にまで押し付ける道理はないでしょう。だから私は、聞かれたことを答えているにすぎません。」


 へぇ、そうなのか。俺も初めて知った。いやだってこれまで興味もなかったし仕方ないはずだ。俺の子供時代は自身の心の矯正に躍起になっていたから、周囲に気を配る暇なんて無かったんだ。

 つまり、俺がなにを言いたいかというと、専門外だから口を閉じていようと決めたという事。


「海に沈んでいたという仮説。それは誰の提唱なんですか?それとも、大昔から語り継がれてきたという事でしょうか?」


「…………その質問は、どちらも正しいです。」


「な、なにが?」


「巫女として選ばれた時、ワダツミ様からそう聞くのです。」


「つまり、ワダツミ様がそう言う風に自身の存在を伝えるって事?」


「はい。」


「す、すごいわ。それってとんでもない事よ!?」


 言うや否や、マルファは俺へと子供のようなキラキラした瞳を向ける。

 しかし、一体何がマルファの琴線に触れたのだろうか。


「だって、もしそれが本当なら、この村で崇めている神様は、現存する言い伝えの中で最も古く、格式が高い事になるもの!」


 あぁ、そう言うものなのか。まぁ、俺はよくわからないから適当に頷くだけなのだが…………。

 一方、巫女さん達は自身の崇める神が賞賛を受けたと知ったのか、嬉しそうにも仄かに口角を上げた。


「それで、ワダツミ様の姿って言うのはどんな風なのかしら?」


「…………御姿ですか。」


「あ、ごめんなさい。言えないならそれでもいいのだけど…………つい調子に乗ってしまったわ」


「いえ…………別に言えないとかは無いのですが。」


 え、そうなのか。それにしては先ほどの俺の質問では、はぐらかすような言い方をされた気がしたが…………まあいいか。下手に口を出して機嫌を損ねるのも面倒だし、黙っていましょう。


「そうですね。夢枕に立つ時の御姿は時々によります。としか…………」


「不定形ってこと?」


「あ、えと。見知った相手であったり、見知らぬ者であったり。時には白い鳥や喋々だった時もあります。」


「じゃあ、声は?」


「こえ。声ですか…………いわれてみると…………どうでしょうか。言わんとする事が直接わかるような感じ…………ですね。はい。」


 念話とかそう言う感じか。まあ、物語だと良くある設定だな。別段目新しさも無いありきたりな話だ。この集落の教養も知れたものだ。


「…………アルマちゃん。今失礼な事考えなかった?」


 どうして俺の周りはこうも察しがいい者が多いのだ。

 ダメもとだが、「いえ、別に何も」と言っておきましょう。


「ほら、もういいでしょう、学者先生。これ以上質問攻めにするのは失礼ではありませんかね。」


「あ、あらそうね。つい熱が入っちゃって…………」


「いえ、構いませんよ。これでお礼になったのならば、ですが」


「もちろんよぉ。出来れば日を改めて次の機会にはこの村のルーツと巫女様の歴史も知りたいのだけど…………?」


 おい、全く懲りていないではないか。俺は呆れて嘆息を吐いた。

 一方、巫女さんは「はい。」と承諾する。


()()()()()()()()()()()()そちらに致しましょう」


 …………は。は?今何と言ったこの娘は。次と言ったのか??

 嫌な予感が胸中を上って、つい口を突いて出た。


「あの、次とはどういう意味ですか」

 

「え、山の作業を止めていただきたいのですが」


「はぁ…………?それは先ほどの件ですか?


「はい。そうです」


「聞いていませんよ。」


「もちろん!」


 おい、おいっ。マルファおい!何を勝手に承諾しているのだ。


「俺は知りませんよ…………学者先生、あなた一人でやって下さいね」


「じゃあ、アタシも情報を言う必要は無いわねぇ?」


「…………この…………はぁ…………なんでこんな事に…………」 


「仕方ないじゃない。チャーチヒューズ工業よぉ?」


「…………なんですかその言い草は。あなた先ほどはそんな企業名知らないと言っていましたよね!?」


「アレは嘘よ。建て前」


「はぁ!?なんでそんな意味わからない事をッ」


「角が立つかもしれなかったからよ。アタシも良くは知らないけど、チャーチヒューズ工業って言えば、首都では最近よくない噂を聞くわ。確か…………新しい陣の開発を為したらしいけど、正攻法じゃなさそうなのよねぇ」


「…………どんな噂です」


「アルマちゃん系統のよ」


 という事は、巫女さん達には刺激が強いかもしれないと思い、俺はマルファの耳に顔を寄せ、小声で聞いた。


「…………裏社会ですか?」


 マルファはウィンクする事で肯定した。


「だから、アルマちゃんもお金儲けできるんじゃない?」


 ううむ…………確かに金は欲しい。あって困る事など一つもないからな。

 しかしだ。相手は企業だろう。そうなると公に存在している以上、ハイリターンハイリスクだ。むやみやたらに攫うのは足がつく。準備が必要なのだ。


「やはり、一度持ち帰って精査する必要がありますね」


「という事で、受けるわ!」


「いえ、俺は受けるとは一言も――――」


 しかし、俺の否定は無残にも虚空に散った。巫女さんがニッコリとほほ笑んだのだ。


「――――ありがたい事です。」


 いやだから、俺は受けるなんて言っていないんだが、既に俺も参戦する方向で話が進んでいる。


「あのですね、俺は例の件の知恵をお貸し頂きたく、足を運んだだけで…………」


「それで、巫女様としては山から追い出したいの?それとも、人の出入り自体を封じたいのかしら?」


「学者先生?聞いていますか?」


「いえ、お山自体は皆のものです。我らが独占するのはまた違うでしょう。ただ、私どもとしては、大掛かりな工事をしないで欲しいのです。既存のまま清貧にしておいてほしく…………」


「あの…………巫女さん?」


「そう。じゃあ一度作戦を練りましょうか」


 甚だ不本意ながら、誰も俺の声に耳を貸してはくれなかったのだ。

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