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ド外道奴隷商くんと鬼畜クソ女ちゃん  作者: スヤニカ
四章 悪魔祓い

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四章 山の海神様は嫉妬深い エピソード02 幽霊?

 大通りを歩き続け三十分。俺は目的地たる集落へと到着した。ここは盆地のようになっており、周囲を山が取り囲み、開けた平地が広がっていた。

 そして、この地を踏むや否や、ここまでの道のりを共にした鉱物採取家たちは、各々が拠点を作るために離れて行った。ただ、彼らの向かう方向はほとんど同じ。俺が教えた()()()鉱物がある地点の方向でした。

 

「馬鹿な人たちだ…………」  


 彼らの後ろ姿を見て、俺はほくそ笑んだ。ただ、それも束の間である。すぐに気持ち切り替えると、自身の目的を果たすため周囲を見渡したのだ。

 今いる場所から覗ける景色に民家らしきものは見当たらなかった。ちらほらと見える建物のほとんどは、小さな小屋なので、農機具を入れておくためのものだろう。

 居住地の代わりに俺の視界を占有するのはだだっ広い穀物を有する畑や、収穫を間近に控えているであろう黄金色に彩られた田んぼである。これらを一世帯で耕すのは流石に難しいと思うので、この辺り一帯は村共同の仕事場と言った感じではないだろうかと推察する。


「と言う事は、もう少し奥に入って行く必要がありそうですね」


 そう思った俺はとりあえずあぜ道に沿って集落内へと歩みを進めていくことにした。

 するとほどなくして、畑仕事の最中の村人がちらほらと視界に映り始める。けれど、彼らは余所者である俺を見ても、特に興味関心を示さない。ともすれば、もう見飽きたとでも言った風に農作業中の手を止め、馴れ馴れしく挨拶を寄越してきたのだ。

 その仕草の所以には、先ほどの鉱物採取家たちが背景に在るのだろうと思う。これまでにも何人か余所者が足を踏み入れていたのでしょうね。

 もっとも、邪険に追い払われるよりは全然マシである。だから、この場は俺も軽く手を振り返すことで、自然な感じで彼らとの距離を詰めた。


「仕事中失礼。俺はアルマ・サンと申します。実は人を探しておりまして。こちらに学者先生がいらっしゃってはおりませんか?」


「うおっ。先生け…………?」


 俺が聞いた村人の男は心当たりがないと言った感じで首をひねると、近くに居た別の男も呼び寄せ聞いた。すると、そちらの方はピンと来たのか何度か頷いたのち、口を開く。


「ぁー…………ああ。いるよ。いる。多分そうだ。このまま進むと左右に分かれんだけども、右のほう行くと俺の住んでる村が有んだ。そこの外れの方にビリー爺さんって人の家があんだわ。見かけねぇ顔の人が出入りしてるって聞いたわ。」


「ビリー爺さんですか。」


「おお、そうともさ。爺さん早くに身内亡くしちまってな。独りで寂しがってたとこに上がり込んだみてぇだから、俺らとしちゃあ元気な顔見れて嬉しいもんさ」


 おや、それが本当ならば心温まる話ではないですか。俺も土産の一つでも持ってくればよかったですかね。

 まぁ何はともあれ、居場所は分かったし向かいましょう。


「有益な情報感謝します。それでは」 


「あぁ、ちょいちょい。わりーけんども、爺さんとこ行くなら、コレも持って行ってくんねか?」


 と、渡されたのは大きなザル。その上には今いる畑で採れたであろう穀物と野菜が数種類乗せてある。しかも、穀物と野菜も町で売られている物より瑞々しく大きい。渡されたのがこんな辺鄙な場所でなければ、高級食材だと錯覚する程立派な収穫物です。


「爺さんも歳だかんなぁ…………多く採れたから差し入れだぁ。」


「丹精込めたのでしょうね。美味しそうではありませんか」


「おお。そうかい?綺麗なべべ着てるもん(都会もん)がそんな風に言うなんて、うれしいねぇ。」


「住んでいる所など関係ありませんよ。事実ですので。」


「なんだあ、おべっかがうめぇなぁ?仕方なねぇなァほれ、コレでも食ってけ」


 と、今度は木苺を何個も渡された。こちらも例にもれず丸々と太って熟れている。少し触るだけで果汁が指に着いてべたつく程だ。


「持ってってもらう礼だぁ。ま、食いすぎると腹壊すんだけどもなぁ。あははは」


 とは言え、本来ならば貸し借りを作るのは嫌なのですが…………宅配の賃金ということならば、今回はお言葉に甘えましょうか。


「では有難く頂くとしましょう。」


 彼らから見送られ、俺は木苺を頬張りながら再度あぜ道を進んで行くと、聞いていた分かれ道にたどり着く。道はYの字に枝分かれしていたため、俺は言われた通り右に逸れて歩みを続けた。

 ここまでの道のりを経て、俺はこの集落がエーランドファミリーのある地域に特色が似ているような感じがしていた。

 道中に華美な装飾は無いし、すれ違う村人のほとんどが質素な服装で、使用している農機具も年季が入った錆びついた物や、研ぎ続けて小さくなった物が多かったから。

 町では金儲けのために畑を耕すが、ここでは文字通り食っていくために穀物を栽培している。昔ながらの生き方をしているという風に俺には映ったのだ。

 

「それに、空気も澄んでいますね。」


 と思った瞬間。

 調子ついた一陣の風が、俺のうなじをなぞり上げ、寒さに震えた。


「…………夏場はいいかもしれませんが、この季節だとより一層寒く感じてしまいますね…………」


 着ている衣服の襟を首にまとわせるように立たせ、俺は風を凌げる場所へと歩みを早めた。

 その時、俺が着ているコートの裾が何かに引っかかったかのように、後ろに引かれた。

 何事かと背後を振り返ると、質素なワンピース然とした衣装に、黒髪でツインテールの子供が居た。


「お兄ちゃんこれたんだね」


 そう言って笑ったのは先ほど行方をくらませた少女だった。「あぁ、やはり居るではありませんか」。俺は安堵した後、彼女に視線を合わせるためしゃがんで声をかけた。


「お嬢さん、さっき突き飛ばされていたでしょう。あの後どこへ行っていたのですか?」


「うん、いっぱい人が来たから逃げちゃった。あはは」


 まったく…………まぁ、見た感じ怪我も無いようだし、良しとしましょうか。


「そうだ、お嬢さんはビリー爺さんという方のおうちはご存知ですか?」


「知ってるよ。なんで?」


「実は、そちらにご厄介になっているという人物に会いに来たのです」


「えっ。私に会いに来たんじゃないのぉ~??」


「違いますよ。」


「ブーブー!」


「いえ、むしろ喜ぶべきことですよ。見知らぬ男がお嬢さんに会いに来る方が、体裁が悪いのですから」


「チェ~…………ま、いいやー。じゃあ行く?」


「案内してくれるのですか?」


「うん、いいよ」


 そのお礼に木苺を分け与えることにし、俺達は二人であぜ道を抜けた先の砂利道を歩いた。

 しばらく歩いた時、「そう言えば名前を聞いていなかった」と少女に聞いた。


「私?シーサー」


「シーサーさん…………憶えました。俺はアルマと言います。どうぞよしなに」

 

「なんか…………お兄ちゃん変だね」


「はい?」


「普通に話していいよ?」


「はて、どういう意味でしょうか」


「敬語いらないよ、私子供だし」


「ああ、そう言う意味ですか。」


「だって、この辺りだとあんましそういう人居ないから、ムズムズするぅ。ブーブー!!」


 そんな風に口をすぼめられてましても…………俺は元々口調が荒いのですよ。

 百歩譲って分別のつく大人相手ならば軽く流してもらえるが、情緒幼い子供相手となると、情操教育によろしくありません。


「親御さんに怒られたくはありませんから。それは追々。交友が深まれば自然と抜け落ちていくでしょう。」


「そっかー…………仲良くなればいいのかぁ」


「そうです」

 

 少女が仲良くなろうと接してくるのであれば、村人が俺へ警戒心を持つことも起こりえないでしょう。そうなれば、俺はこの集落で幅を利かせられる。

 と言う事は、鉱物資源に着手することも易くなるかもしれません。思わぬ収穫ですね、いい方向へ着地しました。

 俺が内心で高笑いを浮かべていると、「ねぇ、お兄ちゃん」と呼び止められる。だから、「どうしましたか」とシーサーの顔を覗き込むと、彼女は「いー」と歯茎を見せ、苦い表情を浮かべていた。


「なんか…………意地悪な顔してたよ」


 おっと、顔に出ていたか?それとも子供特有の察しの良さでしょうかね…………まぁどちらにせよ、これは俺の落ち度です。

 少女が万が一にも俺に感化され、純真な性根が歪んでしまったら、ご両親になんと言い訳を垂れればよいのか…………あってはなりません。今後は細心の注意を測り努めなければ。


「失礼、深い意味はありません。お嬢さんとの会話が楽しくて、つい表情が緩んでいたようです」


「仲良くなれたって事?!」


「ええ、少し前進ですね。」


 俺の言葉が嬉しかったのでしょうかね。少女は一度体を縮こまらせた後、震えながら飛び跳ねた。


「…………でも、そこまで喜ぶことでしょうか?」


「うん、おとうさんとおかあさんがね、カッコイイ人が居たら仲良くなっておけって!」


 …………そうか。外見以上にマセいてると思っていたが、教育の賜物でしたか。

 「まっことけしからん」俺はやれやれと頭を振った。しかし、今居る集落の環境を思い出し、すぐ考えを改めることになった。

 何しろ、この集落は町の喧騒から縁遠い。

 たまには鉱物採取家含めた旅人が立ち寄る事もあるようだが、それを除けばほとんど集落内の人間関係で完結してしまう事だろう。そうなると、血筋が絶える恐れもある。ともすれば、近親でまぐわい血が濃い者も出てきやすくなるかもしれない。

 そのような危険性を鑑みれば、少女であろうとも性に奔放であった方が、いざと言う時しり込みしなくなるのかもしれません。


「まぁとは言え…………部外者たる俺が首を突っ込む事ではありませんか」


 「何が?」と聞いてきたシーサーの口には、木苺をぶち込み閉口させることでその場をごまかし、また歩みを再開した。

 そうして、かれこれニ十分程歩いた時には、景色は移り変わっていた。

 畑や田んぼは見当たらなくなり、それらと入れ替わる様に、集落の居住地が多くみられる地域へと、俺達は足を踏み入れていたのだ。

 視界に映る民家は全てが木造建築の平屋であった。砂利が敷かれた道を挟み込むようにぽつぽつと点在している所を見るに、やはり人工が少ないのか、大所帯で住み込んでいるのではないだろうか。

 俺がそんな風に周囲を見渡していると、シーサーはとある民家を指さした。


「あこ。爺ちゃんの住んでるとこ」


 シーサーの指さす地点は、砂利道を外れた地点にある自然と一体化したような古い木造建築の平屋。

 近づくとその建物が長い年月ここに在った事実が視界情報として飛び込んできた。たとえば、屋根には苔に加え木の枝も生えているし、地面からは蔦が壁を這いよって緑のカーテンのように伸びている。

 まさに、住んでいる人同様、家屋も年配と言った哀愁を感じた。


「よくもまぁ、倒壊せずにいられるものですね」


「夏は涼しいよ。今は寒いと思うけど」


 まぁ、いかにも隙間風が吹きすさびそうな古屋ですしね。シーサーが言うまでもなく、害虫も出入り自由な事は想像に難くなかった。

 それからシーサーに手を引かれた俺は古屋の玄関へ歩みを進めると、今にも壊れそうな腐りかけたの引き戸を優しく叩いて声を掛けた。

 すると、「はーい」と言う()()()()返事が、建付けの悪い引き戸を開ける。


「あ…………れ?アルマちゃん??」


 そう言って戸惑いを浮かべたのは、この集落には似つかわしくない黒色を基調としたゴスロリ衣装の人物。ウェーブが掛かった黒髪と大きな黒目は、男を魅了するには十分な色香がある。

 その人物こそまさしく、俺の探し求めていたマルファ・リュイービであった。

 

「何々なに~どうしちゃったのよぉ。こんなところまでぇ。もしかしてアタシに会いに来たの?」


「まぁそうなのですが…………」


 俺が少し言いよどんだのには訳がある。それは彼が男性であるという事実。 

 スカートの裾を摘まみ上げ翻す彼の姿は可憐であるが、その声はやはり低く渋い。混声合唱の『バス』を難なく歌い上げられそうな程の低音と可愛らしい姿のミスマッチ感が、俺の脳みそを混乱させてやまないのである。


「…………女装趣味は相変わらずのようで」


「当然よぉ。男が着飾っちゃいけないなんて法律は無いし。アルマちゃんだって、何時も内面を見ろって言うじゃなぁい」


 「いや、まぁそうなんですが…………」。マルファの場合、自認もきちんと男であることが、俺の知り合いにはあまり居ないタイプなもので、少々扱いに困るのだ。

 もっとも、扱いに困るだけで、そのあり方を否定する気は毛頭ないですよ。


「ほらほらそんな渋い顔しないで。アタシの事はいいから。で、アルマちゃん。どうしてここに?」


「いえね、あなたの助手からここに居ると伺いまして…………少し知恵をお貸し頂きたく。」


「あら、訳あり?」


「以前、手紙にも書いた内容ですが、例の件で。」


「…………そういう事。いいわ。あれから時間も経ってアタシも収穫があったし。とりあえず上がって?」


 マルファが家の中へと手招きした時だ。俺はふと思った事を口にした。


「こちらのお嬢さん――――シーサーも一緒にいいですか?」

 

 その途端、シーサーもマルファも等しくキョトンとした顔を浮かべる。俺の発言の意図を測りかねているようだった。

 いや、一応言っておきますが、俺は別にシーサーと共に居たいとか、もっと仲良くなりたいとか、そういうロリコンを発症したわけではありません。本当です。

 俺は単に、マルファにもシーサーが見えているのか。という検証をしておきたかっただけなのです。

 もっとも、


「シーサーちゃんも?別にいいけど…………?」


 と、マルファが少女の名前を呼んだことで、俺の疑問は杞憂に終わりましたがね。

 やはりシーサーは実在の少女のようです。それも、余所者であるはずのマルファですら知っている存在感のある普通の子供。

 よかった。幽霊じゃありませんでした…………。


「アルマちゃん。何を安堵してるの?」


「いえ、なんでもありません。」 


 それから俺とシーサーは家に上がり込んだのです。

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