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ド外道奴隷商くんと鬼畜クソ女ちゃん  作者: スヤニカ
四章 幕間 アルマ・サンの日常が崩れる時  

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間幕 エピソード12 ??????・????

「お前、オマエェ!!!」


 俺が止める間もなく、鬼畜クソ女がウィズ・キャネルへと飛び掛かった。

 でも、


「――――。」


 と、ウィズが聞き慣れない『五文字』をつぶやいた直後、鬼畜クソ女は押し付けられるように床へと落ちた。まるで、奴の周囲だけ重力が過剰に掛かっているかのように、鬼畜クソ女は全身の骨を軋ませ呻く。

 俺にはその原因も、現象も理解できなかった。だって、魔術を使った痕跡すら感じなかったのだ。

 それでも、鬼畜クソ女はウィズをねめつけながら唾を吐いた。


「私に干渉するな!!この()()をどけろ!!!誰に許しを得てこんな不敬をォォ!!!」


「ごめんなさいね。アナタに会いに来たわけではないの。」


「ふざけるな、彼方様を返せ!!!」


「ふふ、返す。なんて面白い表現を使うわね。」


「なんだとっ」


「アレはアナタのものではなくってよ。ましてや私でもない。知っているでしょう?」


「ヌけぬけとぉ………ッ、襍、蝨溘?鬲皮視がッ!この、$B%5%?%s(Bがァ!!


 しかし、鬼畜クソ女の毒舌は無情にも重力に従いウィズに届く事は無かった。やはり前回と同様、暴言は綺麗な音に変換され、規制されたのだ。

 そうすると、次にウィズの顔が向くのは俺に対してだ。


「アルマ、お金」


 ウィズは余裕を持って、緩慢にも俺に手を差し出した。

 「分かりましたよ」と神妙に頷き、金庫から一千万を取り出すと彼女の足元へと投げた。


「それで、返済は終了ですね」


 ウィズは「やれやれ」と苦笑しながら金を持ち上げた。そして、「確かに」となんの感慨もなさそうに、かつ金の数を数える事もせず、アポロへと持たせた。

 でも、それでは終わりの筈なのに、ウィズ・キャネルは一向に帰ろうとしない。


「まだ何かあるのですか…………というかあなた、なぜわざわざ顔を出したのですか。勝手に持って行くと言っていたでしょうに。」


「ん。そう思っていたのだけれど…………アナタ契約をミスったでしょ。可哀そうに思ったそうよ。」


 「はい?」それは、俺が鬼畜クソ女を祓うことが出来なかった事を言っているのか?


「だから、機会を作って上げようかと思ってきて上げたの。」


「上から目線は辞めていただきたい…………どういう意味です。」


 「ほら」と、ウィズは鬼畜クソ女の方へ手を招いた。


「彼女は今動けない。大いなる意思に押し込められているから。今なら契約を結ぶ絶好のチャンス。私が見届けて上げるけど?」


「なんの意図があって、そんなことを」


「私じゃないわ。」


「は?」


「だから、言い出しっぺは私じゃなくって、アポロ。」


 そちらを見やると、アポロが頬を掻いて苦笑していた。


「あなたが?」


「はい、キャネルさんからあらましを聞いて。流石にアルマさんが可哀そうだと思ったんですよ。だから、手助けを」


「あなたにどんな利があると言うのですか」


「な、ないですよ。そんなもの。自分で言うのもなんですけど、親切心のつもりです」


 本当か?と言うか、ウィズ・キャネルがアポロの思いに大人しく従ったと言うのか?あの、傲岸不遜を絵にかいたようなそこの女が…………? 

 だとしたらこの男あなどれない…………どんな手を使ったんだ。


「あ、その顔は信じてないですね」


「当然でしょう。とてもじゃありませんが、ウィズ・キャネルが大人しく従うとは思えませんね。」


「もうっ、失礼しちゃうわ。私の事を何だと思っているのよ。」


「むしろ教えてもらいたい。あなた、何者なのですか。」


「そいつは、試す者だッ!」


 その時の鬼畜クソ女の声は、()()を受けている様子は無かった。もちろん、怒りは据え置きのまま、奴は身じろぎながら続けた。


「森羅万象その全てを試しに手に取り、気に入れば目を通す。悪魔だ。耳を貸すな。私を助けろアルマッ」


「はぁ…………?」


 助けろと言ったか今?だとしたら、滑稽を通り越してもはや呆れだ。

 大方、ウィズ・キャネルを下げれば、巡り巡って自身を助けてもらえるとか、そう言う浅はかな魂胆だろう。

 馬鹿が、虫が良すぎる。いや虫唾が走る。誰が手を貸すものか。


「お前がこれまでどれだけの一般人を傷付けてきたか。思い出したくもない。」


「私は、お前に手を貸してきただろうが。借りを返せ」


「ははは、何を?どこで?いつ?」


「アレクスの時はお前に従い大人しく消した。」


「お前はその時、おじさんを見殺しにしただろうが」


「パッシオーロ・ダリオ三世も、お前の所へ誘導した」


「誘導?消しかけたの間違いだろ」


「エンバー・ライトの時は、私に矛先が向くよう邪悪に振舞った」


「殺すぞ。元々お前は邪悪そのものだろうが。それに、お前は一般人を遊びに使うに飽き足らず、俺をマンハンターだと零した。それはどう言い訳するつもりだ?」


「バーニス号じゃあ、顔剝ぎ男を分かりやすく舞台に上げた!フォリアファミリーの時だって、わざわざ刺客を探し出してお前のところへ連れ帰った!」


「ハッ詭弁だな。皆を危険にさらしておいて…………自身の失敗を高らかに宣言しているだけだろう。俺はお前を信用できない」


 しかし、「そこまで」と、俺の肩に手を置いたのはウィズだった。彼女はあろうことか、「少しは、彼女の言い分も聞いてあげたら?」なんて訳の分からないため息まで吐いて、俺の苛立ちを諫めたのだ。


「その娘の言うことは本心よ?」

 

 「意味が分かりませんよ。」俺は、ウィズを睨んだ。そして、「どういうことですッ」と犬歯まで見せつけた。


「アナタ、神の視点で物語を見たことはある?」


「…………何の話です。それが何の関係が」


「一人称視点ではなく、客観的な物語の事。私は常にそこから見ている。もちろん、神様じゃあないけれど。でもだからこそ、私は何でも知っている。だからこそ、私は物語(人生)に干渉しないし、誘導もしない。ただ、文字を追う様に指をさすのみ。」


 そう言うのならば、今俺の肩に乗せられたウィズの手はなんなのだ。「この手は、誘導ではないのですか」。俺はそれを振り払いながら聞いた。


「私はただ事実を述べているだけよ。今回は、アナタに解釈の違いがあったから。ついね。」


「俺が聞いているのは…………敵対しているんじゃないのかと言う事です。あなたは一体、どちらの味方なのですか」


「私は別に誰の敵でも味方でも無いわ。ただ、私の()()はアナタも良く知っているでしょう?」


 忌々しいが確かにそうだ。

 ウィズ・キャネルが何者かは置いておいて、彼女の千里眼。いや異能の知識量は疑いようのない事実。


「じゃあ何か。この悪魔は、俺を助けていたとでも言うのですか?」


「とっても捻くれたやり方だけれどね。以前言ったでしょう。元はとても慈悲深い神様だったって。」


「ふざけないで下さい。それで一般人が傷を負っては意味がない。傷を負って良い訳がない!!」

 

「仕方ないのよ。彼女はね、もう狂っちゃってるから。善心の出力がうまくできないの」


「…………ッち。付き合っていられない…………っ」


 吐き捨てるように俺は魔術の火を周囲に灯した。 

 契約なんて今はもうどうでもよかった。一時も早くこの鬼畜クソ女を殺してやりたくて仕方ない。

 殺意が自動的にも体を動かしたのだ。


「そいつは今殺します。」


「あら、契約はいいの?」


「ええ。俺はあなたも信用できませんから。」


 「それに…………」そもそものところ。こんな風に鬼畜クソ女を拘束できるのなら、バーニス号の時に手を貸してくれればよかったんだ。

 それを何を今さら…………可哀そうだから手を貸してやるだと…………?一体人をどこまで下に見れば気が済むんだ。どこまで高みの見物を決め込んでいるつもりだクソアマが。

 腹立たしいことこの上ない。俺にマウントをとるな。


「…………ウィズ・キャネル(あなた)と出会った時点で、彼方様とやらに誓った言葉は効力を失ったはずです。今ここで殺さねば、また誰かが犠牲になる。」


「ま、待ってアルマ、聞いて。」


「なんだ鬼畜クソ女。命乞いか?どうせすぐ復活する癖に。」


「私はあなた自身を傷付けたことなんてないでしょう…………?」


「だから、信用できないと言っているだろう。お前の言葉なんて、妄言としか処理できない」


「あなたの気持ちが理解できるからよ。心はもう傷だらけだから、せめて体は傷ついてほしくないの」


「言うに事かいて…………どこまで俺の神経を逆なですれば気が済むんだお前はッ。俺の何を知っているというんだ!ええッ!!?言ってみろ!!!!」


「いいえ、分かる。仮初の契約でも繋がっているから。孤独は哀しいでしょう。」


「孤独だと?」


「そう、何処にも理解者がいない孤独感。自身の歪みを分かってもらえない疎外感。私も同じ。彼方様はもういないから…………狂った私は誰にも理解してもらえない。でも、せめてあなたは。私と言う()()を凌駕する邪悪が傍に居れば、苦しみは薄れるでしょう」


「…………俺に下を見て安心しろとでも言ってるのか」


「私はね、神様だから。今でも神様だから。手の届く範囲(貴方)の苦しみは和らげてあげたいの。」


「いいや…………信用できない。お前は悪魔だ。」


 だから俺は躊躇うことなく鬼畜クソ女を火で殺した。

 

「今までの行いを悔い改めろ悪魔が。俺に説教垂れるのはそれからだ」


 そして鬼畜クソ女は即座に灰になった。弱火でジワジワと殺してやるつもだったのだが、俺の怒りが魔術に作用したのだろう。自身でも驚く程の火力が放たれていたのだ。

 ウィズはその様を見ると、嘆息を吐いてアポロに首を振った。


「…………はぁ。だから言ったでしょう?彼に助力なんて火に油を注ぐだけだって。」


「そ、そうみたいですね…………」


「チッ…………見世物ではないのですよ。あなた達はまだ帰らないのですか」


「帰る。帰るわ。でもね、最後に一つだけ。事実を教えて上げるわね」


「俺は今気が立っている。下手な事を言うのなら、あなた方も今ここで殺しますよ」


「それは無いわ。だって私達は一般人だもの。」


 この女。俺が掲げる主義を盾にしやがって本当に腹立たしい。

 いや、もはや憎らしい。その余裕な面が苦痛に苛まれるのなら、いくらでも金を積むぞ俺は。


「…………能書きはいい、早く答えろ」


「あら、口調もおざなりになってきたみたいね。分かった分かった。話しましょ。今すぐに。」


「さっき、あの娘はアルマの言葉に応えていたでしょう?」


「言い訳をな。それが?」


「恨み心頭なはずの私をそっちのけで、アナタに対して、狂いながらも真摯に応えていた。その意味ようく考えた方がいいと思うけど?」


「戯言だ。奴の言葉に脳の容量をさくなんざ、時間の無駄だ。」


「ふふ…………ひねくれ者ねぇ。ま、出来の悪い子ほど可愛いとも言うけれど。」


「気色の悪い発言を辞めろ。殺すぞ、化け物が」


「あらまぁ、眉間に皺まで寄せちゃって…………こわひこわひ。さ、アポロ帰りましょう。」


「あ、はい」


「もう二度と俺の前に現れるなよ」


「ええ。私はそのつもりだけれど。」


 「俺もだ。」もう顔見たくない。そんな風に彼女達へ背を向けたのだが、そうすると今ここで寝入っているお姉さんたちが視界に入る。


「待て。彼女らはどうすれば起きる」


「あ、そっちはあと二時間も経てば起きますよ。逆に言えばそれまではぐっすりです。だから、ベネットさんを余所に追いやるには今が絶好の機会。」


「ほぉ…………それはいいな。」


 それからウィズ・キャネルがこの場を去った後。俺はお姉さんを抱えると風魔術を用いて空へと飛んだ。そして、トグサの街から遠い名もなき森の中。てきとうな木の上に引っかけた後、屋敷へと帰ったのだ。


「…………はぁ」


 それから、俺は書き置きを残した。内容は『悪魔払いに戻ります』とそれだけ。白紙の紙には余白が多く残ったが、正直それ以上何を書けばいいのか。俺には分からない。

 

「さて、平穏は終わりです。悪魔祓いに参りましょうか…………」

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