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ド外道奴隷商くんと鬼畜クソ女ちゃん  作者: スヤニカ
四章 幕間 アルマ・サンの日常が崩れる時  

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間幕 エピソード08 バーバラの決断と行動4

 定例行事たるホーン様一家の安否確認も済み、わたくしは拠点に戻るとすぐさま部下を呼び付け、事実確認をとるために声出しを行いました。

 その後は情報が上がってくるまでの間、隙間時間で伯父様と夕食をとっておきます。

 今晩も伯父様の手料理でした。正直に言うと、部下の作るものよりも下ごしらえが粗雑で、見た目も落ちる男料理なのですが、舌に広がる味だけはかつてあった幸せな時間を思い出させてくれるので気に入っています。

 そして、伯父様とは他愛ない会話を交えながらも満足のいく夕食を終えた今、楽しかった時間はあっという間にも過ぎ、時刻は既に夜の十時半。

 本業の時間がやって参りました。


「エンフィー、頼んでいたことは済んでいますか」


 執務室内へと灯りをつけながらわたくしが訊ねた相手は「はい。」と、書類を手にしています。そして、わたくしが執務机に収まると同時、彼女は「どうぞ」と執務机へとそれを置きました。


「バーバラ様がおっしゃった通り、例の賭博場はごく最近できたものです。」


 手に取った書類には汚い文字でそう書かれている。内容は一応要点だけは押さえてあるものの、これではほとんどメモですわ。

 文字として残し相手に見せるには不十分な印象を受けます。


「経営者は最近出所したトニオ・オルム。従業員も刑務所で集めた者達みたいですね…………だから規模も小さくて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あれ?バーバラ様どうしましたか?」


 エンフィーの話を聞き終えた時には、思わず目頭を揉んでしまいましたわ。でも、わたくしが眉間に皺をよせたのは書類の出来に対してではありません。

 書類の内容はいやに明瞭で、事情に詳しそうな書き方だったから、「まさか」と唸ったのですわ。

 つまり、


「あなた、もしかしてその賭博場を事前に知っていたのですか?」


「え、はい。でも、さっきも言ったように少人数ですし、そんなに大事にはならないと思いますよ」

 

 もう、なった後なのですわ…………。

 嘆息が出ますが、冷静に考えて見ると今回の問題を作り出したのはほとんどあの女性です。彼女がお金をばら撒かなければ、ご子息様の周囲でこのような事態にならなかったのも事実。

 なら…………まぁ、エンフィーを叱責するのは流石に可哀そうですわね。


「そうですね。でも、我らの商品足りうる物達でもありますわ」


「と言うことは、次の標的はトニオですか」


「ええ。明日の明朝決行いたしましょうか。」 


「電撃ですね」


「書類によると、少人数なのでしょう?」


「そうですけど。」


「なら問題ありません。それに、乗り込む場所が賭博場ですからね。我ら同様、彼らも夜はホームですわ。夜間営業が終わった疲労困憊の頃合いを襲うのが一番易いでしょう」


「今回は一人一人狙わないんですか」


「電撃戦ですからね。自宅を襲撃するとそれだけ人員を割かなければならず、人目も気にしないといけませんわ。でも、残念ながらうちにその様な余裕はございません。しかしながら、夜間営業が終わった頃合いなら、賭博場内の環境を人払いが済まされている状態に出来ますわ。しかも、彼らを一網打尽にも出来る。一石二鳥ですわ。」


「おー…………すごいすごい。流石です」


「っ~、わざとらしく拍手を打つのは辞めてくださいまし、馬鹿にされている気分ですわ…………」


「そんなつもりは、ないんですけど。」


「本当です?」


「はい。リスペクトしてます」


「…………はぁ、素直に受け取るとしますわ。」


「そう言えば、誰が行くんですか」


「わたくしとあなた。二人だけで。」


「うぇ!?相手は十五人いるんですよ?」


「十五人しかいないのですわ。それに、最近はホーン様の家の家事(普通の生活)が続き、荒事から遠ざかっておりましたからね。殴り殴られ、殴ろうとして殴られ、躱され殴られ、サンドバックになって…………勘を取り戻すいい機会ですわ…………じゅるり。」


欲望(ヨダレ)出てますよ。そんなに欲求不満なんですか?」


「ハッ、コホン。失礼。」


「あ、はい…………でも、そうなると、ここの管理は」


「その間は、チェインに任せなさい」


「えぇあいつ…………ですかぁ。」


「またそんな事を言って。相変わらず仲が悪いですわね。」

 

「だって、あいつ馬鹿ですよ?」


「あなたよりは賢いですわ」


「そ、そんなことないです。私の方が…………天才です」


「先の書類、四つも誤字がありましたわ。」


「……………………まぁ、そういうこともありますけども。」


「意味不明な略語を含めれば、合計十一点にも上りましたわ。」


「……………………まぁ、天才は分かってもらえない事が多いですし。」


「ただ、それでもなんとなくニュアンスが伝わるのが、なんとも不思議ではありますけども…………」


「ほら、やっぱり天才なんですよ」


「あらまぁ、紙一重とでも言いたいので?」


「…………??なにがですか????」


「前言撤回ですわ…………やはりあなたは頭が弱い。」


「んなっ」


 「さて」、乗り込む準備をしなければなりませんね。

 そう思い、わたくしがクローゼットから無難な衣服を物色し始めたところ、


「あれ、お出かけですか?仕事は?」


 と、見当違いな文句を貰う。「はぁ、まったく、何を言っているのです。」と、半目でエンフィーを睨んでおきましょうか。


「わたくし、明朝決行すると言いましたわよね?」


「あ、はい。」


「まさか、その時間帯になって乗り込むとか、思っていたりしませんわよね…………?」


「違うんですかっ」


「当たり前ですわ。お客として入り込み適当な所へ忍ぶ。そして、時間帯を見計らって襲うのですわよ。そうでも無ければ、営業時間の終わりには戸締りをされて侵入に一手間かかるでしょう?」


「あ、ああ、確かに。ですね…………え。じゃあまさか徹夜ですか…………」


「その分、ちゃんとお給金を弾みますわ。」


「そんなぁ…………お肌に悪いですよぉ?」


「文句言わずにあなたも着替えなさい」


「…………まぁ私よりダメージが大きいバーバラ様が頑張るなら。」


「ちょっと、ボソッと言わないでくださいまし。言っておきますが、わたくし既に保湿も乳液も済ませていますわ」


「ずるいですっ。言ってくれれば私も準備しておいたのに!」


「さぁさぁ、早く早くキビキビと。口では無くて手足を動かしなさい。時間は待ってはくれませんわ。」






               ※※※※※※※※※※※※






 わたくしとエンフィーが着替えを済ませ、賭博場に足を運んだのは丁度日をまたぐ頃合いでしたわ。

 賭博場はエンフィーの情報通りそこまで大きくない。空き家を二、三軒ほど貫いて合併させたようなサイズです。わたくし達がダリオファミリーから取り上げた、シュバルの街の賭博場と比べれば、大人と子供ほどの差でしょうか。

 ですが、深夜であるにもかかわらず、人の多さと賑わいは負けず劣らずと言った感じ。見方によっては、大人気の繫盛店にも映るでしょう。

 これだけお客の出入りがあるのなら、ご友人のお父さまも、バイアスがかかってもおかしくはないですわ。


「いつも、こんなに混んでいるのでしょうか」


 そう言ったのは、シュバルの街の賭博場にも流用できるコンセプトや接客の仕方があるのでは、とそう思ったからですわ。

 でも、エンフィーは首を横に振りました。


「今日は特別です。なんでこんなに賑わってるのか…………()()()()ときはここまでじゃなかったんですけど」


 「はい?」今、聞き捨てならない事を言いませんでしたか、この子。


「もしかて、ここで遊んだことがあったり…………?」


「え、はい。」


「だから詳しかったのですわね…………」


「いえ、え?ダメなんですか。仕事終わりですよ?」


 うーん。まぁ、私用と言う事でしたら、わたくしも何か言う権利はないですわね。


「ならいいですわ。サボりでしたら、あとで折檻ですが。」


「…………ま、まさかぁ。ありえませんよ。そんな、はは」


 なにやら白々しい態度ですわね…………でも、今は優先事項をはき違えてはなりません。

 だから、意識を切り替えるためにも一度お互いを観察し、怪しい所がないか確認しておきましょうか。


「ジッと見てなんですか?ほ、ほんとにサボりじゃないですよっ」


「分かっています。それより、襟が裏返っています。直してください」


 エンフィーの服装は、夜の冷え込みに耐えうる革のジャケットとタイトなジーパンです。少しパンクな感じがしますが、目立つほどではないのでいいでしょう。

 一方わたくしは地味ですわ。適当な長袖と長ズボンを合わせ、その上にコートを着ただけ。


「バーバラ様、やっぱり芋っぽすぎて逆に目立つんじゃ。」


「仕方ありませんわ。お店は既に仕舞っていましたし。」


 それに最近はお買い物に行く時間も無かったので、持ち合わせもあまりないのです。

 私が唯一持っていたまともな衣装は今、エンフィーが着ているので、尚のこと仕方ありませんわ。


「元はと言えば、あなたの衣装センスが壊滅的なのが悪いのですわ。なんですの、あのドラゴンが描かれたシャツは。ドン引きですわ」


「かわいいじゃないですか…………アレ」


 可愛い?アレが?あの、妙にリアルな鼻水を垂らして寝そべっているドラゴンの不摂生姿が??

 百歩譲ってお子様がアレを着る、ともすれば部屋着であるならばともかく。大の大人がアレを普段着として往来を闊歩するなど、隣を歩くわたくしの身も考えて欲しいものですわ。


「申し訳ございませんが、理解できませんわ」


「そんなぁ」


「さぁ、参りましょう」


 ぐずるエンフィーの背中を押し、わたくし達は中へ入りました。

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