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ド外道奴隷商くんと鬼畜クソ女ちゃん  作者: スヤニカ
三章『十格』

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04 三章 十格 エピソード31 嵐3

「…………ぁ」


 くそ、体が動かねぇと思ったら、椅子に縛られてんのか。

 いや待て、俺は確かエンバーに殴られたはずだよな、じゃあここは、牢屋か?どうだ?いや、違う…………な。

 薄暗く、水滴音が響く、湿気てるコンクリの部屋。一見して窓が無い事を考えれば地下だろう。罪人の健康なんざ二の次。不衛生な所が牢屋っぽいのは確かだが、それにしちゃぁ広すぎる。

 しかも、人も見当たらねぇ、看守も居ないって事だ。そんなことはないだろうよ。

 

「どこだここは。」


「ああ、目が覚めましたか。」


 反響するその声にハッとして首を振った時、少し離れたところでそいつも、左右で色合いの違う双眸を光らせ、こちらを見ていた。


「お()ようございます。ガーベラス・フォリア様」


 白い髪は部屋の暗さに染められ灰色がかってる。その整った綺麗な顔は、影に覆われ異常に青白く。まるで、能面のように無表情。


「アルマ、これはお前の仕業か」


「いいえ。俺の部下が企んだこと。」


「なら本当に…………エンバー・ライトも手駒にしたのか」


 だが、アルマは曖昧に肩をすくめるのみで、真意は分からなかった。


「あぁ、だからといってそう固くならないで下さい。ほら、以前交わした約束を果たしに――――遊びに来ただけですので」


「拷問でもしようって魂胆か。なら、男前にしてくれよ。ただ、股はやめてくれや。残念がる女がわんさかいるもんで。」


「おや、流石は十格のボス。気概がおありだ。ですが残念ながら今回は、俺とあなた二人で一緒に遊ぶのですよ。」


 殴ってやろうかと身をよじって見たが、やはり縄が邪魔して動けねぇ。


「…………俺に拒否権はないようだ。で、何をする?賭け事(トランプ)か?それとも、殺し合い(闘技)か?」


「察しがよろしい。その二つを掛け合わせました。」


 仰々しくアルマが懐から取り出したのは、六発装填式のリボルバー鉄砲。そのうちの弾倉に一つだけ弾を込め、アルマは近くのテーブルの上へ置いた。

 ゴトリ…………と重たい音が鳴る。さながら、命の重さの音とでも言ったところか。

 しかし、


「で、アレで何をする。ルールは?」


「いたってシンプル。こめかみに銃口を突きつけ、互いに引き金を引いていく。そして、弾が己が命を貫いた時ゲームは終わりです。」


「野蛮な遊びだな。」


「お上品な遊びしか知りませんか?」


 とは言え、縛られ、魔術の行使も出来ないところを見るに、陣も刻まれてんだろう。

 なら、やはり俺に今拒否権はない。


「お前の脳漿が飛び散る様。それを脳裏に刻んで酒のつまみにしてやるよ」


 「では始めましょう」。アルマがそう言い、指を弾いた時、火魔術が部屋の四隅に光を灯した。

 その時、ようやくこの部屋の全貌を見た俺は絶句した。

 居たのは、俺だけじゃなかった。


「コーツっ、ニヤも。」


 部屋の壁際に居た二人は、口を縫い合わせられた状態で俺と同じように椅子へ縛られていた。しかも、状況も最悪だった。アルマの部下たる青と黒髪のツートンカラーの男と、竜人の二人からこめかみに銃口を突きつけられ、すすり泣いている。


「あれらは観客兼、残機です。その方が、盛り上がるでしょう。」


「…………それで俺が動揺するとでも思ったか?」


「おや、彼らのあの表情を見てもなんら感慨が浮かばないと?」


「アイツらが心配してんのは俺の安否だ。お前らこそ、寝首掛かれないようしっかり照準定めておけよ。三下」


「素晴らしい。では、さっそく始めましょう。」


 俺の胴体と足を拘束していた縛りが解かれた。が、コーツとニヤが人質に取られてる以上、下手な真似は出来ねぇ。

 だから、俺は睨みつけながらも、アルマの座る対面へとテーブル越しに座った。

 依然として、俺の手首は縛られたままだが、ゲームに支障はなさそうだ。


「では、俺から。まず手本をお見せしましょうか」


 アルマはリボルバーの弾丸を見せつけるように再度込め直し、弾倉を回転させた。

 そして、左目を見開くと一切のためらいを見せず、()()引き金を引いたのだ。


「ッ…………」


 ギョッとした。意表を突かれ喉が上下した。一発づつ交互にするものだと思っていたからだ。

 しかし、アルマは今回の賭けに勝って見せた。弾丸は三回空振り、嚙み合わせを直すような乾いた『カチ』ッという音が鳴るのみで終わった。


「さ、あなたの番です。」


 確率が三分の一にまで引き下げられた状態で、アルマは俺に鉄砲を渡した。

 だが、この距離ならばアルマを打ち仕損じる事は無い…………ここでコイツを殺すか…………?


「ご自由に。ただその場合、あなたが俺に銃口を向けるより早く、お仲間が死ぬでしょう」


 お見通しだってか…………だろうな。なら、お前の土俵に立って、殺してやるよ。

 引き金に人差し指を添え、銃口をこめかみに押し当てた途端、コーツとニヤが暴れかける。


「…………静かにしてろ。」


 俺はそして、二回引き金を引いた――――


「――――俺の勝ちだ」


 勝利の女神は俺の微笑んだ。いや、この場合は沈黙した。と言った方が正確かもしれん。

 とにかくだ。俺は死ななかった。

 なら、死ぬのは、


「お前の番だ。アルマ」


「おや、負けてしまいましたか」


 アルマはしかし、まるで意にも返した様子も見せず、銃口をこめかみに突きつけると、また躊躇なく引き金を引いた。

 その瞬間、俺が思い浮かべたのは、エンバー・ライトに殴られた時聞いた破裂音。つまり、銃口からは硝煙が上がり、アルマの脳みそを貫いた――――


「…………さて、第二ラウンド(コンテニュー)と参りましょうか。」


 ――――はずだったのに。


「な、んで生きてやがる」


 返事は、アルマが俺に寄越した鉄砲から見て取れた。


「銃口が溶けてる…………っ、お前、まさか。」


「ええ。撃たれる前に、魔術で燃やし尽くしました。」


 馬鹿な。いかさまだぞ。

 いや、待て。その前にそもそもだ、あの一瞬で、発砲音を聞いてから術を発動させたのか?!どうやって。黄金ランク並でも無ければ、そんな芸当できる筈が…………。

 

「訳はこれです。」


 アルマが左目を見開き、俺を映した。

 その目は黄色を基調に緑がまばらにちりばめられ、肉の断面に似た模様だった…………いやまて。俺はそれを、見たことがある。

 そうだ。ロシノの死体は、左目が無かった。まさかとは思ったが、じゃあ…………本当に、


「ロシノの目かッ」


「ええ、あなたもご存知の通り。これは、己の体感時間を極端に遅める力がございます。」


 スポーツで言う、ゾーンに入ったような状態を意図的に作り出せる魔眼。名は知らねぇ。ロシノに聞いた時には毎回はぐらかされてきた。

 代わりに、常日頃から魔力を異常に食われるデメリットがある。ロシノが今まで死地から戻ってこれたのは、アレがあったから。そして、年相応に老けていたのもそのせい。

 ロシノにとっちゃ、自身が捨てられた所以。忌むべき閉じた左目だったはず、


「奪ったのか。」 


「もらい受けました。知らなかったのですか?」


 「生憎と」以前の格印書記載の時には、左目を隠してたからな。見えなかったし分からなかった。

 いや仮に見えていたとしてもだ。お前の容姿なんざ興味もねぇよ。


「だが、お前は負けた。俺の勝ちだろう」


「はて、これは異なことをおっしゃる。」


「お前、言葉を違える気かッ」


「どちらが…………はぁ、言ったでしょうに。どちらかの命を弾丸が貫くまでやると。」


「イカサマヤロウが、ぬけぬけと」


「ですから、フェアになる様に。()()を用意したとも言ったでしょうに…………」


 残機…………だと。

 まさか、こいつ。まさかっ。


「あなたが、無理だと判断した時には、彼ら(お仲間)を代わりに撃ってもらって構いませんよ」


 俺をゲームの席に着かせるために、コーツとニヤを捕えたわけじゃなかったのか。

 そうか、これは意趣返し。


「復讐のつもりかっ、アルマ」


「いえ別に。ならば俺が命を危険にさらす必要性はないでしょう」


「どうだかな」


「…………さて、続きと参りましょうか…………フェリル、用意を」


 アルマは部下から鉄砲を受け取ると、また引き金を引いた。そして、今回は一発目から発砲音が鳴る。

 だが、俺は笑えなかった。


「あぁ…………運が悪いようですね」


 ただそれだけ。まるでくじ引きでもするように、アルマは淡々と呟き肩をすくめる。無表情のまま、俺を見る。その左の魔眼が動く度、俺は気味が悪かった。

 硝煙がたばこの煙に置換され、ロシノを彷彿とさせたから――――さながら死者が俺を見ている。そんな世迷言を考えてしまう。

 いや、気圧されるな。あの魔眼は魔力を食う。いくら魔力量が多かろうと、じきに限界が来る。

 問題はそれまで俺が勝ち続けられるかどうか。 

 いや、勝つ。こんな三下に舐められたまま終われるか。


「ロシノがこっちに来いって呼んでんだろ」


 気持ちで負けられるか。そう意気込んで口を開いたが、結局俺の声は震えていた。


「そうかもしれませんね。フェリル、次の物を。」


 アルマは俺の虚勢に気付かなかった。と言うより、俺に対し興味関心が感じられない。ただ、場面を転がす事だけを目的に動いているような無機質感。無表情も加わると、本当に同じ人間か疑わしくなる。

 

「さて、ではまた俺から参りましょう」


 カチ、カチ、カチ…………カチ。と、今回は一度に四回も空振り。

 そして俺へと鉄砲が寄越される。その際もアルマはずっと無表情。生き残った喜びもまるで浮かべず、俺を侮蔑する嘲笑すらない。

 喜怒哀楽をどこかに落っことしてきた、目の前のイカサマ野郎は俺に対し、二分の一で死ねと言っている…………冗談じゃねぇぞ。

 引き金にかけた人差し指が動かねぇ、生存本能が邪魔をして、グリップを持つ握力が弱まる。手汗で滑る。


「手が震えておりますよ。フォリア様」


 「黙ってろ」。自分は死なねぇ土俵を作り上げておいて、舐められる筋合いはねぇぞ。

 だから…………俺は引き金に力を込めた。

 その時。


「んん゛!!!!!!」 


 俺の意思を鈍らせるつんざきが、ニヤから放たれ、俺をそちらへ振り向かせた。

 ニヤは強く頷いていた。自分を撃てと、身代わりを強く訴えた。

 

「…………馬鹿が」

 

 最悪だ。俺が固めた意思が…………削がれた。鉄砲を持つ手から力が抜けた。

 すると、アルマはため息を吐いた。いや、そこに感情は載っていなかったから、深呼吸だろうか。


「その様子から察するに…………では、残機を使いましょうか。」


「…………どういう仕組みだ」


「ああ、説明が未だでしたね。簡単です。あなたが、彼女もしくは彼の、体のいずこかを撃てばよいのです。」


 ()()()か。そう言ったな。じゃあ、どこでもいいのか。

 なら、一度や二度なら死ぬことは無ねぇ。 


「二言はねぇな?」


「勿論。残機ですから。直ぐ無くなってしまったら。楽しめないでしょう?」


 「さぁ、どうぞ」そう言ったアルマは俺を連れ立つと、わざわざニヤの真正面まで移動した。しかも、ご丁寧にも、「動脈は避けた方がいいでしょう。」と、手足を提案する。


「勿論、殺したいのならば、額でも、心臓でも、お好きな部位をお選び下さい」


「お前のでもいいのか?」


 思わず聞くと、アルマは首を横に振り、半身退いてテーブルの上にある鉄砲を顎で指した。

 

「それを決めるのは、あちらに置いてある鉄砲ですので。悪しからず」 


 話すだけ無駄か。

 視線をニヤへと戻すと、口を縫われながらも安堵の吐息を零していた。

 馬鹿が…………俺の気もしらねぇで。


「ちっとばっか痛ぇぞ。我慢しろ」


 ニヤが歯を食いしばったのを機に、俺は掌を撃った。

 ビクン!と、ニヤの体が跳ねる。その直後、痛みに呻きが漏れる。でも生きてる。まだ、死ぬような怪我じゃない。

 そう、思ったのは束の間で、間違いだった。 


「どうした…………こんなの怪我の内にも入らねぇだろ?」


 しかし、ニヤの脂汗の量は尋常ではなかった。痛みに耐えているというより、息苦しさに耐えているような…………

 そのうち、ニヤの体は跳ねるというより、痙攣するようにとめどなく反応しだし、続いて縫い合わされた口から逃げ場を失った泡が、鼻からボタリと零れた。


「…………ああ。残機が一つ減ってしまいましたね。」


 アルマがニヤの首に手を当て、脈を測った後、その死を口にした。

 でも、なぜだ。

 俺の狼狽えが視線を泳がせた時、視界の端に映ったのは、ニヤの掌を貫通し、床にぶつかり潰れた弾丸。その内部は空洞で、床に液体が零れている。


「当たり所が良ければ、破裂せずに済んだはずなのですが…………運が悪かったようです。」


 なら、やはりそうか。


「ま、さか。毒…………か、お前、弾に毒を仕込んだのか」


「いいえ、医薬品、だそうですよ。まだ、認可は降りておりませんが。その効能は、体内を循環する魔力の阻害だそうで…………残念ですね。」


「そんなもんどうでもいい…………俺に、他でもねぇ、この俺に身内を殺させやがったな。アルマッ」


「はて、部下ではなく?身内…………と?ですが、既に親殺しを為していたのでしょう。なら、それ程憤らなくともよいでしょうに。」


 何を言っていやがるんだこのボケは。表情一つ変えずに、何を考えてやがる。


「…………てめぇもそうだったから、俺を狙ったんだろうが。」


「いいえ、俺は部下など駒としか見ておりません。その()()を攫ったのも、あなたに近しい人物らしかったから。ゲームを楽しむためのスパイスです。だから睨まないで下さい。」


「情はねぇのか。人の心は??!」


「ございますよ。出なければ、卑劣な人質など考え付く事は無いでしょうに。そもそも、彼女を殺したのはあなたであって、俺ではない。そのように目くじらを立てられましても。ほとほと困り果ててしまいます。」


「…………なにぃ??」


「そうでしょうに。あなたが弱く、鉄砲を避けられぬ存在であったから、恐怖心に負け、彼女の命を差し出した。謂わば、あなたにとって彼女は、家族とは…………自身の次に大事な肉盾だったにすぎぬのです。お分かりか?」


「ちげぇ、お前が殺したんだよ、糞ボケがァ!!」


「あぁ…………頭に血が上ってしまったようです…………埒があきませんね。」


 そこで、アルマは無表情を崩さないまま、ニヤの死体を見て合点を打った。


「彼女のように、血抜きでもなさっては如何か?」


「…………今ここで、殺してやるッ!!!」

 

「死合をするのは構いませんが…………その場合、残った一人も死にますよ?」


 …………くそ。くそくそくそっ!糞が!!


「…………死ぬのはおめぇだぞ、アルマ。フォリアファミリーに、俺に吹っ掛けたんだ。この世界にお前の居場所は無いと思えや」


「そっくりそのままお返ししましょう。さ、席に戻りますよ。ゲームはまだ始まったばかりです。」  

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