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ド外道奴隷商くんと鬼畜クソ女ちゃん  作者: スヤニカ
一章 惡の華 リンドウ

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02  一章 惡の華 エピソード11 出発

「店主さん。今日で最後となります。俺がドッコを買うのも」


 いつもの串屋台で紙袋と紙幣を交換しながら、俺は別れの挨拶を済ませた。


「あら、その荷物…………そっか。まあ今のシュバルの街は物騒だからねぇ。離れられるんなら、離れた方がいいさ」


「ええ、食事は活力。こちらの屋台には、また寄らせてもらいます。ミーコさんもお元気で」


「はいはい。」


「そういえば、今日も賭博場はお休みなのですか?」


「そうですよ。と言うか、辞めようかなって思ってます」


「おや、それはまたどのような心境の変化で」


「…………お客さんが美味しそうにドッコ食べるから。かな」


「俺の影響ですか?はて、俺はそのように表情に出ていたでしょうか」


「自覚ないんですか、嬉しそうに紙袋受け取るじゃないですか。あと、自意識過剰です。別にお客さん限定じゃなくて」


「なくて?」


「…………身近で人死にが出て、改めて考えたんです。キラキラな世界と、タレでドロドロなここ。どっちの方が大事なのかって。賭博場は何時でも明るいけど、負けて泣いてる人もいた。でも、ここは汚いけど、美味しいもの貰う人は皆笑顔――――ならキラキラしてるって言えるんじゃないかなって」


「なんと…………成長されたようで。不謹慎は重々承知で申し上げますが、若者の成長の一助となったのならば、おじさんも浮かばれると言うもの。」


「馬鹿にしてます?」


「大まじめですよ。これで、また立ち寄った時も同じ味が楽しめると言うものです」


「串焼きなんて誰がやってもそう味は変わらないと思いますけど…………まぁ…………少なくとも、この町が落ち着くまでは人手が多い方が、お母さんも危なくないでしょう。それだけです。」


「素直じゃありませんね。」


「もう、紙袋貰ったなら早くどいてください。後ろ、つかえてます」


 俺が振り返ると何時もの通り。腕組み、足を鳴らし、イラ立ち混じりに俺を見ている列がある。


「では、お元気で」


 その後シュバルの街を出た俺は、一旦海辺へと足を運んだ。

 理由は単純、鬼畜クソ女を海に捨てるためだ。とは言え、死体を持ち歩いている訳ではない。いつも通り荼毘に伏せた後の『灰』が入った瓶の蓋を開け、海にばら撒いたのだ。


「これ…………環境汚染になるのでしょうか」


 まぁ問題は無いだろう。

 俺が持ち歩くにはあまりにも精神衛生上よろしくないが、大海原ならば、その大きな懐で受け入れてくれることだろう。


「さて、あと二週間弱。経費はもう残り少ないですし、節約しなければなりませんね。」


 潮風に背中をおされ、俺はダリオファミリーの拠点へと一歩踏み出す。






              ※※※※※※※※※※※※






 クォールの街のダリオファミリーの拠点は、在来種たる雑魚共との諍いの痕を数多く残す、豪勢なコンクリート邸宅だ。

 貴族さながらの領土を誇る邸宅は、正門を抜けると円形の庭園と、噴水が出迎える。常に精鋭が鋭い視線を光らせ、虫一匹足りとも逃しはしない強固な警備が敷かれている。

 そして、俺――――ダリオファミリーの頭目たるパッシオーロ・ダリオ三世は、邸宅の二階の執務室から庭園を背にする形で、黒漆塗りの重たい机に肘をつき、瀟洒な意匠の椅子に座わっていた。


「おい、しのぎはどうなってる。シュバルの街からの連絡が途絶え、既に二週間経つが?」


 シュバルの街とここクォールの街は往復一か月程かかる事は理解している。

 しかし、だからこそ、定期連絡は一日おきに使いを出し、一定の距離感で部下を配置させることで、遅延なきよう注意を払ってきたはずだ。


「エルモーはどうした。あのアバズレ何してる、まさか金持って逃げたんじゃねぇだろうな」


 俺は苛立ち混じりにタバコの煙を部下に吹きかけ聞いたのだ。

 すると、


「けほ…………そ、そのような事は無いかと。ただどうやら、消息不明ではあるそうです。」


 煙たそうながら手で煙を押しのける無礼は抑え込み、部下は、充血した瞳で俺に訴えてきた。


「エルモーだけでなく、全員が忽然と姿を消したと。しかも、拠点も同様です」


 瞬間、俺は部下の手の甲でタバコの火を消した。ジュっと言う肉の灼ける音と、「あっつ!」と言う馬鹿者の悲鳴が同時に響く。


「馬鹿が。お前そんな与太話で俺が納得するとでも思ってるのか」


 俺の低い唸りを聞くと、部下はビクリとすぐさま姿勢を正す。そうしなければ次は魔術の火を賜る事を恐れたのだ。


「お前らの目は節穴か?それとも、後ろにくっついてんのか?なぁ…………どっちだ?」


 俺の顔は我ながらいかつい。祖父に似たのだと先代()はよく言っていた。つまり、どれほどの晴天でも、眼孔には黒く影が落ち、その奥から鈍い眼光が光る。屋内たるこの執務室ならば尚の事だ。

 おかげで、この裏社会において舐められた事は一度たりともない。誰に対してもだ。

 だと言うのに、


「い、いえ。事実です。ボス」


「無能はいらん。それでもその言葉貫くか?」


「…………っ」


 俺の威嚇に対しても、部下は言葉を覆さない。と言う事は、


「一夜にして縄張りが削られた。か…………」

 

 ズドン!!と、俺の拳が重たい机を歪ませ、部下の瞳が面白い程に泳ぐ。


「フ、ハハハハハ…………良い度胸だ。彼我の差も測れねぇ木っ端がぁア…………!!」


 魔力の発散を伴った咆哮は棚のガラスにひびを入れ、部下は泡を吹いてなお直立不動を何とか保つ。

 そう、俺はこのクォールの街に置いて、四面楚歌であるにもかかわらず、依然として勢力を保ち続けて居る。多勢に無勢たる数の力を、絶対なる個々の力で押し返しているこの状況。これを強者の証しと言わずして何という。


「この俺に戦争吹っ掛ける死にたがりは…………どこのどいつだ。調べはついてんだろうな?」


「い、依然として確固たるものはまだ…………で、ですが、不審な人物は何名か上がってきています。」


「能書きはいい。誰だ、名を言え」


「一人は漆黒ランク、化生のオリバーがシュバルの隣町付近で目撃されていたとの事。」


 「そして」部下は普段の冷静さを取り戻したのか、つらつらと言葉を紡ぎ始めた。


「現場に最も近かったのは、アルマ・サンと言う白髪の男です。」


「好かねぇ名だな」


「はい?仰る意味が…………」


「アルマ・()()、だろう。嫌が応にも、敬称を余儀なくされる…………漆黒ランクはギルドメンバーゆすっていくらでも情報を聞き出せる。が、アルマ、誰だそいつは」


「はい。話によると、VIPルーム内へアレクスが呼び出したとの証言が、その場に居合わせた客からあがっております。」


「そこまで容疑が掛かってんだ、当然ガサ入れしたんだろうな?」


「はい。」


「結果は」


()()。」


「…………ほう?」


 と、俺は片眉を上げる。だがそれは訝しんだゆえではない。もっとその先、確信を得たからに他ならん。


身分証明証(ギルドカード)の納税記録から足取りを追いましたが、出てくるのはトグサの街で花屋を営んでいることぐらい。前科も無し。経歴は真っ白。市民の鑑とも言うべき品行方正さです。」


「なるほど…………黒だな。」


「仰る通りかと。アレクスが招き入れた時点で裏があります。にもかかわらず、犯罪歴はおろか不審な噂一つ無いのは異常と存じます。もしかしたら、アルマ・サンも裏から経歴を都合のいいように書き換えている可能性があるでしょう。」


「どこの地方の人間だ」


「ギルドカードを信じるならば、籍を置いているのはトグサの街。しかし、度々納税窓口が変わっている所から、放浪者の可能性も捨てきれません。そして残念ながら、トグサの街はここから遠い。現地へ行かずに集積できた情報はこれで全てです。」


 「あ、いえただ…………」部下は些か迷った様子で、口ごもり、


「言え」


 俺の一言で意を決した。


「半年と少し前、うちの参加に加わったアトモスファミリーを覚えていますか?」


「それがなんだ」


「はい。アトモスファミリーの内部に、トグサの街出身が居りまして、ほらバスベルとかいう腕っぷしが立つ男です。彼が言うには、アルマ・サンと言う人物は知らないが、トグサの街を根城にしている奴隷商について気になる…………ぷっ、異名を知っておりました。」


「もったいぶるな。なんだ」


「…………ぷっ。い、いえ、なんでも暗黒貴公子(ダークネスプリンス)と、ふ、っふ…………ぃ、言うのだとか、く、プクク…………」


「……………………フン…………馬鹿馬鹿し…………クッ」


 いかん。部下の前だ。体裁を取り繕わねば、裏の社会では面子が全て。舐められたら終わりだ。

 しかし…………、


「…………ダークネス…………ぷり、くく…………稚児が考えたのか、それは。」


「で、ですよね。笑ってしまいますよね」


 我慢の限界。俺はひとしきり大笑いすると、部下を蹴り飛ばし、喝を入れ直してから口を開いた。


「…………だが今は、そんな恥ずべき名は余所に置け。たかが奴隷商(下請け)にうつつを抜かしてる場合じゃねぇんだぞ。いいか、早急にアルマ・サンを要注意人物として探し出して連れてこい。うちの人員は言わずもがな。衛兵、他勢力、その辺りで膝抱えて寝入ってる浮浪者、脅し、ゆすり、賄賂、手段は問わん全て使え。」


「はっ。承りました。」


「それと、バズベルも呼び出せ。俺直々に情報を吸いだしてやる。」


「直ちに。」

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