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神之樹  作者: Uyu
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第七話ー実戦訓練ー

「瑠奈おはよー!」

 あれ、瑠奈からの返事がない。

 もしかして、瑠奈……。

「天鬼、毎回言うようだけどもう少し静かに起こしてくれないかな」

 あ、なんだ生きてた。

「朝からダイレクトハグしてあげてるのに、一体何が不満だってんだよ」

「それはハグじゃなくてタックルって言うのよ。おはよう瑠奈、具合はどう?」

「今大丈夫じゃなくなったよ」

 せっかくこの天鬼さんが起こしに来てあげたってのに。

 人の熱い抱擁をタックル扱いするなんてひどいな。

「こら天鬼! お主の角が刺さったらどうするんだ! 余計な仕事を増やすようなことはやめろ!」

 そう言いながら胡桃がハリセンで私の頭を引っ叩いた。

 一体どこからそんなもん持ってきたんだ。

 まったく、そんなこと言われなくてもわかってるのに。

 何度この服に角で穴を開けたことか。

 開け過ぎてラディクシアの人も『もうほんとに勘弁して』って毎回泣きながら代わりを渡してきたし。

 もう自分の角の間合いくらい完璧に把握してるもん。

「瑠奈昨日の会議いなかったから聞いてないと思うけど、今日から少しの間調査の代わりに強化訓練することになったから」

「わかった。じゃあ着替えてから行くから、先に向かってて」

 何気に他の部隊と実戦形式で訓練するのって初めてじゃないかな。

 今まで他部隊のメンバーとはそこまで接点は多くなかったからどんなスキルを持ってるのかも知らない。

 実質的にアルスと遭遇した時と状況は同じになるのかな。

 

 訓練場に着くと全部隊がその場に揃っていた。

「瑠奈、怪我のほうはもういいのか?」

 私達を見て緋翠が声を掛けてきた。

 緋翠には私の角みたいな異形由来の身体的特徴がないから一見普通の好青年のように見えるけど、これでもちゃんと身体の内には神樹の力を宿している。

 アジャスタとしては珍しい憑依型のアジャスタなんだって。

 少し前に師匠に聞いたことがあるけど、アジャスタは主に二つのタイプに分類される。

 一つは私や陽葵、瑠奈みたいな同化型、もう一つは緋翠みたいな憑依型。

 同化型は外見に異形の姿を宿すのに対して憑依型は内に秘めた適合の異形を自身の身体に憑依させることで同化型以上にその力を発揮させることができるらしい。

 憑依前の姿はただの人間だけど漂うオーラが異形のそれだから人間では無いことは見たらすぐにわかる。

 多分このオーラは中に居る異形のものだと思う。

 この憑依型はEVEの中でも緋翠とあの白夜しかいない。

 私の見立てだと緋翠はおそらく全部隊の中で二番目に強い。

 そして一番目はというと、あそこで眠そうに大きなあくびをしてる第一部隊のリーダー、白夜だ。

 あれが全部隊で一番とは考えたくないな。

 なんというかさ、威厳というものが全く感じられない。

 まぁ、あくまで私の勘だから正確なところはわからないけど。

 それも今回の訓練でハッキリするかな。

 そんなことを考えてると師匠から指示が入る。

「今からお前達にはそれぞれの部隊に分かれて模擬戦をしてもらう」

 どんな訓練をするのかと思ったら模擬戦か、感覚としては師匠との修行に近い感じかな?

 まぁ師匠との修行ほどしんどくなることはないんだろうけど。

「本日行う訓練はルール無用の戦闘訓練だ。相手部隊を戦闘不能もしくは降参させた方が勝利。戦闘後、迅速に治療を受けることができるように胡桃にも同席するように言ってある。訓練場の要所に回収班も待機させてるから、実戦を想定して本気で挑むように」

「基本的に生きてさえいれば大抵の傷は治せるから思いっきり戦ってこい。慎二、例の件忘れるでないぞ」

 うわー、初日からやってることが鬼過ぎる……。

 もう師匠って人間の皮被った悪魔でしょ。

 ほらみんな顔引き攣ってるって、一部を除いて。

 いつも通りなのか白夜からは一切緊張感というものを感じられない。

 あれはもう気にしない方がいいか。

 そんなことよりも、これじゃ訓練最終日までには何人か川渡り切っちゃうんじゃないかな。

 とりあえず今は今日を生き延びることだけ考えないと。

 私達が今いる訓練場は荒廃都市のフィールド。

 ナーテル外郭区域を想定して作られたものだった。

 実際のナーテルほどの広さはないものの、戦闘訓練を行うには十分過ぎる広さをしている。

 このフィールドなら私達が有利かな。

 廃墟とかが多いから瑠奈の狙撃による奇襲を最大限発揮できるし、私も足場が多い方が相手を撹乱しやすい。

 ただ陽葵的には若干立ち回りしにくいかもしれないけど、そこは全然カバーできる。

「初戦は第二部隊と第四部隊だ。双方フィールドの定位置に行き準備しろ。他の者は次の戦闘まで待機だ。観戦デッキに移動するなり身体を温めておくなりしておけ」

 私達と緋翠の部隊か。

 緋翠のスキル見てみたかったし丁度いいか。

「お手柔らかに頼むよ」

「手は抜かないからね」

 緋翠率いる第二部隊は私達と同じバランス型のメンバー構成になっている。

 ・大鎌使いの緋翠。

 ・双剣使い天狗の雷華(らいか)

 ・弓使い猫霊の(みお)

 現時点でわかってるのは雷華と澪の特性だけ。

 同化型のアジャスタなら見た目だけでどんな特性を持ってるかが大体わかるけど憑依型だとどんな特性を持っているかは全くわからない。

 私の『日輪』みたいな固有スキルに至ってはアジャスタ自身の個性に根付くものだから見た目じゃ何も判断できないんだよね。

 今日の訓練は未知のアジャスタとの戦闘を想定してやらなきゃ。

 スタート地点に向かう途中、情報整理も兼ねて私達は軽く作戦会議をすることにした。

 相手はアジャスタ三人。

 固有スキルもどんな戦い方をしてくるのかも不明。

 しかもアジャスタの中でも特に強烈な力を持つとされている憑依型の緋翠がいる。

 無策で突っ込んでも速攻でやられる可能性が高い。

 とりあえず現時点でわかってることを整理しよう。

 まずは澪。

 弓使いなのに加えて猫霊の適合だからおそらく瑠奈と同じタイプ。

 身体の柔軟性と機動力を存分に活かした戦闘スタイルをとってくるはず。

 物陰から狙撃してくるはずだからまずは攻撃から狙撃ポイントを特定して捕らえるって感じか。

 そして雷華。

 天狗の適合ってことは特性は筋力の底上。

 加えて背中から生えた一対の翼で上空から奇襲してくることも有り得る。

 上空に居られちゃ私じゃどうにもならないし、これは長距離攻撃ができる陽葵と瑠奈に任せるしかないかな。

 最後は緋翠。

 これに関しては情報が無さ過ぎるから作戦の立てようがない。

「部隊構成的に緋翠と雷華が前衛で澪は後方からの狙撃に徹するでしょうね」

「ならもしエンカウントした時に相手が緋翠と雷華の二人なら戦闘の中で狙撃があり次第、即撤退して澪の無力化に専念するのはどう?」

「そうね、緋翠の戦闘力が予測不能である以上できるだけ早く数の面で有利に立ちたいわね」

 この広大なフィールドの中で初手から澪を見つけ出すのはほとんど不可能だしね。

 未知の相手に後手に回るのは避けたい。

 今回はかなりスピード重視の戦いになりそうだね。

「私はいつも通り二人の後ろを物陰伝いに移動して後方から援護するのでいい?」

「そうね、それで行きましょう」

 こうして私達はスタート位置へと到着し、各々装備の確認と軽く準備運動を始めた。

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