第二十三話ー仲間ー
「遊びに来たよー」
「おま、何処行ってたんだよ。消息不明になったってラディクシア内が騒然としてたんだぞ」
「ちょっと色々あってね。そんなことより、装備の更新をお願い」
「そんな事って……。まあいいや、どうせまともに説明する気もないんだろうし」
そりゃね、だって一から説明するの面倒くさいし。
なんだったらさっきの会議の議事録でも投げつけようかな。
その方が私が説明するよりも十倍早い。
「装備の更新だったか。お前のデータ更新したいと思ってたから丁度いい。訓練して色々変わったって聞いたし、折角だから一式全部新調するか」
マジっすか。
新衣装ってなると色々やりたいこと出てくるよ?
「一週間後にはまた出ていかなくちゃいけないんだけど、間に合うの?」
「まぁ訓練でどんな事をしてたかも聞いてたし、ベースは出来上がってるからな」
流石私の専属技師様ですね。
私と似て優秀で助かりますわ。
「デザインも変えても良いですかね……?」
「ああ、希望を持ってきてくれればそれに合わせて装備を整えるよ」
よっしゃー!
新衣装出来上がったら皆んなに自慢しちゃおっと。
「ちなみにカインとテトと話し合った結果だから、多分陽葵と瑠奈も装備一新すると思うぞ」
なんだ、私だけじゃないのか。
これじゃ自慢できないじゃん。
じゃあ後で二人と新衣装の相談会開催決定だね。
「こうしちゃいられない。新衣装のデザイン考えないと」
「待て待て待て、ここにきた目的忘れんな」
そうだった、データ更新しないといけないんだった。
さっさと終わらせて衣装考えよ。
今回も例の如くナーテル外郭区域を模した仮想空間に装置で転送された。
「気になったんだけど、この装置の技術ってうち以外にもあるの?」
「そこまで広く普及はしてないけど、あることにはある程度だと思う。何でそんなこと聞くんだ?」
「いや、私たちが行った街にこれと似たような装置があって。それで気になったんだ」
「ならその街に俺達の同業がいるのかもな。正直発想自体はそこまで複雑じゃないからある程度技術が発展しているところなら実現はできると思うぞ」
そうなんだ。ナーテルは元々周辺国でも卓越した技術力があったみたいだし、ノアに同じ技術があっても不思議じゃないんだ。
さて、そろそろ相手が現れる頃かな。
切り替えて戦闘体制をとる。
今回はどんなのが相手かな。
すると向こうの方に人影が浮かび上がる。
「まじか……」
「天鬼とこうやって戦うのは初めてね」
「他部隊のメンツとは訓練で戦ったって聞いたから、折角だし身内とも一戦交えるのも良いと思ってな。手の内が全部バレてる相手とどう戦うか楽しみにしてるよ」
現れたのは深く赤みを帯びた髪をした疾狼のアジャスタ、陽葵だった。
フィンめ、後で私の手刀をお見舞いしてやる。
私の動き方の癖とかを知ってる相手と戦うとか。
正直、変異種と戦うよりも厄介だよ。
「分かっているとは思うけど、手心は加えないからね」
「少しくらい加減してくれても良いんですけどね」
仮想空間だから遠慮なくできるんだろうけどさ。
陽葵はいつものように薙刀を生成し、戦闘態勢をとった。
こちらもそれに応えるように刀を抜き、日輪を発動させる。
次の瞬間、私の間合いを一気に潰された。
ギリギリのところで薙刀を受け止め距離を取った。
そんな私を逃がしてくれるはずもなく、果敢に攻め入ってくる。
今までの陽葵よりも明らかに機動力が上がってる。
「何この動き!?」
「ノアでの戦いで学びがあってね。スキルの使い方の幅が少し広がったんだ」
ちょっと、全然フェアじゃないんですけど!?
私だけ陽葵の手の内見えてないところがあるんですけど!?
格段に動きが俊敏になった陽葵が容赦無く攻撃を仕掛けてくる。
反撃を与える隙も全然見せないし、正直押されている。
フィンに文句の一つでも言おうとしたとき、突如足元が氷に包まれる。
「はぁっ!?」
その好機を逃さまいと陽葵が刃を振り翳す。
瞬間的に日輪の出力を最大限にあげ、生成した炎で氷を溶かして危機を脱した。
「これ瑠奈もここにいるってことだよね」
「そうみたいね。三つ巴ってことかしら」
厄介度が青天井なんだけど。
瑠奈の狙撃を考慮した上で陽葵と戦わないといけないなんて。
でも逆にいえば瑠奈に陽葵の隙を見せればそっちに攻撃の矛先が向くってわけで。
ひとまず動き続けないと瑠奈の狙撃が容赦無く飛んでくる。
赫式単刀術――『彼岸花』
――『裁きの槍』
飛ばした斬撃を陽葵が華麗にかわし、お返しと言わんばかりに数本の槍を飛ばしてきた。
それら全てを刀で弾き、陽葵との間合いを詰める。
赫式単刀術――『枝垂れ桜』
――『女神の加護』
重心を落として足元を狙った攻撃、思ったよりもあっさり刃を止められた。
陽葵って冷静だから崩すのが難しいんだよね。
と止まっちゃだめだ。ほら瑠奈の氷結弾が飛んできた。
三秒止まったら命取りになるね。
こりゃ先に瑠奈の方を片付けないとかな。
そう思い魔素循環をフル回転して生成した日輪の炎であたり一帯を火の海にした。
これ攻撃性は低いけど姿を眩ますのには丁度いいね。
陽葵から距離をとり、さっきの瑠奈の狙撃点の方に向かった。
流石に同じ場所に止まってるとは思わないけど、そこまで遠くには行ってないはず。
そう思い『気配探知』を発動させると一つの気配が引っ掛かった。
瑠奈のいる方向に目を向けると銃口が微かに光るのが見えた。
「見つけた!」
日輪で体温を限界まで引き上げ機動力を最大に持っていった。
斬り掛かるタイミングは瑠奈が銃弾を撃ち終えてリロードを始めるその一点のみ。
容赦無く私の頭に向かって放たれた弾丸を躱し、一気に間合いを詰める。
赫式単刀術――『緋扇』
これは取ったと思ったその瞬間、背筋に悪寒が走った。
本能的にまずいと感じ急遽体を捻って方向転換すると瑠奈が放った弾丸が私の頬を掠めた。
「はぁ!?」
瑠奈の扱う狙撃銃はボルトアクション式のはず。
でも今の射出間隔は明らかにフルオートレベルだった。
こんなにどんなに早く弾を装填したところでここまで短い間隔で撃つなんて不可能。
てことはテトの仕業だな。
ただでさえ精度の高い瑠奈の射撃が連射式になるとか厄介極まりない。
次の狙撃がすぐに始まると思った私は遮蔽物の後ろへと逃げ込んだ。
「ちょっ、そんな攻撃できるなんて聞いてないんですけど!?」
「そりゃ言ってないからね」
見えてないはずなのに、瑠奈の表情が目に浮かぶよ。
――『裁きの槍』
建物の外から容赦無く槍が降り注いだ。
「仲間外れにするなんて、ひどいわね」
陽葵も魔力循環を教わったせいか技の威力が底上げされてる。
これじゃ明らかに二人に部がある。
何か突破口はないの。
何か……。
「考え事するなんて随分と余裕だね」
「この状況で隙を見せたら命取りになるわよ」
思考を巡らせる私に瑠奈の狙撃に加えて陽葵の槍の雨が容赦なく降り注いだ。
ここまでかと諦めかけた刹那とあるアイデアが浮かび、瞬時に日輪の炎を生成させた。
今までは離散していた炎を身に纏い体温を強制的に限界値まで持っていくことで装備の性能をフルに活用、機動力を飛躍させた。
弾丸を躱わしつつ向かってきた槍を全て刀で弾く。
「絶対決まったと思ったのに」
「まさかあの状況から生き延びるとはね」
これで私が圧倒的に有利、そう思いたかったけど。
この状態を維持するのが危険なことは本能的にわかる。
短期決戦で決めるために単刀から双剣に持ち替え一気に二人に攻め入る。
いつもより二人の動きが遅く感じる。
この状態、感覚で言うと緋翠の『迦具土神』に近い状態なのかな。
赫式双剣術――『桜花乱舞・灼』
まずは瑠奈の元に向かい銃身を砕いた。
これで実質瑠奈は戦闘不能、あとは陽葵だけ。
技の勢いを殺さずにそのまま陽葵との間合いを詰める。
陽葵も薙刀で私を迎え打つけど、今の状態ならそれを躱すのは容易い。
攻撃の後の生じた僅かな隙を見逃さずに剣で斬り付けた。
その直後全身に激痛が走り、倦怠感に見舞われた。
「ギリギリ間に合った……」
そんな予感がしてたけど、思ったよりも反動が大きい。
体に熱を与えて無理に運動量を増やしたんだからそりゃそうか。
いつものデータ更新ならこんなに疲れることないよ。
向こうに戻っちゃえばこの疲労感も無くなるから良いんだけど。
早いところフィンに戻してもらおう。
直後、背中に鈍い衝撃が走った。
「相変わらず天鬼は詰めが甘いんだから」
その衝撃の正体は陽葵の仕業だった。
与えた傷が浅かったのか、スキルで自己回復できたらしい。
「最後の一手で油断するところは天鬼の悪い癖よ」
なんかすごいデジャヴを感じる。
緋翠達との戦いでもこれと同じような状況だった気が。
まぁあの時はちゃんと仕留めたのに復活されたから油断してたわけじゃないけど。
光の粒子に包まれて目の前が明転していった。
「惜しかったね。でもまさかあそこで新技が生まれるなんて思わなかったよ」
目が覚めて装置から出ると目の前には電子端末を操作するフィンがいた。
どことなく興奮気味に見える、「これは作り甲斐があるな」なんて小さく呟いてるし。
フィンも根っからの職人気質だからこう言う事があると気分が高揚するのかな。
「あとはデザインだけだな。今日中にどんなのがいいかデザイン案持ってきてくれ」
「合点!」
そこは私の得意分野ですからね。
本領発揮しちゃいますか。
するとデータ更新を終えた陽葵と瑠奈がこちらにやってきた。
ちなみに瑠奈と陽葵の戦いに関しては私が瑠奈の銃身を砕いた時点で瑠奈が降参して陽葵の勝利で今回の戦いは幕を閉じたらしい。
「この後はどうする?」
「私は新しい装備のデザイン考えようと思ってるけど、二人はそうする?」
「いいね、私も混ざる」
陽葵もそれで異論はないみたい。
本当はショップとかで実物見ながら考えたいけど、街に出るわけには行かないから雑誌でも見ながらかな。
今のは割と動きやすさ重視でお洒落なんて全然気にしてないデザインだから今度のは気合い入れたいな。
「それじゃあ速攻で考えて持ってくるから、頼みますよ専属技師さん」
「調子に乗ってゴテゴテのデザインにするとかは勘弁してくれよ」




