第十七話ー幽閉ー
「さてと、これからどうするか」
結局、近辺を探してみても出口らしきものは見当たらず私達は路頭に迷っていた。
「帰還組が報告してくれてるはずだから私達が帰らなければ捜索に動いてくれるとは思うけれど」
「そっちは正直望み薄だな。入口ごと潰されたとなるとあの広大な土地の中から新しい入口を見つけるのはほぼ不可能に近いだろうからな」
という事は、私達ずっとこのまま?
こんな敵の本拠地かもしれない所に居続けるとかいくらなんでも危険すぎるよ。
敵の規模も強さも全く謎な状態なのに。
「さっきの店員さんの話だけどここには定期的に新しい人が地上から来るって言ってたし、そのタイミングが分かれば出口は見つけられるんじゃない?」
「いや、その話だけどかなり違和感がある。仮にここにいるアジャスタの大半が地上から補充されたってんなら一体彼らはどこにいたんだ。地上じゃ俺達以外にアジャスタが見つかった事例はないし。それにナビゲーターの存在も気がかりだ」
確かにそうか。
いくらナーテルが広いって言ったってこれだけの数のアジャスタが居たなら一人くらいは見つかってもおかしくない。
「出口が見つからない以上、今は身を潜めながら情報を集める事くらいしかできないな。できれば街の人から情報を引き出したいところだが、このままじゃ目立ってしょうがない」
緋翠の提案で情報収集の前にまずはこの場にあった装いをする事になった。
繁華街で見かけたアパレルショップに足を運んだ。
「なんか瑠奈がその系統の服着ると新鮮味があるね」
「この服窮屈なんだけど。これじゃいつも通りの動きができないよ」
「この街なら動き回ることもないでしょうから大丈夫よ」
私達が入ったお店は着物をベースとした服を主に取り扱っていてなんだか妖艶な雰囲気が漂っていた。
瑠奈は普段の装備は動きやすさを重視していた分少し窮屈なのが気になっているみたい。
「陽葵はあんまり変わらないね」
「元々こっち系統の服着てたからね」
正直陽葵の服はここの雰囲気と似たところがあったから変えなくても良かったんだけど、せっかくだからってことで私が強引に押し込んだ。
「天鬼は意外に似合ってるわね」
「なんか大人っぽさ増したよね」
おっと意外にも好印象。
素直に褒められると反応に困るのは私が毒されたからなのかもしれない。
緋翠達も着替えを終えてお店から出てきた。
「それじゃ早速情報収集に移るか。瑠奈は澪とペアになって諜報活動メイン。陽葵と天鬼、俺と雷華がペアになってそれぞれで街の方で聞き込みをする。得た情報はこの時間ここに集まって照らし合わせる。今回はあくまでも情報収集と地上への脱出がメインだ、危険な行動は避けるように 」
『了解』
やることも決まったし、あと私達がしないといけないのは。
「あとは拠点だな。身体を休められる場所を確保したいところだけど」
そうそれ、拠点の確保。
今日は一日中動き回ったし、すぐにでも休みたいよ。
かといって未知の土地で野宿は流石に危険すぎるしね。
一刻も早く身体を休められる拠点を探しておきたい。
差し当たり近辺で宿屋を探してみる事にした。
「なぁ、宿屋が見当たらないのは気のせいか?」
「気のせいだったら良かったのにね」
この街驚いたことに宿屋が一軒もなかった。
他のサービス業を展開するお店はそこら中にあるのに宿屋だけが見当たらない。
これだけ栄えてる街なのにそんなことある?
「どうすんだよ緋翠」
「もう疲れたにゃ」
ナーテルの再調査に巨型異形の討伐も重なってみんなもう満身創痍。
「それじゃ一つ賭けに出てみるか」
賭け?
そう言って緋翠が向かった先はこの街に来てすぐに利用した飲食店だった。
「緋翠、まさかとは思うが、ここに泊めてもらおうって魂胆じゃないよな?」
「そのまさかだ」
最悪な予想が的中して雷華は珍しく呆れた表情を見せた。
普段ちゃんとしてる緋翠がこんな馬鹿言ってるんだから、それもしょうがないか。
「却下だ却下。一体なんて説明して泊めてもらおうとしてんだよ」
「え? ナビゲーターが見つからなかったから見つかるまで泊めてって」
さも当然のように言った緋翠に雷華と澪は頭を抱えた。
さっきまであんなに頼りになったのに、とうとう壊れちゃった。
「襲われたら声出すからその時は皆んな逃げてくれ、それじゃ」
静止する間も無くお店の中へと消えていった緋翠。
ここまで変わると悪魔にでも取り憑かれたんじゃないかって心配になるよ。
「ねぇ、今まで緋翠があんなポンコツになったことある?」
「昔はこんな事なかったんだけどね。重い任務が連日続くと稀に壊れるようになったんだよ。任務の途中で急に単独行動を始めたり。そうなったと時はアタシと澪でどうにか手綱握るようにしてるけど」
えぇ……。これは嬉しくないギャップだなぁ。
最悪緋翠が捕まった時は私達だけ逃げて後で回収しよう。
そんなことを考えていると緋翠がお店の中から出てきた。
とりあえず回収する必要は無くなったね。
「許可貰ってきた。うちに泊まってって良いってよ」
……はい?
想定を遥かに外れた緋翠の言葉にその場にいた全員が呆気に取られた。
すると店の中からさっき私達にご飯をご馳走してくれた店員さんが出てきた。
「事情は聞いたよ。そう言うことならうちに泊まっていきな。ただし、宿代と食事代の分はしっかりと働いてもらうからね」
「ありがとう! 改めてよろしく頼むよ、ミウさん」
ちょっと待て、全然状況に付いていけてないんですけど。
「緋翠、説明しろ」
「この店で従業員として働くなら泊めてくれるって、しかも食事付きで」
そう言ってドヤ顔を決める緋翠。
これは本格的に休ませた方がいいな。
まさかあの緋翠が悩みの種になるとは思ってなかったよ。
「皆んなどうする?」
「ここで断るのも逆に怪しまれる気がするわ。それにここならお客さんから情報収集できるかも知れないし、一旦受け入れるのが得策だと思うわ」
「危なくなったら逃げ出せばいいだろ」
話し合いの結果とりあえずこの提案を飲む方針で決定した。
「それじゃあ、お言葉に甘えて。よろしくお願いします……ミウさん?」
「店長でいいよ、そっちの方が呼ばれ慣れてるからね。それじゃあ部屋案内するから着いて来な」
お店の上階に行くとそこは普通の一軒家みたいな造りになっていた。
店長さんもここで暮らしていて、ちょうど余っている部屋があったらしい。
「三人一部屋だよ。あんまり騒がしくしないようにね。中に制服を用意したから着替えたら降りてきな。今日から早速働いてもらうからね」
扉を開けると中は三人が使うのには若干広めの部屋だった。
荷物を置いて用意してあった制服に着替えた。
この街らしい、落ち着いた色合いの小振袖に近いものだった。
ちなみに緋翠の制服は甚平だった。
荷物といっても装備と今まで着ていた服しかなかったんだけどね。
下階に降りると店長さんが開店の準備をしていた。
「案外似合ってるじゃないか。それじゃまずは役割分担しとこうかね。役割はキッチンとホール、あとは呼び込みも一人くらいは欲しいね」
話し合いの結果、私と陽葵、澪(呼び込み兼任)がホール担当、緋翠と雷華がキッチン担当って方針で話がまとまった。
「うちは基本的には食事時に営業してる。毎日多くの客が来るから覚悟しときな。それじゃ開店前に基本を叩きこんでおこうかね」
この状況でこんな事思うのは変だとは思うけど、正直楽しみではある。
今までナーテルの調査意外の労働ってものをした事がないし、人と関わることすらほとんど無かったからね。




