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神之樹  作者: Uyu
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第十二話ー魔素ー

 束の間の休息を取り、私は再び特別装甲訓練場を訪れた。

 ここから行う訓練は各々の訓練がしやすい場所へと散ることになった。

 幽鬼含め師匠の稽古を受けたいと申し出た数名はいつも私が修行で使っている演習場へと向かった。

 演習場に向かう幽鬼の目が虚になっていたのはきっと気のせいだろう。

 それにしてもあの地獄へと自ら足を踏み入れるなんて正気を疑うね。

 無知って本当に恐ろしい。

 多分明日にはそんなこと申し出る人は居なくなるんだろうけど、師匠のことだから今日来た人は逃がさないだろうな。

 ご愁傷様です。

 私はこっちでのんびりやるとしますかー。

 緋翠の指導を受けるのは私と雷華、そして陽葵もこちらにやってきた。

 第四部隊の中でも特に魔素消費の激しいスキルを使ってるから、緋翠の話を聞いて自分も指導を受けたくなったとのこと。

 ちなみに瑠奈は静月のところに向かったらしい。

「それじゃあ時間になったし、ぼちぼち始めるか」

「効率の良い魔素運用を教えてくれるって話だったけど、一体何をするの?」

 今まで魔素のことに関して深く考えたこともなかったし、正直運用方法って言われてもピンとは来なかった。

「俺と白夜がやってる魔素の運用法を身につけてもらうと思ってね。正式な名前がないから、まぁ仮で魔素循環とでも名付けておくか。俺達憑依型が加護を複数所持してるっていうのは三人共もう知ってると思うけど、あれ魔素の消費がかなり激しんだ。多分一つの加護でも同化型の持つ固有スキル以上に魔素を消費するんだ」

 何それ、えげつな。

 それって状況的には複数の固有スキルを並列で使用するのと同じって事じゃん。

「そんなのいくら憑依型って言ったって流石に魔素不足になるんじゃないの?」

「ああ、だから最初は異形開放できる時間は一分間が限界だったんだ。そんな状況を打開するために白夜と生み出したのがこの魔素循環ってわけ。簡単に言うと魔素の扱いを自分の体内で自己完結できるんだ」

 魔素循環すご。

「そんな凄技なんで今まで黙ってたんだよ。今までの手合わせでも教えてくれた事なかったじゃん」

 雷華が不機嫌そうにそう言っていたが、最もな意見だね。

 緋翠と雷華も結構長い付き合いだろうし。

 教えるタイミングはいくらでもあったんじゃ。

「これが結構感覚的な技でね、言葉で教えるのが結構難しいんだよ。それに俺達が独自で生み出した技法だから危険性が計り知れなかったんだ。大切な仲間に危険な事はさせる訳には行かないだろ」

「そんなに危険な技なの?」

 陽葵が少し不安げに緋翠に尋ねた。

「大丈夫。この技を身につけた時からSEEDとROOTSが共同で解析してるけど、魔素に対して耐性があるアジャスタならそこまで問題にはならないって結果が出たからさ」

 皆んな危険と聞いて少し身構えたけど、この言葉で場の空気が軽くなった。

「それじゃ始めるか。やることは至ってシンプル。体内に魔素を巡らせてそのサイクルの中で魔素を生成するだけ。言葉で言うと簡単に聞こえるけど、これが中々難しいんだよね。正直魔素を体内に巡らせるところはすぐに会得できると思う。ただそこから魔素を捻出できるようになるまでが大変なんだ。言うなればこれは魔素を触媒にして無から有を生み出す作業だからね」

 無から有を生み出す作業。

 それを感覚を頼りに会得しないといけないと。

 これはかなりのハードな感覚ゲーになりそうな予感。

 私は割と得意分野だから良いけど、陽葵はしんどいだろうな。

 雷華は案外すんなりいけちゃいそう。

「まず覚えないといけない感覚は体内に魔素を巡らせる感覚だね。物は試し、三人共俺の身体に触れてくれ」

 肩に触れてみると緋翠の体内に言葉では形容し難い何かが流れているのを感じた。

 どこか既視感があるような。

「わかった?」

「うーん、なんとなくは?」

「まぁイメージ的には身体中の血管に魔素を入れるって感じ」

 陽葵と雷華も分かったようで分からないっと言った表情を浮かべていた。

 とりあえず、実践あるのみだよね。

 大きく息を吸い込み空気中にある魔素を取り込む。

 取り込んだ魔素を身体中の血管の中に入れるイメージ。

 魔素を練る感覚に似たものを感じたから、それと同じ要領で魔素を動かしてみる。

「おぉ、天鬼は飲み込みが早いな。結構近いところまで行ってる」

「天才ですから」

 やっぱり、私の予想は正しかったらしい。

 魔素を巡らせるって行為は魔素を練る動作の延長線上にあった。

 この勢いで徐々に魔素を取り込む量を増やしていく。

 調子良いと思ったのも束の間、徐々に空気中から魔素を取り込んでも身体の中に上手く入らなくなっていった。

「それが天鬼の限界魔素量だね」

 これが私の限界値、思ったよりも多い。

 普段はここまで魔素を取り込むこともないから、自分の身体にこれだけの魔素が入るとは正直驚いた。

「それが魔素循環の土台になる。今は身体が体内の魔素濃度の上昇についていけてない状態。とりあえず一週間、その量の魔素を身体に馴染ませるために片時もその状態を切らさずにキープ、無意識下でも魔素を循環できるところまで持っていけたら次の段階に進もう」

 その言い方だと寝てる間もこの状態を維持しないといけないってこと!?

 結構しんどいかも。

 少しでも気を抜くと巡ってる魔素が身体から抜け出ちゃいそう。

 これはこの一週間まともに寝れないかもしれない。

「最終的には魔素を体内で高速循環させて魔素を捻出させるところまで持っていく。そうして捻出された魔素を掻き集めることでスキルに使えるってわけ。限界魔素量が増えれば捻出される魔素の量ももちろん増える」

 魔素を捻出か。

 循環は今までの経験から感覚でどうにか出来たけど、ここから先は全くの未知の世界。

「これ一朝一夕でどうにかなるものじゃないじゃん」

「そりゃそうだ、俺も白夜も長い年月をかけて会得したんだから。ただ皆んなは俺達がいる分ゼロからのスタートじゃないし」

 確かに。二人はこの魔素を循環させるって行為にたどり着くまでにもかなりの時間をかけただろうし。

 先駆者がいるってだけで技の会得までにかかる時間はかなり短縮できる。

「まぁまだ時間はあるから焦らずな。この技術をモノにできれば今までとは比較にならないくらい戦いの幅が広がるから。なんせ体外から魔素を取り込まなくても自分の体内で必要な量を好きに生成できるからな。魔素循環に慣れれば限界魔素量も当然増えるし、スキルに使える魔素の量が増えればその分威力も上がる。例えば昨日の戦闘訓練で白夜が放った『獄天』、あの技は本来なら半径十キロの魔素全てを消費するくらい燃費の悪い技らしいんだけど、それを白夜は魔素循環を使って必要魔素を体内だけで完結させたんだ」

 半径十キロって……。なんと言うか、グロい。

 ほんと、よく幽鬼達はあれを食らって生きていられたね。

 私もあそこまでとは行かずとも緋翠と肩を並べられるくらいまでになれるように頑張ろ。

 一方で陽葵と雷華はというと。

「だぁー!わからねー!」

「普段から魔素は無意識に扱ってるはずなのに、それを意識的に操作しようとするだけでこんなに難しくなるなんて」

 かなり苦戦していた。

 私は魔素を練るって行為を長い事してきたから案外すんなりいけたけど、その感覚がない二人にはこの感覚ゲーはかなり難易度の高い芸当だったみたい。

「こればっかりはなんとかしてコツを掴んでもらうしかないからな。これ以上は何もアドバイスはできないな、根気強く頑張ってとしか」

「ここにきて根性論て。本当に他に打つ手はないの?」

「一応あることにはあるけど……」

 なんだ、やっぱりあるんじゃん。

 そうだよね、じゃないと師匠の前であんな自信満々に名乗り出れないよ。

「ただ、リスクが大き過ぎるからこの方法は使いたくないんだよ。下手したら命を落とす事になるかもしれない。だからこれだけは絶対にナシだ。この方法は本当に最終手段、どうしてもって時にしか使えない」

 緋翠がここまで言うんだから相当危険な行為なんだろうな。

 まだ師匠が設けた期限まで猶予はあるし、焦るには時期尚早だね。

 早く扱えるようにして師匠達をギャフンと言わせてやる!

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