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神之樹  作者: Uyu
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第十一話ー強化訓練ー

 陽葵達の試合が終わり、次は私たちの番。

 作戦もしっかり立てたし準備は満タン。

 さっき陽葵達が試合をしている間にフィンから新しい装備も受け取ったし。

 これで機動力も底上げできる。

 フィン曰く、私が戦いやすいように調整を施したのでこの前試した時程機動力は上げていないとのことだけど、それでも十分戦いの幅は広がるって。

「わかっているとは思うが、俺達も手加減はしない。持てる力を全て出し切って殺す気で掛かってこい」

「言われなくとも!」

 試合開始の合図と共に私達は二手に分かれた。

 私と幽鬼の二人がかりで師匠を相手取り、雷華が緋翠の足止めをするというのが基本的な戦略だった。

 雷華は普段から緋翠と鍛錬してるみたいだったので少しの間であれば一人でも充分相手できるとの事。

 その間に幽鬼と二人で師匠の体力をできる限り削っておく。

 とまぁ、そんなざっくりとした戦術を立てたわけだけど、現実はそんな上手くはいかないものなんですね。

 緋翠の方は魔素量を制限されているからか、昨日の訓練よりも技の威力や機動力は下がってるように思える。

 雷華も緋翠の動きの癖を理解した上で攻撃を仕掛けている。

 そんな感じであの二人はぱっと見は均衡状態に見える。

 でも長期戦に持ち込まれたらこの均衡は一瞬で崩れるだろうね。

 対して師匠の方はと言うと、余裕綽々。

 フィンから受け取った新装備のおかげで私の機動力は確かに上がっているけど、技の威力があがったって訳じゃないから師匠には全然通用しない。

 ハンデを負っているなんて一切感じられないような機敏な動き。

 私たち二人の攻撃をいなしつつ、最小限の動きで確実に私達にダメージを与えてくる。

 修行の時とは違う、一撃一撃がとてつもなく重い。

 しかも修行の時は使っていなかった赫式まで使ってくる。

 今まで修行の中で型を教わった事はあっても実際にこの身で受けたことはなかった。

 こうして実際に師匠の刀を受けると自分との差に愕然とする。

 私と同じ技のはずなのに太刀筋や威力が段違い、私と師匠の刀じゃ全くの別物みたいに感じる。

「赫式――『彼岸花』」

 本能的に重心を低くし斬撃を避けると背後の回廊が崩れ落ちた。

 赫式の中で一番威力の低い技。

 それでも私の全力に匹敵するほどの威力になっている。

「わかっちゃいたけど、こりゃ厳しいね」

 とりあえずかなりハードな準備運動を済ませ幽鬼と回廊で合流した。

「そりゃね。今までの修行は全部演習用の木刀で相手されてたのに、いきなり実戦用の刀を抜かれた上に赫式まで使われたんじゃボク達に勝ち目なんてあってないようなもんよ」

 幽鬼の斧も師匠には一切届かずだった。

 それでも師匠はまだ実力の半分も出していない。

「苦戦してるみたいだな。まぁ、それはアタシも同じだが」

 そう言いながら雷華もやってきた。

 緋翠の方もまだ異形を全解放しておらず、まだまだ全力では戦っていない。

「天鬼、そろそろか?」

「うん、いい頃合いだよ。それじゃ二人共、作戦通りにね!」

「話し合いは済んだか」

「それなら俺達もそろそろ本気で取り掛かるとしようか」

 お互いに臨戦体制が整うと緋翠が異形を全解放、それと同時に私も日輪を全解放する。

 せっかく余剰分の熱を装備に収まるようにしてもらったけど、作戦だからね。

 あえて装備から溢れるくらいの日輪を展開し、炎を体外に放出。

 それを体の周りに纏わせて常に発火している状態を作り出した。

 常時日輪を全開放してるから使う魔素の量が尋常じゃなく多い。

「よし、やるか!」

「長くは持たないから、短期決戦でケリつけるよ!」

「しっかり影伸ばしといてよ!」

 この行動の意図は幽鬼の行動範囲を広げること。

 二人の不意をつきながら体力を削ぎ、生じさせた隙に私と雷華が斬撃を捩じ込む。

 戦術的にはさっきとほぼ同じ。

 私が師匠の相手をし、緋翠の方を雷華が担当。

 幽鬼は影を縫って並行して二人に攻撃を仕掛けてもらう。

 私が常に動き回ることによって幽鬼の移動範囲を拡大させる。

「赫式単刀術――『彼岸花』」

 ははっ、全然当たらない!!

 纏ってる炎の生成に気を取られちゃって日輪の練度が明らかに落ちてる。

「それなりに考えたようだが、その程度の攻撃じゃいつまで経っても俺には届かないぞ」

「わかってますよ!この攻撃の要は幽鬼の方なので、私はあくまでサポートです!」

「ここだ! 赫式斧術――『三日月』」

 師匠の背後で降った幽鬼の斧、これがまた見事なまでにあっさりと受け止められた。

「不意をつくのはいいが、気配が強すぎてどの影から来るのかがバレバレだ」

「まだまだ! 天鬼、あれ行くよ!」

 そう言うと幽鬼が上空に数個の玉を投げ上げた。

 私はそれに向かって生成した炎を放射、途端辺りが眩い閃光に包まれた。

 まるで世界が白に塗りつぶされたかのように。

 あれは作戦会議中、幽鬼の専属技師に作ってもらったアイテム。

 着火することで金属粉末が急激に反応し、強烈な発熱と光が生じる。

 相手の視界を潰すだけでなく、影をより濃く長く伸ばすことで幽鬼の行動範囲を大幅に広げることができるっていう雷華が打ち出した名案。

 て言ってもこの閃光からノーリスクで逃れることができるのは影狼で影空間に潜ってる幽鬼だけで、私と雷華は目を瞑っとかないと視界が潰れるから結果的に身動きは取れなくなるんだけど。

 だからこの光に照らされてる間は幽鬼の独壇場、二人の視界が回復するまではこっちが圧倒的に有利な状況になるになるってわけ。

 これならあの二人でも流石に防ぎようもないはず。

「赫式斧術――『月哭』」

 閃光が眩く輝き終え、私と雷華は再び標的の方へと目をやった。

 その時にはすでに幽鬼が影狼で師匠の間合いの内側へと入りその大斧で師匠を上げ斬り上げていた。

 が、その一撃ですら師匠の刀に受け止められた。

「なんで、視界は潰したはずなのに」

「視界に頼らずとも気配を辿れば攻撃の軌道くらい読める」

 うそん。

 この人本当に人間なの?

 「お前ら! 呆けてないで次行くぞ!」

 雷華の掛け声で我に返り、次の作戦へと行動を移した。

 私と幽鬼も雷華同様師匠と緋翠の二人から距離を置き技の準備に入る。

 この時のためにさっきの戦闘で二人を私達の攻撃射線上に誘導しておいた。

 炎の捻出の傍で少しずつ魔素を練っておいたのもこのため。

 この一瞬に全てを賭けて私達の全身全霊をぶつける!!

「赫式双剣術――『紅蘭・日暈』」

「赫式斧術――『極月』」

「『迅雷轟雷』」

 各々が持つ最大火力を二人に向けて放った。

 私達の技は確かな手応えと共に訓練場に轟音を響かせた。

「緋翠、加護は」

「無事ですよ。昨日の戦闘で空いた枠にまた『不屈ノ明王』が宿ったので、それで無効化しました。まぁ実質一つ加護を失ったみたいな状況にはなりましたが」

 はい解散、解散。

 こんな無理ゲーやってらんないよ。

 しかも無傷って。

 緋翠はともかく、師匠は何をどうしたら今の攻撃を無傷で耐えられるの。

「次はこちらの番だな。赫式――『桜花乱舞』」

 瞬きをする刹那、一気に間合いを詰められ強烈な一撃をお見舞いされた。

 一瞬にして私達は一人残らず地に伏してしまった。

「ここまでだな」

「惜しいところまでは行きましたね」

 訓練が終了すると胡桃が訓練場へとやってきた。

「こうも連日で何度も治療を施すと流石に疲労が溜まるわ。『完全なる治癒(パーフェクト・ヒール)』」

 胡桃の詠唱と共に身体が暖かい光に包まれ、たちまちに傷口が塞がっていく。

 相も変わらず完璧な治療で私達が受けた傷は跡すら残らず完全に癒えた。

「初戦にしては中々な動きだったが、まだ足りないな」

 しっかりと戦略を立てた上で全力を出したのに、ハンデを負った二人に負けた。

 やっぱりこの壁大き過ぎるよ。

「まずは幽鬼。戦法に気を取られすぎて一つ一つの攻撃が雑になりがちだ。相手の不意をついた時こそ丁寧に仕掛けろ。あとは気配の消し方がまだまだ甘い。並の異形程度なら問題は無いだろうが相手が変異種、やましてやアジャスタなら不意をついても咄嗟に避けるくらいはされるぞ」

 確かに、修行の中で幽鬼と戦った時は何故かわからないけどどの影から出てくるのかがなんとなくわかっていた。

 最初は訳も分からずで惨敗続きだったけど、戦いを繰り返すうちに徐々に順応していった。

 第六感てやつなのかな。

 師匠も気配をたどってるって言ってたし、この感覚を磨けば私も師匠みたいになれたりして。

「次に雷華。戦闘中の立ち回り、スキルの使い方はよく出来ている。だが、時折一人で抱え込み過ぎるのが見て取れる。もう少し仲間のことを頼れ、そして利用しろ。お前のスキルに対する理解度があれば仲間の力ももっと引き出せるはずだ」

「雷華はこれで案外生真面目なところがあるからな」

 そう言われた雷華は頭に置かれた緋翠の手を払いのけて少し頬を赤らめながら小さな声「うるせ」と悪態をついていた。

 何あれ可愛い。

 これがギャップ萌えか。

「最後に天鬼。日輪を常時展開して幽鬼の行動範囲を広げる作戦は良かったが、そのせいで剣技に乗せる日輪の出力が疎かになっっては意味がない。もっと効率の良い魔素の運用方法を身に付けろ」

 効率の良い魔素の運用方法か。

 今までこんな戦法はとった事なかったから、そこまで魔素の運用には困らなかった。

 私の技の中で最も魔素消費が激しいのは双剣術だけど、それも魔素を練る時間が必要なだけで必要魔素量は問題無く確保できていた。

「それなら俺が天鬼に魔素の扱い方を教えておきますよ。午後の訓練は試合形式じゃないんですよね?」

「ああ、そのつもりだ。戦いは試行錯誤の積み重ね。頭で理解しただけじゃ咄嗟の状況で身体は動かんからな。各々試合で得た気づきはすぐにでも試さないと意味が無い」

「雷華も混ざるか、技の出力を上げるのに丁度いいからさ」

「そうだな、俺は魔素を知覚することが出来ないから魔素運用の指導は緋翠に任せよう。幽鬼は俺と稽古だ」

 緋翠の指導か。

 一体どんな感じなんだろう。

 約一名、稽古って単語を聞いて天を仰いでるけど、あれは放っておくか。

 とりあえず午後の訓練までに身体を休めておこう。

 陽葵と瑠奈はどんな感じだったか気になったけど向こうも休息を取りたいだろうし、夕食の時にでも聞こうかな。

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