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33_トレジャーバトル4製作発表会③


観客席で立ち見をしている四人組がいた。男性二人、女性二人だ。


「まさか…GUN……?」


一人は会場の液晶テレビの映像を見ながら衝撃を受けていた。男性っぽい姿だが、顔は可愛らしい。


三脚を使って撮影していた高校生の男はカメラの電源を落とす。


「…どう思いますか、キング?」


キングと呼ばれた男は平静に状況を見ている。スマートな佇まいでソフトな雰囲気を醸し出している。


「うーん…宮永さんか…」


キングと呼ばれた青年は舞台上の紗希を見る。紗希は嬉しそうに観客席に手を振っている。


「まぁ…間違いなく…GUNだと思うけどね…」


「GUNって…トラのマーチに入ったんだよね?」


「ユウ君からそう聞いてるけど…これは楽しくなってきたね」


キングは新しいオモチャを見つけた子供のような笑みを浮かべる。





紗希は記念メダルと表彰状を持って奈々たちに駆け寄る。


「紗希~おめでとう!」


「ありがとう、勝てて良かったよ~」


「紗希さん、楽勝でしたね」


「さすが、紗希だぜ」


四人で話していると岸のほうから紗希に話しかけに来た。


「約束だからな、教えるよ…」


「はい…」


紗希は気持ちを引き締める。


「広瀬優斗のヤバイ噂っていうのは、借金があるってことだ」


「借金…?」


キョトンとする紗希だ。


「本当か嘘か俺には分かんねーから」


それだけ言うと岸は友達二人のところに歩いて行ってしまう。


「優斗さんに限って借金はないですよ~」


「そうだよな、俺も信じらんねー」


渉と大輔は噂を否定的に捉えた。


「本当のことだとしても借金とトレジャーバトルは関係ないよね」


がっかりした紗希だ。


「岸って人の情報はあまり役に立たなかったですね」


「そうだな」


「どこか場所を移してお茶して帰らない?」


「それいいね」


四人は駅前のマッグに立ち寄ることにした。







――ピーポー、ピーポー


サガ本社の前には、救急車が止まっている。誰かが運び込まれたようで付き添い人は香坂だ。


「私が同行します」


そう言うと香坂は救急車の中に入る。


理恵は、バタバタとオフィスを歩いて加奈のオフィスをノックする。


「ちょっと…今、大丈夫?」


「なに…理恵?…実は理恵ってヒマ人でしょ?」


加奈のクマがヒドイ。どうやら何日か徹夜しているようだ。


「ふざけてる場合じゃないわよ、倒れたのよッ!!」


「…倒れた?まさか」


「そう、伊織よ!!」


ガタッと立ち上がる加奈だ。


「ちょっと、それで伊織は…?」


「いま救急車で運ばれたわ。香坂君の話だと会議中に意識を失ったそうよ」


「うそっ!!ヤダ…私も病院に行く」


加奈が取り乱してコートを取る。


「加奈が行っても何もできないでしょ」


「でも、伊織がっ…!!」


「落ち着いて。それより伊織の仕事が間に合ってないらしいのよ」


理恵は加奈を落ち着かせようとしながらゆっくり話す。


「伊織の仕事を手伝ってあげたら帰ってきたときに伊織は楽でしょ?」


「…そうだけど」


「大丈夫、死なないわよ。その辺も計算して生きてんでしょ」


理恵は冗談っぽく言い放つ。


「そうね、伊織が帰ってきたら文句いっぱい…言わなくちゃ…」


加奈は指で涙をぬぐってうなずく。


「システムのことはさっぱりだけど、何かあったらいつでも呼んでね」


「ありがとう。おかげで目が覚めたわ」


いいのよ、と言って理恵は加奈の部屋から出て行った。





優斗は撮影が終わり帰り支度をしていると知らない番号から着信があった。


「もしもし…」


『いつもお世話になっております。広瀬優斗さんの番号でお間違いないでしょうか?』


電話をかけているのは香坂だ。病院の外から電話をしている。


「はい…」


『私、広瀬さんのお父様の元で働いている香坂と申します』


「はい…」


『今日の17時過ぎにお父様が会議中に倒れて病院に運ばれました』


優斗は香坂の言っている言葉が理解できない。


「…父が…倒れた?」


『はい。本社近くの病院に運ばれましたが、いまだに意識不明です』


「意識…不明?」


優斗は香坂の言葉を繰り返すだけだ。香坂のほうははっきりした口調で伝える。


『病院の住所と部屋番号をメールで添付します』


香坂はその後も連絡事項を伝えたが、優斗は固まってしばらく動けなかった。


『優斗君…?』


優斗は香坂の呼びかけに答えることができずに携帯電話を耳から離した。


(意識…不明…父さんが?)


「優斗君、聞こえる?」


優斗はもう何も聞こえなかった。


(さっき父さんと電話したよね…?あの時僕は…なんて言った…?)


優斗は寒気がしてブルブルと震えた。急に怖くなった。


(…うそだろう?)


優斗はその場にへたり込んでしまった。





紗希が家に着くと先に俊介がソファに座っていた。


「ただいま~」


「おかえり。広瀬伊織には会えたのか?」


「うん、会えたよ。ビックリするくらい似てた」


リビングに父親の姿がない。


「あれ…お父さんは?」


「母さんの着替えとか持って会社に行ったみたい」


紗希はテーブルに鞄を置く。


「…なんで?」


「知らないけど仕事が忙しいみたいで…当分帰って来ないかもしれないな~」


「そっか…」


紗希はクッションを持ってソファに座る。


「で、広瀬伊織と何か話したのか?」


「うん、少し話せて名刺もらったよ。でね、トレジャーバトルの個人選で優勝した」


兄に表彰状とメダルを見せる。


「おぉ~すごいじゃないか!」


「お兄ちゃんのほうは…?学園祭の準備どうだった?」


「別に大したことないけど…一日中動いていたから腹減ったんだよな~。だけど父さんいないしさ…」


俊介は立ち上がってキッチンへ向かう。


「何か作るの?作るんだったら一口ちょーだい」


何を作ろうかと俊介は考えた。






その日の夜遅く、優斗は病院の前にいた。夜の病院は暗くて静かだ。


優斗は入るわけでもなく、ただその場から病院を見ている。手には携帯が握られていた。


優斗は人形のようにただ黙って病院を見ていた。




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