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天才は劣等感のある年上魔法騎士を逃さない  作者: 青門 利空


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集団告白

訓練場につくと、昨日魔法訓練でペアになった第1隊のダンがいた。


あれ、今日も合同訓練なのか?


疑問に思う。

ダンは、その風体に似合わない、一輪のバラを両手で持っている。

リボンつきだ。

俺に気づいたダンは一瞬うれしそうな顔をし、かけよってくる。


「おはようございます。ロズさん。

昨日は魔法の威力が強すぎてすみませんでした。

お体大丈夫でしたか?」


「……あー、ありがとな、心配してくれて。

大丈夫だよ、全然」


俺は、昨日の初めのころの態度と違うダンに面食らっていた。

なんか、変なものでも食べたのか?

ダンは、顔を赤らめながら、いそいそと、リボン付きのバラを差し出してくる。


「ロズさん、よかったら、これ……」

「……え」


俺はポカンとする。


「お友達からお願いします!!」


ダンがいきおいよくお辞儀をする。

手はバラを差し出したままだ。


「……」


俺は、フリーズした。

頭の中が?でいっぱいだ。


友達。

――なんで?

俺、アルバートと違ってポンコツなんだけど。


俺があっけにとられていると、


「……だめですか?」


ダンは顔をあげて、泣きそうな顔になる。

あー、だめだ、これ、母性本能をくすぐられる表情だ。


「別にいいけど……」


そう答えると、ダンは、歓喜の表情を浮かべ、バラをおれの手に押し付ける。


「これ、つまらないものですが、お近づきの印に!

棘はとってありますから大丈夫です!!」


そして、俺にウインクをすると(俺は再フリーズした)、

軽い足取りで第1隊の別の演習場へと去っていった。


おれは茫然とそれを見送る。

なんなんだ、一体……。


それから、演習場にダニーがやってきた。


「おはよー、あれ、なんでバラなんかもってんの?」


「……なんかもらった。」


「そうなんだー。訓練のとき邪魔じゃない?どっか置いてきたら?」


「そうだな」


俺は、演習場横の更衣室に向かった。

なんか、花をさせそうなものをさがす。

ゴミ箱に空き瓶がはいっていたので、それを水でかるくすすぎ、

水を入れた瓶にバラをさす。


よし、これでOK。

このままここの窓辺に飾っとこうかな。

部屋に持って帰って、ピーちゃんが誤って食べたらよくなさそうだし。


俺は、陽があたるようにバラの入った瓶をおく。

振り返ると、入り口に男が立っていた。

俺は、びくっと体を震わせる。


(びっくりした……。こいつ……、誰だ?)

男は、俺にリボンのかかった小箱をおずおず差し出す。

見ると、その顔は赤かった。


「あの、俺、第1隊のサミュエルといいます。お友達になってください!!!」


俺はフリーズした。

なんか、今日、朝からやけに友達になるよう頼まれるな……。

第1隊は、みんな、友達いないのか?


「これ……、なんですか?」


「俺が昨日焼いたクッキーです!!」


「そうなんだ……」


「考えておいてください!!」


そして、そのサミュエルという男は駆け足で去っていった。


なんなんだ……、一体。

おれは、朝から2人立て続けに友達になるよう頼まれ、少し混乱しながら、第3隊の早朝訓練をしていた。

第3隊は、いつもと同じ平和な空気が流れている。

演習場をジョギングしていると、隣を走っていたダニーが話しかけてくる。


「どうした~?なんか難しい顔して。何か悩んでる?」


「いや、今朝、2人から友達になるよう頼まれて」


悩みを打ち明ける。

するとダニーがあっけらかんと言った。


「そっか~、それ第1隊の人じゃない?」


おれはびっくりした。


「なんで、わかった?」

「だって、ロズ、昨日、第1隊との共同訓練で目を出しちゃったから」


ダニーがにやりとする。


「第3隊は、エリアスが根回しして、全員に釘を刺してるから、ロズに誰も迫らないけど」

「……どういうことだ?」


「これ以上は、俺の口からは無理。エリアスに直接きいてみな」


そして、ダニーは「お先~」と前を走っていった。

なんだ?

釘を刺してるって。

迫るって。


俺は走りながら長考する。

ポクポクポク……、チーン!!

――そうだ、わかったぞ!!!


エリアスはああ見えて、優しいからな。

俺が目をコンプレックスから隠しているのを知って、第3隊のみんなに、

「ロズの目の色は奇妙な色だが、あまり触れないでやってくれ」

とでも言ってくれたんだな。

・・・・・・あいつなりに、気を遣ってくれてるんだ。


まあ、第3隊は、アルバートが、俺たちが入隊の時に先に、

「ロズの目は紫なんだ。でも誰もロズに変な真似はするなよ。

――もしそんなことしたら、わかってるよな」

と俺のことをからかったりしないよう先に言ってくれていたから大丈夫だったんだけど。

……あいつは、昔からそういうところがある。


俺は、アルバートやエリアスのことを思い出して、ちょっと胸が温かくなる。

みんな、いいやつだ。

アルバートが兄、エリアスが息子でちょっとした疑似ファミリーだな。

もちろん、ピーちゃんも!

ピーちゃんはかわいい彼女みたいだ。(オスだけど。)


そのあと、ほっこりした気持ちで、早朝訓練を終えた。

そして、朝の軽食を取りにダニーと食堂へ向かった。


食堂は混んでいるようだ。

入口から入ると、入り口からすぐの長テーブルに座っていた一行が、一斉にこっちを見た。

多分、さっき会ったダンとサミュエル以外の第一隊が全員揃っている。

しかも、みんな一斉に目を見開いた後、かすかに笑顔を浮かべる。


……なんだ、この空気。そして、皆一様に、同じ表情を――。

え、演劇部……?!


俺はぎょっとしてフリーズした。


すると、第1隊がそそくさと小走りにこちらに近づいてきて、

手に花やら、お菓子やら、ラッピングされた箱などを

俺に向かって差し出しながら、俺を取り囲む。


なんか、包囲されたんだけど……。

しかも、全員、妙に顔が赤い。

なんなんだ、この集団。

よくわからない状況に、俺は少し前から、実は逃げたくなっていた。

なのに……、に、逃げられない。


そして、次の瞬間、第一隊は、口々に俺に向かって話し出した。


「友達になってください!!」

「おい、お前、抜け駆けするな!」

「これ、高級チョコ用意しました!ぜひ俺とお近づきに」

「てめーずるいぞ!」

「誰だ、押した奴は!俺が先だ――大好きです!!」

「迫りすぎだろ!お前みたいな図体のでかい男はこわいから、引っ込んでろ!」


すごい騒ぎだ。

――でもなんか、正直言って、めっちゃ怖い。

第1隊の奴ら、何か、目が血走ってないか?

あと、圧が強すぎる――。


おれが茫然としていると、ダニーが叫んだ。


「おい!第3隊のみんな!ロズを守るんだ!!」


すると、どこから現れたのか、第1隊に比べると、

小柄な奴らが多い第3隊の仲間たちが、

俺と第1隊の間に防波堤のように入り込む。


「ロズ!逃げろ!!」

ダニーがまた叫ぶ。


「いや、第3隊と第1隊に二重に囲まれてて、どこから逃げればいいのか……」


途方にくれると、ダニーが「確かに……」と小さくつぶやく声がきこえた。

そして、すぐその後大声で、

「第3隊!ロズの逃げ道を確保!!」

と号令をだした。


第3隊のみんなが協力して、第1隊の比較的小柄な奴らを左右に押して、

隙間を作ってくれる。

おぉ~っ、モーゼみたいと感動していると、


「ロズ、何してる!

部屋に戻るんだ!!今日は風邪で訓練やすみって団長には報告しとく!!」


抵抗する第1隊におしくらまんじゅうのように揉まれながら、

発されたダニーの言葉に俺は我に返った。


俺は素早く、隙間を通り、走って逃げた。


「待って!」「まだ、渡せてないものが……!」「怖がらないで~!!」


後ろをチラっとみると、追いかけてこようとする第1隊を

第3隊のみんなが団結して押しとどめていた。


……いや、それにしても、やっぱり第1隊、友達に飢えすぎじゃないか?

疑問をいだきながら、俺はその場を急いでとんずらした。



部屋に戻った俺に、ピーちゃんは、

あれっと少し慌てたような顔をした。


なんか、窓際で鍵に嘴を突っ込んでいたような......?


俺と目が合った瞬間、

ピーちゃんは「ピィッ!?」と飛び上がり、

慌てて俺の肩へ飛んできた。


「ロズヤスミ?カゼカ?」

小首をかしげながら聞いてくる。


「急に休みになったんだ、風邪じゃないんだけど」


俺は今日あった一部始終をピーちゃんに話した。

まあ、人間の言葉はわからないだろうけど。

話を聞き終えたピーちゃんは、心なしかびっくりしたような、

……いや、怯えている、ような気がした。


そして、焦ったように

「ヤキトリ……、イヤダ。ヤキトリダケハッ」

とさえずっている。


この間から妙に焼き鳥っていうなぁ。

俺、焼き鳥って言葉教えったっけ?


「第1隊って、友達いない寂しいやつが多いんだな……。

やっぱエリート中のエリートだから、友達っていうよりライバルって感じなのかな?

アルバートもそうだったのかなぁ?」


おれはひとりごちた。

……まあ、俺には関係ないか。



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