暗雲
なんなんだ、この事態は!!!
監視カメラもとい、ジョナサンの目を通じて、
毎日、ロズの様子を欠かさず見守っていた俺は、
今回のロズ集団告白騒動への怒りに震えていた。
しかも、
ジョナサン、あの役立たず鳥め……。
騒動の日、ジョナサンは寝坊したらしく、
集団告白の場面は中継で確認することができなかった。
事態をロズがジョナサンに告げたことで事態が発覚したが
ロズが言わなかったら事態を把握できなかったと考えると恐ろしい。
帰ってロズに、マジで恋人が出来てたりしたら(考えるだにおぞましいが)、
焼き鳥にしてやる!!
俺はそばにあった巨大な岩に、怒りで雷撃をくらわす。
ドーンという衝撃音とともに岩は真っ二つに割れた。
いけない、いけない、落ち着け……、俺。
この事態をどうにかしなければ。
もはや、ジョナサンの手には余る。
俺は、侯爵家に魔法通信で連絡をし、指示をだす。
よし、ひとまずは、これで安心だ。
あとはヨルムンガンドをとっとと退治して、任務を終わらせ戻らねば。
しかし、妙だな。
国境周辺の村をいくつか周って調査したが、ヨルムンガンドの噂や目撃証言がない。
隣国との結界も調査したが、弱まっているところはなかった。
一応上書きして補強したが。
……もしや。
俺はひとつの可能性にいきついた。
そして、魔法通信で、俺の叔父でもある参謀に連絡をとった。
「叔父さん、エリアスです」
「おぉ、エリアス、久しいな、元気そうでなにより。任務は順調か?」
「ええ、それについてなんですが、叔父さん、ヨルムンガンドの件、他国が流した偽の情報の可能性があります」
「……なぜそう考える?」
俺は、手短に叔父に説明した。
アルカ国との国境沿いの結界がしっかりしていること、
ヨルムンガンドを目撃した人間がおらず、自身でも魔法と自分の足、両方で探索したが、
影も形も見たらなかったこと。
「アルカ国との関係性に今は問題ありません、今のところ、アルカ国内の情勢も落ち着いていると情報を 得ています。
むしろ、西側に隣接しているヴェルグラード王国の方が動きが不穏かと」
「ふむ、こちらでも調べてみる。お前はいったん任務は終了し戻りなさい」
「了解しました。
あぁ、それと叔父さん一つ頼みがあるんですが……」
叔父に頼み事をし通信を切る。
よし、これでロズの件は大丈夫だ。
しかし嫌な予感がする。気のせいだといいが・・・。
俺は急いで出立した。
空に雲が重く立ち込めていた。
「え・・・、第1隊全員、西の国境まで遠征に行ったの・・・?」
翌日、俺はダニーから聞いてびっくりした。
「珍しいよな。なんでも、急に上から指示がでたらしいぜ」
「へー、なんでだろ。でも、大変だね、遠征」
言いながら俺はほっとしていた。
昨日、第1隊全員から友達になってくれと頼まれて、
俺は異常事態に、どう対処しようかと悩んでいたからだ。
これで、しばらくは平和に過ごせそうだ。
その日は、本当に穏やかな1日だった。
訓練もそんなに激しいメニューでもなく、
食堂での夕飯は俺の大好きなエッグタルトが出た。
甘味が最近疲れていた脳にしみる・・・。
しかも、甘いものが苦手なダニーが自分の分をくれたので、俺は2個もエッグタルトを堪能した。モグモグ。
そのあと、部屋ではいつものように、ピーちゃんと戯れ、いつもより早くベッドに入った。
今日はいい一日だったな・・・。
羊のぬいぐるみを抱きしめてまどろむ。
羊のぬいぐるみからは、いつのまにかエリアスの匂いが消えていた。
俺は、何か物足りないような、寂しいような気持ちになった。
なんでかな、よくわらないけど。
そういえば、あいつ、任務についてもう1か月経つけど、今頃何してんだろ……。
元気に…してるかな……?
おれはぼんやりと
エリアスの自信満々の笑顔を思い出しながら、いつの間にか眠っていた。
明け方、警報が寮内に鳴り響く。
緊急招集だ。
この警報の音は、……危険レベル10だ!!
俺は飛び起きて、急いで着替え、演習場へと向かう。
魔法騎士団だけでなく、城全体があわただしい。
騎士団だけでなく、王国軍全体があわただしく物々しい雰囲気に包まれている。
何が起きたんだ?
演習場につくと、騎士団全5隊――いや、第一隊は遠征中のため不在だ。
4隊が整列していた。
騎士団長から発表がある。
「今朝未明、西側の国境沿いのバリアのうち数か所が破られたという知らせが届いた。
偶然、第一隊が遠征に行った先だったため、今、第一隊が補修にあたっているが、
大量の魔獣が西側から流入してきているらしい」
騎士団全体にどよめきが走る。
「魔獣の種類、規模は具体的にはまだわからないが、どうやら魔獣の中にドラゴンがいるという情報が届いている」
ドラゴン……!!
周囲のどよめきが一層強くなった。
ドラゴンは魔獣のなかでランクSSSのトップクラスだ。
騎士団全隊でかかっても、よくて追い返すだけ、
……最悪全滅の可能性がある。
騎士団全体に戦慄が走る。
「……冗談だろ」
カランと誰かが剣を落とす音が響いた。
――ドラゴンなんて、実戦で見たこともない。
「お前らも知っているとおり、精鋭ぞろいの第一隊とはいえ、総勢20人だ。
バリア補修に大量の魔獣の迎撃、一個隊では太刀打ちできん。
今回の目的は二つだ。
第一に、魔獣の侵攻をこれ以上内側に通さないこと。
第二に、ドラゴンの足止めだ。
討伐は考えるな。戦線維持を最優先とする」
隊列に緊張が走る。
「配置を伝える!」




