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天才は劣等感のある年上魔法騎士を逃さない  作者: 青門 利空


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11/26

ドラゴン

「第2隊は西門防衛ラインへ直行!結界破損地点の補強と迎撃を担当しろ!」


「第4隊は市街地防衛!避難誘導と、侵入個体の掃討にあたれ!」


「第5隊は後方支援!負傷者の搬送と、魔力供給の補助を行え!」


騎士団長は一拍置いた。


「――第3隊!」


俺たちの隊が呼ばれる。


「第3隊は、遊撃任務とする」


ざわ、と空気が揺れた。


「各戦線を巡回し、崩れた箇所の穴埋めを行え。

状況判断は現場で任せる。

最も危険な任務になるが

――貴様らならできる」


ダニーが小さく息を吐くのが聞こえた。

騎士団長は最後に全体を見渡す。


「繰り返す。

ドラゴンは討つな。

足止めしろ。

無理をすれば全滅する」


低く、重く言い切る。


「――各隊、出撃!」


おれたちは、重苦しい気持ちとともに出立した。

周囲が、武器や装具のガチャガチャとした音などで騒然となる。

昨日はあんなに平和だったのに。


少し途方にくれる。

もしかしたら、死ぬかもしれない。

ピーちゃんにお別れをいう暇もなかった……。

(ピーちゃんは俺になにかあったら、

実家で引き取ることになってるから安全だろうけど)


第3隊は、魔獣討伐部隊だ。

魔法騎士団は各隊20人の特殊部隊。

俺たちは、4人1組の5班に分かれ、各戦線へと馬で向かった。

俺の班は、俺、ダニー、トーマス、サンソンの4人だ。

 

西の国境には、

ヴェルグラード国との間に広大な森が広がっている。

ただし、森の途中で深い峡谷がある上に、結界が張られているため、

俺たちの国にはドラゴンは生息していない。


いるのは、あまり攻撃的でない魔獣のみだ。

俺の班は、馬に乗り移動していた。


森まであと10kmあまりになった時、いきなり「キィィ~ッ」というような、

重低音が空から聞こえた。


辺りが暗くなり、頭上を見上げると、そこには体長15mはあると思われる巨大なドラゴンが空を飛んでいた。


「まじか……。いきなりのお出ましとは」


ダニーがぼそっとつぶやく。


こんなドラゴンを足止めか?

―できる気がしない。

マジでここで死ぬかもしれない。

ドラゴンは空中旋回をしていたかと思うと、いきなりこっちに向けて口から炎を吐いた。


ギャー!!!

慌てて、4人全員でバリアをはる。

間一髪で間に合ったが、……だめだ。

足止めなんてムリ。

4人が束になっても絶対無理。

俺たち4人は互いに顔を見合わせると同時にうなずいた。

「よし……、プランBで行こう!!」

みんなで意見が一致する。


プランBとは、四方に各自全力でとりあえず逃げる作戦だ。

今の状況では最も賢明で最適な作戦である。

蜘蛛の子を散らすように俺たちは四方に散った。

ドラゴンは、空中で滞留しており、誰を追うか思案しているようだ。


すると次の瞬間、ドラゴンがこっちをみた。

目があう。


なんと、俺の方に向かって飛んできた。

マジでー!!!

俺は心の中で絶叫する。

泣きそうだ。

最悪だ。


運が悪すぎるだろ。

俺の運は昨日のエッグタルトで使い果たしてしまったのか・・?

エッグタルトで消える程度の運しかないのかよ!


俺はうめきながら、全速力で馬を走らせる。

しかし、ドラゴンのスピードに勝つわけがない。

あっという間に、追いつかれ、馬の前に回り込まれた。

馬の前の地面にドラゴンは着陸し、こちらをじっとみた。


だめだ、万事休すだ。

短い人生だったな……。

そのとき、瞼の裏に、エリアスの笑顔が思い浮かんだ。

エリアス、俺が死んだら泣くかな……?

それとも、強がって、我慢するかな。

そう、思いながら、覚悟を決めたその時……。


いきなり、ドラゴンが、「キューン」と小首をかしげて鳴いた。

ん??

思わずフリーズすると、今度は、いきなり、俺の目の前にその大きな顔を持ってきた。

やばい、食われる……!!

ぎゅっと目をつぶると、


べローン。


何か、生暖かい湿ったものが、顔全体を通過していく。

は……・?

茫然としていると、再び、べローンとやられた。

え……、ドラゴンが、舌で、俺を、舐めている……?


「キュルキュルキュル……・」

ドラゴンが甘えたような声を出す。


えーと、なんか、さっきまで俺たちのこと殺す気まんまんだった気がするけど

急に懐いたな……。


俺は、よく事態を呑み込めてなかった。

ドラゴンは鼻先を俺に優しくこすりつけてくる。

なんかよくわかんないけど、助かったみたい……だな。

俺は安堵した。


それにしても、なんか、疲れた……。

さっき……、命の恐怖を感じながら、全力疾走したからかな。

なんだか……、急に、体から力が抜ける……。

俺はそのまま意識を失った。



「ロズッ……!!」


俺ことダニーは、ドラゴンがロズめがけて飛んで行ったことに気づき息をのんだ。


やばい、ロズが危険だ。

助けないとっ。


―でも、俺じゃどうにもならない。

わかっているのに、足が止まらなかった。

岩陰に身を潜め状況をうかがう。

すると、ドラゴンはロズの前に降り立っており、ロズにむかって何かしている。


食おうとしているのか?!

俺は、岩陰から飛び出そうとした。―その瞬間。

ドラゴンがロズの顔をなめた。


―は?味見??

頭が混乱する。


しかし、ドラゴンから殺気はなく、ただうれしそうな気配が伝わってくる。

「キュルキュルキュル……」

なんか、甘えているような……。

………………。


ロズは普段、馬、犬、鳥、使役獣やらにとにかく好かれるタチだが、

まさかドラゴンにも

好かれている……?!


すると、ロズはいきなり馬の背にうつぶせになった。

意識を失ったようだ。


まずい……、落馬する!


俺が思わずロズの方に駆け寄ろうとすると、

ドラゴンは馬の背から、ロズをそのでかい口でそっと咥える。

そして地面におろしたかと思うと、両前足でロズをまた優しくつかみ

飛び立った。


「おい!!」


俺が叫ぶとドラゴンは俺を一瞥したが、そのまま飛び去って行った。


「ロズ―!!!」


ドラゴンはすごいスピードで飛び去って行く。

おれは、為すすべなくドラゴンを見送るしかなかった。



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