表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才は劣等感のある年上魔法騎士を逃さない  作者: 青門 利空


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/26

番外編3-雨降って地固まる

春は恋の季節だ。


ロズは、ふと部屋の窓から外をみると、窓から見える木に、

鳥が巣を作っていて雛に餌を運んでいるのを目にした。

 


3羽いる雛は、ピーピーその小さな口を精いっぱいあけている。

親鳥はそれにせっせと餌をあげていた。

 

かわいいなぁ……ロズは和んだ。そして、ふと、振り返りおもむろに聞いた。


「ピーちゃんってさぁ、子育てしたことあるの?」


ピーちゃんは、エリアスの家の使役魔獣であり、エリアスが俺を盗見するために仕掛けていたことはすでに聞いている。


そして、人間なみに言葉が話せ、寿命も人間並みに長いことを。


「もちろんありますとも。こう見えても、私はかなりモテるタイプでして、魔鳥界の光源氏と呼ばれております」


「ヒカルゲンジってなに?鳥の種類?」


「んー、東洋のモテモテの貴族男性のことですが、まぁ、エリアスさまみたいな人です」


「ふーん」


俺はちょっと面白くない気持ちになった。

エリアス……、やっぱり俺と付き合う前、モテてたんだ。


ピーちゃんはそれに気づかず続ける。


「私は、春になる度に、女性から言い寄られ、まぁ、今まで20羽以上の女性と家族を作りましたね」


「えっ、ピーちゃん。季節のたびにパートナーを替えるの?」


「まあ、そういう鳥ですから。習性です」


ピーちゃんは、俺の少し責めるような眼差しにむっとしたように反論してきた。


「大体、エリアス様だって似たようなものです。お小さいころから、異性に言い寄られ、付き合った女性の数は20人とは言いませんよ」


「えっ……」


俺はショックをうけた。俺と付き合う前に少なくとも20人以上の女性と付き合ってたんだ……。

まぁ、いかにもモテそうではあるよな。顔もいいし、頭もいいし、魔力も体術も群を抜いているし。あれも手慣れた感じだったしな……。

俺は、もてなかったし、あいつが初めての相手なのに……。


胸がモヤモヤする。


「まぁ、ロズもモテモテですよね。相手は女性じゃないけど……」


「ん?俺もてたことないよ?」


「またまたぁ、私、苦労したんですよ。ロズに言い寄る輩を撃退するために!


第一、第1隊の方々といえば、エリアス様とアルバート殿が牽制してるとはいえ、

いまでもロズに言い寄る隙を狙ってますからね……」


「なんの話?」


「ですからー、ロズが男性にモテモテ……」


「ジョーナーサーン?」


地の底から地獄の鬼が叫んでいるような声がした。

周囲の温度も5度ほど下がっている。


いつのまにか現れたエリアスが、ピーちゃんの頭をその手でガシっと掴んでいた。


「お前、焼き鳥と唐揚げどっちがいい?」


「ひっ、ひぃ。どちらもご遠慮申し上げますっ」


ピーちゃんは青ざめて羽をバタバタさせている。


「おい、エリアス、ピーちゃんをいじめるなよ」


俺が割って入ると、エリアスはしぶしぶといった感じでピーちゃんから手を離した。

ピーちゃんはほっとしたように、ふーっと息を吐いている。


「ロズ、ロズは俺が一番ですよね?第1隊のどのメンバーよりも俺が一番魅力的だし、絶対ロズを幸せにできますし」


エリアスが、すこし焦った様子で俺にきく。

俺は、何言ってんだよと返そうとして……、先ほどのピーちゃんの情報、

エリアスが女性にもてて少なくとも20人以上と付き合ってきたというエピソードを思い出した。


あれ、なんか胸にチリッとしたような痛みが走る。そのうえ、なんか胸がムカムカしてきた。

なんか変なものでも食べたっけ?


「……」


無言の俺にエリアスは不安そうな顔で「え、ロズなんで黙ってるんですか?」と聞いてくる。


「お前こそ、どうなんだよ」


俺はイライラして口走ってしまう。だめだ、口が止まらない。


「お前、小さいころからモテモテで20人以上の女の子たちと付き合ってきたんだって?

その子たちの方が俺よりもいいんじゃないの?子供もつくれるし、温かい家庭が築けるし」


あれ、俺、何言ってんだ。

そんな俺の様子をみて、エリアスはびっくりしたような表情をしている。あぁ、だめだ、

俺子供みたいだ!俺の方が年上なのに。


「ごめん!俺、ちょっと頭冷やしてくる」


俺は部屋を飛び出した。


「ロズ!」


エリアスの声が聞こえるが、今は追ってこないでほしい。俺は全速力で姿を消した。

その後の部屋の中が修羅場と化してることには気づかずに。


ロズが部屋から走り去ったあと、エリアスは、顔に青筋を立てつつ、にっこり微笑みながら、

ジョナサンを見る。ジョナサンは、そーっと窓の鍵をあけて、逃げ出そうとしていた。


「ジョ・ナ・サ・ン。お前、ロズに何を言ったのかなぁ?」


「ひーっ、わたくしめは何も!」


エリアスは再びジョナサンのあたまを鷲掴みにすると、氷点下の声で問うた。


「正直に言った方が身のためだぞ……。鳥刺しになりたくなければな……」


ギャー!!!!

部屋にジョナサンの絶叫がこだましていた。


 ロズは、部屋から逃げ去った後、気配をけしてとぼとぼと歩いていた。ロズは小柄なうえに小さいころからの特技で気配を消すのが得意だった。しかし、そんなロズの特技がきかない相手がいた。


「おい、ロズ。そんな落ち込んだ顔して。どうしたんだ?」


アルバートがロズに気づいて声をかけた。力なく顔をあげると、アルバートがいつものにかっとした笑顔でロズに近づいてきた。


「なんか、辛気臭い顔になってんなぁ。おい、お前こっちにこい。話きいてやるから」

俺は、半ば無理やり引きずられるようにして、アルバートの部屋に行った。

アルバートから「ほい」と温かいお茶を渡される。

一口のむと、少し気持ちが落ち着いた。


「……で何があったんだ?」

俺はあったことをアルバートに話した。話し終えてアルバートの顔をみると

今にも吹き出しそうな顔をこらえていた……。


「おい。人が真剣に悩んでるのに……」

俺が怒ると同時にアルバートはたまらず吹き出した。豪快に笑っている。

俺はいらっとした。


「もう、いい。馬鹿にして……。お前に話したのが馬鹿だった」

俺が去ろうとすると、手を引っ張られる。


「すまん、すまん。もう笑わんから」

にらみつけると、ごめんと手を合わせている。

こいつ……。


「で、お前は結局なんで悩んでるんだ?」


「なんだろ、なんか自分の気持ちがよくわからないんだ。ただ、エリアスのことをきいて胸がモヤモヤしちゃって」


「お前、妬いてるんだよ」


「え?」


俺はぽかんとした。妬いてる?俺が?何に?


「エリアスが女遊びが激しかったって聞いて、ショックを受けたんだろ?自分はエリアスが初恋なのに、エリアスはそうじゃなかったってきいて嫌な気持ちになったんだろ」


「!」


アルバートに言われて、俺は気づいた。

そうか、俺は嫉妬していたのか。

エリアスが俺だけじゃなくって、他の人と恋愛してたって聞いて。


そして、俺だけじゃなかったってきいてちょっと傷ついてもいたのかも。


「腑に落ちたって顔してるな」


アルバートをみると優しく笑っていた。まるでできの悪い弟を優しく見守るかのように。


「話きいてくれてありがと……。でもさっきはなんで笑ったんだよ」


すねるとアルバートはまた吹き出しそうな顔になる。


「だ、だってよ・・。あのエリアスが、弱点なんてありませんみたいな澄ました顔をした奴が、過去の女遊びをばらされて、焦っている様子を想像したらおかしくてさ……」


「……そこまでにしてくれませんか」


その瞬間、周囲の温度が5度下がった。みると、エリアスが笑顔でいつの間にか部屋にいる。

でもその瞳は笑っていない。


「お前、勝手にひとの部屋にはいってくんじゃねーよ」

アルバートがいうとエリアスは


「人の恋人を勝手に部屋に連れ込まないでください」


と冷たく言い放つ。


挿絵(By みてみん)


「恋人ね~。何人目の? 21人目?」


「!!!!」

エリアスが怒りで爆発しそうになるのを俺はあわてて腕を引っ張り止めた。


「エリアス!アルバートは関係ないだろ!ちょっと話そう」


「……ロズ」


エリアスが急にしゅんとした顔つきになる。


「はいはい、早く行った、行った」


アルバートがしっしっとするのに、またエリアスがムッとするが、俺は無理やりエリアスを引っ張って部屋を出た。


俺たちはまた、俺の部屋に戻った。ベッドに腰かけると、その向かい側の椅子にエリアスが座る。エリアスは俺をみると口を開いた。


「ロズ……、話をさせてください。俺は確かに、以前他の女性たちと付き合ってました。

でも、それは俺から好きになったというよりも、向こうから好きだと言われて、嫌ではなかったからただ付き合っていただけで」


「……嫌じゃなかったんだ」


「!」


エリアスは傷ついたような顔をする。そして、いきなり俺を抱きしめた。


「ロズ。信じてください。あなたほど……、あなたほど夢中になったひとは今までいません。

むしろ、過去は恋愛というよりゲーム感覚でした。俺はあなたに会って初めて恋を知ったのです」


抱きしめていた腕をゆるめ、エリアスは俺の目を見つめる。


「あなたが初めて好きになった人です。そして、最後です。信じてください。俺は一生あなた以外を愛さないと誓います」


エリアスの目に涙が浮かんで零れ落ちる。その目は澄んでいた。


「わかった。信じる……」


答えると、エリアスは


「あぁ、ロズ……、信じてくれてありがとうございます。愛しています」と再度俺をギュッと抱きしめた。


そして、俺をゆっくりとベッドに押し倒そうとした。

俺はそれに手を突っ張って抵抗する。


「ロズ……?」


「うん、わかったけど、ほとぼりが冷めるまで俺したくない。出てって」


俺はエリアスに命じた。


「そんなっ。殺生な!」


「聞こえなかった?ハウス!」


エリアスはガーンとショックを受けたような顔をしトボトボと去っていった。

それから、俺らがどうなったかって?

まぁ、3日も過ぎたら、俺も気持ちが落ち着いたし、また関係は元に戻った。


なぜか、ピーちゃんが


「お願いですから、私の命を助けると思ってエリアス様と仲直りを!!」


と懇願してくるし。


おまけに、エリアスが、捨てられた子犬のような顔をして俺を見てくるし。

俺、この顔に弱いんだよね。


仲直りした俺たちをみて、アルバートは「雨降って地固まってよかったな」って言ってたけどどういう意味だろ?


とにかく、俺たちは、以前よりもっと仲良くなった。

めでたしめでたし。
























明日は番外編4を20時過ぎには投稿したいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ