番外編2-人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られて
アルバートが帰ってきた。
1年間の国外調査員の任務を終え帰還したのだ。
――帰ってこなくていいのだが。
俺、エリアス・レーヴェンハルトは、苛立っていた。
アルバートは、俺の最愛の恋人、ロズの幼馴染であり、ロズの兄貴分のような存在だ。
ただし、ロズは、アルバートが優秀(といっても俺ほどではないが)ゆえに、
小さいころから親に何かと比較され、複雑な感情を持っているようだが。
しかも、俺がロズを狙っており、アルバートが邪魔で、
追い出すために、国外調査員へ家の力を使って裏から推薦したことにも気づいたという
恐ろしいほどの勘の良さをもっている。
正直、ロズと気持ちが通じ合って、半年以上はたっている。
そのあいだ、俺は、ロズとの絆を深めてきた。
心身ともに通じ合い満たしあっている。
特に体の方は、……まぁ、その、関係も順調だ。
たまに、ロズから
「……キモ!」
「お前ってしつこいよな……」
などと苦情をいわれることもあるが、
嫌よ嫌よも好きのうちってやつだと思われる。
よって、アルバートが戻ってきたからと言って、別に俺たちの関係が揺らぐはずもなく、
つけいる隙もない。
―とはいえ、ロズとアルバートは幼少時からの付き合い(腐れ縁ともいう)だ。
油断しないようにみておかねば。
アルバートは、対外的には一旦魔法騎士を辞めたという形をとっており、
今回、再度魔法騎士に戻ることになったということにしてある。
所属はもちろん第1隊だ。
――のはずだった。
「おい、なんでお前が第3隊なんだ!」
俺は、アルバートに悪態をついた。
朝、騎士団長からエリアスの復帰が告げられたとき
所属を第3隊にすると発表されたからだ。
「いや~、だって俺動物好きだし」
絶対嘘だな!
俺は確信した。
絶対ロズの側にいたいと思って志願したに違いない。
くそっ、事前にわかっていれば阻止したものを……!
そんな俺の気持ちをよそにロズはアルバートに話しかけている。
「アルバート、ひさしぶりだな。放浪の旅はどうだった?」
「いやー、世界は広いな。色々な国や風習、そこに生きる人々をみてきて面白かった!
もちろん強いやつもたくさんいたよ」
「そっかー。あとで色々きかせてな」
ロズはにこにこしている。くそ、俺以外のやつに微笑みかけないでくれ。
今朝俺にはジト目を向けてきたのに……。
「なぁ、ちょっと加減してくれよ。お前のせいで睡眠不足なんだけど……」って。
逆に俺はロズのおかげで絶好調だが。
おれが悦にいっていると、アルバートはくるりと俺の方をみて、いきなり肩を回してきた。
「なぁ、エリアス。お前に話がある。二人っきりでな」
「俺には話はありませんけど」
「いいから、いいから。ほら、あんまり邪険にすると、ロズが悲しむぞ。俺はあいつの兄貴分だからな」
ロズをちらりとみると、心配そうにその美しい瞳が揺れている。
仕方ない。ロズを心配させたくない。
「……わかりました。手短にお願いしますね」
「わかったわかった、じゃ、あっち行くぞ。ロズ、またあとでな!」
「あぁ……」
ロズは少し不安そうに俺とアルバートを見送っていた。
アルバートと人気のない演習場の裏へ移動すると、アルバートはにやにやしながら開口一番に言った。
「すげーな。お前、ロズを手に入れたろ?」
「は……?何の話ですか?」
「今更とぼけるなって。様子見てりゃわかるんだよ。お前とロズとの間に流れる空気感が違う」
くっ……。こいつやっぱり油断ならないな。
俺はアルバートをにらみつけた。
「で、何か文句でも?」
「いやいや、まさか」
アルバートは笑う。
「俺は、よかったと思ったんだ。
出発するとき言ったろ?お前にロズを託すって。
ロズみたいな自分に自信が極度にないやつには、お前にみたいにしつこい、
ロズを簡単にあきらめないようなヤツじゃないと。
お前以外のやつじゃ、ロズを振り向かせられなかったと思うぜ。
なんせSSSランクだからな」
暗にディスられている気もするが、まぁ、俺以外のやつじゃロズを振り向かせられなかった
というのはその通りなので、俺はうなずく。
「まぁ、そうですね。俺以外に、あの人にふさわしい人なんていませんから」
「自分で言うのか。自信満々だな」
アルバートは笑う。こいつ、いちいち癇に障る言い方するな。
「ま、だけど、ロズの表情みてると、いい関係を築いてるってのはわかる。あんな、安心したような顔、俺はさせられなかったからな」
「……」
アルバートは俺に向き直ると、両肩にバシンと手を置いた。
「まぁ、ロズはまかせた!あいつを幸せにしてやってくれ!」
「言われなくとも」
俺は言いおいてロズの元に戻る。
アルバートはそのあとをついてきた。
表情はみなくてもわかる。
――絶対にやにやしているに違いない。
そのあと、訓練の間中、アルバートはずっと俺とロズに付きまとってきた。
邪魔だ。
人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえって諺を送りたい。
癪なのが、ロズも嬉しそうにアルバートと話していることだ。
そりゃ、久しぶりに気の置けない中の友人に会えて積もる話もあるんだろうが、
俺は一抹の寂しさを感じた。
その夜、ロズの部屋を訪れると、
ロズは俺にむかって
「今日はしないからな。最近お前のせいで睡眠不足だから」
と言いおき、さっさとベッドに入って反対側を向いてしまった。
俺はしゅんとしてロズのベッドに入る。
ちなみに、ロズと付き合い始めて、俺は、ロズの部屋のベッドを
クイーンサイズのベッドに替えたのでスペースに余裕はある。
ロズは
「お前が勝手にでかいベッドに替えたから部屋がせまくなったんだけど」
と文句をいったが。
俺ががっかりしながら目を閉じると、布団がもぞもぞ動き、優しく首に両腕を回された。
目を開けると、ロズがその瞳で俺をやさしく見つめていた。
「……なんだ?お前、寂しそうにしてるな。大丈夫、お前が一番大好きだから……」
「……ロズ!!」
俺は、ロズが愛しすぎて、我慢していた理性が崩れる音を聞いた。
その結果、翌日もロズが寝不足になり、俺に文句を言う羽目になったのは言うまでもない。
そして、そのたびに、俺はまた幸せを実感するのだった。
番外編7まであります。1日1つずつ投稿します。




