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天才は劣等感のある年上魔法騎士を逃さない  作者: 青門 利空


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番外編1-知らぬが仏とはいうものの

「エリアス様、ロズに私を通じてずっと見ていたこと告白しないんですか?」


ロズの部屋に遊びにきているときに、スパイ鳥もといジョナサンが聞いてきた。


ロズは、さっき、俺がくしゃみをしたら、風邪かと心配し

ダニーのところに「ばあちゃん、もといミセス・マーブル特製シロップ」を

もらいに行ってくるといい席を外している。


「しないよ」


「いいんですか?あとからばれても知りませんよ」


「相手にすべてさらせばいいってもんじゃないさ。

 知らない方が相手の幸せということもある。

 俺は、ロズの幸せのために、盗み見していたことは墓まで持っていく」


俺はきっぱりいった。


「なんか、いい風に言ってますけど、それってロズに事実を知られて

 嫌われるのが恐いだけなんじゃ・・・」


ツッコむジョナサンに俺はイラっとした。


「うるさい。余計なことを言うな。焼き鳥にするぞ」


「あー、こわいこわい。わかりました。

 じゃあ、あなたが私を使って、ずーっとロズのことを盗み見ていたことは 

 秘密にしておきますよ。」


その時、ガタンッとドアの外から物音がする。


……なんか、嫌な予感がする。


おそるおそる、キィと部屋のドアを開けると

そこには、ロズが白い顔をして座り込んでいた。


「あっ、あれ、ロズ……、ずいぶん早かったな」


「いや、部屋にシロップの余りがまだあったことを思い出して……、それよりも」


ロズがじとっとした目つきで、俺とジョナサンをみる。


「今、エリアスと話していたのピーちゃんだよね……。

 ピーちゃん、なんでそんなにしゃべれるの?」


ロズがちょっとした迫力で問い詰めてくる。


「え、いやあ、ピーちゃんソンナシャベレナイヨ」


「いや、めちゃくちゃ人間みたいにしゃべってたよね。それと」


ロズはエリアスの方を見た。絶対零度の瞳で。


「俺のことをピーちゃん使って盗み見してたってどういうこと?」


「……申し訳ありませんでした!」


俺は頭を下げた。

言い逃れできないときは、謝り倒すに限る。


俺は、ピーちゃんもといジョナサンがスパイで魔鳥であり、

その瞳を通じてロズの様子をうかがっていたことを伝えた。


……着替えの際、じーっとロズの美しい裸体を見つめていた

ことは明言せずに。


「これも、ロズに会えなくて寂しくて。姿を見たかった。それくらい愛していたんだ」


「ふーん。いつから見てたの?」


え……、そんないつからって。……ねぇ?

俺は言いよどむ。


「まさか、最初のピーちゃん登場時から?」


「……えぇ、そうなるかと」


「でも、そのころ、俺、お前と知り合ってなくない?」


「……うーん、そのような、そうでもないような」


俺は、歯切れが悪くなっているのが自分でもわかった。

すべて正直に答えるには、リスクが高い気がする。


「――お前、正直に答えろよ?ごまかしたりしたら、……わかってるだろうな?」


「――!!!!」


俺は、観念するしかなかった。

ここで、下手にごまかして、ロズに別れを切り出されたりしたら、

俺はショックで心臓が停止し早めにこの世に別れを告げることになるだろう。


――俺はすべてを話した。


ロズが高等部を卒業する間際に、魔獣舎でロズを見かけその笑顔に一目で恋に落ちたこと。


そして、ロズのことを調べるうちに、ロズが好きでたまらなくなってしまい、

魔鳥ジョナサンを仕込んだことを。

 

まぁ、ロズが好きでたまらなくなった

→ロズを落とすために徹底的に調べることにした

→ジョナサンを仕込んだ

という動機のうち、「ロズを落とすために徹底的に調べることにした」

とう部分は省いたが。


俺は嘘はついてない。ただ、一部を言っていないだけ。


ロズはさっきから黙り込んでいる。


俺はすごい緊張感の中で

ただただ石のようにロズの反応を待っていた。

背中に汗が流れる。


すると、ようやくロズが、神妙な顔をしてジョナサンの方を向き口をひらいた。


「……ピーちゃん、お前、ジョナサンって名前だったんだな。これからなんて呼べばいいんだ?」


え、そこ?

そこですか?

わりと、今の状況的にどうでもよくない??!!


俺が、唖然としていると、ロズは、

そうだ!ひらめいたという顔をしてこっちをみた。


「そうだ、名前はジョナサンであだ名をピーちゃんにすればいいじゃん」


「……」


「ピーちゃん」を「ジョナサン」のあだ名とするには、全然響きがかぶってないが……。


ところで、今それが一番話すべきことなんだろうか……?

いや、ロズから糾弾されたり、別れを切り出されるよりは全然いいが……。


俺は、重い口を開いた。


「ロズ……、怒ってないんですか?」


「あー、うん。人のプライバシー覗いて喜んでるなんて、正直頭おかしいとは思う」


ガーン!!!


俺は頭を殴られたかのようなショックを受けた。


さすが、ロズ……、すごい攻撃力だ。


「でも、もう、お前のそういう変態的なとこうすうす感づいてたし」


「……え?」


「だってさ」


ロズは続けた。


「お前、俺の脱いだ服の匂いかいだり、俺の頭髪でなんか怪しいお守りつくってたり、

挙句の果てには、第3隊の奴らと話していると、じーっとすごい湿度で見てきて、

あとでそいつらに牽制したり、やってることちょっと変すぎるっていうか変態じゃん」


「……」


――まさか、ロズに気づかれていたとは。

お守りに入れているのは頭髪だけじゃないが……。


「まぁ、たまにひくけど、そういうところも含めてお前だし。

俺、お前のこと、まるっと受け入れるって決めてるからさ」


「……ロズ!!」


俺はたまらず、ロズに抱き着いた。

ロズは、俺をやさしく抱きしめ頭を聖母のようになでてくれる。

ジョナサンが


「よかったですね~。これで私もヤキトリにならずにすみます」


と涙ぐんで祝福している。

よし、これでめでたしめでたし。


「あ、でもさ」


ロズが笑顔でつづけた。


「俺のこと監視していた道具は没収ね」


「・・・だめですか?」


「だめにきまってるだろ」


ロズのことを盗み見ることも楽しみのひとつだったが、俺は泣く泣く魔鏡をロズに渡したのだった。


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