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天才は劣等感のある年上魔法騎士を逃さない  作者: 青門 利空


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17/26

焦燥

―それから1週間がたった。


エリアスは苛立っていた。


今回の魔獣集団襲撃事件、

それ自体はあっという間に解決につながった。


東側のヴェルグラード王国との結界に穴がみつかり、

穴をあけるのに使用されたと思われる魔術の痕跡が確認された。


また、そこから王都に向かって、ミイラ化した人体の一部分が、

魔力により、点々と王都に向かって埋められており、

魔獣はそれを辿っていたということが分かった。


それを、フォルセイン国で捕まった、ヴェルグラード王国側のスパイを尋問した結果、

古代魔獣をその能力で操る能力のあった一族の死体をミイラ化したものだと自供した。


――なお、その一族は、紫の目を有していたという。

 

俺の家は、侯爵位だが、王族とも姻戚関係にあり、現在でも親交が深い。

俺は、その力をフルに利用し、紫の一族のミイラ化した遺体によって、

魔獣がおびき寄せられていたという点を隠匿した。


ロズの存在を守るために。


その代わり、俺は自国の王家の命令で、

ヴェルグラード王国との交渉役に任じられた。

そして、王国に今回の陰謀の証拠をつきつけ、

多額の賠償金と、紫の一族のすべての遺体の引き渡しを獲得した。


なぜか、交渉時に、交渉の席に同席していたヴェルグラード王国の

第一王女が人質がわりに、俺のもとに嫁いでくると

使者を通じ申し出てきたが丁重に断った。

 

紫の一族の遺体は、利用されないよう俺が丁重に葬ることにした。

まず、匂いで魔獣に掘り起こされることがないよう、

魔力を施した棺に一体ずつ入れ、深く地中に埋葬した。


ここでも、王族にも紫の一族の遺体が

ヴェルグラードにおとりに使われていたことが

漏れないよう慎重に事を進めた。

 

俺は、いつ、目を覚ましたロズに呼ばれてもいいよう、

上記を丁寧かつ可及的速やかに処理した。


が、しかし。

いつまでたっても、ロズからお呼びがかからない。

―なぜだ。


おかしい。

俺は、部屋でひとり悩んでいた。

あのとき、死にかけたロズが一命をとりとめたとき、

俺をいとおしそうに見つめ、


「(世界で一番愛しているエリアスを)俺が守ってあげるから」


と俺の頭を、愛をこめて撫でてくれたよな。

(ちなみに( )は言葉足らずのロズの言葉をくみ取っている。)


あの時、想いが通じ合ったはずなのにー。


もしかして、Dr.タランティーノがわざと、

ロズに俺を会わせないようにしてるのかと疑い、

老医師を問い詰めにいったが、

老医師は俺をさげすむような眼でみたあと、


「わしはそんなみみっちいことはせんわい。

単純に、お前さんがロズに呼ばれとらんだけじゃ」


と言いおいて去っていった。


それならばと、ジョナサンをロズの病室に侵入させ、

真意を探ろうとした。


しかし、看護師のミセス・マーブルが、

部屋に入ろうとしたジョナサンを


「病原菌の元!獣は病室内には入れません!!」


と箒を振り回し追っ払ってしまった。


しかも、朝、昼、晩、深夜と、ジョナサンがタイミングを伺い忍び込もうとしても、

城のセキュリティよりも厳しいのでは?

と思わず感想をもらすほど、

ピンポイントで現れ、侵入を阻止する。


…………うちの実家のセキュリティに推薦状を書いてもいいくらいだ。


ロズ。

なぜだ。

なぜ、愛する俺、エリアスを呼ばない。


――まさか、遠慮しているのか?

まさか、自己肯定感の低さのあまり、

「自分にエリアスはつりあわない」

とか言って、落ち込んだりしてないだろうな…………。



俺は、「関係者以外面会謝絶」と札をかけられた、ロズの病室の前をうろうろした。


すると、それを見たミセス・マーブルがすかさず現れ


「治療の邪魔です。即刻お引き取りを」


と強い圧で俺を追っ払う。


…………。


ものすごい圧だ。

ドラゴンもしっぽをまいて逃げ出しそうだ。


俺は、退いたふりをして、病室前の廊下の曲がり角まで歩く。

そして素早く曲がった先に身を潜ませた。

こっちは人通りが少なく

ミセス・マーブルも控室の反対側なので

あまり通らないのは調査済みだ。


そこから、ロズの病室のドアを見つめる。

――ロズ、出てきてくれないかな。

狂おしい想いでドアを見つめる。

まるで胸が焼けるようだった。


そのとき廊下の反対側から、ダニーが現れた。


そのまま、ロズの病室のドアの前まで歩いてくる。

ふっ、馬鹿なやつだ。

ロズを見舞いに来たのだろうが、ロズが呼んだ者以外は、入室不可だ。

 

するとそこに、ロズの隣の病室から出てきたミセス・マーブルが現れた。

ふっ、このあと、ダニーはすごい圧で追っ払われるはずだ―。

俺は迫りくる瞬間を想像し、ほくそ笑んでいた。


ところが、ダニーを目にした瞬間、ミセス・マーブルは破顔した。


「あらまあ、ダニー。ロズのお見舞い?」


「そうだよ、ばあちゃん。

ばあちゃん特製のシロップ、ロズに差し入れしようと思って」


「あら、それはいいわね!きっとあっという間に元気になるわ」


俺は、絶句した。

ミセス・マーブルはダニーの祖母で、

ばあちゃん特製のシロップとは

ミセス・マーブルが作ったシロップだったのか―。

…………俺だけ、入れないのか。



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