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天才は劣等感のある年上魔法騎士を逃さない  作者: 青門 利空


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13/26

迫り来る災厄

魔物の大群が王都に向かっているのを見て、

俺は、頭が一瞬真っ白になった。


なんで、こんなことに……なったんだ?


思わず震えだす体を俺は両手で抱きしめ、必死に動揺を抑えようとした。


ミュールさんが心に話しかけてくる。

 

「落ち着きなさい。紫の子―いや、ロズよ。

お前は私の傍にいるかぎり守ってあげるから」


そして、ため息をついて続けた。

 

「これは、おそらく、何かにおびき寄せられているようだ」

 

「何か?何かってなんですか?」

 

「それは私にもわからない。

―今はまだな。

それでお前は、これからどうしたいんだ?ロズ」

 

「――この流れを止めたい」


俺は気づいたらつぶやいていた。

そしてそれを言った自分に驚いていた。

知らない間に体の震えも止まっていた。


俺に何ができる?

魔法騎士とはいえ、俺はポンコツ寄りだ。

―でも、この状況下でポンコツでも、できる範囲ででも何かやらないと、

大切な人を守れないし。


その時、ふと、エリアスの笑顔が心に浮かんだ。なぜかはわからないけどー。

俺は、ミュールさんに尋ねた。


「なにか、方法はありますか?」


「――方法はないこともないが、私はあまりそれを教えたくない」


「なぜですか?」


「これでも、私は、紫の民の子孫であるロズ、お前を懐かしく、そして愛しく思っている。

お前に危険が及ぶことは教えたくないのだ」


俺は少し心がじんわりと温かくなるのを感じた。

ミュールさんは優しい。

まだ会って間もない俺に情を感じてくれている。


――でも、それでも。


「ありがとうございます。

その気持ちはうれしいです。

でも、俺は俺にできることがあるならやりたい。

この状況下で、大切な人たちが死んで、俺だけが生き残ってしまったら、

俺は悔やんでも悔やみきれないから」


ミュールさんは、ため息をつく。


「それなら、教えてあげよう。紫の民が持つ――稀有なる力について」




 「……くそっ!この世に瞬間移動の魔法があればいいのに」


俺は悪態をついていた。

俺、エリアス・レーヴェンハルトは天才だが、

瞬間移動の魔法自体、残念ながらこの世界にはない。


存在するのは、だれかが書いた空想話の中だけだ。

現実では、馬か馬車で地道に進むしかない…………。


そのため、俺は、馬に乗って全速力で移動しているが、目的地まではまだ20kmくらいはある……。

ところどころ、中継所で馬を乗り換えてきたが、この馬もそろそろ限界そうだ。


俺は、次の中継所を地図で確認する。

よし、ここからあと1km弱だ。

「おい、もう少しだ。頑張れ」

そう言って馬を急がせる。


中継所で身分証をみせ、一番早い馬と交換する。

馬丁が準備する間、俺の身分証をみた駅長が挨拶をしてきた。

 

「侯爵さま、この今準備させている馬は、一番の駿馬でよく走ります。

行先は王都ですか?」

 

「いや、西の森だ」


「えぇっ」


駅長はびっくりして声をあげた。


「任務でしたら、止めはしませんが……。

あそこは入ってきた情報によりますと、今、

ヴェルグラード側から流れてきた魔獣であふれかえっているらしいですよ」


「!」


やはり、想像した通りだったか……。

だとしたら、魔法騎士団やほかの王国軍が出動しているはずだ。

第3隊、魔獣討伐が専門の隊も当然任務が下っているはず。

――ロズが危ないっ……!!


俺は、焦躁感で身が焼ききれそうだった。


ちょうどその時、馬丁が、馬を連れてきた。

俺はそれにまたがるとすぐに出発する。

―――待ってろ、すぐ行くからな、ロズ!それまで無事でいてくれ!

祈りながら、馬を急がせた。


ミュールさんから方法を聞き、俺はそれを最後の手段にすると決めた。

―なぜなら、正直、あまりやりたくなかったからだ。


もしかしたら、王国軍が魔獣を既にくいとめているかもしれないしね。

―と、少し現実逃避気味になってしまった。


だって、まだ、俺23歳だし。

田舎で動物に囲まれて、のんびり暮らすって夢があるし。


......まあ、その夢も、今日で終わるかもしれないけど。


ちなみに、ミュールさんたちドラゴンには

多種族の争いには首を突っ込まないという一族の掟があり

今回干渉しないということになっている……らしい。


そこは、協力してほしいけど(泣)。

…………ウジウジしてても仕方ないよな。


あー、正直とんずらしたい。

なんで俺みたいなポンコツに、こんなドラマみたいな設定があるんだよ。

エッグタルトを二個食べられたくらいで、この状況と釣り合うわけないだろ......。

…………神様。

ちょっとバランスおかしくない?


 「ロズ……、無理しなくてもよいぞ……。

誰しもそれぞれの器っていうものがある」


おそらく今の心の嵐状態を聞いていたミュールさんが、慰めの言葉をかけてきた。


「ありがとう、ミュールさん。

ちょっと前線の様子をみたいので連れて行ってもらえますか?」


おれは、とりあえず状況を確認することにした。



「う~、こいつら倒しても倒してもまた、湧いてくる!キリがねぇだろ、これ!」


俺、ダニー・マクスウェルは悪態をついていた。

第3隊は遊撃作戦だったが、自然と一か所に集まっていた。

なぜなら、魔物がひとかたまりになって、王都へと向かっているという情報が流れたからだ。

 

そして、他の王国軍の部隊とともに前線で魔獣撃退の任務にあたっている。


俺は、正面から襲い掛かってきた大型の猪系魔獣を、火弾で吹き飛ばした。

が、そのあと右側から今度は別の牙をはやした狼系魔獣がとびかかってくる。

おもわず、剣で薙ぎ倒す。


今、どのくらい時間がたったんだ……。

おそらく1時間以上は続く切れ目のない戦闘に肩で息をする。

 

魔獣の全数は不明だが、奴らは数が圧倒的に多すぎて、

まるで遠くから見たら津波のようだった。


ここで食い止めないと、王都に流入してしまう。

がしかし、終わりが見えない戦いに俺は心身ともに疲れ切っていた。

 

周りを見渡すと、魔獣に喉をくいちぎられた兵士や、四肢がありえない方向に曲がっている兵士が地面に無数に転がっている。

俺は見ないようにして、戦いを続けた。

気を抜いたらやられてしまう。

俺は、戦いながら、ふとロズのことを思い出していた。


ロズはどうしたんだろう。

ドラゴンに食われてしまったんだろうか……。


―そのときだった。

風が、止まった。

何かが来る。

見上げた先――そこに、ドラゴンがいた。


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