第9話 侯爵令嬢の本領発揮ですわ? 2
彼氏彼女、デートの待ち合わせの時、先に来ていた恋人が一風変わった格好をしていたら君は何を思うだろうか。
俺は懐の深さが試される。そう思う。
装いのジャンルにもよるだろうけどな。
見た目は人の中身の表れっていうだろ?
普通のデートというものは自分が好きなった、もしくはいいなと思った人とするはずだ。
だから好きな相手が変わった格好だったからって、急に覚めるのはよくないとは思う。
そう思っていたけど、…いや、フラグは確かにあった。
でもいきなり幼馴染がロリータでデート来たら驚くよね?
これまで知りつくしたと思っていた自分の彼女のまた新しい一面に気が付いてしまったか!
ああああああ、めちゃっ可愛い。天使やん。
しかも俺のこと待ってるとか、これ、ま?
まじ?
正直許した。俺もせめてスーツか?正装を着てこなくて後悔したわ。
そして一周回っておちついた。
遠くから盗撮アプリで音を消してシャッターを切る。記録には残しておかないとな。
おばさん、母さん、父さんに一斉送信っと。
俺を待ってる天使がいるんだが?と送っておいた。
変な虫が付く前に声をかけないとな。
そして平静を装い、近づく。
「おい。」
「あら、おいとは無作法ですわ。ごきげんよう恭介。」
「おいとは突っ込みのオイなんだよ。なんだその格好は。」
「今日の午前中恭介はアルバイトがあるからと、午後から待ち合わせでしたでしょう?
この前ハンドメイドで作ったものを売りたいと言っていたのはこれですの。
上手にできたので恭介にも見てほしくて…。
そして売るための写真を撮ってほしいのですわ!」
もう撮りましたけど、しっかり公式撮影チャンスありました。やったね。
しっかり正面から撮った奴は、親共には有料で売りつけよう。これは儲かるにおいがするな。
「何か嫌な感じが…。恭介あなた、何か邪なこと考えてます?」
「いえ、全然?」
「そうですか…。わたくしの勘はよく当たるんですの。まぁいいですわ。
さぁ、さっさと撮影をこなしてお茶をたしなみますわよ。」
さすがに今日の薔薇子は厚底の靴を履いているので腕を出すと素直に腕を組んできた。
ふふ役得だな。
やってきたのは駅から少し歩いたところにある川辺の公園だ。
だだっ広いので誰もいない空間がたくさんある。
背景も紅葉が始まってきていて映える。
薔薇子のお手製の服は赤色だった。
露出も少ない。なのに色気があるんだよなぁ。
俺はロリータ服の不思議な魅力に惹かれていた。
気が付いたら夢中で撮影し、あっという間に撮影は終了。
街に戻ると、たまに声を掛けられる。
今はロリータを着てないけれど、たまに着ることがあります。そのお洋服かわいいですね。どこで買いましたか?
こういう質問が多かった。
次に多かったのは何かのコスプレ?一緒に写真撮っていいですか?
というものだった。
売り出す予定だから写真をネットにあげないでください、今度売るから薔薇子のSNS作るから見てね!
と歩くだけで宣伝になっていた。
仕舞いには雑誌に載せていいかと声をかけられた。服はすべて手作りでロリータ服のハンドメイド作家を目指していると書いてほしいと言ったら快く了承してくれた。
今は画像でよかったものを検索できる時代なのだ。直接売ってます!なんて宣伝しなくても調べてもらえれば売れる可能性がある。
「それにしても服一着、すごい速さで出来上がったな。」
この前のデートからまだ二週間ほどだ。早すぎる。
「実はお裁縫はそんなに得意ではありません。これではまだ趣味の域をでませんわ。
あとおうちにおばあ様の物でしょうか?昔の足ふみミシンがありましたの。それで手縫いより早く仕上がったのですわ。
文明の利器とはすばらしいですわね。元の世界ではすべて手縫いでしてよ?」
たとえミシンを使ったところでそんなに早くなるものでもないと思うのだが、多分言っても伝わらないだろうな…。しかも足ふみミシン?
「そうか…。すごいな。」
それしか言えなかった。
今着ているものを売るのか聞いたのだが、今着ているものは試作品なので中古試作品として出品するか、処女作なのでとっておくとのこと。そういうもんか。
俺は売らないでほしい。かわいすぎる。
無事映画を見てスフレチーズケーキを食べ終えた俺たちはケーキのお土産を各親に持ちながら帰宅中である。
「あの…。」
そして薔薇子に呼び止められた。
「どうした?」
「わたくしのこのお洋服、どうですか?似合ってますでしょうか。
恭介は今日いつもより少し難しい顔をしておりますし。
よく考えましたら、ロリータ服など侯爵令嬢の時は子供用の普段着ドレスでしたが、こちらでは奇抜な衣装ですよね。
今日何人もの方に声をかけられて、デートに着てくるのはふさわしくないと今さらながら気が付きましたの。せめて撮影をするにしてもお着替えを持ってくるべきでしたわ。
わたくしったらどうして常識を調べなかったのでしょう。
今やAIに聞けばなんでも答えてくれますのに。失敗でしたわ。」
どうやら今どきの侯爵令嬢はチャットボットも使いこなすようだな。恐れ入った。
そして俺の態度が薔薇子を不安にさせてしまったようだ。大変申し訳ないことした。
「すまん。不安にさせてしまって。
まず初めに言うべきだったのに。興奮のあまりすっかり言ったつもりになってたわ。
めっちゃ可愛い。似合ってる。売らないで家に試作品は絶対おいておくべきだ。
俺が買い取ってもいい。おばさんもそう言おうと思う。
正直初めは少し恥ずかったけど、薔薇子が似合いすぎてそんなの吹き飛んだわ。
それよりもニヤニヤがでないようにとか、他の人にもその可愛さを拝ませて、変な奴が寄ってこないかとかが心配でさ。
飲み物買うときやトイレで席外すのも心配だったんだよ。
だから変な顔になってたんだと思う。ごめん。」
「だ、だったらいいんです!
今度からは早めに言ってください。不安になりますわ!」
「マジでごめん。」
そう言って腕をくいっと差し出すと薔薇子は俺の腕に飛びついたのだった。
家に帰って、風呂から出てメールを確認すると、薔薇子からクレームの連絡がきていた。俺が写真を親たちに送りまくったのがばれたらしい。
可愛すぎのため、あんな格好で外を出歩くの禁止!とおばさんに言われたらしい。
まぁ翔子の家は広いんだから、初めから家の庭で写真を撮ればよかったんだよなぁ。
あとこっそり印刷しておいた写真はやっぱり親たちに一枚五百円で売れたのだった。




