第8話 侯爵令嬢の本領発揮ですわ? 1
今日も今日とていつもの図書館併設のカフェに俺たちはいた。
「恭介、ちょっといいかしら。」
「はい、なんでしょうかお嬢様?」
「ちょっと!やめてくださいまし。なんなんですの?」
「お嬢様プレイだよ。みてわかるだろ。薔薇子もノリノリじゃん。」
「私はプレイではなく、素ですわ!!!」
「それで、なんでしょうか。もしかしてデートですか?」
「違います。
わたくし、この前買った材料でハンドメイド作品を作りましたの。
これを売りたいですわ。どうしたらよいでしょうか?」
「なるほど?」
俺はさっそくフリマサイトとハンドメイド作家さんたちが作品を売るサイトを紹介した。
「手数料、材料費、何より手間を考えたら儲からないだろ?」
「えぇ、ですがどこかに雇用されない、空いた時間にできる、要は内職としては都合がいいのです。幼いころから技術も培ってきましたし、何よりこれからやることへの先駆けになりますわ。」
「先駆け。」
「ある程度信頼が稼げれば、より次の作品が売れやすくなりますでしょ。この世界、しかも日本では学生が職に直接結び付く経験や信頼を得るのは至難の業ですわ。
勉強だけしていても学歴は身に付きますが直接技術が結び付くわけではありません。できる人間はすぐその場その場で順応していきますが、できない人間には厳しいですわね。」
「まぁ確かに言われてみればそうだな。」
「恭介はそういえば、この前わたくしにカフェでご馳走してくださいましたが、学生にはカフェでの料金も大金でしょう?
その節はありがとうございました。
恭介はアルバイトをしておりませんしご両親にお小遣いをもらって月々をやりくりしているんですわよね?かくいうわたくしもお小遣い制ですわ。」
「あー、いやー、確かに翔子にはそういうことを話していなかったな。」
さすが侯爵令嬢というべきか、資金のやりくりには興味があるのかもしれないな。
「実は俺は小遣いをもらっていない。」
「えぇ!?わたくしは無収入の方に貯金を切り崩しておごってもらっていた!?
いやそもそもおじさまとおばさまが汗水流して働いて恭介に託したお金を、たとえ家族同然であってもおごるという行為につかわせてしまうなんてよくなかったのでは!?わたくしは恭介の心遣いをうれしく思うあまり冷静さに欠いてとんだ過ちを…!」
「いや、俺の話をまず聞いてくれ。冷静さを欠いているのは今もだよ。」
「実はこれは翔子にも言ってなったんだけど、たまに日雇いバイトしてる。
薔薇子も今言ってたけど親の金で彼女に奢るのは恥ずかしいだろどう考えても。
あとその日雇いバイトのほかに…。ほら友達の動画編集手伝ってるって言ってただろ。それで再生数が増えると広告料が入るんだが、それを分けてもらってるんだ。」
「脱税だけは認めませんわ!」
「はい。そこはちゃんとします…。」
「でも、なんだ、またデートの誘いかと思った。」
「だからこの前も言いましたが、普通は殿方から誘うものですのよ?」
「薔薇子はまたあれをやってほしいの?」
俺の一言でまた顔が真っ赤になりだした。
やっぱりああいうのが好きなのか?
侯爵令嬢だったときは、手の甲にキスは挨拶だったんだろ?
今更こちらでは普通ではないというのを知ったら恥ずかしくなってしまうというのも面白いものである。
ほっぺたに手を当て困っていた薔薇子は急にはっとして顔をあげた。
「おほん、そういえばわたくしあれから調べましたの。
今の世の中は男女平等。
彼氏彼女でも割り勘が普通ですのよね?」
「まぁ経済状況が同じくらいだったらな?」
「わたくしたちは学生ですわ!一応今は対等ということです。
でも気のある殿方からは、アプローチとして奢ってほしい。
殿方も気になる女性にはアプローチとして奢りたい。」
「少し古い感じはするが、まぁそうだろうな。」
というかそういうのはどこで調べてくるんだろう。変なサイトとか見てないよな?
「よかったらこの前のお礼に、次はわたくしがお茶をご馳走しますわ。今度また一緒にお出かけしませんか?」
そう言って手を差し伸べてきた。
「あぁそういえばスフレケーキを食べないといけなかったな。もう美味しいお店を調べてあるんだよ。
よかったらそこの近くに映画館があるんだけど一緒に行かない?無料優待券を父親にもらったんだ。」
「そこまで準備していて、どうして先に誘ってくださらないんですか!」
照れながらむくれる薔薇子をじーっと見つめる。
薔薇子もじーっと見つめ返してくれる。
素直だな。
俺の返事を待ってくれているんだ。
俺はにこっと笑って薔薇子の手をとって、すべすべの手に口付けをした。
「その方が俺にとって楽しいからだ。」
自分で言っていてなんだが、どこまでも自分本位な理由なのである。
誘う前から楽しいデート。
最高だろ?




