第24話 いつもの日常
その日もいつもと変わらない一日を過ごしていました。
いつも恭介とは教室から一緒に図書館へ向かうのですが、今日に限ってはお互いに少しだけ友人との用事があり、校門前で落ち合うことになっておりました。
まだ恭介は来ていないようですわね。
最近の恭介。
そして燈子さんに言われたこと。
わたくしはそのことを思い出すために、受け入れようとするたびに、胸が苦しくなります。
でもその苦しみは以前のものとは異なっております。
以前はただ翔子さんへの懺悔の心から。
翔子さんの命。そして、恭介を奪ってしまったという事実から胸が苦しくなっていました。
わたくしは薔薇子になっても、翔子さんの時から変わらず、恭介のことが大好きでした。
それだけは変わらなかった。
わたくしはそれだけ翔子さんは恭介のことが大好きだったのだと理解し、そしてそれが苦しかった。
でも今は違います。
恭介がわたくしを受け入れてくれるかもしれない。
翔子さんの陰を追い続けるのではなく、わたくしもみてくれているのかもしれない。
そんな浅ましい、醜い感情。
わたくしはそんな醜さを捨て去りたいのに、捨て去ることが出来ないのです。
恭介が態度に表してくれているというこの事実を。頭の片隅の中ではもし勘違いだったのなら傷つくのはわたくしだと理解しているのに…。
わたくしを、わたくしの胸を苦しくさせ、そして歓喜させるのです。
そしてそのことを考えていると、何かぽっかりと心に空白を感じるのです。
わたくしの、いえ翔子さんにとっても根幹となることがら。
わたくしはまだ何か大事なことを、いえ、思い出したくないことを
忘れているような気がします。
わたくしたちの通う学校は街中にありますが、学校前の道路は広くありません。整備された新しめの街だからでしょうか。申し訳程度に歩道と車道の境目に石ブロックがしかれています。
どうやら今日はわたくしが先に校門前へ到着したようです。
こういう時間を決めていない待ち合わせの場合、お手洗いなども済ませておりますと大抵の場合恭介の方が先についております。
まぁ恭介場合ですと、わたくしを待たせないようにしているというのもあると思います。
恭介の中の理想の彼氏象は、わたくしや全国の女子目線からしても理想が高いのです。本当にストイックな人ですわ。
時間がありますので有効活用のためスマホを見ますと、様々な連絡が着ておりました。その中につい先ほど恭介から、もうすぐ行くとの連絡がありました。
わたくしは最近自作して販売しておりますオリジナルスタンプ、いいんですことよ!というお嬢様スタンプで対応いたしました。
ええ、大変可愛らしいですわ!会心の出来です!燈子さんも買ってくださったそうですわ!
お仕事の連絡を返し終え、ふと顔を上げると遠くの校舎の下駄箱前付近に恭介の姿が見えました。やはり安井さん、阿久沢さん、原さんと一緒にいらしたようですわね。遠くから恭介がこちらに気が付いたようで手を振ります。
わたくしも手を振り返しました。
ふふふ、恭介が御三方にからかわれてるのが見えます。
ふと、今までそんなことはなかったのに、大きな風がビューっと吹き荒れました。
わたくしは慌ててスカートと顔に絡みつく髪を抑えます。寒すぎますわ!
可愛いペチコートを普段から着用しておりますが、やはり一応ペチコートも下着の分類ですし見えたら恥ずかしいですわ。どれくらいスカートが舞い上がったかわからず、困りますわとぼやきながら身なりを直しておりますと、
ドンっ
急なことで完全に油断していたわたくしの体は誰かにぶつかられたようで力にあらがえず、車道に押し出される形となりました。
「翔子!」
先ほどまであんなに遠くにいた恭介の声が、いつの間にかすぐ近くに聞こえます。
その声は聞いたことがないほど悲痛に満ちていて…。
あ…
わたくしすべて思い出しましたわ。




