第20話 遭遇
クリスマスをつつがなく終え、世間は年末へと忙しなく動いていた。
薔薇子が俺へくれたのは手編みのマフラーだった。
そして俺はかわいらしいポンポンとウサギの人形のついた記名入りのバッグチャームをプレゼントした。薔薇子は学校のカバンにつけてくれているようだ。
後日談だがデートの日に来ていた服は実は親たちのプレゼントだったらしい。水色のコートは俺両親、服は翔子母からで、デートと気が付いていなかったのは薔薇子だけだったそうだ。どうせデートに行くだろうからとデート服をクリスマスプレゼントとして事前提供されているのに気づかない薔薇子であった。
長期休みに入った俺は撮りためしている動画編集や、普段行き届いていない勉強の苦手箇所の総ざらい、学校の宿題をして有意義に過ごしていたわけだが、そこで一つの連絡が入った。
『俺、大地。今あなたの家の前にいるの…』
は?
慌ててベランダから玄関を見る。
なんか俺の陰キャいつメンフレンド三人衆が玄関にいるんだが。
すると、こんちゃー!といって勝手に入ってきた。
いや、なんで?
両親は不在である。
なんでドア開けっぱなしなんだよ!危ないだろ!現に変な奴入ってきてるよ三人も!
「おーい、恭介、お前の部屋どこー!いろいろあけちゃうぞー」
「おい、お前ら勝手に開けるな。
っつか無許可で自宅凸すんな!おかしいだろ!」
「えー、恭介君なになに?私たちに言えないことしてたのー?」
「ってか恭介君ち超きれいだし結構広いっすね!僕も住む部屋ありますか?」
おいなんなんだよこいつら。
「突撃友人の家!だぞー。恭介久しぶりだな!さみしかったか?」
「恭介君エロ本どこにありますか?」
「恭介君は確か中野氏が家を出入りしてるはずですからそういうのはおいてないと思います。今やデータで保存が基本ですぞ。」
「おいお前らいい加減にしろよ。何が久しぶりだよ。ほぼずっと電話でつなげて作業してるだろ。」
「いやそうなんだけどさ、たまには会った方がはかどるだろ?恭介はリモートワークが廃れようとしてる原因しらないのか?」
「うち狭いし飽きちゃってさ。学校も年末は閉鎖するし、恭介君の家きちゃった!」
「いやー、正直居なかったらどうしようと思いました。そしたら中野氏の家にお邪魔しようと思ってたでござる。」
「お前らなぁ…。昨日も学校でいつものレンタルスペース借りて、いつもの6倍くらい作業したし、なんならそのあとボーリングも行ったよな?そうでなくても冬休み中はずっと電話で話しながら動画作成してただろ?
しかも本当にさっきまで一緒にやってたじゃん!
いつの間に企画して集まってんの?普通に怖いんだが?」
「はぁ!?俺たちはいつでも一心同体だろ?水臭いこというなよ。」
「そうそう家庭訪問だよっ!気にしないで。ジュースある?」
「そうそう!そろそろ中野氏に会いたかっただけでござるから気にしないでください。ところで中野氏はどこにいらっしゃいますか?」
「翔子といつも一緒みたいな認識おかしいだろ。しらんわ。家にいるんじゃねーの。だとしたら家間違ってるぞ。隣だよ。」
ガチャ
「こんにちわ~、恭介。
あら?皆さんも恭介のおうちにいらしてたんですね。」
タイミング悪く薔薇子が現れたのだった。
いや、なんで?
というわけで、
「なんで狭いのに俺の部屋に集まろうとするの?」
「だって部屋見たいだろ?普通。」
「ベットの下とか、本棚とか、クローゼットの中とか見たいよね?」
「定番行事でござる。」
「今お紅茶を持ってきますね。」
ほんと、いや、なんで?
このメンバーは俺しかほぼ突っ込みがいないのが辛い。
「さすがにおしゃれだし、きれいだし、何もないなー。」
「つまんなーい。」
「やっぱり彼女が出入りしてる男の部屋なんてつまらんでござるな。」
そして俺の部屋に入るなりこれである。
「だからなんも楽しいことなんてないって言っただろ。翔子を手伝ってくるから大人しくしててくれ。」
俺は窓を開けて秒で空気を入れ替え、ベッドの上の複数あるクッションを三人に投げ渡し、紅茶を入れに行った薔薇子の手伝いへ向かった。五人分の紅茶を二階に運ぶなんて大変すぎる。
ところが俺が部屋を出ようとしたとき、サヨが俺の袖をぐいっと引っ張った。
「待った!私が手伝いに行くよっ。翔子ちゃんと仲良くなりたいし!」
サヨはこういう時積極的なんだよなぁ。
「じゃあ…、頼む。」
正直、不安でしかない。
「翔子ちゃーん手伝いに来たよーっ。」
「阿久沢さん?」
「サヨでいいよーっ翔子ちゃん!私も今から勝手に翔子ちゃんって呼ぶね!」
キッチンにさっそうと登場したサヨは早速薔薇子にハイテンションで絡むのだった。
「で、では、サヨさんとお呼びしますね。」
「敬語は…、仕方ないかぁ。恭介君にも敬語なんだっけ。」
「えぇ、事故で頭を打ったのか、記憶の混濁がありまして。自分ではずっとこの話し方で生きてきたと思うのですが、記憶ではそうじゃないのです。だから記憶が戻るか、何か変化があるまでは皆さんにも敬語で話すことになりそうです。」
薔薇子は困り顔で微笑んだ。
「私は以前の翔子ちゃんとは本当に少し話したことがある程度だし、事故前後でどう変わったかわかんないんだよね。だから?逆に?気にしてないよ?いや、気にしないで?
私にとっては今の翔子ちゃんが翔子ちゃんだし、記憶が戻っても翔子ちゃんとして受け入れる準備はできてるよ!
今の翔子ちゃんだってみんなに受け入れられてるでしょ?それと同じ!逆バージョン!どんな翔子ちゃんでも推すから安心して!」
「推す??
でも、ふふふ、ありがとうございます。」
「へへへ。」
「そうだ、今日はアップルティーを勝手ながら入れさせていただきましたが、今度はサヨさんの好きな紅茶を教えてくださいね。」
「それって、紅茶じゃなきゃだめなの?」
「あ!そうですね、そういうわけではありませんよ。
サヨさんはどんな飲み物が好きなんでしょうか?是非教えてください。」
「へへへ、意地悪言っただけ。私はミルクティーが好きだよ!」
「ミルクティーですね。わかりました。お茶請けは…
やっぱり心配になって降りてきたけど、めっちゃ仲良くしていて入る隙なんてないので俺は部屋に戻ることにしたのだった。女子のコミュ力半端ないな。
そして冬休みは週2回ほど、この《《四人》》が俺の家に集まってくることになるのだった。なんで?




