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【完結】俺の彼女が急に異世界令嬢になってしまいました。俺ってこのまま彼氏でいいの?  作者: 長嶺暦


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19/29

第19話 クリスマスっていいよね

 数日前の話である。

 いつものカフェでの話。


「なぁ。」

「なんですの?」

 薔薇子はいつものようにポンポン付ボールペンでノートに何かを綴っていた。ただ進化していてその傍らには高校でも使用しているピンクのカバーのタブレット端末があった。

 ちなみにうちの学校は何かしら持ってこなければいけないが、タブレットでもPCでも端末は自由に選んでよいことになっている。

 薔薇子のタブレットは翔子の物ではなかった。翔子のアカウントが残っている端末をそのまま残しておきたいのだと言って先月新しく購入していたのだった。


「クリスマスのことだけど。」

「あぁそれなら、今年はもうケーキも予約してあります。お母さまとおばさまと相談して今年はチキンも予約しましたの。わたくしはテーブルコーディネートを担当しますわ!最近勉強しておりますの!」


「…。」

「恭介?どうかなさいましたか?」

「プレゼントを買いに行くのを付き合ってくれないか?」

「えぇもちろん!毎年やってる一人千円プレゼント交換タイムの物ですよね!でも一緒に買いに行ったらネタバレになってしまうのでは?」

「そうだな。仕方がない。俺は当日の朝買いに走る。だから下見に行こう。」

「えぇ!そうしましょう!空いてる日程は後程連絡しますわ!」

「あぁ頼む。」


…こいつ相変わらず鈍いな。



 というわけで何とかデートに誘いだしたのだった。

 今日は12月24日だ。

 家族でのクリスマスパーティーは明日の夜開催である。


 この時期、実は早めの忘年会で会社員である親たちはケーキやチキンを食べる隙がないほど胃もたれしているが、俺たちが楽しみにしていると思って頑張ってくれている。

 俺たちもう高校生なのにな。

 親は子供の成長についていけてないのかもしれない。


 ただ普通は高校生にもなれば飽き飽きするだけのイベントとかした家族とのクリスマスパーティーも、このご令嬢にとってはウキウキイベントである。ほぼ初クリスマスパーティーなのだ。

 薔薇子は事前準備に余念がなかった。俺も手伝わされたが久しぶりに折り紙で輪っか飾り作ったわ…。若干お誕生日っぽいが三角帽子も画用紙で作った。百均でトナカイの角のカチューシャやサンタさんのおヒゲも買った。あいつはこれを親たちに被せようとしているのか…。

 あとはプレゼントのみである。


 今日はしっかり柄の入った白いシャツにちょっと痛い感じの飾りをつけ、ネクタイをつけている。ジャケットにコート。もちろん髪の毛はクシャっとさせてない。ちゃんとデートスタイルだ。

 実は夏に開けたのにも関わらず人前で全然つけたことなかったピアスもつけてみた。髪を耳にかける。

 今日は俺の中ではデートの予定なので、駅前集合にした。

 今日も午後集合だ。家を三十分も早く出る。

 そうしないと薔薇子はお母さんみたいになんなら俺の部屋まで潜入して来てしまうからなぁ…。


 駅で十五分ほど待つと薔薇子はもう来た。俺がいうのもなんだが早すぎるだろ。


 薔薇子は今日は白いレース地のタートルネックを下に着て上から白いセーターを着ていた。露出は少ないのにレースが色気を出しているな。下はひざ丈スカートだ。

 黒いこれたまたレースをあしらったストッキングにブーツ。

 そして水色のコートを着ていた。

 完全に良いところのお嬢様といった感じだな。もちろんかわいい。



「あら、先に来ようと思っていたのに…、恭介、何時に家を出ましたの?」

「女性を待たせるわけにはいきませんからね。お願いですから、紳士の努力を暴こうとしないでください。」

「それもそうですわね。さ、行きましょう。」

 そう言って薔薇子は手をすっと差し出すと…、すっと引いた。

 今日は気が付いたようだな。

 そして薔薇子と目が合う。そしてそらされる。


 …。


 俺からすっと手を出した。

 するとモジモジしながら手を差し出してくれる。


 もはや日常になってしまったな。

 俺はうやうやしく薔薇子の手を取ると手の甲にキスをしてから、俺の腕をつかむよう促した。


 

 さ、行きますか。




 今日はいつもと違う街に着て、いろんな雑貨屋小物が売っているところを回っていた。

「恭介は何を買うかもう決めてあるのでしょうか?」

「あぁまぁな。」

 実は全部買ってあるのであった。面倒だから入浴剤を買いまくった。これならもらった人以外も楽しめるし、自分が一番風呂の時に入れるから毎日入浴剤が消費されるわけでもなく、長く楽しめるだろう。消えものだし最高だ。


「参考までに聞いてもいいですか?」

「ネタバレ禁止だ。」

「でも被るかもしれませんわ。」

「それも混みで楽しみなんだろ。」

「なるほど。そういうことですのね。」

「真剣に選んだかどうかが大事なんだよ。」

 適当に言いくるめる。

「そうですわね。是非センスを光らせたいですわ!」

 相変わらず素直だな。

「買ってきますからお店の前で待っていてくださいまし。」

「はいはい。」



 今日いつもと違う駅に来ているのはチェーン店だが有名な喫茶店があるからだ。雑貨屋も併設してるところだ。

「おいしいケーキを食べるって聞いていたので、昼食は少なめにしてきましたの。でも明日もケーキを食べる予定ですのに…、なんだかいけないことをしている気分ですわ。」

「まぁいけないことはしているだろうな。健康的には。社会的道徳心的には全く問題ないから安心しろ。大食いの人は一回で十個二十個食べるから大丈夫だ。」

「何かたとえがおかしい気がしますが。まぁそうなのでしょうね。

 それにしても映えますわ!このアップルティーにはしっかりりんごが浮かんでます!ポットごとの提供なんて…。透明なガラスポットでポットの中の茶葉やフルーツハーブを魅せる。そしてこんなに可愛くて美味しいスイーツが比較的安価でチェーンで営業しているなんて!企業様の精鋭手腕素晴らしいですわ!利益率はどうなっているのかしら。儲かっているのか株価など調べたくなってしまいます。」

 薔薇子は早口でまくし立てる。よっぽどうれしいようだ。


「薔薇子。もう少し女子高生しろよ…。侯爵令嬢が隠されてないぞ。現代だとおっさんの発想だ。」

「え!…おっさん?

 確かに若い女性は経営手腕の話なんてしませんわね。恋人との甘い時間を、おしゃれなカフェという特別な空間で共有できることを喜ぶはずですわ。

 わたくしったらデリカシーがありませんでした。えっとなんていうんでしたっけ。そうノンデリでしたわ。

 まずはこんな素敵なお店を調べて、連れてきてくれた恭介に感謝しないとですわね。

 ありがとう。」

 薔薇子は胸に手を当て、にっこり微笑んだ。下々に褒美の感謝の言葉を贈る侯爵令嬢感がすごいが、なんだろう悪い気はしないんだよな。

「あぁ。どういたしまして。」



 冬は日が沈むのが速い。もう日も暮れるし17時過ぎになる。

 思えば翔子が薔薇子になってからあんまりこっちは来ていなかった。学校に通ってる手前学校最寄り駅の大型ショッピングモールに行きがちなんだよな。


「恭介、こっちって何がありますの?」

 さっき買い物たりカフェがあった駅前から本当に少し歩いた先である。

 もしかしたら翔子も行ったことないのかもしれないな。

 建物の陰になって駅前からは見えないが少し歩いた先には公園がある。そこは観光地にもなっていて、イベントもよく催されているのだが、クリスマスにはライトアップイベントが開催中だ。


「ほら見えてきたぞ。クリスマスと言ったらこれだろ。」

 角を曲がるともう公園の少し手前の街道から木々がライトアップされている。

 その街道を歩き公園に入ると一気に華やかになる。

 公園の中央には巨大なモミの木を模したツリーが飾られていた。


「…。」

「おい、薔薇子。どうした~。」

「綺麗ですわ。」

「そうだな。」


 薔薇子はライトアップされた数多の光に夢中のようだ。たまに点滅し表情を変えるのをじっと見つめている。薔薇子の目はライトアップの光も相まって輝いて見えた。楽しそうにしている薔薇子を見て一安心である。先ほどのノリで電気代はいかほどかを計算しだしたらどうしようかと思ったよ。


 公園を歩き回ると最後に滝のように光が流れる場所があった。

「とても素敵ですわ。」

「そうだな。」

「まるで、物語に出てくるクリスマスのデートのようです。

 プレゼントを選び、ケーキを食べ、ツリーを見に行くなんて。」

「そうか。」


「わたくし、幸せですわ。」


「じゃあ仕上げをしないとな。」

「仕上げ?」


「これクリスマスプレゼント。」

 俺は薔薇子に用意しておいたプレゼントを渡す。

「これ、わたくしにですの?」

「クリスマスに彼氏が彼女にプレゼントを渡したらおかしいか?」

「いえ、おかしくありませんわ。」

「プレゼントは家であけてくれ。」

「そこで恥ずかしがることなのですか?」

「俺は普通に恥ずかしいから…。」

「まったくしまりませんわね。

 わかりました。家であけさせていただきますね。」


「あの、わたくし、今日はデートとは思っておらず…。

 失念しておりました。クリスマスイブに恋人と会うのに、デートでないわけありませんのに…。

 実はプレゼントを用意しましたが、明日渡す予定で…。」

「用意してくれてるだけうれしいよ。明日楽しみにしてる。」


「えぇ、今日はありがとうございました。」

「薔薇子、何か忘れてないか?」

「え?」

「俺たちは恋人だろ?」

「そうですけど…?」

「クリスマスに恋人がデートをして、イルミネーションを見に来た。恋物語だったらもう一つイベントが起こってもおかしくないだろ。」


 薔薇子は俺のその言葉で少し思案した後、はっとした顔をして耳を赤くさせた。

 丁度その瞬間イルミネーションが点滅し、順番に光をなくしていく。

 30分に一回ほどある、消灯イベントだ。

 タイミングが良かったな。

 俺は薔薇子の腰をグイっと引き寄せると、彼女の小さな唇に自分の唇を寄せたのだった。

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