第18話 友人
早いものでもう十二月の二週目だ。
うちの学校は先週早めに定期テストを終え早くも補講週間に入っていた。成績調整日という自宅学習日という名の実質冬休みに突入だ。
今俺はいつもの学校のガラス張りのレンタルスペースで康太と二人で各自パソコンで作業をしつつ話していた。
「なぁ康太、あいつらなんで来ないの?」
「馬鹿だから補講だよ。サヨも大地も。確か国語だな。」
「あいつらたまに日本語喋ってないときあるもんな。」
本当にたまに理解できないこと言い出すんだよなぁ。
メンバーが二人もいないと動画のことで詰めたいことが進まなすぎる。次のテスト勉強の時は少し勉強見てやんないといけないな。
俺が作業に飽きてきて、ぼけっとしていると康太がいった。
「恭介、最近どう?」
「なんだよまた急に。」
「定期的に聞きたいんだよ。心配だろ。丁度茶化す二人もいないしな。」
「康太はそういうとこ気を使いすぎ。」
「俺の良いところだろ?」
「まぁ…、そうかな?」
自分で言ってはいるが、康太は本当にできる男なのだ。陰キャの群れに咲く一凛の華…はキモイな。唯一の常識人とでも言おうか。
「いつも思うけど恭介って全然素直じゃないな。そんで、照れてないで早く教えて。体調は前よりよさそうだけど…」
「あぁ、そうだ、ずっと考えてることがあるんだ。」
「考えてること?」
「自分を自分たらしめるものってなんだ?」
「自分を自分たらしめるもの?」
「身体か、魂か、記憶か、性格か、人生を通してやってきたことか?」
康太は考えこんだが、こういった。
「わかっているのは人生を通してやってきたことではなかったってことだな。
恭介もわかっていると思うけど、俺は物心ついた時にはサッカー選手になりたくてつい最近までボールと友達だった。事故でサッカーができなくなって絶望したけど、恭介が以前言ってくれた通りだよ。
サッカーがすべてだと思い込んでいただけで、サッカーをやっていたのは長い人生の一部に過ぎず、人生のすべてなんかじゃ決してなかった。
無くなっても次のことがあった。今は動画制作にはまっていて、そして何より良い友人がいる。」
「あぁそうだな。」
「中野さんのことだろ?」
「あぁ。」
「恭介が悩むのって中野さんのこと以外ないんだよなぁ。振られた?」
「まさか。でも人格が変わってんのに、振られてないからおかしくなりそうなんだよ。しかも翔子の人格が変わってんのに翔子を好きな気持ちはかわってないんだ。
だから自分が気持ち悪いし、マジでおかしくなってしまったのかと思って。」
「恭介って意外に真面目ってか、誠実だよな。
多分だけど中野さんも同じように悩んでそう。」
「そうか?」
「うん。
でもまだ付き合い続けてくれてるってことは、今の中野さんからしても、昔と変わらず恭介のことを好きだからなんじゃないの?
今の中野さんって雰囲気が陽キャでクラスの委員長みたいな雰囲気だけど、そういう人って自分が好きじゃない相手と付き合うのは不誠実な感じがして罪悪感で付き合ってられない人が多いんだよ。
特に恭介って愛が重いし、うざくて振られそうじゃん?」
「おい、それって相談に乗るふりして傷をえぐってる?」
「はははまさか。でも考えすぎってのは真面目に答えてるつもりだよ。
さっき言ってた自分を自分たらしめるものは何かってのもさ。
人生を通してやってきたことを除けば、えーとなんだっけ。」
「例えで挙げたのは、身体、魂、記憶、性格。」
「性格なんて生きていく中で変わったりもするし、身体も記憶も中野さんなんだろ?魂は見えないけどさ。じゃあもう中野さんじゃんと俺は思う。」
「俺も、前は納得できなかったけど、今はそう思ってる。あいつはあいつだって。」
「じゃあいいじゃん。あんまし堅苦しくなるなよ。
素直にならないとな。自分の気持ちに。
これも恭介が言ってくれたことだよ。」
「覚えてねーけど、俺、頼りになる男すぎるわ。」
「ほんと、男落としてもなんもなんねーよまじで。」
「夫人の話は盛り返すなよ。」
いつも通りどうでもいい会話だ。
だけど自分のことを気にかけてくれている人がいる。それってとてもありがたいことだよな。あんまり心配かけるのはよくないな。本当に。




