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俺の彼女が急に異世界令嬢になってしまいました。俺ってこのまま彼氏でいいの?  作者: 長嶺暦


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第17話 雨

 いつもと変わらない毎日エッセンスに、人々へ憂鬱さをお届けしてくれる。

 

 そう今日は雨だ。


 俺たちは今日も変わらずいつもの駅前の図書館で雨に打たれるガラスを横目に二人で席について、各々《おのおの》の作業に勤しんでいた。

 いつもは大体読書をしている俺だけど、読書に関していえば、集中力が長続きするタイプではない。結構読み飽きるというか疲れる。そういうときは薔薇子を眺める。  

 

 薔薇子はいつも一心不乱に何かに取り組んでおり、見ていて飽きない。

 大体内容は、勉強のようだ。勉強といっても国語数学などの高校で習う五教科ではない。多分それはもう学習し終えたんだと思う。最近だと現代ファッションの歴史とか、美術史、音楽史、建築史、植物図鑑、経営学、経済学などの本がよく傍らに積まれていた。

 

 それにしても本当にすごい集中力だ。たまにむつかしい表情をするのもまた可愛い。薔薇子になって少し長めに整えられた爪、白く長く手入れの行き届いた手に、何か色気ともいうか、見ていると触りたくなる気持ちに囚われる。


 俺の邪な気持ちに気が付いたのか?薔薇子がふと視線を上げ俺の方を見る。俺はさもぼーっとしていただけですよという感じを装って、頬杖を突き視線を横のガラスへ逸らせた。

 

 「今日も結構雨が降っておりますのね。帰りにも止みそうにないようです。」

 「そうか。」

 「恭介は雨が好きですか?」

 

 「俺は雨が好きだよ。だって毎日晴れてたらつまらないだろ?人生と同じだ。晴れの日があって雨の日があるから楽しい。

 あぁでもそれは、雨が悪いものであるから人生に良い日と悪い日があってって意味じゃない。純粋に色々な天候があるからいいねって意味だよ。

 それに空から水が降ってくるなんて神秘的だろ?」

「あなたって…、ロマンチストですわよね。」

「男って結構ロマンチストが多いよ。」

「恭介の良い点ということにしておきますわ。前向きなところも。」

「ロマンチストって異世界では悪口なの?」

「ふふふ、すみません。からかっただけです。

 わたくしも雨は好きですわ。気が合いますのね。

 わたくしの場合はお気に入りの傘をさしたり、お気に入りのレインコートや長靴を着用したり。

 あとは雨のしずくを眺めるのが好きなんです。

 恭介と同じです。ローゼリエのころはどうして雨の粒が葉の上で丸く粒になっているのか、空から何故雨粒が落ちてくるのか、全く疑問に思いませんでした。ですがこちらの世界ではそれが科学で解明されており、原理を理解しすることで逆に興味がわきました。なおのこと神秘的かつ美しいと感じて楽しいのです。」

「気が合うな。

 雨ってさ、小説とか漫画とか、物語の中では雨なんて心情表現にしか使われないことは多いけど、現実では違うよな。」 

「そうですね。確かに物語に無駄な伏線や、意味のない表現が出てくることが多い作品は駄作が多いですわね。洗練された作品、特に映像化など表現の枠、時間が限られているものなどは無駄な表現は一つもありませんわ。

 でも私の好きな作者さんはそういう表現こそ遊びであり贅沢であると考える方のようですわね。

 そう恭介の言う通り、現実では自分の心情の通りに天候が左右されることなんてありませんもの。悲しくて雨に打たれたいときに雨が降るなんて、そうそうありませんわ。

 もし雨に降られたいときにタイミングよく降ったなら、悲しいのにラッキーということになってしまいますもの。」

「確かに。でもそのことには気が付かない方がよかったな。

 これから見る作品すべて、心情表現に雨が降ってるシーンが出てくるたびに、この主人公運がいいのではっていう可笑しさが浮かんできちゃうだろ。しかも雨が降ってるシーンって大体シリアスシーンなのに。」

「あら、本当ですわね。」


「話してたらもうそろそろ帰る時間だな。」

俺は立ち上がり、机を片付け始める。そしてふと気が付いた。


「薔薇子、作品のシチュエーションで、今の俺たちみたいに悲しくない男女が登場する、雨が降ってる時って、どういう時かわかるか?」

「?

 さぁ、どういう時でしょうか?」

「相方が傘を忘れて相合傘して帰るときだよ。」

「仕方がないですわね。まったく。わたくしの傘に入れてあげますわ。

 それであなたはどこに傘を忘れてきましたの?」

「…わからない。」


「ふふふ、良かったですわね。事前に雨が降っていましてよ。」


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