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俺の彼女が急に異世界令嬢になってしまいました。俺ってこのまま彼氏でいいの?  作者: 長嶺暦


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第2話 俺の彼女は死にました 2

 俺が、翔子が車に轢かれたことを知ったのは翔子が病院に運ばれて結構すぐだったらしい。


 大崎家と中野家はの家族同然に付き合っていた。保護者のほかに頼れる人の連絡先として学校などの個人情報に連絡先が登録されているほどの仲だった。

 翔子祖父母はとっくに亡くなっていて、遺産として相続しながらも放置していた家に出戻ってきたのが中野家と俺の出会いだった。まぁ俺の両親と翔子の母親は幼馴染だったらしいんだけどな。

 だから翔子には母親以外保護者がいなかったのだ。


 必然的に隣に住んでいたうちの両親に頼ることになるわけだが、なんと翔子の母親に育児を手伝うからクソ旦那と離婚してこっちに戻ってくるよう言ったのはうちの両親だったらしい。

 だから当然のように、翔子はうちによく出入りし、夕飯を一緒に食べたり出かけたりしていた。

 うちの両親にとって翔子は娘同然なのだ。


 俺は家に帰っると親から翔子事故を知らされ、すぐに病院に行こうとした。

が、親に止められた。


 翌日翔子の母親とうちの母親が付き添いを交代することになり、俺も一緒に付き添った。しかしその時翔子の意識はなく、その次に翔子に会えたのは今日だった。


 それでも経過とこれからについて主治医と話したことを翔子の母親はうちの家族に話してくれた。


「おばさんからきいた話では、精密検査はすべて異常なし。

 車に轢かれて吹っ飛ばされたのに、外傷はかすり傷程度だそうだ。

 ただ頭を打ったようで本人が頭痛を訴えている。そう聞いた。

 そして事故に遭った人間にはよくあることだが、記憶喪失というか記憶の混濁があるとのことでカウンセリングをうけたが、医者にもどうにもわからんということだった。

 事故でおかしくなったのか、以前からなんらかの理由で精神的に不安定で多重人格であったが、事故のショックで人格が入れ替わったのか。

 もとにもどるのか、もどらないのか。

 何もわからない。そういわれたらしい。」


彼女は俺の話を聞いてかなり難しい顔をして「そうですか。」といった。

「逆に君は、おばさんや先生から何も聞いてないの?」

「えぇ。記憶について、治るかもしれないし、治らないかもしれないけど、翔子は翔子だから気楽にね。怪我もなくよかったね。わたくしが言われたことはその程度なんですの。

 病院ではとにかく頭がこんがらがっていましたし、ストレスなのかぶつかったからなのか、とにかく頭が痛かったのが、落ち込んでいるように見えたようで、きっと負担をかけないように何も知らされなかったんですわ。

 そう、でもやっぱりおかしくなってしまった可能性がありますのね。

 もしわたくしがおかしくなって、架空の異世界令嬢になりきっているのかもしれないと思うと滑稽ですわ。」

 彼女は笑いながらチャイティーを口にした。


「改めて飲みますとおいしいですわ。」

「異世界にさすがにチャイティーはないのか?」

「えぇ、いつも翔子さんとして飲んでいた記憶はあるのに…、とっても新鮮ですわ。」

「コーヒーはあった?」

「いえ、ありませんでした。」

「じゃあ飲んでみる?一応ポーションミルクだけいれてある。」

「よろしいのですか?確かとても苦いのでしたよね。ぜひ味見したいです。苦すぎたら一人で飲みきれませんもの。」

そういって彼女は俺のコーヒーを一口飲んだ。

「あら、意外にいけますわ!ですがわたくしはお砂糖も入れたいですわね。次はコーヒーもチャレンジしてみますわ!」

 すごくうれしそうだな。かわいい。さっきまで目つきも違うと思ったのに、当たり前だが笑った顔は翔子だな…。なんか意地悪したくなってきた。


「…。」

「なんですの?なんでそんなにじっと見るのですか?」

「ねぇ、口付けたカップを使うのを、こっちの言葉でなんていうか知ってる?」

「???

 わかりませんわ?何か変わった言い回しがあるんですの?」


 俺がおもむろに周りを見渡した後に、自分の口元に自分の掌をもってきてから、少しテーブルに身を乗り出す。すると彼女は内緒話をする動作だと気が付いたようで、素直に自分の顔というか耳を俺の掌の方へ差し出してくれた。


 ははは、素直だな。


 だからちゃんとコソコソと教えてあげた。


「間接キッス。」


 顔が真っ赤になったところをみると、知識としては知っていたのに気が付かなかったようだな。


 





 結局その後は他愛ない話をして店をでた。

 もうすっかり日が暮れている。当然のように二人で帰路に就く。


「なぁ。さっき聞きそびれたことがあるんだけど。」

「なんでしょう。」


「俺たちって別れるの?」


俺がそういうと一瞬彼女の目が見開かれたきがした。


「そう、ですわね…。

 考えてみれば、翔子さんがいなくなった今、あなたが私と付き合う意味が見当りませんわよね…。」


 しばしの沈黙。


 正直俺はどうしたいかわからなかった。

 まず記憶があってもなくても、そんな自分の立ち位置があやふやな状態なのに、俺が彼氏です!なんて言っても彼女が困惑するだけだと思った。

 だから俺は彼女に委ねようと思っていた。


「わかりました…。」


「そうだよな…。俺たち別れ「別れません。」」


「お?…ん?」


「別れませんわ。

 わたくしには今まだ助けが必要です。

 一応記憶はありますが、わたくしにとっては急に異世界に来たも同然ですのよ?

 わたくしあちらでは従者になんでもやってもらっておりましたし、頼りになる存在が必要ですの。

 あなたも、翔子さんが本当に死んで戻ってこないのか、気になりますわよね?

 今のわたくしの発言はすべて妄言で、記憶が戻ったら、あなたとは別の殿方とくっついてしまったら目も当てられませんわ。

 ですから、しばらくはわたくしを監視しませんと!

 なのでしばらくはこの関係を表向きだけでも続行で!

 異論は認めませんわ!よろしくて?」

 

 彼女は一気にまくしたてると、そう言い切った。

 真っすぐこっちを見て、俺の反応を待っている。

 なんか耳が赤い気がするな…。


「そうだ、そうだな。

 そこまで言うなら、助けてやるよ。」

 正直俺の脳内ではすべてツンデレ変換されて、かわいいにしか聞こえなかった。


「どうしてそういう風にとるんですか?意味がわかりませんわ!

 これは対等な申し出のはずなのに、なんで、あなたが助けてあけるという上からの発言になるのです?おかしいですわ!」


「ははは、そうだな。これからよろしくな。」


 そう言ってあいさつ代わりに、彼女のおでこにキスをした。


「な、あなたさっきからおかしいですわ!

 こんな破廉恥なことするなんて。」

「いや、いつもしてるだろ。わすれちゃってんのか?」

「騙されませんわよ。人のことを弄んでますわね!紳士の振りしたとんだ変態ですわ!」


 わちゃわちゃしているうちにいつの間にか家の前についていたことに気が付いたようで、彼女はぷりぷり怒りながら帰っていった。


 俺たちキスしたことは1回しかないけど、実はおでこにキスは毎回家の前で別れるときしてたんだよ。


ちなみに彼女はこのあとそのことを思い出し悶絶することになるのだった。


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