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俺の彼女が急に異世界令嬢になってしまいました。俺ってこのまま彼氏でいいの?  作者: 長嶺暦


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第1話 俺の彼女は死にました 1

 放課後俺はいつも通り、俺の彼女と学校最寄り駅付近にある図書館に併設された喫茶店に来ていた。

 

この町は再開発された都市で、かなり大きめのおしゃれな図書館が駅のすぐ近くにあった。

 そこに週3日ほど通うのが俺たちの日課になっていた。そしてその3日のうち2日ほどは併設のカフェでお茶をする。


 当たり前のように先を歩き、当たり前のようにいつものチャイティーを注文し、当たり前のように彼女はいつも俺たちが陣取る、店の奥の外がよく見えるガラス張りの窓に面した席に座った。

 俺は少しほっとした。おかしなことにはなったが、やっぱりこういうことは覚えてるんだな。

 多分彼女が忘れてしまっていたら傷ついただろな、俺。

 

 そんなことを考えているがもう今日は滅多刺しにあったくらいは心が疲弊していた。話には聞いていたが、事故に遭ってから変わってしまった彼女とは今日、久々の再会だったのだ。

 事故に遭って入院していたにも関わらず、彼女は何事もなかったかのように登校してきた。だが、まず風貌がいつもと違っていた。

 

いつもは髪を一つの三つ編みにして肩に流していたのだが、今日は巻き髪が肩にながされている。

 以前は赤いゴムをつけていたが、花の飾りのついたゴムをつけていた。 ベージュのセーターも真っ白のカーディガンになっていた。

 靴下ではなく白タイツ。なんなら歩き方も、バッグの持ち方も、話し方も、一緒に歩く時のポジションも、俺の呼び方もすべてが違った。赤の他人のようだ。


「何をぼさっとしているのです?早くお座りなって。落ち着きませんわ。」

 考え込んでしまっていたのか彼女からお声がかかる。慣れないな・・・。

 

俺は彼女の向かい側の席に腰を下ろした。


「なあ、お前って本当に翔子じゃないの?」

「えぇ、わたくしは翔子ですが翔子ではありませんわ。」

 目の前の彼女はやっぱりそう言い切った。

 あーぁ、マジで意味わからん。


 翔子というのは一応、今全否定されたが、俺の彼女のことだ。

 中野翔子なかのしょうこ。俺の隣の家に住んでいる。幼馴染だ。

 彼女彼女と言っているが、男女、正真正銘好き嫌い付き合うの方の彼女。俺の最愛の人だ。いや最愛の人だった?俺も状況をよく理解できない。

 

 いや頭ではわかっているんだが、わからんといった感じだ。受け入れたくないんだと思う。何しろこの今目の前の彼女曰く、俺の知っている翔子は死んだそうだ。

 もう帰ってこない。

そのことを思うと胸がズキンと痛んだ。


「どのようにお母さまやお医者様から伝えられたかわかりませんが、あなたの愛していた翔子さんは死にました。もう戻ってきません。」


「そうやって言い切るってことは確信があるってことなんだよな?」


「えぇ、まぁ。」


「煮え切らない返事だな。」


「わたくしとしましては、絶対と言い切れるくらいの確信があるのです。

 ですが実際は、わたくしの頭がおかしくなってしまっただけで妄想でしたという可能性もあるのです。

 どうしてわたくしがわたくしの意見を信用できるでしょうか?

 なにより、すべてわたくしの中で起こったこと。翔子さんがもう戻ってこないということを証明するのは無理ですわ。」

 

 彼女は胸に手を当てながら話す。心の中で起こったことか。実際は夢の中で?といっていたな。


「今日あなたをおよびしたのは、わたし自身も状況を整理したいからなんですの。わたくしもすべてお話しますから、あなたもあの日、わたくしが事故にあった日以降のことを教えてくださいませんか?」


「あぁ、もちろんだよ。俺もそれを聞きたかったところ。

 というかまずなんだけど、改めて確認なんだが、俺のことは覚えてるんだよな?」

 俺は机の下で自分の手を組んで固く握り合わせていた。手に汗をかきまくってるのがわかる。


「えぇ、もちろんです。」


 彼女はカバンからふわふわしたピンクのポンポンがついたボールペンとかわいいペガサスが表に書いてあるリングノートを取り出した。明らかに翔子のセンスじゃない。

 彼女は状況を整理するためとメモをしながら話し出した。


「あなたの名前は、大崎恭介おおさききょうすけ。わたくしの家の隣に住んでいる幼馴染ですわ。わたくしは小学生のころ両親が離婚しましたので、母方の祖父母の家に越してきました。そこで隣に住んでいた、いえ住み続けていたあなたのご家族にはじめてお会いしました。

 わたくしの母とあなたの両親も幼馴染で、昔から仲が良かったのですわよね。引っ越してきてからは家族ぐるみで交流していました。

 わたくしたちは今高校1年生ですわ。私たちは今年の春、3月から付き合ってます。今は9月半ばですから丁度半年ですわね。」

 

 彼女は淀みなくペンを動かし、相関図を描きながら、その下に俺の名前を書いてプロフィールを書き出す。

「身長175㎝、体重70㎏。成績☆☆☆運動☆☆☆。

 好きなもの ハンバーグ、から揚げ、カレー

 趣味 読書、ゲーム、料理、散歩、音楽、ぼーっとすること

 嫌いなもの 騒音

 好きな女性の好みは」

「おい、おいやめろやめろ。俺を赤裸々に暴くな。そんなことすべて思い出してメモらなくていい。頼むからやめてくれ。」

 そのうち俺の下着の好みまで書き出しそうだ。

 あ、ちがいます。女性の下着のじゃなくて、俺がブリーフ派かトランクス派かって話。いや、どっちも暴かれたくないけどな。


「あら?そうですか?ですがこれでわたくしが翔子さんの記憶をしっかり引き継いでいるというのはわかっていただけたのではないでしょうか?」


「あぁ、わかったよ…。君は翔子の記憶を引き継いでいると思う。それにこのカフェも、この席も、いつも頼んでるドリンクも知ってたしな。」


 俺は天井を仰ぎ見て小さくため息をついた。多分だけど、証明するためにわざわざ先を歩き、チャイティーを注文し、この席に座ったのだろう。


 嫌になる。彼女のことじゃない。翔子がいない、この()()()だ。


「よかったですわ。信じてくださって。

 次ですが、お母さまやお医者様はわたくしについてどのように言っていたのでしょうか。先日お話を聞いたとおっしゃっていましたわよね?そのことについて教えていただけませんか?」


「あぁ、そのことね。」

俺は数日前、うちに来て翔子のことを話すおばさんのことを思い出していた。


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