第15話 人生最大のピンチ
俺は今日人生最大?のピンチを迎えていた。
「おい、お前大崎恭介だろ。」
朝、教室前の廊下で声をかけてきたのは先輩だ。上履きの色でわかった。
放課後ちょっと話があるから校門の前で待ってて。
そう言って、一応と連絡先を交換させられた。
「あの…。先に言っておきますけど、俺は異性愛者です。」
「うるせ!殺すぞ!俺だってそうだよきっしょいなぁ!」
よかった。安心した。
先輩はプンスカ怒りながら去ってった。ここで話せばよかったのにいったい何だったのか。
「ぶはっ。お前まじかよ。異性愛者だったか。」
「やめろ夫人ネタを引っ張るな。」
「私はいい?」
「誤解されるだろ。」
「僕は誤解されてもいいですよ。」
俺が先輩に声をかけられるのを見るなり、あからさまに距離をとりやがってこの三人。
「お前ら見てたなら助けてよ。」
「だって普通に呼び出されて、連絡先交換しただけだろ!俺たちが悪者になっちまう。」
「今の世の中コンプラには厳しいもんね!私は逮捕されたくない!」
「どっちが被害者でどっちが加害者かって問題になりがちですよね。」
三人からは一応放課後も面白そうだから校門が見えるとこにいてやるよ。そう温かい応援の言葉もいただいたのだった。
放課後校門に立っていると、
「よし来てるな。ここでは話づらい、場所変えるぞ!」
ドナドナ~
あいつら初期配置位置遠すぎて追い付いてこれないだろうな…。終わったわ。
そして俺は先輩とファーストフード店で向かい合ってジュースを飲んでいた。ちゃんと義理堅く?先輩のおごりだった。
「なぁ、まずは俺は吉田洋一だよろしくな。」
「はい。」
「率直に言う。翔子さんを僕に下さい。」
「え?いや、なんでっすか?」
「だってお前翔子さんの保護者なんだろ?」
「保護者???」
一から十まで意味不明だ。どういうこと?
「翔子さんの彼氏とは仮の姿。幼馴染で保護者で、変な奴が寄り付かないように蹴散らしてるって聞いたんだが。」
「誰から聞いたんですか…。そんな噂。」
「覚えていないが他学年まで有名だぞ。」
「マジかよ…。」
「実際最近の翔子さんいいよなぁ。以前は地味目だったんだろ?それでもかわいいって陰で有名だったけど。今は凛としてるっていうか、図書委員で図書室でもみかけるし、とにかくいいんだよ!
そんで調べたら兄のような幼馴染彼氏(仮)がいるらしいじゃん?
是非認めてもらおうかと思ってな!
な!頼むよ!」
「頼むも何も、翔子は俺の彼女だ。誰かに渡すわけないだろ。」
なんなんだこいつ、いかれてんのか?
「つまり噂は噂で、本当に付き合ってるってこと?」
「そうですが?」
「じゃあ翔子さんに直接聞いてくるわ。」
「は?」
「だってよく考えたら大崎君の言ってることだって本当かもわからないだろ。」
「俺は彼女が知らない男と一緒にいるのを許すほど出来た人間じゃない。」
「彼氏といえど婚約者とかでもあるまいし、自由恋愛だろ。俺にもチャンスがあるはずだ。翔子さんが選ぶことだろ。」
「先輩、人の神経逆なでするの上手ですね。
とにかく、あいつには近づかないでください。話は終わりです。」
話してられっか。
奢ってもらった飲み物をゴミ箱にぶち込むと俺は先に店から出た。
あーくそなんなんだよあいつ。
最高にイライラしていると間が悪いことに薔薇子の声がした。
「あら恭介。こんなところで会うなんて。良かったら一緒に帰りませんか?」
またこいつ手を出しているよ。
エスコートしてくれ~のサインだ。
本人は無意識らしい。しみついた貴族教育の賜物だった。
俺はうやうやしくその差し出された右手をとりキスをする。
薔薇子はそこでいつも、わたくしまたやってしまいましたのね!という顔をするのだがイラついていた俺はそれを完全に無視する。
進行方向を向いて腕を差し出すと、恥ずかしがりながらも、自分でエスコートしろとせがんだ手前腕をとるしかないの薔薇子は腕に手を絡ませた。
そこに先ほどのファミレスの窓から一部始終を見ていたであろう先輩と目が合う。
俺は先輩を意識しつつ翔子にちょっと耳をかしてと称して、顔を近寄せた。
多分先輩からは頬にキスしたように見えただろうな。
素直な薔薇子のおかげで少しイライラが収まった。
何を言おうか忘れてしまった。
そう言った俺に薔薇子は
「まったくもう!早く帰りましょう!」
と少し怒りながらも優しい笑顔で手を引いてくれるのだった。
先輩、これで諦めてくれるといいなぁ。




