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俺の彼女が急に異世界令嬢になってしまいました。俺ってこのまま彼氏でいいの?  作者: 長嶺暦


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第14話 ママ会の日

 帰ったら家に薔薇子がいた。

「あ?なんでだっけ?」


 そして家には誰もいない。

「ひょっとして家間違えた?」

「バカをおっしゃい。そんなわけありませんでしょう?

 今日は毎月恒例、お母さま方の飲み会の日ですわ。」


 そう何を隠そう、うちの母親とおばさんは月一で飲みに行っているのだ!


 そしてそんな日はうちの父親、俺、翔子で夕飯を食べる。

 開催場所は何故か毎回翔子が決めている。今日はうちで食べるようだ。そして俺はそれを忘れていた。

「あ!今日は誰が当番?」

「今日はわたくしです。だからわたくしが今キッチンにいるのでしょう?」


 よかった。俺は安堵のため息を漏らす。

 実は母親たちの飲み会の日の夕食の用意は当番制になっているのだが、当番が三カ月に一回しか回ってこないから忘れがちなんだよなぁ。


 だがわざわざ作らなくても、買ってきてもOKってことになってるので、俺の担当の時は自分の好きなパック寿司を3つ買って帰ることが多い。父さんと翔子は作る派だ。

 特に父さんは何故か翔子に手の込んだ料理をふるまいたいようで、下手すると一週間前から仕込んだビーフシチューとか、スペアリブとか、手作り餃子とか毎回力作を用意してる。いやなんでだよと思うんだがうまいから黙っている。


 一応携帯電話をチェックすると、父さんから連絡が着ていた。

 ごっめーん今日急遽飲み会が入ってしまった。翔子ちゃんの手料理は明日食べるからラップして必ず残しておいてくれ。


 おい。


 全部食ってやる。


「薔薇子。今父さんからの連絡見たんだけど…。」

「あら確か今日は飲み会になってしまったんですわよね。わたくしにも先ほど電話がありましたわ。」

 父さんちゃっかり薔薇子には電話してたわ。


 はーっとため息をついた。疲れるな。素早く部屋に戻りカバンの中を片付け、部屋着に着替えた。

 今日は遅くなってしまったのでもうすぐ二十時だ。


 リビングに戻り、支度を手伝った。

 今日はトマトパスタとサラダとコーンスープだ。

 俺の分は今日もめっちゃ大盛だな…。


 薔薇子は盛り付けにも真剣だった。

「いつもは一人前30円のパスタですが、今日は一人前60円の生パスタなんですの」

「薔薇子は今日も相変わらずだな。」

「褒められているようには感じませんわね。

 お料理をご馳走してもらう立場でしたら、口にすべきことは一つですわ。」

「大変おいしゅうございます。」

「よろしい。」


 向こうの世界では皇太子妃だとすると、こっちでは財閥令嬢、いや総理大臣や皇族みたいなものだろう。

 そんなお方が30円60円のパスタの食べ比べの話をしていると思うと…。面白いな。




 食べ終わってもしばらくは帰らない。

 作ってもらったお礼に洗い物をし、先にソファに座ってテレビを真剣に見ていた薔薇子の横にマグカップに入れたココアを二つもって腰を下ろす。

 うちにはもちろん?翔子とおばさんのマグカップが常備されている。翔子のマグカップは猫さん柄だ。そして中野家にも俺の家族のカップが常備されているのだった。


 薔薇子はありがとうございますと小さく言って嬉しそうに可愛いカップに入ったココアを飲み始めた。


「なぁ。」

 俺が言うとまた怪訝そうな顔をする。

「なんですの。」



「皇太子のこと好きだった?」



 ふと思ったのだ。

 婚約していた許嫁。

 俺と翔子と同じように幼馴染だったのでは?

 俺もあまり翔子の話は出さないが、薔薇子からもその王子様の話を聞かないなぁと思った。


「そうですね。嫌いではありませんでした。

 でも、好きとか嫌いとかそういう話ではないのです。

 彼はわたくしが皇太子妃候補として日々を過ごさなければならない《《原因》》でもあります。実際死ぬ《《原因》》でした。

 唯一の同年代でしたが…。正直忙しすぎて交友の機会も少なく…。

 大事な時に助けてくれませんでした。」


「そっか。」


「ふふふ、やきもちですか?」

「ただ気になっただけだ。」

「人はそういうのをやきもというのでは?

 ふふふ、仕方のない方ですね。」


「さて、ココアもいただきましたし、そろそろ帰りますわ。

 ごちそうさまでした。」

「こちらこそ。送ってく。」

「隣なのですから大丈夫ですわ!」

「無人の家から無人の家に帰るのに送り狼もないだろ。」

「だから何も心配していません!」

「じゃあ心配した方がいいのでは?」


「まったくどうしてそうからかうのですか!」

 薔薇子は俺をバンバン叩く。いたたたたた。

 玄関で押し問答。


 ちょっと意地悪をしたくなって、さっと足を払う

 ふぁっというアホな声とともに、薔薇子は俺の胸に飛び込んでくる

 さっと支えて

「大丈夫?暴れるから人の足に躓くんだよ。」

 にこっと営業スマイルをした。

 そしてこの期を逃すまいとあからさまにギューギュー抱きしめる。


「あ、あのちょっと、恭介。何してるんですの。」

「飛び込んできたのはそっちだろ?」


 そう言ったら恥ずかしくなったのか大人しくなった。


 俺は薔薇子を解放してやり、しっかり家の前まで送り、頭の上にキスを落とした。


 そしてまだ若干フリーズしてる薔薇子を玄関に押し入れ、薔薇子がうち側から鍵をかけたのを確認し家に戻るのだった。

 今日もいい仕事したな。

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